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--- さて芭蕉は、 「と、かくして越えゆくままに阿武隈川を渡る。左に会津根右に岩城相馬三春の庄常陸 下野をさかひて山連なる。 影沼といふ所を行くに今日は空曇りて物影映らず。須賀川の駅に等窮と いふ者を尋ねて四、五日とどめらる。まづ白川の関いかに越えつるやと問ふ。長途の苦しみ身心疲 れかつは風景京に魂奪はれ懐旧に腸を断ちてはかばかしう思ひめぐらさず。 <風流の初めや奥の田植歌>むげに越えんもさすがにと語れ。 この宿かたはらに大きなる栗の木陰を頼みて世をいとふ僧あり。橡拾ふ太山もかくやとしづかにお ぼえられてものに書き付けはべる。その詞栗といふ文字は西の木と書きて西方浄土に便ありと行 基菩薩の一生杖にもこの木を用ゐたまふとかや。<世の人の見付けぬ花や軒の栗> 」 そして浅香山から二本松を過ぎて黒塚の岩屋を一見し福島に宿をとったとあります。まさに壮絶な己 との戦いの旅であったと思います。食生活が貧困だったであろう時代にして、現代の豊か過ぎる人々 よりも心身がずっと頑強なのはいかなる所以でしょうか。昔の人の強健な精神と身体に改めて驚かさ れます。 今の時代、何かが狂っているように思えます。戦争も新型肺炎もどこかがおかしい。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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--- 7月といえば山開きや海開き。登山や海水浴の好季節となってきました。因みに海の日(7月21日) は海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日として1995年国民の祝日に制定、96年から施 行されています。休日を大いに活用!といいたいところですが、夏休みが目前といった頃で、いささか ありがたみが薄いようです。まして我が家では、すでに悠々自適、毎日が日曜日の身分なので、平 日に出掛けたほうが観光地も混まないし、宿も安いし・・などと、土日祝日には無縁の生活になってき ています。ところが、良いことばかりなくて、肝心の店が閉まっていたり、バスやロープウェイの運行が 無かったり。イベントなども人出の見込める時に行うようですし・・。よく言われる言葉ですが、やはり 「ふた〜つ良いことない!」のが実感です。 薬にしても、これだけ医学が進歩しているにも拘らず、一つの病気を治す薬が、別の面で身体を痛 めるような弊害があったりするのですから、たわいもない観光や買い物ごときの不都合は、取るに足 りないことです。ともあれ夏本番、どうぞ健康に気をつけながら、想い出多き夏をお過ごし下さい。 -------------------------------------------------------------------(茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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--- 夏本番と思ったのも束の間、暦はすでに晩夏。夏深む、夏の果、夏惜しむ頃。八日の立秋を過ぎると 初秋。しかし多くの人は旧盆で夏休みを実感、まだまだ厳しい暑さが続きますが、ややもして処暑。暑 気止息するという日です。残暑もこの頃の季語です。例年お彼岸頃までは残暑が厳しく、まさに「暑さ 寒さも彼岸まで」の言葉通りです。秋暑しなどとも表現します。一方で朝晩の風にふと涼気を感じて、 新涼、初めて涼しなどといい、夏の「涼し」と区別します。 夜ともなると草むらで虫が鳴き出し、日毎に秋めいてくるのを感じるのもこの頃。夜空に瞬く星に郷 愁を覚え、煌々と光る月にものの哀れを思い・・昼間の暑さを忘れるひとときです。秋の夜長を物思 いに耽りながら過ごすのも悪くありません。 そこそこの年齢になってくると、折に触れて過ぎ去った想い出が鮮やかに蘇り、満天の星のように キラキラと輝くばかりです。いつしか心はタイムスリップ。あたかも若返りの水を飲んだかのように。 二度ない人生は、やり直せない人生。大切に過ごしたいものです。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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--- この夏は、梅雨が長引いたとはいえ比較的気温が低く、蒸し暑くないだけ良かったのですが、植物は 思うように花をつけず、農作物はいかばかりかと心配したものでした。そんな天気がようやく解消され たのは七月も終わりの頃、私の住む町の上に、久しぶりの蒼い大きな夏空が広がりました。