【51】心脾両虚
心脾両虚 (消化不良や心配事や過労によって脾の造血機能が悪くなる
     /大病や長期慢性病で気血両虚になった)


<心脾両虚により現れる症状>

1うつ気鬱 2チック顔面痙攣 3健忘 4呼吸急促(短気) 5てんかん癲癇 6咽喉異物感 
7動悸 8不眠 9嗜睡 10インポ陽萎 11更年期障害 12癲病(知能障害)


<相談例> ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >骨髄繊維症 漢方の書物には次のような記載があります。 > “心”の異常は顔色にもでてくる。気血旺盛であれば、心血充足し >  て血色がよくつやがあるが、心血不足のときは顔色が青白くつやがなく、心 >  陽不足や心血*お阻になると、顔色は紫色を帯び青黒くなり、(略) > “脾”は血を統 <ス>べる >   統べるとは統括する、制約するという意味である。血は飲食中の精微物質 >  がいろんな作用を経て、転化してできたものである。 >  脾気が旺んなときは血液を包み込んで保護し、血液の正常運行を維持して散 >  溢させず、外に妄行させない。 >   脾の機能の運化が失調すると、血液は妄行して各種出血性の疾患が発生し >  やすくなる。 >   臨床上よく見られる吐血、衄血、血便などは、大部分が脾の統血不能によ >  って引き起こされるものである。これによって「血を治すには先ず脾を治せ」 >  といわれる。現代医学での脾は造血系統の重要な器官であり、血液との関係 >  は極めて密接である。 骨髄繊維症という難病もこの説明にある“心”と“脾”の働きに関係があるように思います。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >再生不良性貧血 体のだるさ・紫斑・動悸・冷え性・シミ 漢方では心は血を主り、脾は血を生じ血を統べると言います。 貧血とは「心血の不足」です。 血液は「脾」が水穀の精微を運化する働きによって生化すると言います。 ところが「脾気虚」になると運化機能が失調し、 脾の生化の源泉が不足し心血不足になります。 また血を統括し、血管から漏れないようにするのも「脾」の働きです。 「脾気虚」になると統血ができず妄行し出血する事になります。 血液の疾患にはこの両方が関連します。 心脾両方が機能不全になるのを「心脾両虚」といいます。 これは「血虚」と「気虚」の両方を兼ねています。 即ち「心血の虚」と「脾気の虚」を合わせた「心脾気血の両虚」と総括できます。 気血両虚になると温煦作用・濡養作用が無くなるため、 手足が冷え、動悸・シミの元となり、肥えられません。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >電車に乗ってもパニックを起こしてしまいそうな気がして途中で >引き返してしまうこともあります。 >朝から動悸が激しく呼吸困難 この「朝から」というのが何よりのヒントで、朝から始まるようなのは漢方では「気虚」に属します。 気虚で動悸がすれば「血虚」も兼ねています。 >胃の辺りが痛い  腹が張る >便秘 >手指がしびれる >足が冷える これは気虚から来る「気滞」の症状です。 >月経量が多過ぎる これは「気不摂血」のための出血です。 >鉄分性貧血と診断されています(通常の17%くらいだそうです) >乾燥肌で全身、粉をふいたような状態です。 これは血虚の結果です。 血虚による動悸というのは血液が不足しているため心臓が思うように働かれない現象なのです。 これは「心血不足」により「心が濡養を得られない」状態です。 心はまた「神明を主宰する」ので心血が不足すれば当然、精神不安が起こります。 この血虚はどこから来たのかというと脾の気虚から来ています。 メール相談例59 再生不良性貧血を参照して下さい。 こういうのを「心脾両虚」と言います。 即ち「心血の虚」と「脾気の虚」を合わせた「心脾気血の両虚」と総括できます。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >高温期が2週間以上続かない >月経量が少い時と多い時がある、月経が遅れたり、早くなったりする、 >月経痛がある、おりもの、不妊症、 体内を流れる経脈の内、子宮から起こる衝脈のことを“血海”と言い、 月経の来潮と密接に関係しています。 この衝脈が空虚になると月経が不定期になります。 漢方では「経行先后無定期」といいます。 何故、血海が空虚になるのかというと、 血脈を主宰する“心”と、血液の元となる飲食物を消化吸収する“脾”の機能が 衰えているからです。 これは「心脾兩虚,気血不足」による衝脈の失盈です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 二十歳頃までは月経が正常であったのだから「腎虚」ということはありません。 それがストレスによって体重の減少と同時に月経閉止になったのですから これは営養不良による「気血虚弱」が原因でしょう。 体重が元へ戻ってもまだ気血の回復は足りないのです。 漢方の書物には「労心によって心火が上行し、月事が来ないのは胞脉が閉じるからである。 何故なら胞脉というのは子宮にあるとはいえ、心経に属しているので、気が上の方へ ばかり行っていると下がお留守になるのである。」と書かれています。 >尿が濃い これはまだ心労による「心熱」があることを意味しています。 