NHK特集『除雪大作戦〜青森市5日間7億円の闘い〜』 制作:NHK青森 放映日:1986年2月16日(2005年2月6日,『NHKアーカイブス』にて再放送)
小学生の頃、秋田県湯沢市、青森県黒石市と移り住んだ。湯沢市に移り住む直前まで住んでいたのは、沖縄県浦添市。雪の降らない街から豪雪地帯へ。その時、なにを感じていたのか忘れてしまったが、いま思えば狭いといわれる日本は広い。北から南まで、もたらす自然は全く違う。
初めて雪かきを体験したその日、口から血を垂らした。 雪かきのショベルをグッサリと雪に突き刺そうとしたら、積もりに積もった雪は思いのほか硬く、思ったより刺さらない。力あまって体がのめり、ショベルの柄に歯がガチン。 真っ白な雪にポタポタと赤い血が模様を描いた。
子供にとって雪は冒険だった。 かまくらを作った。住む家から見える学校も、夏は田んぼが遮ってくねくねと道を辿ってあちらこちらを通るが、冬は田に積もった雪をかいて一直線に通学路を作った。 数日置きに除雪車が家の前に来た。除雪車を運転するおやじさんは、気を利かしてこんもりと山をこさえて帰っていく。子供らはそこでソリ遊びやミニスキーに興じる。 テレビゲームなんぞなかった25年ほど前、自然が子供にとっては何よりの遊び道具だった。
今朝の東京新聞社会面に『除雪費雪だるま状態』という記事がある。群馬県北部で降り続いている雪のため、沼田市では今年の除雪費を使い切ってしまったとのこと。 青森県青森市の除雪費用は、平成12年度の豪雪の年は29億円。子供にとってのご馳走である雪も、大人にとっては大変な負担だ。
NHK特集『除雪大作戦〜青森市5日間7億円の闘い〜』が制作された1986年、雪による犠牲者の第一号は、小学生。道の両脇に積まれ、歩道を埋め尽くした雪のため、已む無く車道を歩行中、車に轢かれて死んだ。 死んでしまった小学生を偲んで飾られた花束が、雪にすっぽりと埋もれている姿が、雪国の悲しみを印象づけた。
青森市は当時、年に一度、除雪排雪の大作戦を行う。除雪車とは別に、除雪された雪を運ぶために借り出されるダンプ1500台。財政は厳しい。降雪量を見計らって、一度きり一気に行う。 夜の10時から朝の7時。5日間の除雪排雪作業。公道の雪を失くすための作戦だが、この時とばかり皆、家に積まれた雪を道にかく。真っ暗の夜中。除雪車が来るのを待ち構える市民。「雪と闘うには仕方がない」と、雪を放る。
22ヶ所に設けられた排雪場所は、雪が高々と積まれもはや積むことが出来ない。雪を海に投げる。 投げられた雪が、遠くまで広がる青森湾。ぷかりぷかりと浮くその雪の上に、海鳥が停まる。 人間は大変やなぁ〜海鳥はそんなことを思っているのかもしれない。
先日、銀座・松坂屋で開催されている山古志村の写真展を訪れた。四季折々の美しい自然。しかしこの土地が猛威をふるった。 自然は、人間の思いのままにならない。思いのままにならないからといって、人間は自然の中で暮らさないわけにはいかない。 ガスマスクをしながら三宅島に戻る人々。昨年多くの天災で被災し、その土地で頑張る人々。 NHK特集『除雪大作戦〜青森市5日間7億円の闘い〜』を観て、自然と闘い、自然と共存する人々を応援したい気持ちになった。
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