近くの神 社で蝉が鳴き出した時「夏だったんだなあ〜」としみじみ思いました。あまりの涼しさに「夏!」を実感 出来てなかったようです。 そして早くも秋。九月は一日の二百十日に始まって、八日=白露、九日=重陽。重陽は菊の節句と もいい、菊を賞でる風習があります。そして十一日が十五夜。空気が澄んで爽やかになり、月や星が とても綺麗です。秋の雲はどことなく哀愁をおび、どこへ行くともなく静かに流れていきます。定めのな い例えに「女心と秋の空」と言われる所以です。天高く馬肥ゆる秋、食欲の秋、気候が良いと何を食 べてもおいしいものです。思いっきり新鮮な果物や秋刀魚などを食べて夏の疲れを癒し、秋の夜長を お過ごし下さい。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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--- さて陰暦三月二十日の日の出とともに船で深川を出た芭蕉は、一ヶ月で那須湯本に辿り着き、五月 八日仙台を立って途中一泊、塩釜から船で松島へ・・。 「そもそもことふりにたれど松島は桑第一の好 風にしておよそ洞庭西湖を恥ぢず。東南より海 を入れて江の中三里、浙江の潮を湛ふ。島々の数を 尽くして欹 つものは天を指さし伏すものは波に匍匐ふ。あるは二重に重なり三重に畳みて左に分か れ右に連なる負へるあり。抱ける児孫愛すがごとし松の緑こまやかに枝葉潮風に吹きたわめて屈曲 おのづから矯めたるがごとし」 そして石巻、一関を経て平泉へ。 「夏草や兵どもが夢の跡」 「五月雨の降り残してや光堂」毛越寺にこれらの句碑が建立されています。 それにしても最近、事件、事故が多い。世の中がおかしいと言われ続けているものの、これほど痛感 したことはありません。文明が発達し、なに不自由ないと思われている人々の生活の陰で、いったい 何が起こっているのでしょうか。何が人々を狂わせているのでしょうか。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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不穏な社会情勢と異常続きの気候に翻弄されているうちに、早くも十一月号をお届けする頃となりま した。お陰様で茨の実は今月で十二年目に入りました。これまで続けてこられたのも、ひとえに関係 の皆様のお陰と深く感謝しております。
十一月は旧暦で霜月。三日=文化の日、八日=立冬、一の酉。そして十五日=七五三、十九日= 一茶忌、二十日=二の酉。初冬という言葉にはただでさえ慌しさを覚えますが、十一月は行事も多 く、ことさら気忙しい月です。二十三日の勤労感謝の日は二十四節気のひとつ小雪に当ります。
東京では、此の頃になると冷たい風に曝された銀杏が金色に染まります。眩いばかりに黄葉した大 銀杏は、やがて冬の到来を告げながらはらはらと散ってゆきます。輝かしくももの哀しいこの光景に は、いつも新鮮な感動を覚えます。
寒くなると体が縮こまって、不調をきたし易くなります。ビタミンなど のサプリメントを上手に摂って、来るべき北風に備えましょう。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |
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平成十五年も早くも暮れようとしています。今年は世の中がなんとなく落ち着きがなく、特別大きな事 件が起きた訳でもないとはいえ、そこそこの事件、事故が絶えなかったように思います。また異常気 象で季節のメリハリがなく、気がついたら「もしかしてもう冬?」と、時の流れの速さに驚かされました。
毎年訪れてくる年末ですが、近年は決まって、遣り残したような、後悔するような思いにかられます。
「せんなきは過ぎし繰り言年詰る」という心境です。
作家の沢木耕太郎さんが亡き父を語るという番組の中で、お父様の俳句を紹介している場面があ りました。
「差し引けば仕合はせ残る年の暮」 五十八 いろいろなことがあったけれど、考えてみたら 一寸だけ仕合わせが残ったかな・・という言葉の中に、かえって作者の寂しさ、哀しさを見たような気 がします。著名な作家の父であり、一度は作家になりたいとも思った人だそうです。さりげなくて静か で、身に沁みる一句です。
まだまだそんな境地には至っていないことを痛感しながら、来る年に願いを託そうと思います。 良いお年を。 ------------------------------------------------------------------- (茨の実会事務局 鈴木紅映) |