心を安んじ血を和し、火を瀉せば経は自ずとめぐるようになります。 >体重は多くないのですが、皮下脂肪が多いです。 >瞼がむくむ(時々) >腹が張る >下痢(おなかを冷やすと)  尿が濃い >むくみがある(時々) これらは脾胃の虚です。 併せて「心脾両虚」の証です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >だるい(無気力になって外出しなくなる)気がふさぐ(話しをしなくなる)不眠 精神が不安定になるのは何故か? 漢方の古典、《霊枢・本神》篇には 「愁憂(うれい)とは,気が閉塞して巡らなくなった状態である」とあります。 また《普済方》には「多く思えば気が結ぼれる」とあります。 どちらも気の巡りが悪くなると精神不安になるという訳です。 ではその気はどこから来るのでしょうか? >食欲が無い  下痢 《雑病源流犀燭》には「思い沈むのは,脾と心が病むからである」とあります。 脾胃は「後天の本」、消化を司り、全身を栄養する生長発育の根本です。 《黄帝内経》には「脾気が虚せば四肢はだるく,五臓は不安になる」とあります。 すなわち気の源は脾にあります。 神明を主る心は大脳の機能のことですが、この神明が脾気によって栄養されているので、 脾気の虚は「心脾両虚」として現われる事が多いのです。 気が結ぼれて巡らなくならないように、脾気を活発に維持する事がもっとも肝要です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >過食気味です。 過食になる直接の原因は対人関係など色々ありましょうが、過食によって引き起こされた 肉体的な変化からのフィードバックについては、身体の問題として緩解する方法があります。 >最近また生理が来ません。 >浮腫み これらは気血虚弱による一時的な経閉で、多くは脾虚による営養不良障害です。 《蘭室秘藏・婦人門》には次のように書かれています。 “婦人脾胃久虚,或形羸気血倶衰,而致経水断絶不行。或病中消胃熱,善食漸痩,津液不生。 夫経者血脉津液所化,津液既絶,為熱所灼,肌肉消痩,時見渇燥,血海枯竭,病名曰血枯経絶。 宜瀉胃之燥熱,補益気血,経自行矣。 ……或因労心,心火上行,月事不来,安心和血、瀉火,経自行矣。” (もともと脾胃の虚弱な婦人が痩せてくると気血が両方ともに衰えるので月経が止まります。 もう一つは「中消」という胃熱の病になると食べても食べてもどんどん痩せていき、津液が 生じてきません。 月経というのは血脉と津液で起きるものなのに、津液が熱により灼かれ肌肉も消痩し、口の 渇きさへ起こるのは血海<子宮より起こる衝脉・任脉>の枯竭で、血枯経絶の病名がついています。 胃の燥熱を去り、気血を補益すれば月経は自ずから来ます。 ……或は気疲れでいらいらしていると月経が止まります。 安心・和血・瀉火の方法をとれば月経は自ずから来ます。) >舌苔が厚い  口が臭い  口が乾く >尿が濁る  尿が濃い >足の裏がほてる >かゆい  湿疹  にきび あなたの場合は脾胃虚弱・胃熱・労心と三拍子とも揃っています。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >動悸がし息が苦しくなった。 >その後、毎日、呼吸のリズムが気になり、息がしづらくなっている。 >足が冷える むくみがある >月経量が少い 漢方では「心は君主の官、血脉をつかさどり又神明をつかさどる」といいます。 神明とは精神状態が正常であることを指します。 なんらかの原因で心気が損なわれると陽気も血流も共に影響を受けます。 いわゆる「血の気が引く」状態になります。 軽い血流障害は「気虚血淤」となり、胸部弊悶(息がしにくい)の症状が起こります。 神明にかかわる病気はくすりだけではなかなか治りません。 カウンセリングなど信頼できる方の助言は絶対に必要です。 >食欲が無い 心気虚損の状態が続くとやがて脾胃の気も虚してきて「心脾両虚」となります。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >   どれだけ寝ても寝た気がしない。眠りがとても浅い。 >   日中も眠くてしょうがない。 《雑病源流犀燭・不寝多寝源流》には次の様にあります。 「多寝,心脾病也,一由心神昏濁,不能自主,一由心火虚衰,不能生土而健運」 (寝てばかりいるのは心脾が病んでいるからである。ひとつには心神が昏濁していて 自律できない為、もひとつには心火が虚衰しており脾胃の健運が出来ない為である) このように心脾が両方共に虚していると嗜睡の状態になります。 多くは病后の失調や思慮過度、或いは飲食不節、或いは失血により心血が耗傷して 脾気不足となり、そのために心神は栄養を失し、神志恍惚となり眠ることばかりを むさぼってしかも疲れがとれないのです。 > 胃の辺りが痛い  臍の辺りが痛い  脇腹が痛い  腹が張る  腸が鳴る > 食欲が無い これは脾虚の症状です。 本証は心脾気血とも皆虚弱であるのが特徴で現代医学的な貧血の所見とは必ずしも 一致しません。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >うつ病  ひどく気がふさぐようになり >やせている 漢方理論では「心(しん)は神(意識)を藏し、脾は思をつかさどる」といいます。 したがって思慮過度(うつ)になると心脾がともに疲れます。