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定年後早や10年が過ぎ ラスピーにわが妻の座は完全に奪れてしまった。ラスピーも人間の歳なら
私たちとほぼ同年代とか、云ってみれば我が家は老人3人の家族と言うことである。ところが
ラスピーは 70歳と言われても その顔は 子犬の頃と変らす 幼くあどけなく見え そして
博に対しては 従順そのものである。ほんの短時間出かけて 戻ってくると しっぽをちぎれん
ばかりに振り回し 抱き上げると キスの雨、あれじゃあ 可愛くて仕方がないだろう。50年前の私
でも そこまではサービスしなかった。加えて その従順さ・・・50年近く経つと 可愛かった?
新妻も 歳とともに 知恵がつき いつまでも ラスピー並みにはいかないと言うこと。
ところが 10歳くらいまでは 健康そのものだった彼女も 足腰が弱り その点も私と同じで
散歩も喜んで出かけるが 用を済ませれば じっと立ち止まり 抱っこといって 動かなくなる。散歩
の大半は抱っこになる。 “ラスピー、畑”といえば喜んで付いて行く。 畑仕事の軽ワゴンの助手席は
ラスピーの指定席で 暑い時は 畑の木陰に繋がれ 気候のいいときは 車の中から 博の仕事を
jじっと見守り、行き交う人や車にいちいち吠えて 挨拶を送っている。足腰が悪くなったのと同時に
時々 食欲がなくなり 何度かお医者様のお世話になった。3日も食べないと心配で 顔いろばかり
見ている。お医者様の話では 一週間くらいは水さえ飲んでいれば大丈夫というがそこまで我慢は
出来ない。ダイエットした訳でもないのに 大分痩せてきた、大きな目の周りが 何となく たるんで
来た様に思う、これも人間と同じかな。食欲がなくなり よくもどすのでどこか悪いのではないかと医者
に連れて行き いろいろ人間なみに検査をしたがどこといって特別なことも見つからず吐き気を抑える
注射をした。帰って来たら びっくりするほど元気になり食欲もでた。医者払いも結構 人間様の何倍
も払い 安いものではなかったが この際そんなことは問題ではない、有難いものだとひたすら感謝
した。それから一週間後 また同じ状態に戻った、以前より悪化している、夜も落ち着かず 博も私も
ほとほと、くたびれ果てた。ついに 入院してしまった。また元気で戻ってくる ことを願いながら。
それにしても あの可愛い目は 苦しいであろう最中でも変らない、でも ひたすら 苦しさ、悲しさ
心細さを訴え 救いを求めるその 表情は見るに忍びない、どうにかしてあげたいと思ってもどうしようもない。
                                  2005,11,4記

ラスピーが入院してしまった

八ヶ岳山麓