BOOKS
「アメリカ人は明るいか」 原 隆之 宝島新書
モータウン・ミステリー http://plaza19.mbn.or.jp/~shinjiee/Motown/mot_toc.html
これはいわゆる本ではなくて、WEBサイトへの記事です。ただ、ここにかかれている事が、古くからの黒人音楽やPOPSファンには本当にびっくりする内容なので、ここに紹介しておこうと思いました。伝説のモータウン・サウンドを作ったとされている、デトロイトのスタジオ・ミュージシャン集団「ファンクブラザーズ」。実はあのモータウンサウンドはの一部は、彼らのプレイではなかったかもしれなくて、なんとLAのスタジオミュージシャン、それもビーチボーイズの一連のセッションでプレイしていた人たちがプレイしていたものがあるという衝撃の内容です。筆者はそれが事実であることを、膨大なデータと当事者の証言や証拠で明らかにしていきます。
つい最近、ひょんな事からこの記事の存在を知ったのですが、初めて読んだ時は結構ショックでしたよ。僕だけではなく、おそらく世界中の音楽産業従事者・ファンにとって「常識・定説」とされていたことがひっくり返ってしまってますから。
すべてのPOPSファンは必見です。
ロック百科@−B:サンリオ出版
コレは長いこと日本語になるのをまっていた本で、81年に出たものです。その名のとおりロックとその周辺の事件や人物・現象までを取り上げた辞典です。アルファベット順にアーティストやプロデューサーが並んでて、プロフィールや仕事をかいてます。日本では@−Bをそれぞれ50−70年代の10年間に分けて出されてます。特にお勧めは@・Aですが、現在では絶版だと思いますので、古本屋さん、かなあ・・・。僕も、Aは昔プレゼントしてしまったので今は@しかないのです。なんであげてしまったのかと後悔してます。原書がイギリスで出たのが76年ですから、70年代の部分はかなり日本のスタッフによって書かれてて、とたんにつまらなくなるのでBは買わなかったのでした。
この、イギリスで作られたというのがミソで、アメリカのPOPを全体的に・批評的に捕らえる目はそうでないとなかっただろうな、ということです。この本でも、筆致はかなり辛らつなところもあり、そこがローリングストーンあたりの「一見辛らつだが愛情はある」という視点とは全然違う。母国にアーティストがすんでるのとそうじゃない違いかも知れません。
例えば手元の@を開いてみると、Jにはマヘリアジャクソン-エタジェイムズ-ロバートジョンソン、Gにはゴスペル音楽-ロスコーゴードン-ゲリーゴフィンなどの項目が並びます。これでこの本が単なるロック本ではないことがよく分かると思います。
もし見つけたら、即買っておいてください。自分に必要ないと思ったら、ぼくに売ってください。
プレスリーから始まった:片岡義男 ちくま文庫
もともと「僕はプレスリーが大好き」と言う題名で、角川文庫から出ていた本です。僕はその時代に手に入れ、読みました。その後タイトルが変わり「音楽風景」となり、94年に現在の形になりました。これだけタイトルや出版社が変わりながらでも刊行されつづけている事が、この本の価値を物語っています。片岡氏はアメリカに非常に近いところ(思考や思想)にいたため、一見日本人ですが、ロック捉え方が僕らとはまったく違った事に読んだ当時は驚きました。その後25年くらい経ってみると、この本のロックへの視点が如何に正しかったか良く分かります。
当時の日本でのロックの捉え方は、情報がごく少なかったため、どうしてもサウンドそのものの質感やアーティストの生き方などが語られるだけで、歌詞の後ろにあるアメリカやイギリス社会、それも庶民層のライフ(この場合、生活・人生の両義です。)にふれる事は非常に少なかったように思います。片岡氏のように、実際のアメリカ人でなおかつ日本語と日本人のメンタリティを理解できる人が、ロックを70年代初頭に語る事は、とても意味のある事であったと思います。少なくとも僕は、18歳のときにはじめてこれを読んで以来5年おきぐらいに数回読んでますが、アメリカ大衆音楽に触れれば触れるほどこの本への理解が深まるのを感じます。
