住宅ローンでの固定金利選択型の固定期間の選び方 (2003/5/30)
1 銀行の住宅ローンは固定金利選択型が主流
住宅ローンを組むときに、金利を固定にするか変動にするかは、非常に悩ましいところです。
なぜなら、銀行の住宅ローンでいう固定金利とは「固定金利選択型」というものであり、変動金利をベースにして、金利固定期間を変動金利(通常6ヶ月)よりもやや長め(たとえば2年とか5年)に設定したに過ぎないものだからです。実質的には「金利見直し期間がやや長い変動金利」です。
しかも、銀行の住宅ローンでは、この固定金利選択型が主流というから困ったものです。一部では公庫と連携した超長期の固定金利型が出てきましたが、銀行ではまだまだ固定金利選択型が主流です。ですから現時点では、銀行ローンで金利タイプを選ぶということは、「変動金利で、金利見直し期間を何年に設定するか」と言い換えることができます。そのため、借りる側は固定期間を何年にするか、という判断をしなければなりません。
では、この「実質変動金利」の金利を固定する期間は、何年にすればよいでしょうか。たいていの方は「将来金利が上がりそうだから」とか、ローン返済計画を確定させたいという理由で、できるだけ長期間固定しようと考えるようです。でも、現在は、固定期間が長期になるほど、金利が高くなる傾向にあります。たとえば、ある銀行では2年固定が1%なのに、10年固定が4%という現状を見て、それでも10年固定を選ぶべきでしょうか?果たして、「10年固定4%」という金利は高いのでしょうか、低いのでしょうか?
ここでは、それぞれの固定期間の金利が、どの程度高いのか低いのかを考えるための尺度を、どのようにとればいいのかを考えてみましょう。
2 本来の金利と銀行ローン金利を比べてみよう
銀行ローンの金利は、どの固定期間が最も有利なのかを知るために、国債の金利と比較してみましょう。
国債金利は日本における最も優遇された金利水準です。日本国内では、国債よりもいい条件で資金を借りることはできません。そこで、国債をベースにした最優遇金利と比べることで、銀行ローン金利が最優遇金利と比べてどの程度高いかを知ることができます。
当然のことながら、銀行ローン金利は国債金利よりも高いはずです。そこには銀行の経営に必要な費用、利益をはじめとして、様々なコストやプレミアムが含まれているからです。このことについては後で詳しく説明します。
国債よりも低い金利で借りることはできないのですから、銀行ローンはできるだけ国債に近い金利で借りるのがトクということになります。つまり、国債金利と銀行ローン金利の差(スプレッド)が小さい固定期間を選ぶのが得だということです。この場合、必ずしも長期に固定するのが有利ではありません。場合によっては1年ものや変動金利が有利になることもあります。
では、なぜ金利の絶対値ではなく、スプレッドに注目するのがいいのでしょうか?それは、長期(固定)金利でも短期(変動)金利でも、期待値では損得に差がないからです。
短期金利よりも長期金利が高いということは、金利市場に参加する多くの人が「将来短期金利が上がる」と予想していることを意味します。人々のその予想が長期金利に織り込まれ、長期金利が高くなるのです。逆に、将来金利が下がると予想する人が多ければ、長期金利が短期金利よりも低くなるという状況が起こります。ここで、「長期金利が短期金利よりも低ければ、長期で借りるほうがトク」だと考えてはいけません。市場では、「将来の短期金利は、現在の長期金利よりももっと低くなる」と予想しているのです。長期金利が短期金利よりも低い背景には、将来の短期金利はもっと低くなるという人々の予想があるのです。
みなさんが短期(変動)金利が有利か、長期(固定)金利が有利かを判断するまでもなく、市場では人々の予想を織り込んだ金利がついています。結論としては、「短期でも長期でも(期待値においては)損得なし」ということになります。「それでも長期金利が安いからトクだ」と判断するのは自由ですが、市場に挑むのは止めたほうが得策です。市場に勝つのは困難ですし、もし勝ったとしても、それは偶然か、そうでなければ判断を下すための情報収集に膨大な時間と費用を費やさなければならないからです。
3 国債と銀行ローンの金利が違うわけ
