北アメリカのピアノ曲


〈カナダ〉      グレン・グールドが弾いた現代音楽のCD(グールド●現代ピアノ音楽作品集(SONY SRCR8937)があり、そこ
           にカナダの作曲家モラヴェッツ、アンハルト、エテュ、ペントランド、ヴァレンの作品が収録されています。私には
           ちょっと理解出来ない音楽ですが……。


〈アメリカ〉     アメリカのピアノ曲を昔の作品から順に聴いてゆくと、ヨーロッパの作品の模倣から始まって、やがてこの国
           独特の音楽が創られてきた過程がよくわかります。

            18世紀のアメリカのピアノ曲のCDがあります(American Piano Music of the 18th Century (p)William Gran
           Nabore ,Doron Music DRC3001)。ここに収録されている Reinagle、Moller、Hewitt、Brown等の作品は一つひと
           つは良い曲なのですが、まるでハイドンやモーツァルトの焼き直しのようでで独創性は感じられませんでした。
             
            アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)の音楽がピアノ曲になったものを最近聴くことが出来るようになりました。
            Marco Polo社から「The American Indianists」というCDが2巻出ており、そのうち第1巻を聴きました(The
           American Indianists (p)Dario Müller,Marco Polo 8.223715)。また、American Indian Music ((p)Dario Müller,
           Nuova Era 6821)もあります。ここに入っている作品はみな19世紀以降に作曲されたものです。新鮮な発見のあ
           る面白い作品がありましたが、ややインパクトに欠けるように思いました。それはアメリカ先住民の体験してきた
           悲惨な歴史と民族の復権を求める切なる願いがあまり出てこないからではないでしょうか。抑圧者である白人が
           先住民の音楽をものめずらしそうに眺めて作っただけの音楽なら、人を感動させることは出来ません。この分野
           の音楽の今後の発展を期待いたします。先住民自身が作った作品も聴いてみたいものです。

             メイソン William Mason (1829〜1908)は19世紀ロマン派音楽の典型で、アメリカ的性格は希薄ですが、この種
           の音楽の中では最上のものの内の一つだと思います(CD「W.メイソン ピアノ音楽集」、NAXOS 8.559142)。
           
             ゴットシャルク Louis Moreau Gottschalk (1829〜1869)は、初めて出現したアメリカ的性格のピアノ曲といえる
           でしょう。
            マクダウェル Edward MacDowell (1861〜1908)の「森のスケッチ」は親しみやすく、またまぎれもなくアメリカ
           の音楽です。
            スコット・ジョプリン Scott Joplin (1868 〜 1917)はラグタイムを開始しました。
            アイヴス Charles Ives (1874〜1954) の音楽は、時代を先取りしすぎていて私にはよくわかりませんが、「ピア
           ノソナタ第二番」第3楽章の「オルコット家の人々」は、ベートーベンの「運命」の旋律を元に、敬虔なアメリカ人の
           祈りの生活を歌った忘れがたい美しい作品だと思います。
            グリフィス Charles T. Griffes (1884 〜1920) の作品は印象派的ということですが、私には理解出来ませんでし
           た。
             ピストン Walter Piston (1894〜1976)の「ピアノ・ソナタ」(1926)は、「循環形式を用いた19世紀型音楽」との解
           説がついていました。私には数学的な面白さが感じられました。
             黒人作曲家スティル William Grant Still (1895〜1978)のピアノ曲はフランス印象派のような響きの底にジャズ
           などの黒人音楽的要素が流れているようです(CD:スティル●ピアノ曲集 NAXOS 8.559210)。
            もっともアメリカ的と言うなら、コープランド Aaron Copland (1900〜1990)の作品をおすすめします。「ロデオ」
           はまるで西部劇から出てきたような作品で、アメリカが新大陸と呼ばれていた時代のフロンティア・スピリットの息
           吹を伝えています。
          
            この後の世代では保守派の雄といわれるバーバー Samuel Barber (1910〜1981)がいます。「ピアノソナタ 変
          ロ長調」作品26はホロヴィッツが初演して有名になりました。ポリフォニックな手法と和声的工夫がみごとに釣りあ
          った作品です。これ以外のバーバーの作品は小市民的な感じもします。
            20世紀を代表する作曲家といわれるケージ John Cage (1912〜1992)の「ソナタ1〜13」を何の予備知識もなし
          に聞いてみましたが、何だかインドかインドネシアかアフリカの民族音楽のような感じがしました。
           その他、バーンスタインの「ウェストサイト・ストーリー」等。

    幻のピアニストとして一時騒がれたアルヴィン・ニレジハージ Ervin Nyiregyhazi (1903〜
   1987)のことを覚えておられる方はいらっしゃいますか。
    名声をすて、永らくスラム街で暮らした、ハンガリー生まれのこの孤高の芸術家は、1980
   年と81年、日本に招かれ、演奏会を開いています。彼の死後、その作曲した全作品の楽譜
   が遺族によって高崎芸術短期大学に寄贈されました。現在、同大学内の日本ニレジハージ
   協会により校訂が進められているそうです。またその楽譜によって作品が演奏されています。
   ニレジハージは消え去りはしませんでした。彼の音楽、後世に残したそのメッセージが再び
   多くの人々の魂のかてとなって甦ることを願っています。
    amazonで検索すると、輸入版CDの情報があって、彼がピアノ用に編曲したオペラ曲を入
   手出来ますが、オリジナルの作品を録音したものはないようです。2010年、彼の人生を書い
   た本、「失われた天才」(バザーナ著、鈴木圭介訳、春秋社、5040円)が出ました。


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