50年代ロックンロールに興奮した事のある人は必携です。60年代ロックの名曲と言われる曲の、たった1曲にだけでも感動した事がある人も読んで損はないでしょう。ただし、70年代以降の音楽しか好きになれない人には、別に響かない本かもしれないです。ロックを社会学的に俯瞰したい人のために、僕はこの本を薦めます。
ロックは語れない:渋谷陽一 新潮文庫
これはいつぐらいかな、多分90年かそのくらいに出てて、即買った。昔「花のニッパチ」って言葉があってね。例えば山下達郎・キヨシロー・チャボ・イシヤン・浜田省吾(?)・・・などなど。枚挙にいとまがないくらい、昭和28年生まれのミュージシャンって多いんです。これは考えたら良く分かる。1966年に13歳。中学一年。ビートルズ来日時にその年なら、音楽で人生変わるよなぁ。マツモトさんもそうではないかな。
で、この本はそういう、著者言うところの「天文学的な確率の幸運」に恵まれた人たちのインタビュー集。つまり60年代をティーンで過ごし、バンドをやって、70年代にプロになった日本のロックの中心人物たちの「なぜ私は今こんな音楽をやってるか」。渋谷陽一は、自身がその28年生まれなんで、当然ミュージシャン達と同世代。どうも個人的にも仲が良い人が多いみたいで、和気あいあいにインタビューが進む。
山下達郎・キヨシロー・チャボ・浜田省吾・・・僕はこの辺が面白かった。一人分が終わったところに著者のコラムが入るんやけど、それもなかなか新鮮な視点で僕には面白かった。肩の凝らない、等身大の日本のロックが随所にあって、60年代日本の子供たちがHIPだった事が良く分かる1冊。
ザ・バンド: リヴォンヘルム
リヴォンヘルムという、ザ・バンドのドラマーが自ら口述筆記の形で書き下ろした半生記みたいな本。50年代からロックンロールバンドでアメリカ・カナダのクラブサーキットを回り、ディランにピックアップされて世に出て行くサクセスストーリーもさることながら、背景に見え隠れする当時の音楽事情(40年代後半〜80年くらいまでの)が、本人が生きた時代だけにリアルです。ザ・バンド関係にはもう一冊「流れ者のナントカ」ってのがあったのですが、ここはまずメンバーの本を紹介します。それと、グリールマーカスという人の「ミステリートレイン」という本のザ・バンドに関する考察は、すごく深くてタメになったことも付記しておきます。 ザ・バンドが好きな人は必読。
ポピュラー音楽の世紀:中村とうよう 岩波新書
この本は、20世紀大衆音楽の世界的な広がり方を、ブワっと100年分紹介しているものです。著者のとうようさんは、50年代から日本の音楽評論家のなかでは独自な視点で大衆音楽を語ってきた人なんで、アメリカ黒人音楽のくだりなんかでも「ん?」と思う突き詰め方をされてて、それがまた挑発的で面白かった。もし商業音楽としてのPOPを考えたい人がいたら、一度は読んでみても面白いかな。ああ、こんなに音楽を捉える人もいるんやなぁ、ってことではね。
追憶の60年代カリフォルニア:三浦 久 平凡社新書
著者の三浦さんは、僕が18歳で京都に行ったとき、精華女子短大で講師をしてはりました。で、たまに開かれる公開講座で禅の話やディランの曲を歌うことをされてました。すでに京都のカウンターカルチャー(っていうか学生文化界)の中では、伝説の人物として有名でした。いわく「ゲイリースナイダーさんと親交がある」「禅の高名な老師とも親交がある」・・・。僕は若かったので、「ケ、なーんや、ヒッピーかいな。うさんくさいのはごめんやで。」と思っていました。そのうち、年上のバンドのベースプレイヤー・杉浦君が、「はっきりいって俺は感動した。このテープ、聞いてくれ。」と、杉浦君の精華に通う彼女が取った三浦さんのインタヴューテープを持ってきました。いやいや聴いたのですが、「・・・すごい。」と最後には言ってました。その時に聴いた話がここに本となって出ています。この本は最近出たばかりなので、僕も今日(10月13日)読んだところです。
