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2011/1/3
延坪島事件 |
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昨年11月23日の韓国と北朝鮮の軍事境界線直下の延坪島への北朝鮮の海岸砲による砲撃の一報は、朝鮮半島の緊張の高まりを痛感させました。事件直後は「北朝鮮の無差別砲撃」との報道が繰り返され、着弾箇所のえぐられたコンクリートの壁や破壊された家屋が連日画面や紙面を賑わせました。そして南北朝鮮間の全面戦争突入を予感させるようなあわただしい報道が連日繰り返されました。
北西アジア地域でのこの慌ただしさは昨年3月26日に朝鮮半島西部海域で発生した韓国哨戒艦「天安」の謎の沈没事件を皮切りにしたものです。この事件の真相は今も闇の中ですが、韓国の民主勢力で”北朝鮮説”を唱える政府の発表を真に受けている人誰一人としていないようです。けれども、この事件の後、北東アジアは緊張の渦の中に巻き込まれたようです。北朝鮮を主敵とした米韓の演習は、はじめは日本海で、次には黄海でと、休む暇もなく繰り返されました。けれどもこの一連の推移の中で誰の目にも明らかに浮かび上がってきたことは、中国の東北アジアでの政治的・軍事的発言力の拡大と、米国の政治的・軍事的プレゼンスの後退でした。
「天安」の沈没事件を利用して自らの政治的存在を訴えた李明博大統領は統一地方選挙で惨敗しました。米国は、「天安」をめぐる国連安保理では中ロに破れ、韓米演習への空母の派遣すら自由に行えず、東北アジアにおける軍事的展開に制約を受けている現実に直面しました。「天安」をめぐっては殉職兵士にははばかりながらも、政治的には誰が沈めたのかという真相ではなく、浮き彫りにされた東北アジアの力関係の変化に関心が集中されることになりました。中国を経済的支配と利用の対象だとみなしてきた日本もまた尖閣問題で中国の力を見せつけられることになりました。これ以降というもの、日米韓は北朝鮮のほうを向いて中国と対置する戯画的なふるまいに明け暮れてきました。
それゆえか、砲撃事件後の日米韓の振る舞いはヒステリックとしか言いようのない大騒ぎとなりました。韓国では朝鮮半島西側の黄海で米原子力空母ジョージ・ワシントンが参加する米韓共同演習を実施、米国軍トップが韓米演習への自衛隊参加を打診、続いて日米は九州・南西諸島を中心に陸海空統合共同演習「キーンソード」を行いこれに韓国軍将兵がオブザーバー参加し、韓国軍は性懲りもなく北方限界線上で砲撃演習を再開、休戦ライン直下での陸上演習も史上最大規模で実施されました。
このヒステリックな日米韓の対応のどさくさに紛れて、日本では「基盤的防衛力整備」を「動的防衛力構築」に切り替える「防衛計画の大綱」が一切の議論もないままに決定され、南西諸島への戦力強化を前面に出しながら、PAC3部隊を現在の3倍の9部隊に強化、SM-3搭載イージス艦を6隻建造し現在の倍の12隻の就航、さらには米軍のグローバルホーク相当の無人偵察機の導入などMDに絡む装備調達を次期中期防衛5カ年計画に盛り込みました。
なんとかして、この変化した東北アジアの力関係を修復したいと望む日米韓の動きは慌ただしさを増すしかなかったのでした。緊張の中でしか自らの政治的存在価値を発揮できない韓国李明博政権、緊張の中で沖縄の米軍基地の存在理由を説明しながら米軍への直接的財政支援を推し進め、南西諸島防衛を前面に出しながらその実は米国の核戦力維持のためのMD兵器を買いそろえる民主党政権。北東アジアにおける慌ただしい緊張を醸し出す動きには、冷静な現実の力関係を見極める判断が求められているようです。
今回は、このような時期を論評する記事をご紹介します。南北の平和的共助政策を全面停止し交渉の場そのものをもつことを拒否し、開戦から60年を迎えた今日再び、その朝鮮戦争直前の緊張関係を作り出そうとした李明博政権ではありましたが、「天安」事件後の事情は交渉のテーブルに復帰せざるを得ない状況に追いつめられていた状況が伝えられています。 |
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韓国国防部は、2010年11月23日午後2時34分北朝鮮軍が仁川市(インチョンシ)、甕津郡(オンジングン)、延坪島(ヨンピョンド)に向かって砲弾数十発を発射したと明らかにしました。
国内の報道は北朝鮮軍による一方的無差別砲撃であるかのような報道がなされましたが、韓国内では北方限界線近辺で砲撃演習が実施されていたことは周知であり、このような砲撃戦に至る可能性を否定する人はいらっしゃいません。韓国軍の砲撃に対し北朝鮮軍が反撃の海岸砲を打ち込むのは日常的なものだと伝えられています。
けれども、この日の演習で韓国軍が打ち込んだ砲弾は、午前10時からのわずか3時間で3700発弱といいます。在沖海兵隊の県道104号線超砲撃演習の本土移転で撃たれる砲弾は4-5日の演習で平均数百発ですから、短時間に尋常でない量の砲弾を撃ち込んだことになります。
日本国内のヒステリックな報道とは異なり、韓国内では冷静さを呼びかけるメディアがあるとともに、世論調査でも平和的解決を求める人々の声が伝えられました。 |
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2011年初頭に行われる米中首脳会談で、中国が米国債の引き受けの見返りに北東アジアにおける対話のテーブルへの復帰が模索されているという観測の広がり、北朝鮮の核査察の受け入れ表明などによって、強硬路線を貫こうとする韓国が国際的に孤立化するのではないかという指摘が、韓国の保守勢力内部から指摘され始めています。
また、北朝鮮との砲撃戦まで引き起こし、緊張を高めるだけ高めておきながら、それでもなおかつ朝鮮半島西部海域で砲撃演習を再開する一方で、北朝鮮が対応を控えたことで、平和的解決を望まない韓国という海外からの評価、’さらにもめるつもりなのか’という国内的批判が出始めています。
こうして、緊張関係の弛緩に対して、砲撃戦を交えることでカンフル剤のように再び緊張の渦を作り出そうとした李明博政権の試みは、またしても現実の力関係の中で無意味な試みに終わる可能性が指摘され始めたのです。
そして、日本。政府・民主党は中国との対決は避けながら、朝鮮半島での緊張を頼みに、米国依存回帰の安保政策や、沖縄の基地問題への対応を説明してきましたが、その根拠を失いつつあります。こうして外皮を取り去られたあとには、維持する予算に悩む米軍への直接的な軍事予算を提供し、自らへの核攻撃の脅威を顧みず、米国本土を核攻撃から守り、米国の核独占を狙うMDへの惜しみない協力を行う日本の姿が浮かび上がってきます。
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