姫君にお仕置き(4)
「そろそろいいでしょう」ファーナ姫が言い、腰を上げた。
フィズは慌てて立ち上がると、ファーナ姫の先に立って控え室を出、国王が鎮座している祭壇の方へと向かった。
もう、触手同士が淫欲をむさぼる、あのグチュグチュという、いやらしい音は聞こえてこない。青緑色の幻想的な光の中に浮かんでいる、巨大な触手生命体は、どうやら動きを止めたようだった。
フィズは震える足を無理に動かして、床に横たわっているリルン姫に近づいた。
怖い。
この恐怖は、王女や夫人たちに付けられたメイドでなければ分からない。王に愛された娘は、まず間違いなく失神する。その主人を介抱するために、そばに近づかなければならないが、もし王がまだ欲情の中にあれば、そのメイドも見境なく陵辱してしまう。
リルン姫のかたわらまで来たフィズは、気が遠くなりそうになるのを感じた。別段、いつもと違ったところがあるわけではない。が、そのいつもと同じ光景が、彼女にとっては十分悪い。
意識を失ったリルン姫が、ぐったりと床に投げ出されている。
全裸に近い。わずかに身につけている物と言えば靴下のみ。他の衣類は、そのあたりに無造作に散らばっていた。
その、あらわになった、あどけない肢体に、白濁した液体がべっとりと付着している。美しい金髪から、足の先まで、精液に冒されていない場所はない。
リルン姫の体だけでなく、精液は床の上にも撒き散らされていた。気を付けて歩かないと、足を取られる。あたりにはその精液が発する、ムッとするような甘ったるい匂いが充満し、意識していないと頭が朦朧としてくる。
フィズは嗚咽を堪えた。
精液にまみれた幼い少女の姿は、無惨としか言いようがない。痛々しすぎて直視するのが恐ろしい。フィズにとって、ここは、常軌を逸した凄まじい陵辱の、犯行現場以外の何物でもないのだ。
それでもフィズは、メイドの責務を果たした。濡れたタオルで、主人の体を清める。
リルン姫の意識が戻ってくると、フィズはその耳元にささやきかけた。
「姫様、お立ちになれますか」
リルン姫はうなずきもせず、「うん」とも言わず、ただふらりと立ち上がった。
尋常の状態ではない。
見ている方が空恐ろしくなるほどの虚ろな表情。まるで魂をどこかに置き忘れたかのようだった。事実、今フィズが何を言ったとしても、リルン姫は何も記憶していないだろう。国王に犯された者は、誰でもこうなるのだ。
フィズはリルン姫に、手早く着替えのドレスを着せると、
「姫様、お部屋に戻りますよ」
と、その小さな手を引いて歩き出した。リルン姫は、まるで引きずられるようにして、フィズの後に付いてくる。フィズの作業を見守っていたファーナ姫が一行に加わった。
フィズは改めて、これからリルン姫に訪れるであろう苦難のことを思った。できるものならば、こんな事はしたくない。ファーナ姫が、
「やはりやめましょう」
というのを期待しているかのように、時々かたわらを歩くファーナ姫に目をやる。
そのフィズの心底を察したのか、ファーナ姫が冷たく言った。
「フィズリリーナ、分かっていますね」
フィズは観念したようにうつむいた。
ファーナ姫が用意した恐ろしい試練を耐え抜かない限り、リルン姫はもう自分の部屋へ戻ることはできないのだ。
一行は宮殿へ戻った。が、どの部屋にも立ち寄らず、廊下の端にある角を曲がった。突き当たりは行き止まり。その手前に、ひっそりとドアが一つだけあった。
ギィ…とドアが開く。部屋ではない。暗い石の階段が、地下へと続いている。地下牢への出入り口なのだ。
暗い。壁に掛かっている蝋燭だけが唯一の明かりだ。
ようやく下まで降りると、さらにドアがある。牢番たちの詰め所で、ここを抜けなければ地下牢と地上を行き来することはできない。
二人の牢番が一行を出迎えた。
フィズはその異様な格好に、喉元まで出かかった悲鳴を堪えた。
二人とも背が高い。美しい女性らしく思われたが、目の周囲を蝶の形をした仮面で覆っているため、本当のところは分からない。
仮面もさることながら、その服装も異様だった。何かの革とおぼしき黒光りする服が、見事なプロポーションにぴったりと張り付いている。隠れているのは乳房から下腹部までの、最低限の部分だけで、下着と大差ない。
それだけならば、フィズも悲鳴を上げかけたりはしなかっただろう。彼女の視線を吸い寄せたのは、股間を覆っている黒革から突き出した、作り物の男根だった。黒くてらてらと光っており、いつでも犠牲者を突き刺せるように身構えているように見える。
