山の中で出会った 絵描きのおじさんの話
春さきの ある晴れた風の冷たい日でした。飯盛山という山の 登山口まで車 で行きました。
飯盛山は 高原列車の小海線を挟んで八ヶ岳の反対側にあり八ヶ岳の展望台としてよく知られています。どこから眺めても 八ヶ岳の姿は 勇壮なのですが パノラマスクリーンとして ほぼ全体を見渡せる場所は 此処しかないのです。
絵を描くとしても 全部をたった一枚の小さな紙には納めきれるものではありません。その広大な眺めを見ているだけで 何処から手をつけるのかと ため息が出ます。
さて、その日は 早春、 春とは名のみ 寒さは 厳しく真冬なみでした。博はその 登山口から 頂上までのんびり 一人で山歩きを楽しみました。 私も途中まで歩いていったのですが、帰りの下り坂を思うと心配になり、途中から引き返し 駐車場のところで 絵を描こうと 店をひろげたのです。ところが風は冷たいし 春霞に覆われたように 山全体がけむってしまい 思うように絵が描けません。後で知ったことですが 春霞と思ったその 霞まがいのものは なんとはるばる海を越えてやってきた黄砂だったと 知りました。それでも 紙と鉛筆を出し じっと 山とにらめっこ。 ふと気がつくと すぐそばの車の陰で 一人の男の方が 何やら せっせと 片付けものをしているようなのです。近くで駐車場の 整備をしている工事車両とその関係者と思しき方々が見受けられたので そのうちのお一人だろうと思ったのです。
まだ寒いですねと声をかけたのがきっかけで 実はその方は 立派な絵描きさんだとわかりました。もちろんご本人は決して 立派な画家だとはおっしゃいませんでした。私が話しをしているうちにそう思っただけなのです。車の中に何枚かの 書きかけのような 絵もありました。トランクいっぱいの絵の具や その他絵の道具、もろもろが 雑然と入っていました。それを一生懸命整理しているようでした。 次ページへつづく
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飯盛山駐車場より望む八ヶ岳
(その1)