64年−69年を、アメリカ・カリフォルニアで学生として過ごした三浦さんが、当時を回想した自伝的要素の強い本です。「60年代は、いつでも誰にでも、アメリカ人の中にある。」といわれるゆえんが、ここにはかかれています。ディラン・ビートニク・ニューシネマ・ヒッピー・禅・仏教・・・・・・・。これらの言葉で3回くらい反応した人には、この本からの示唆があります。
・リズム&ブルースの死:ネルソン・ジョージ(林田しめじ訳)
ネルソンジョージは黒人の作家で、アメリカ黒人音楽とその周辺のことを書くことも多い人です。この本では、80年代後半くら いまでのブラックミュージックを、現場で体験してきたこと(彼はいわゆるギョーカイの人だった)と精緻な取材で、ソウルがなぜ盛り上がり消えていったのかを、ミュージシャンやスタッフへの愛情を感じさせる語り口でつづっています。特に、60年代のソウルが爆発するくだりから、70年代後半あたりの箇所はドキドキしながら読めました。
・ビートルズ:ハンターデイヴィス(片岡義男 訳)
数あるビートルズ本のなかでも、これはロックファン必携でしょうね。もし君がビートルズの曲で2曲以上好きなのがあるなら特に持っておくべきです。体裁は、伝記ものではじまって、途中からドキュメンタリーになっていきます。初版が67年ですからそのときはまだビートルズはバリバリの現役だったし。ただ、解散後の彼らを追った内容を加えたものが現在では出回っている正規版で、独特のクールな視点が「付け加え」部分においては薄まってるのが残念ですが。
・ビートルズ・レコーディングセッション
この本は、アビーロードスタジオのスタッフだった人が、自分の死を知って大好きだったビートルズの録音資料を彼らの本拠地だったEMIアビーロードスタジオの資料保管室にこもって丹念に整理した結果できた、とんでもなくすごい「全曲録音日誌」です。いままで世界中の評論家たちでも知らなかった、あるいは書かなかった、ビートルズの作曲〜レコーディングの過程がつぶさに全曲分わかります。もちろん、エピソード満載。これを読むと、大好きなあの曲の聞こえ方が変わります。ご用心。
・魂の行方:ピーターバラカン、新潮文庫
シンコーミュージックの社員として来日し、今やDJとして活躍中の彼が、自身のイギリス時代のエピソードとともに語るソウルミュージックの入門書です。かなり日本人を理解してる彼だからこそ書ける筆致で、誰にでもわかりやすく、しかし深く、ソウルと周辺の音楽を紹介してます。これはブラックミュージックの入門書としては、僕が知る限り最適でしょう。 文庫だし。
・ボブマーレー: 晶文社
レゲエな人は避けてとおれない、彼の伝記です。これは感動しました。50年代の後半からボブのキャリアは始まるから、必然的にスカ〜ロックステディ〜レゲエの歴史という読み物にもなっています。でも、僕が感動したのは、ジャマイカでフツーの黒人として生まれて成長することが、どれだけ大変かというところです。僕にこんなタフな暮らしが出来るかなあ。とにかく、レゲエが戦う音楽であった時代の、戦い抜いた人の半生です。
・ボーダー : 狩撫麻礼
漫画です。コミックで14巻くらいあるのかな。男3人がサイテーの生活をしながら、爆発していく話です。たとえば、映画ブルースブラザーズの、2人の関係が好きな人は耐えられるでしょう。まあ、男はこんなしょーもないこと考えてるという、いい見本でもあります。
・ポップヴォイス: 三井 徹訳 新潮文庫
1920年代〜80年代のアメリカンPOPと演劇やショービジネスにかかわった人たちへのインタヴュー集です。聴き手は業界で長い間尊敬されてた人みたいで、僕らがよく知ってるアーティストたちも、かなりざっくばらんに本音でいろいろ話してます。三井さんのこなれた訳が気持ちいい一冊です。
・アトランティックレコード物語