囚人を威嚇するためなのだろうか。そういえば、彼女たちの腰には、より実際的な道具として、鞭の束がぶら下げられていた。
牢番たちは、ファーナ姫の前に、うやうやしくひざまずいた。囚人たちにとっては冷酷な支配者である彼女たちも、ファーナ姫の前では忠実な犬に過ぎないのだ。
一行は前後を牢番に守られるようにして、奥へと進んでいった。やがて、牢番が一室の前で立ち止まり、鍵を上げた。中に入る。
フィズは息を飲んだ。そこは、性的な虐待を加えるための拷問部屋だった。鉄のベッド、三角木馬、ロープの垂れた滑車、いくつもの大がかりな拘束器具。壁にはありとあらゆる性具が並べられている。話には聞かされていたが、実際に目にするそこは、陰惨極まりない雰囲気を醸し出していた。
フィズが呆然としている間に、牢番たちが動いていた。いまだ朦朧としているリルン姫を着替えさせている。
フィズはその光景を、ファーナ姫の陰に隠れるようにして、震えながら見つめていた。
普通の衣服ではない。牢番たちが着ている革服によく似ている。ただ、牢番たちの服が、必要最小限の場所しか隠していないのに対して、リルン姫に着せられたそれは、ほとんど全身を覆っていた。首筋から足のつま先まで、そして両手の指先まで、完全にぴったりとした黒革で覆われてしまっている。
異様なのは、最低限隠すべき場所が、その部分だけぽっかりと露出してしまっていることだった。両胸には二つの穴があり、ふくらみかけた乳房がさらされている。そして、三角形に切り取られた股間には、あどけない割れ目が剥き出しになっていた。
牢番たちはリルン姫に首輪をつけ、さらに両手には腕輪をつけた。それぞれの輪には金具が付いており、鎖やロープを繋いで拘束することができる。
その両手を背中に回し、鎖で繋ごうとしたとき、リルン姫の意識がようやく戻った。
「いやあああああ!」
リルン姫の悲鳴は、拷問室に華々しく反響した。
次の瞬間、リルン姫は牢番たちの手をふりほどいて部屋の外へと逃げ出していた。
リルン姫は得体の知れない恐怖に駆られて、暗い廊下を走った。なぜ逃げなければならないのか分からなかったが、あの場所にいれば酷い目に遭うという確信があった。走っているうちに、どうやらここが地下牢らしいということが分かってきた。全身が総毛立った。小さな頃から、悪いことをした者は、地下牢に入れられ、死ぬまで拷問されるのだと聞かされていたのだ。
廊下が終わる。突き当たりのドアを開けて、リルン姫は立ち竦んだ。さらに下へと降りる階段。間違った方向へ来てしまったのか。が、後ろから、カツカツと足音が近づいてくる。彼女はやむなく階段を降りていった。
下の階はさらに暗い。右手に鍵のかかっていないドア。中に飛び込んでドアを閉める。中は完全な暗闇だ。震えながら願う。
(お願い、来ないで)
カツ、カツ、カツ、カツ…
足音が降りてくる。そのまま、通り過ぎてくれれば…
リルン姫の願いもむなしく、足音はドアの前で止まった。
「リルン、そこにいるのですか」
姉の声。一瞬ほっとしそうになる。が、彼女をここに連れてきた者の中に、姉もいたのだ。
ドアが押し開けられる。押し返そうとしても力ではかなわない。
「いやっ、来ないで、お姉さま!」
リルン姫は奥の方へ逃げようとして、すぐに木箱か何かのような物にぶつかった。それを背にドアの方を振り返る。廊下の薄暗い明かりに、紛れもない姉のシルエットが浮かび上がっていた。
「リルン、おとなしく来るのです。あなたの為なのですよ」
リルン姫はかぶりを振った。
「いや、リルンはいきたくない」
いいつつ、リルン姫は手探りで横に移動していた。木箱の列が途切れた。
「いうことを聞きなさい。さあ」
ファーナ姫が手をつかもうとしたとき、リルン姫は身を翻して、木箱の列の間の通路に飛び込んだ。真っ暗闇の中、向こう側にかすかな光が明かりが見える。反対側の通路の明かりが、ドアの隙間から漏れてくるのに違いない。
リルン姫はドアに飛びつき、手探りで取っ手を引っ張った。開かない。逆に押してみる。開かない。
絶望に駆られながら、リルン姫は乱暴に取っ手を揺さぶった。恐怖のために、脚がガクガクと震えているが、それにも気づかない。
足元にぬるりとした感触が走った。リルン姫にはそれが何だかすぐに分かった。姉の触手だ。
「開けて! 誰か開けて!」
必死に叫ぶが、むろん助けは来ない。
