「やがる」文体について(2)

吉川 武時  2003.3.26

「やがる」文体について、先に「~やがって」の形で「嫉妬」を表す、と述べた。
 あいつ、新しい車 買いやがって。
しかし、テの形でなくても「嫉妬」を表現することがある。
 あいつ、また海外旅行に行きやがる。
さらに、テの形でも「嫉妬」を表さないこともある。
 あいつ、変なことを しやがって。
この文体の意味と形についてもう一度 考えてみよう。

「~やがって」について


「~やがって」は文末に用いられることがあるが、終止形ではない。あくまでもテの形である。「~やがって 困る」とか何かが省略されていると考えられる。次に何かが続くことを暗示して、不愉快な気持ちを少しやわらげる効果をもたらす。
「~やがる」は現在形、「~やがった」は過去形である。では、「~やがって」の表す意味はどうか。一般に、
  • 動作動詞
    • 現在形は 現在・未来を表す。A君、遅刻しやがる。
    • 過去形は 過去を表す。   A君、遅刻しやがった。
  • 状態動詞
    • 現在形は 現在を表す。 B君、そこに居やがる。
    • 過去形は 過去を表す。 B君、そこに居やがった。
動作動詞のテの形は過去を表すと言える。
 A君、遅刻しやがって。
この例では、話し手はA君が遅刻したことについて不満をもらしている。しかし、状態動詞のテの形は過去を表すのか、 現在を表すのか、微妙である。
 B君、そこに居やがって。
この例では、話し手は、B君がそこに居ることを確認し、そのことについて少なからぬ不満の意を表している。B君がもうそこに居ないのか、今も居るのか、どちらの場合もあり得る。

「~やがる」の意味


「~やがる」は話し手の不愉快な気持ち[不快感]を表す、と一言でまとめることができる。人が主語の場合(これが多い)、その主語で表される人に対する不満などの不愉快な気持ちを表す。逆に、あることがらに対して不愉快さを感じたとき、この文体で書き表したくなるのである。
この文体の使用状況[意味・用法]をもう少し細かく見ていこう。ある場合は、不快感をもたらす原因などから分類できる。
  1. 非難 A君、よく休みやがる。 T君、よく遅刻しやがる。
  2. 嫉妬 彼女、彼について行きやがる。
  3. 見解が異なる場合
     ○○という人、英語には敬語がないだなんて言っていやがる。
  4. 予期に反した場合
    • 9時30分になったので「では始めてください」と言うと、Yさん「まだ2分ある」と言いやがる。 (予想しなかった返事)
    • ○○○さん、先日 話したことをすっかり忘れていやがる。
       (当然覚えていると思ったのに)
    • その話、Hさん、もう知っていやがる。Mさんが知らせたらしい。
       (予期に反して)
  5. 話し手にとって不利益となる場合
    • そのカード会社、年利 13%で 35円も請求しやがる。
    • 遠い教室を当てやがる。(教務委員会)
    • 次の電車まで 20分も待たせやがる。(時刻表に対する不満)
  6. 話し手が軽蔑されたと感じる場合
     きのう忘れた袋について聞くと「誰のだろうって」などとつれない返事。おまけに笑いやがる。

人が主語でない場合は、事態に対する話し手の不愉快な気持ちを表す。
 そのソフトはよく「不正な処理……」と出やがる。
これは「予期に反して」ではない。むしろ予期されることだ。そのメッセージが出ることに憤慨しているのである。

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