上手になるつもりです

問題 「日本語の先生になるつもりです」とは言えるのに
「*日本語が上手になるつもりです」と言えないのはなぜか。

第一段階 一般に他動詞文では「〜たい、〜つもりだ」という文ができる。
他動詞文
 部屋をきれいにする。
−タイ部屋をきれいにしたい。
−ツモリ部屋をきれいにするつもりだ。
しかし、自動詞文ではできない。
自動詞文
  部屋がきれいになる。
−タイ*部屋がきれいになりたい。
−ツモリ*部屋がきれいになるつもりだ。

第二段階
自動詞文でも、意志表現の場合は 「〜たい、〜つもりだ」と言うことができる。
先生になる。
先生になりたい。
先生になるつもりだ。
無意志表現の場合は次のようになる。 「日本語が上手になる」は無意志の表現である。
 日本語が上手になりたい。
*日本語が上手になるつもりだ。
前者は言えるが、後者は言えない。 つまり、「〜たい」の言える範囲と、 「〜つもりだ」の言える範囲が異なるわけだ。
「大儲けする」ではどうか。
大儲けしたい。
大儲けするつもりだ。
前者は問題なく言え、 後者は<強気の意志>の表現となる。 「大儲けする」自身は 意志/無意志 両者の可能性がある。

第三段階
「〜たい」の言える範囲と 「〜つもりだ」の言える範囲を調べてみよう。
 〜たいつもりだ
1他動詞・意志動詞 大学に入れたい。 大学に入れるつもりだ。
2他動詞・無意志動詞*財布を落としたい。*財布を落とすつもりだ。
3自動詞・意志動詞 大学に入りたい。大学に入るつもりだ。
4自動詞・無意志動詞 大学に受かりたい。?大学に受かるつもりだ。
5受身形 みんなに認められたい。?みんなに認められるつもりだ。
6可能形*読めたい。?読めるつもりだ。
5受身形も、6可能形も自動詞・ 無意志動詞の一種である。こうすると、他動詞・自動詞の 別よりも意志・無意志の別の方が重要であることが分かる。
「〜つもりだ」の4、5、6に<意志>とは違うという意味で ?を付けたが、一応 次のように考えておく。 4は言えない文。5<強気の意志>。6<錯誤>。

問題の解答  「*日本語が上手になるつもりです」と言えないのは 「日本語が上手になる」が無意志表現だから。

あとがき

「財布を(うっかり)落とす」と言う場合の 「落とす」をどう考えたらよいか。これには、2通りの考え方がある。
1つは「落とす」に意志動詞の場合と 無意志動詞の場合とがある、とする考え方である。
もう1つは「落とす」自体は意志動詞であるが、 ある条件の下で無意志表現をなす、とする考え方である。 「財布を(うっかり)落とす」という場合がその場合である。
私は、一般に、後者のように、 動詞には○○動詞という固定したラベルを付けておいて、 ある条件の下でその働きが変わる、と考えるのが適当と思う。 意志動詞が無意志表現をなす条件とは、 例えば、「うっかり」というような副詞とともに 用いられるということがその一つだが、 他にもいろいろな場合があろうかと思われる。 それは、今後の課題である。
第三段階の2では「落とす」を無意志動詞 としておいたが、より適切なのは無意志表現である。 無意志表現とは、意志動詞が無意志動詞と同様の働きをする ということで、上の問題の結論としては問題ないと思う。

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