くらし☆解説 「社会保障改革 どうなる?負担増」
2013年08月27日 (火)
藤野 優子 解説委員きょうのくらし☆解説は、社会保障です。
先週、政府は、今後の社会保障改革の段取りを定めた法案の骨子を閣議決定しました。この中には、負担増の項目が並んでいます。私たちの暮らしにどんな影響が出てきそうなのか、藤野優子解説委員に聞きます。
Q1 さっそくですが、どんな影響が出てくるのでしょうか。
A きょうお伝えするのは、いずれもこれからの議論で、決まっているわけではありませんが、医療や介護を中心に負担増の内容が打ち出されています。
特に、今回は、「現役世代が高齢者を支える」これまでの社会保障から、「経済力に応じた負担」、つまり、高齢者であっても比較的所得が高い人にはもっと負担してもらう考え方に変えているのが特徴。中には、いくつも低所得者への支援策もあるが、きょうは主に、負担が増えるものを中心にみていきたいと思います。
Q2 具体的に、どんなものが出ているのか
A まず、一つは、「70歳から74歳までの高齢者の医療費の自己負担の引き上げ」です。
今、病院の窓口で支払う自己負担は、このようになっています。
小学校入学前の子どもは原則2割(地域によっては無料)。
現役世代から70歳未満は3割。70歳以上については、一部、現役並みの所得がある人は3割になっているが、原則1割となっています。
これを、政府は、新たに70歳になった人から順に、2割に引き上げていく方針なんです。
Q3 新たに70歳になった人から、ということは、今、70〜74歳の人はどうなるのでしょうか?
A そこは、1割のままです。誕生日が来て70歳になった人から2割に上げていき、最終的に70歳〜74歳まで全体を2割にしようということなんです。
Q4 引き上げが始まる日よりも前に70歳になる人は1割で、その後に70歳になる人は2割ということですか?
A その通りです。
Q5 ということは、いつ引き上げられるかが大きな問題になりますね。
A 確かにそうですね。ただ、政府は、新たに70歳になる人というのは、これまで3割負担で、 70歳になって2割に下がるので、負担増ではないと説明しているんです。
それに、今70〜74歳の人を1割から2割にあげると、負担が倍になるので、できるだけ負担感を和らげよう、という苦肉の策ともいえます。
Q6 それで、肝心の引き上げ時期はいつなのですか?
A 厚生労働省は、世代間のバランスをとるということもあって、早ければ、来年4月から実施したいとしています。しかし、与党の一部には、消費税率が予定通り来年4月に上がれば、高齢者にとって二重の負担になるので、慎重に判断すべきという意見も出ています。
Q7 まだ決まっていないということですね。
A そうです。
それに加えて、介護保険の自己負担も一部引き上げることが検討されることになっています。
Q8 介護保険もですか?
A 介護保険のサービスを利用した時の自己負担は、今は、一律、かかった費用の1割を負担することになっていますが、所得の多い人については、2割に引き上げる案を軸に検討が行われる見通しです。
政府は、来年の通常国会に法案を提出して、2年後の2015年度をめどに実施に移していきたいとしています。
Q9 でも、介護を受けていて、収入の多い人がそんなにいるのですか?
A 介護を受けながら、バリバリ仕事をしているという人はほとんどいないと思いますが、今、政府内では、いろんな案が検討されていて、例えば夫婦の年収が300数十万円など、300万円を超えている世帯を、引き上げの対象にしてはどうかという案が出ています。
対象者の基準も、負担の引き上げの幅も、今週から政府の審議会で議論が始まることになっています。
そして、介護保険については、もう一つ、大きな見直し項目があるんです。
Q10 何ですか?
A それは、介護サービスの見直しです。
今の介護保険のサービスは、このように比較的症状の軽い人を対象にした「要支援1・2」から、最も症状の重い「要介護5」まで 7段階あります。
このうち、要支援1と2の人たちを対象にしたサービスを、国の一律の介護保険のサービスから外して、それぞれの自治体の責任で、NPOやボランティアの力を借りながら、やってもらおうという案なんです。
こちらも、(政府は)法案が通れば、2015年度から段階的に実施していくことを目指しています。
Q11 要支援1と2の人は、どんなサービスを受けているのですか?
A 食事作りや入浴、掃除、買い物などのサポートの他に、症状がより重くならないように専門家の運動指導や栄養指導、口腔指導などを受けていて、およそ150万人います。
Q12 そんなに多くの人たちのサポートを、それぞれの自治体でちゃんとやってもらえるのでしょうか?
A そこが問題なんですね。
政府は、各自治体がサービスを提供できるように、介護保険の財源を使ってもらうといっているが、狙いはコストの抑制。積極的に取り組む自治体は、地域のニーズにあったサービスを充実させていくと思うのですが、やはり、自治体のやる気によって、差が出てくることは避けられないと思います。取り組みの遅れた自治体をどうチェックして、国が後押ししていくのかという課題があるんです。
また、これまでのような専門家の運動指導など、適切なサポートが受けられないと、かえって症状が重くなって、要介護度が上がってしまい、結果的に、費用の総額が膨らむことにもなりかねません。
負担が増えることはある程度やむを得ないかもしれないが、必要なサービスが受けられなくなるのは本当に困りますよね。この点については、私は慎重な検討が必要だと思います。
Q13 高齢者の負担が増える話ばかりですが、働く世代の負担はどうなるのでしょうか?
A 現役世代も、所得の高い人の健康保険や年金などの保険料を、さらに引き上げることが検討されています。
これは、来年度から2017年度までの間に順次、実施していくとしています。
Q14
きょう見てきたのは、負担増ばかりですが、消費税率をあげて、社会保障の財源にあてるなら、負担は軽くなるようなことがあってもいいのではないかと思うのですが。
A そう思われるかもしれません。消費税率を引き上げた財源で、子育て支援を充実させたり、これまで借金で穴埋めしていた年金の財源にあてたり、社会保障を維持・強化する部分もあるのですが、今度、消費税率を上げても、これからの社会保障の財源はまだまだ足りないのが実状なんです。ですから、どうしても、削れるところは削っていく必要があるんですね。
きょうお伝えした内容も、与野党から強い反発の声も出ているので、まだ二転三転すると思いますが、社会保障を「経済力に応じた負担」に、どこまで変えることができるのか、今後の議論の行方を注視していく必要があると思います。