触手は全身にまとわりつき始めた。その力は強い。非力なリルン姫を縛り上げて引きずっていくことなど造作もない。が、ファーナ姫にはそのつもりはないようだった。リルン姫の逃亡の努力を放置したまま、ゆるゆると、やさしく全身を這っていく。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
リルン姫の呼吸が苦しげな物になっていく。
剥き出しの胸に触手が這い、桜色の乳首が勃起し始める。あらわな股間にも、触手が群がっていた。クリトリスに粘液が塗りつけられ、何本もの触手がゆっくりと体内に侵入してくる。
「開けて! 誰か助けて! 助けて!」
リルン姫は絶叫した。
恐怖と快楽のため、膝の力が抜ける。もう立っていられない。取っ手にしがみついたまま、ずるずると膝をつく。
それでもリルン姫は、なおも取っ手を揺さぶり続ける。
「開けて…お願い…」
涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。
そのとき、背後からファーナ姫の冷たい声がいった。
「リルン、おとなしく私のいうことを聞くのです」
「いや、いやあ」
「あなたは私の肉奴隷です。忘れたのですか」
リルン姫はハッとした。それは単純な事実だった。自分は姉の玩具であり肉奴隷なのだ。物心付いたときから、姉に命じられるがままに体を開き、嬉々として従ってきたのだ。
リルン姫は自分の抵抗心が、急速に萎えていくのを感じた。姉に逆らうなど、あってはならないことなのだ。
姉が自分を地下牢に閉じこめて拷問したいというのならば、それに従わなければならない。そう思うと、リルン姫の膣はキュッと締まり、大量の愛液を分泌した。
今や触手は、子宮の内部にまで入り込んで蠢いていた。
取っ手にしがみつき、膝をついたまま、無意識のうちにお尻を突き出している。
「ああ、ああ、あう、いやあ」
声に甘ったるい響きが混ざり始めた。触手の動きに合わせて、腰が蠢き始める。
手の力が抜ける。指が取っ手を離れ、ドアの表面をむなしくひっかこうとする。リルン姫の体はずるずると床に沈んでいった。
もうリルン姫の瞳には、恐怖の色は浮かんではいなかった。そこにあるのは、すべてをあきらめた、うつろな瞳だった。絶望、そして無力感。姉が望むのなら、これは仕方のないことなのだ。このような暗くじめついた地下の倉庫でぼろ布のように犯されるのも、鎖でつながれて鞭で打たれるのも、すべて自分の運命なのだ。
「はあ、はあ、はあ、あう、うう」
お腹の中で何本もの触手がのたうっている。股間からはその触手の粘液と、自分の愛液が入り混じった生温かい液体が、じゅぶじゅぶと音を立てて溢れ続けていた。硬くなった乳首が、冷たい石の床に擦れて痛い。が、それさえもしだいに、燃えるような快感へと変わりつつあるようだった。
もう、指一本動かすこともできない。快楽と、恐ろしい無力感が、リルン姫の体からすべての意思と力を奪い去っていた。幼い腰だけが、触手の動きにあわせて、ゆっくりと、淫らに蠢いている。
「さあ、リルン、いいなさい。あなたは私の何ですか?」
ファーナ姫の冷たい声がはるか高みから降ってくる。それはリルン姫にとっては、神の言葉にも等しかった。
リルン姫は涙と涎を溢れさせながら、虚ろな声で言った。
「リルンは…お姉さまの…肉奴隷です」
「では、私のいうとおりにするのです。あなたは地下牢に繋がれ、毎日私とフィズリリーナに愛されるのです」
「はい…リルンは…お姉さまのいうことを…何でもききます…だから…お姉さま…リルンを、ずっとずっと…かわいがってください…」
「リルン、いい子ですね」
ファーナ姫が優しげな声で言うと同時に、触手の動きが激しくなった。
じゅぷっ、じゅぷっ
秘所から愛液が噴き出した。リルン姫の幼い体が、電流でも流されたかのように激しく悶える。
「ああっ、ああっ、いやっ、だめっ、リルン、いっちゃうっ、やっ、やっ、あっ、ああっ、ああっ、ああああああああああっっ」
ファーナ姫は、ぐったりと失神した妹姫を、無表情に見下ろした。「あ、あの、ファーナ様…そこにいらっしゃるのですか」
入り口のほうからフィズの声が聞こえる。怯えたような声。リルン姫の絶叫は、地下牢中に響き渡ったはずだった。
「待っていなさい。すぐに行きます」
ファーナ姫は答えると、そっとリルン姫を抱き上げた。闇の中で妹に口づけする。ただの口づけではない。涙に濡れた頬、口元の涎の跡、床に擦れて赤くなった乳首、そして淫靡な液体にまみれた股間を丹念にねぶっていく。
それがすむと、ファーナ姫は妹の唇を吸い、いとおしそうにつぶやいた。
「リルン…愛しています」