「お役所物語/日本年金機構」の巻
「お役所仕事」という言葉は『新明解国語辞典 第六版』(三省堂)には
次の様な説明がある。
お役所仕事: 形式や前例にこだわった杓子定規な扱いしかできない上に、
能率の悪い仕事ぶりを指して、皮肉ったり非難したりするのに用いられた。
と、なぜか過去形になっているのが気になるが、今回はそうしたお話です。
私は長年勤めていた会社を退職したので、今までの厚生年金保険から国民
年金保険に切り替えなければならなくなった。念のため手続き方法を確認す
るため、管轄の日本年金機構(旧社会保険庁)に電話で問い合わせをする。
気怠そうな声の女性職員が電話に出る(この気怠さは最後まで続きます)。
職員(気怠い声で)「日本年金機構です」
私(「おっ、やっぱり日本年金機構だ」と思いつつ)「会社を退職しました
ので、国民年金の手続きの確認をしたくお電話をしました」
職員「会社を退職したのですか?それでしたら本人が手続きをする必要は何
もありません。今まで勤務した会社がすべての手続きをしてくれますから」
私「今まで勤めていた会社が全部やってくれるんですか?会社がやるのは、
離職票を発行するところまでじゃあないですか?」
職員「いーえ、会社が全部やってくれます。本人は何もしなくても構いません」
私「本当ですか?会社がそこまでやってくれるんですか。」
職員「はい、決まりでそうなっています。」
私「そんな決まりがあるのですか?国民年金加入申請書とか年金手帳とか離
職票とか、手続きに必要ないろいろな書類が必要でしょう?私は手続きのや
り方を確認したいのですが。」
職員「ですから、先程も言いましたように本人は何もしなくてもいいのです。
こちらには加入申請書などはありません。」
私「えっ!ない?あのですね、これってとても大事な手続きなんですよ。私
が何もしなくてもいいなんてことはないでしょう。日本年金機構のホームペー
ジにも説明がありますよ。確認して下さい。」
職員は「確認をします」と言って、電話は保留状態になる。その間、受話器
からは軽やかな音楽が流れている。3分程経過して、電話が再開する。
職員「確認をしました。用意するものは、国民年金被保険者資格取得申請書
と年金手帳と印鑑、それから本人を証明する . . . 」
私「ちょっと待って下さい、ちょっと待って下さいよ。先程と全然話しが違
うじゃないですか。あなたは何もしなくていいとおっしゃっていたのに、やっ
ぱり手続きが必要じゃあないですか。」
職員「ですから確認をしました。用意するものは、国民年金被保険者 . . . 」
私「ちょっと待ちなさい!私が確認をして下さいと言ったからあなたは確認
したんですよね。いきなり『用意するものは』の前に、普通は何か一言ある
んじゃないですか?」
職員「はあ?」
私「ですから、普通だったら『私が勘違いをしておりました、ご用意いただ
くものは』とかになりませんか?第一、こうしたことは基本中の基本ですよ」
あれっ、私自身が不可思議人状態になっていないか。
職員「それでは、用意するものは、国民年金被保険者資格取得申請書と年金
手帳と印鑑、それから . . . 」と、私の言葉など聴く耳を持たず、手続き
に必要なものをコンピュータの様に説明する。コンピュータと違うのは、あ
くまでも気怠い声であること。
私「それで、確認なんですが、そちらに行って申請書に記入するのですよね」
職員「こちらには申請用紙はございません。市役所に用意してありますので、
市役所に行ってそれをこちらに持って来て下さい。」
私「また訳のわからない事を言って。そちらは日本年金機構でしょう?申請用
紙がないなんてことはあり得ないでしょう。」
職員「確認をします」と言って、電話はまた保留となる。軽やかな音楽、また
3分程経過する。
職員「確認をしました。申請用紙はこちらにあります」
私「ありますとも!ありますよ!あって当たり前じゃないですか!なくてどう
するんですか!」(と、古今亭志ん朝の落語「鰻の幇間(たいこ)」状態)
職員「申請用紙はありますが、手続きは市役所でして下さい。こちらではお受
けしていません。」
私(更に、古今亭志ん朝状態)「あなたね、本当に怒りますよ。そちらは日本
年金機構でしょう。日本年金機構の事務所で年金の手続きができないなんてこ
とはないでしょう!」(と、落語扇子でポンと膝をたたいている感じ))
職員「日本年金機構は、厚生労働省の年金局から業務委託を受けているだけで
すから」
私(更に更に、古今亭志ん朝状態)「私はね、本当に怒りますよ!委託を受け
ているからこそ年金の仕事をしなきゃいけないでしょう。いったい何の仕事な
らするのですか?」(と、更に強く落語扇子でポンと膝をたたいている感じ)
職員の「確認します」という言葉にあきれてしまい、
私「待ちなさい!何を確認するんですか?自分の仕事を今から確認するのです
か?信じられないですよ!大事な手続きなんですから、事情の分かる職員の方
と代わってくれませんか!」
職員は「事情の分かる職員と代わります」と言って、電話は保留になる。軽や
かな音楽、また3分程経過する(3分が好きな事務所である)。
別の女性職員が慌てた様子で電話に出る、
職員「大変失礼をいたしました!お怒りはごもっともでございます!大変申し
訳ございません。申請用紙も用意してございますし、手続きの受付けももちろ
んいたしております。大変ご迷惑をおかけいたしましたので、こちらから必要
書類と説明書をお送りさせていただきます。ご記入の上、こちらにご返送いた
だけますでしょうか。」
私「いやー、ただただ驚いてあきれていますよ。ところで、先程の方は職員の
方なんですか?」
職員「えっ?. . . あのー、そのー、えーー。はい、職員でございます。申し
訳ございません!」
後日、必要書類と説明書が送られて来た。記入する箇所には丁寧にポストイッ
トが貼ってあり大変わかりやすく、必要事項を記入して返送をし、手続きは簡
単に終わった。
封筒には確かに、
「※日本年金機構は、厚生労働省年金局から年金業務について委託を受けてい
ます」と書かれてはいるが、「委託を受けているだけですから」とは書かれて
いなかった。
そうか、最初に電話に出た女性職員にとっては「日本年金機構」とは略称であっ
て、正式名称は、「日本(の)年金(に関しては委託を受けているだけなので、
できれば余計な勉強や仕事はしたくない)機構」なのかもしれない。
それはないでしょう。ねえ、志ん朝師匠?
志ん朝師匠「冗談じゃねえや!あーたね、そんなね、そんな、そんなことが世の
中にあってたまるもんか?あったら、あたしゃ許しませんよ。化けて出てやるから!」
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