英国便り from 出見世先生


ココでは出見世先生より届いたメールや写真なんかをご紹介しております。


英国便り ビール皇帝の国-ドイツ編U〈9月29日〉

  出見世ゼミの皆さん、お元気ですか。
 今日は、IFSAM、経営学会国際連合の大会で「日本におけるCSR−歴史的展望」と題して、報告を行ないました。「日本におけるCSRへの接近」と題する、比較経営のセッションの一つで、同じセッションには、立教大学の鈴木先生の下で学ばれ、単位互換制度を利用して中村瑞穂先生の大学院の授業を履修していた小堀先生と山中先生の報告もありました。現在、5期生の方の指導をお願いしている水村先生と一緒に中村先生の授業を受けていたとの話も伺いました。「世界は狭い」というのは、本当ですね。会場には、早稲田大学の小林先生、中央大学の高橋先生と一緒に行ったのですが、受付の隣に設けられた経営学関連書籍の特設売り場で、この5月に出版した”Corporate Governance in Japan”を見つけ、思わず買ってしまいました。実は、出版される前に英国に来たため、自分達で書いた本でありながら私自身は完成品を見ていなかったのです。ドイツ語に堪能な高橋先生が店員に私が著者の一人であることを説明してくださったので、いわゆる著者割引が適用され定価の2割引で購入することができました。まさか、ベルリンで自分達の書いた本を買えるなんて思っても見ませんでした。
 さて、報告の方はどうかといえば、国際学会での報告も3回目だけあって今まで一番納得がいくものでした。英文原稿を片時も離すことはできませんでしたが、前日の司会の経験から与えられた報告時間20分を上手に使うことだけを考え、2、3回は参加者に同意を求めるような表現をまじえ、報告を行ないました。今回の報告に当たっては、事前に論文を提出しIFSAMの指名した審査委員による審査を受けているのですが、その内容をパワーポイントでまとめる際に、3分の1程度に絞りました。日本語での学会報告であれば、事前に提出した論文の2倍以上の内容を盛り込んでいるのですが、英語の場合はその反対になりました。理由は、日本におけるCSRの歴史的な展開を説明するので、日本の歴史や社会に関する知識がほとんどない外国の研究者に対して説明することを大前提としたからです。たとえば、明治時代の話として渋沢栄一と岩崎弥太郎、官営富岡製糸工場、足尾鉱毒事件などを取り上げましたが、写真などを交え、聞き手がイメージできるように心がけました。シアトルの国際会議では、企業倫理担当の実務家の方も少なからず参加していたので、ビジュアルに訴えるプレゼンテーションが他にも数多くありましたが、今回は、大学の研究者が大多数を占めたためか、私の参加したセッションに関しては少なくとも私の報告が一番斬新なもののようでした。
 報告後にあった質問やコメントについてですが、まず、司会やコメンテータのスペインの先生方からは、時間に正確で事前の論文のかなり部分を省略していたがとてもわかりやすいパワーポイントの資料を用いての報告であったとの言葉をいただきました。さらに、論文の提出期限が渡英時期と重なっていたため、次のような指摘を受けることを覚悟していたのですが、現在の状況についてより実証的な分析が必要ではないかとのコメントもいただきました。同社大学の長谷川先生からは、社会と企業との関係を示した図について、社会の中心に企業を置くようなものであったので、市民社会の下での企業のあり方を示すように工夫すべきではないかなどの指摘をいただきました。これらのコメントについて、なんとか英語で回答し報告の方も無事終えることができました。報告席から自分の席に戻る際には、「わかりやすい報告でした」と参加者の一人から英語で声をかけていただいたこともとてもうれしいことでした。
 シアトルでの報告が終わってから、ほぼIFSAMでの報告のことに集中していたので、これで所期の目的の一つを達成できたように思います。英語のレッスンでは、改めて英語の難しさ、奥の深さを知り、今回の報告は、事前に提出した論文と個々の英語の表現レベルではかなり異なるものになりました。それは、聞き手の理解を促すということに力点を置いたためです。たとえば、「CSRバブル」のような表現は、「現在のCSRへの関心は、バブル経済がはじけたように消失する」のような表現に改めたのです。「社会からの要請」という表現もいくつかの単語を使い分けました。多くはレッスンでの先生の助言でもありますが、英語のレッスンでありながら、人とのコミュニケーションはいかにあるべきかを再確認しています。
 報告中、予期はしていましたが、上手くいかなったことが一つありました。それは、アニメーションです。経営哲学の授業でも紹介した、透明性の高い企業、ある程度の透明性の企業、ほとんど透明性のない企業を示したスライドで、これからの日本企業は透明性を高める必要があると結論を述べたところで、ほとんど透明性のない企業がスライドから消えるように設定したのですが、報告の時には消えませんでした。それは、パワーポイントのソフトが古いバージョンであったためです。ゼミ生の皆さんが大学の教室で発表する際に同じような光景になってしまったことを何度も見ていたので、私自身は動揺することはありませんでした。確かに、OSも古いバージョンであった明大とは異なり、OSは最新ものでしたがパワーポイントのほうは2世代前のものを使っていたので、他の報告者の中にはかなり動揺していう人もいました。私自身は、半分ユーモアでそうしたアニメーションを用いていたので、参加者の笑いを取れなかったことは残念でしたが、何よりも自分自身で納得のいく報告ができ、ゼミの皆さんにこうして紹介することができることをうれしく思います。