小学校にフィジカル・コンピューティングを(其の11)


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2011年1月18日 格安Arduino互換機を自作する実験(1)

予算の乏しい日本の公立学校現場にあって、フィジカル・コンピューティング環境を学習活動に活かそうと思うと、機材の値段が大きな壁になります。こ のことは、オープンソース・ソフトウエアを利用するときとは大きく異なります。オープンソース・ソフトウエアを利用する場合は、既に導入されているPCを 使うことを前提とすれば、ソフトウエア自体が無料で利用できるので、メンテナンスの費用を除けばが新たな費用負担が発生しないのに対して、フィジカル・コ ンピューティング環境を整えるためには、どうしても現物(電子部品やそれに類するもの)が必要になるため、無料で利用するというわけにはいきません。金銭 的に余裕のない学校現場にあって、このことは致命的とも言えます。そのため、できるだけ安価にフィジカル・コンピューティングの学習環境を構築する必要が あるのです。

格安のArduino互換機を作るというの は、こうした学校現場の切実な状況に対して、少しでも子どもたちの学習機会を保証し、よりよい学習環境を構築するために重要なことなのです。その作り方は 何通りか考えられるのですが、比較的簡単にできて、子どもたちの過酷な使用に耐えそうな方法を選び、1,000円前後で作れる格安Arduino互換機を 試作することにしました。

AE-ATmega
ejackino

まず、目をつけたのが秋月電子通商で製造・販売されている「AE-ATmega」というATmega168/328用マイコンボード(I/Oボード)でした。名前にはArduino互換ボードらしさがありませんが、「アーデュイーノ互換マイコン・ボードを作る」に付録されている「ejackino」に酷似していて、一目見ればArduino互換ボードであることがわかります。しかも、価格が安い。そこで今回は、このAE-ATmegaで量産することを念頭に置きながら、手元にあったejackino基板を使って、格安Arduino互換機を作ろうと考えました。

【Metajackino?】

「アーデュイーノ互換マイコン・ボードを作る」に掲載されている通りにejackino を組み立てると、2,000円弱くらいの費用がかかってしまいます。それでも本家Arduinoに比べれば安いと言えますが、目指すのは1,000円前後 ですのでまだまだ倍近いことになります。『マイコン・ボードは裸のマイコンが動くための最小の舞台』とありますが、これをさらに切り詰めたいのです。目標 達成のために「USBシリアル変換IC」の周辺を大きく削ろうと考えました。前回の最後で紹介した「MetaBoard」を応用すれば、USBシリアル変換ICを使わずにUSB接続が可能になるだろうと考えたのです。早速、「ちっちゃいものくらぶ」で、ちびでぃ~のキット(ATmega328PにMetaBoardと同じブートローダが入っている)を購入して実験を進めました。結果、無事に格安Arduino互換機ができ上がりました。これを「Metajackino?(仮称)」とし、既に写真を公開したのですが、その作り方などをここにまとめておきます。

〈使用部品〉

◯ボード部

部品名 必要数 価格(参考) 備考
ejackino基板 1 「アーデュイーノ互換マイコン・ボードを作る」
(定価2,520円)付録
秋月のAE-ATmega(150円)でも可*
10kΩ抵抗(茶黒橙金) 1 1円 100本入100円
1kΩ抵抗(茶黒赤金) 2 1円×2 100本入100円
整流ダイオード(1A以上:10DDA10) 1 31円 1N4007(秋月で20本入り100円)でも可
22pFセラミックコンデンサ 2 5.2円×2 10本入52円
0.1μF積層セラミックコンデンサ 3 10円×3 10本入100円
16MHzクリスタル 1 50円 10個入り500円
タクトスイッチ 1 10〜30円程度 お好みで
スライドスイッチ 1 25円 4個入り100円
三端子レギュレータ(5V1A) 1 25円 4個入り100円
100μF電解コンデンサ(小型) 2 56.7円×2 10個入り567円
発光ダイオード 2 5円程度×2 お好みで
2.1mmDCジャック 1 25円 4個入り100円
2×3ピンヘッダ 1 6円程度 1×40(40円)から切り出して2つ並べた
1×6ピンソケット 2 20円×2  
1×8ピンソケット 2 30円×2  
1×4ピンソケット 1 10円程度 1×20(50円)から切り出した
ATmega328P 1 250円  
28ピンICソケット(スリム) 1 20円 10個入り200円

*AE-ATmegaを利用する場合は、整流ダイオードがブリッジダイオード(@20円/5個入り100円←取り付けに工夫が必要)になります。

◯USBコネクタ部

部品名 必要数 価格(参考) 備考
68Ω抵抗 2 1円×2 100本入100円
1.5kΩ 1 1円 100本入100円
0.1μF積層セラミックコンデンサ 1 10円 10本入100円
3.6Vツェナーダイオード 1 21円 3.5〜3.7V
青色LED(ツェナーダイオード代替) 1 7.5円 20本入150円
1×4L型ピンヘッダ 1 5円程度 1×40(50円)から切り出した
ユニバーサル基板 1 100円 20×24
USBケーブル 1 廃品利用