これは、黒人音楽が好きな人のあこがれ、アトランティックレーベルのはなし。R&Bと言う言葉を作ったジェリー・ウェクスラーやトム・ダウドがどんな人かとかに興味があって読んだのですが、イヤー、僕には最高でした、この本。でも万人向けじゃないです。少なくとも60年代のソウルを一通り聴いた人が読んだら面白いだろうけど。音楽オタクむけ。
・音楽王 細野晴臣物語
僕、実ははっぴいえんど大好きだったんです。「風街ろまん」何回も聴いた。で、お決まりのコース。実際、この本に書かれてる60年代ど真ん中の洋楽を、リアルタイムで本質をキャッチしてた数少ない少年たちだったと思う、彼らは。僕にとって音楽の師匠は数多くいるけど、一番ダイレクトにアメリカン・POPを音で表してくれた人たちの中の、リーダーがこの人です。この人の74年から78年の仕事は、実は世界的に評価されてて、ザ・バンドのメンバーやLAのスタジオプレイヤーがこぞって研究してたということです。76年ごろ、この人の音楽作成ノートが雑誌に載ったことがあって、そこには自分の音楽を作る為の参考にする為のアーティストが書かれてたのですが、それこそ1900年-1970年くらいまでの全ジャンルのミュージシャンが並んでたのです。僕はそれを見て、これはいかん、もっと深く何でも聴かないと!とレコード道に入りました。
たぶんYMOからの人は、彼のベースプレイがどんなにすごいか知らないと思うけど、僕にとっての日本でのNO.2です。(NO.1は京都に住んでるハルゾーさんって言う人です。)細野晴臣はまた、ギターの達人でもあります。ドラムの達人でもあります。ニューオリンズ・ピアノの達人でもあります。隠れ作詞家(いいんだ、これが!)でもあります。僕は、僕の時代にこの人たちが音楽をやっててくれてよかったと思います。
この本は、細野さんと非常に近い関係の人が書いた、伝記のような本です。YMO解散直後くらいまでを書いてます。日本のロックのいくつかある太い流れの1本は、ここに書かれてる歴史から生まれたのです。
ブライアンウィルソン 自伝
これは本当に読むのが怖かった1冊。’67年に精神異常をきたした人で、現在まで数人の専任医師を解雇しながら生きてる人でもあるブライアンの、自身の口からの半生です。口述筆記による原稿を日本語に翻訳する段階で、少しやわらかい表現になってると思われる箇所はあるものの、インタビューの途中で錯乱や鬱がきたと思われる箇所も多少残したままの文章は、特に70年以降のいろいろなつらいことを述べるくだりでは本当にリアル。ファンとしては、つらいです。
以前に「POPSは雨の心で書くんだ。悲しいときに楽しい心をかくんだよ。」の名言を残してるブライアン。あの素晴らしいコーラスワークとメロディが、どれだけ陰惨な環境で出来てきたかが良くわかる1冊です。ブライアンおよびビーチボーイズのファンでない人は、読まないほうがいいです。
ハーレムの熱い日々 吉田ルイ子 講談社文庫
60年代前半にアメリカに渡り、結婚し、NYの黒人住居区ハーレムに住んだ女性カメラマンのお話。公民権運動〜アイク&ティナターナー〜ブラックパワー〜近所の話など、いろいろな内容が、ハーレムの暖かさとともに語られます。吉田ルイ子さんのとった写真とともに、当時の黒人の空気がむんむんしてる本です。読了感がとてもいいのは、彼女自身の人を見る視点に偏りやこだわりがないからでしょうね。自由な空気を感じたい人に。続編もあります。
ビル・グラハム 大栄出版
分厚いペーパーバック仕様の横書き日本語で、少し読みにくいかもしれません。この人は何をした人かというと、60年代中期にサンフランシスコでフィルモアというライヴハウスのでかいのを作り、ロックミュージック文化の広がりを助けた人です。出演者の組み合わせが面白かったり、ポスターアーティストが育ったり、何よりロックイベントでの音響や照明や楽屋でのケータリングのマナーを作った人の一人です。この本では、そんなことよりも、脇役としてロックが巨大産業にまで育っていく時間を、フィルモアの出演者、スタッフたちの話を交えながら追っていく形をとっています。アーティストの面白い話は、満載です。