(労傷心脾) 脾が虚すと栄養が取れず「血虚」になり、血が不足すると心を養わないので心火は 燃えず、脾が温まらないので運化作用は更に衰えて太れません。 >物忘れ、動作が遅い >無気力で、びくびくした性格を改善したいです。 >月経が遅れる 月経痛がある 心脾の気血が不足すると神は居場所がなくて健忘症になります。 月経の異常も気力の無いのも同じ原因です。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >特に3〜4年ばかり前からは食欲不振、おいしいと感じたことはなく、 >暑いシーズンなどいやいや食べてる状態です。 >案外消化器系の弱りが諸症状の元にあるのでしょうか。 主訴の他に色々書かれていますが、それよりもこちらの方が余程根本的な重大事です。 これらは「脾胃」の「気虚」です。 漢方では脾胃を単なる消化器に止まらず「後天の本」という大切な役割を持つ臓器と 考えています。(腎を「後天の本」とするのと対をなす) 後天の本は身体の中央にあって(中気)、元気の供給源になっています。 >背中、首の後ろの痛み >胸の痛み(胸骨のなかほどが炎症でも起きてる感じ) 中気(元気)が衰えると「心気虚弱」も起こり、血行が悪くなり胸痛や不整脈になります。 こういう胸痛は程度も軽く隠隠とした痛みにすぎません。 それが心の裏である背中へ響いているのではないでしょうか。 「心は神明をつかさどる」ゆえ、心気虚弱になると神経性の症状も惹き起こされます。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >妻は一昨年に死亡しました >朝起きて食事の用意をするとき……ウツ状態と言うのでしょうか、いらいらして涙が出そうになります。 漢方に「臓躁(ぞうそう)」という病名があります。 これは婦人に多く、“悲傷して哭いてばかり、ものに取りつかれた様子で欠伸が多い”と説明されています。 その原因は精神的なものとし、次のように説明されています。 “五志(喜・怒・憂・思・恐)”は火を生み、その影響は必ず心の臓陰を消耗し乾燥させる。 すなわち喜怒哀楽の感情が高ぶると心陰を乾燥させ、心神が不安定になるのです。 心神の働き(陽)は五臓のうちの心の血液(陰)に宿るものだからです。(陽は陰に舎る) このように五臓の燥が原因なので、対処法としては心陰を養うことで心神の安定をはかる事になります。 処方としては甘麦大棗湯があります。 これは小麦が主成分で甘草と大棗(なつめ)が補佐している簡単なものです。 小麦は肝の穀物であり、肝は心の母なので結果的に心気を養う事になります。 また甘草・大棗は甘潤で陰を生ずるので臓器を潤し、燥(躁)を止める事になります。 三薬は平和な性質で養胃・生津・化血の作用があります。 津水血液が心に達すると臓は燥かず、嘆き悲しんで溜め息をつくことも無くなります。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >倦怠感とむくみ >うつ病 >過食 浮腫みはすべて腎機能に依るものばかりではありません。 漢方では「土が水を制御できず」といいます。 土とは「脾気」のことで脾の機能のひとつに「脾陽」があります。 脾陽不振だと「清陽は上昇せず濁陰は下降せず」となります。 濁陰が排尿になって下降しなければ水腫が起こります。 また「脾気が虚せば四肢は用をなさず、五臓は不安になる《黄帝内経》」とあります。 倦怠感やうつ病にもつながります。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ > パニック発作、少しのことでも緊張しやすく、 > 緊張が長く続くと手がけいれんして、顔が青ざめて、自分が誰だか、わからなくなり > 倒れそうになります。 これは過度の緊張(心火や肝火)が精神を疲労困憊させている状態で、「労傷心脾(鬱傷心神)」にまで進んでいます。 > 不眠とにかく夢が多くよく夢精がある 心火や肝火などの大きな火(壮火)はどんどん気を消耗するので遂には「気不摂精」となり、遺精が起こります。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ >舌の色は淡い 歯の跡が周辺にくっきりついている >極端に暑さに弱い体質。 >声がかすれる これだけで「気虚」と診断されます。 >とにかく集中できない。常に、ぼうっとしている感じです。 >本を読んでも頭にまったく入らない。聞いた数字などが、覚えていられない。 気虚のため清気が脳まで上がらないからです。 >不安感、焦燥感があり、最近はよくなりましたが溜息が止まらなかった。 労傷過度により気虚となったので気の大元である肺の“宗気”が閉じ込められ、 それを跳ね返そうとして太息“嘆息”が出ます。 閉じ込められた気は鬱滞して、放っておけば鬱病になります。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ > まだ授乳も続いているので、 > 今の症状ですが、手足は冷えて、便秘です。(1週間に1回位) > 日中も就寝時にも、不安感と動悸がします。 > それに不安感がキツイ時には、寝汗がひどいです。 産後の回復が遅れて、気血両虚の状態が続いています。 舌の状態や疲れやすいのは気虚です。 気虚は主に脾胃の臓腑や経絡で起こります。 手足の冷えと便秘は血虚です。 動悸・不安感・寝汗は血虚が主に心経絡で起こっている事を意味しています。 したがって気血両虚と心脾両虚とはほぼ同じような意味になります。