※USBケーブルは、自宅にあった古いUSB機器の配線を流用しました。コネクタだけなら秋月で50円程度です。

ボードだけなら、1,000円未満で作ることができますし、900円以下で作ることも夢ではありません。USBコネクタについては、ちびでぃ~の的 な発想で作りました。スケッチを流し込んだ後は、電池やACアダプタで動かすことにすれば、数本用意すれば足りるだろうと思います。

〈作り方〉

まず、ejackinoの回路図MetaBoardの回路図USB直結Arduino互換ボードの回路図を見比べて、共通のところはそのままにして、USBシリアル変換に関わる部分だけを変更するように考えました。そして、ボード部とUSBコネクタ部を分けて作ることにして、作業にとりかかりました。

◯ボード部

  1. R3、R4、C2、U1の5番と7番(切り欠きを下に向けて右下から1番と反時計回りに数える)をジャンパーする。
  2. セオリー通り背の低い抵抗や整流ダイオードから順に取りつけていく。
  3. 16MHzセラロックではなく、16MHzクリスタルに22pFのコンデンサを2枚つないで、クリスタルの下に取りつける。そして、積層セラミックコンデンサ(3ヶ所)を取りつける。
  4. 2つ並んだ100μFの電解コンデンサは、シールドに干渉することを避けるため、低いものを選んで取りつける。そして、タクトスイッチを取りつける。
  5. 三端子レギュレータ、スライドスイッチ、LEDを取りつける。
  6. ICソケット、ピンヘッダ、ピンソケット、DCジャックを取りつける。
  7. 表から見て、ejackinoの2番ポートをRXの左側、4番ポートをRSTの左側、7番ポートをTXの左側につながるように、裏面に配線する。
  8. 写真のように、1×4のピンソケットを瞬間接着剤で取りつけ、U1の1番をピンソケットの下から2番目に、U1の2番を下から3番目に配線する。
  9. 同じく写真のように、U1の13番を1×4のピンソケットの上から1番目に配線し、U1の14番をピンソケットの下から1番目に配線する。

◯USBコネクタ部

USBコネクタ(表)
USBコネクタ(裏)
  1. 中央のD-(白)とD+(緑)が68Ω(青灰黒金)の抵抗を通るように取り付けて、D-と5V(赤)の間を、1.5kΩ(茶緑赤金)の抵抗でつなぐように取り付ける。
  2. D+とGND(黒)の間を、D+側にカソードが来るように3.6Vのツェナーダイオードでつなぐように取りつける。
  3. D-とGNDの間を、D-側にアノードが来るように青色LEDでつなぐように取りつける。(@tomonnn1さんに教えていただきました)
  4. 5VとGNDを、0.1μFのコンデンサでつなぐように取りつける。
  5. L型ピンヘッダを取りつける。

※USBのケーブルが細い場合は、ホットボンドなどで補強するとよいでしょう。

【MetaBoardブートローダを書き込んで完成】

ここまでできたら、あとはパソコンにつないでMetaBoardブートローダを書きこむだけです。今回も今までと同じよ うに、Arduino-IDEを使って、MacからAVRISPmkIIを経由してブートローダを書きこんでみました。ejackino基板にはICSP が用意されている(AE-ATmegaも同様)ので、ここにAVRISPmkIIを接続します。(▼を合わせることを忘れずに)同時に電源も別に必要なの で、Metajackino?にアダプターか電池をつなぎます。あとは、Arduino-IDEのメニューからたどって、「w/ AVRISP mkII」を選択するだけです。

本家Arduinoとはピンの使い方が異なる(2番ポート、4番ポートがUSBデータのやり取りに使われていて、7番ポートがGNDにつながってい るが、1番ポートおよび2番ポートはシリアル送受信に使っていない)ため、スケッチを変更したりシールドの配線を変更したりする必要はありますが、そのこ とだけ注意すれば小学校で使う程度のことなら問題なさそうです。また、USBコネクタ部を別に作ってあるので、USBに接続する必要がない状態になった ら、USBコネクタ部をはずして使うこともできます。我ながらよくできたと自画自賛。(USBハブにつなぐと電源が安定しない感じなので、パソコンに直接 つないだほうが良いみたいです)

ついでに、Diavolino(10枚$36)でもできるかどうか、思考実験してみました。部品数は若干減るのですが、基板の値段がAE-ATmegaの倍以上なので、最終的に100円くらい高くなります。特別な事情がない限り、AE-ATmegaを使ったほうが良いと思います。

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