国債金利に限っては、短期(変動)であれ長期(固定)であれ、どちらを選んでも(期待値では)損得がないことがわかりました。それでは、銀行ローンについても同じことが言えるでしょうか?銀行ローンにはコストやプレミアムが上乗せされていると説明しました。コストはわかるにしても、プレミアムとは何でしょうか。それを理解すれば、スプレッドが小さい固定金利期間を選択するのが得策であることが理解できるでしょう。
銀行ローンに上乗せされるプレミアムは主に二つのリスクを反映したものです。ひとつは、銀行が調達する資金とローンの返済期間が一致しないことによるリスクです。もうひとつは、ローンを組む個人の信用リスクです。それらのリスクを銀行はコストと考え、ローン金利を国債金利よりも高く設定します。
長期固定金利で貸し付けることにより、銀行の収益は確定します。しかし、その元手となる預金で金利が固定されるのは、もっと短期間です。そのため、長期固定金利の住宅ローンを提供する銀行の収益は、将来の短期金利の影響を受ることになります。将来、短期金利が下がれば大きな収益を得られる一方で、逆鞘で大損失になる可能性もあります。銀行はそのようなリスクをとる分、上乗せ金利を要求してくるのです。そのため、通常は固定金利期間が長期になるほど、上乗せ金利が高くなるのです。
住宅ローンを組む個人の信用リスクについては説明するまでもないでしょう。「優良企業にお勤めの○○さんには、金利を○%優遇します」というのが、それです。ローンを組む人の信用状況が悪化したときに、金利を見直す期間が短ければ、その時点で直ちに金利を上乗せすることができます。しかし、いったん長期で金利を確定してしまうと、個人の信用状況が悪化しても、金利の変更ができません。ですから、長期で金利を固定するときには、予めある程度の金利を上乗せしておこうとするのは自然でしょう。
このように、銀行ローン金利と国債金利の差(スプレッド)は、金利を固定することに伴うリスクを銀行に負担してもらうことに伴うコストであると理解することができます。ローン返済計画を確定させるために金利をどの程度の期間固定するかという要望は、それに対して負担してもいいと考えるコストとの見合いであるということができます。それでは、あなたは金利を何年固定させるために、いくらのコストを支払う心づもりがありますか?
4 筆者の場合
ここでは、金利を何年固定させると、いくらのコストが必要となるかについて、国債金利と住宅ローン金利の差を実際に見てみましょう。
私の場合、ある事情で東京三菱銀行を選びました。これはその時の東京三菱銀行が提示していた金利を、国債の金利と比べたものです。明らかに固定期間が長期にわたるほどスプレッド(国債金利と住宅ローン金利の差)が大きくなっています。
よく見ると、6ヶ月の変動金利よりも1年固定の金利選択型の方が、スプレッドが小さいことがわかります。これは、銀行の調達資金が1年ものに偏っていることを示していると考えられます。6ヶ月ものだと、却って資金調達に不安があるわけです。
結局、私は5年固定にしました。金利水準とスプレッドの大きさを比較して、「これなら負担する価値がある」と判断したためです。他の人だと「これでもスプレッドが大きすぎる」、あるいは「もう少しスプレッドが大きくてもいいから、さらに長期固定にしたい」と判断されるかもしれません。そこは好みなので、ご自身で判断してください。
5 超長期固定も出てきた
ここで注目すべきことは、金利スワップや住宅金融公庫を使った証券化手法により、超長期ローンが出てきたことです。こちらの右列に示しているのは、金利スワップによって、超長期ローンに見合った資金調達が可能となった銀行の例です。これらの工夫の結果、従来の固定金利選択型と比べて、スプレッドもずいぶん小さくなりました。同じ銀行でも超長期のほうが金利が低かったりすることもあります。
とはいえ、超長期型も様子見の段階で、期間限定で募集して、現時点では扱っていない銀行もあります。出始めて間もないので、さらに改良が加えられる可能性もあります。少なくとも公庫を使った超長期型については、来年度には新たタイプが登場する予定であり、ますます選択肢が広がります。そういう点から見て、超長期型については焦らずに、各銀行から様々なタイプが出そろうまで、待ってもいいかもしれません。