英国便り from 出見世先生
ココでは出見世先生より届いたメールや写真なんかをご紹介しております。
英国便り ビールと皇帝の国-ドイツ編V〈9月30日〉
出見世ゼミの皆さん、お元気ですか。
IFSAM、経営学会国際連合の大会は、28日から30日までの3日間開かれました。今年のIFSAMの大会は、第8回の大会で、記念すべき第1回の大会は、今から16年前に東京で開かれています。そのときの私は、まだ大学院生であり、大会会場で写真係として「一眼レフ」と呼ばれたデジカメに比べるとかなり大きなカメラを首からぶら下げて参加していました。16年後に自分が報告するようになるとは夢にも思っていませんでした。報告のプレゼンテーションは、せいぜいOHPが利用される程度でした。技術革新の速さと、学会ではもう「若手」と呼ばれる立場ではないことを実感しました。今回の大会で、明治大学からは商学部助手の清水先生と経営学研究科の院生の方も報告していますので、その中では私が最年長者です。思い起こすと、私自身がパスポートを取得したのも、当時、勤めていた短期大学での短期留学の仕事のためでした。30歳を過ぎるまで、外国を訪れることはありませんでした。私自身が世界を実感するのが遅かったのではないかと思うことがあるので、ゼミの皆さんには、機会があれば若いときに外国に行くことを勧めている次第です。大会最終日にはCSRのセッションがあり、そこに参加しました。「仕事と家庭との葛藤」、「ドイツ赤十字社におけるバランス・スコア・カードの導入」、「GRI」、「企業の社会関連情報の開示と投資への影響」に関する報告がありました。カナダ、ドイツ、アメリカからの報告でしたので、社会のあり方の違いにより企業に求められるものも異なってくることを実感しました。第一の報告では、「仕事と家庭との葛藤」に対して社会的、制度的な支援が必要であるという趣旨の結論が示されましたが、私自身には具体的なイメージができませんでした。そのため、報告者の方に具体的な事例を示してほしいと求めたところ、葛藤から生じるストレスに対してカウンセリングを行なうなどの例が示されました。カウンセリングや精神科医への認識が米国などとは異なる日本において、将来はともかく現時点においてそうしたことを利用すること自体が葛藤を深めるようにも思えました。「仕事か家庭か」の二者択一ではなく、「仕事も家庭も」両立させるような工夫をすることの方がより困難なことですが、大切なように思います。
そうするためには、社会全体で実質的な労働時間を規制し、家庭にいられる時間を増やすことや、個々の会社が「ファミリーフレンドリー」と呼ばれる施策を採用すること、個人が「平日は仕事、休日は家庭」とメリハリをつけることなどが必要かもしれません。ドイツを含めたヨーロッパ諸国においては、実質的な労働時間規制が行なわれています。また、報告の中には、先行研究、仮説の提示、検証方法の説明、検証結果、今後の研究課題と、模範的な流れで報告しているものもありましたが、形式が整いすぎていて返って研究内容に深みがないことが明らかになり、セッションの参加者から厳しいコメントを浴びせられるものもありました。より大げさな表現で言えば、研究の意義が問われているように思いました。ゼミで卒業論文を作成する際に、いつも言っていることですが、論文を書く本人が面白いと思えることが研究に深みを与えると思います。卒業生の皆さんは、どう思われますか。単に形式を整えて報告をしたり、卒業論文を作成したりすればよいということではないと思うのです。
早稲田大学の小林先生、中央大学の高橋先生、龍谷大学の夏目先生との話の中で、授業の目的が話題になりました。ある先生は、きちんとした文章を書けるようにすることを意識していると発言されました。きちんとした答案を書けるようにすることが大切だという話は、現在の大学での成績評価のあり方からいっても合致しています。ゼミでの卒論はそうした意味で学生生活の集大成でもあるのです。また、ある先生は、留学していたときに日本と同じように授業中発言をしなかったら最低の評価になったと話されました。私自身は、経営学総論や経営哲学を通じて学生の「読んで書けて話せる」力を伸ばしたいと思って授業をしていました。それは、明治大学が他大学に比べてパワーポイントなどの導入が比較的進んでいることと、担当科目が必修科目ではないゆえにできることでもあります。ゼミについても同様です。自分自身の英語との関係を考えてみると、英語の原書を読み、英語で論文を書き、英語で報告できる、そうした能力をより向上させることが現在の課題であるように思います。これまでは、メルボルン、シアトルと英語圏での国際学会への参加でしたが、今回は非英語圏のドイツでの学会であり、私と同じように非英語圏からの参加者も少なくなかったので、英語が聞きやすいようにも思いました。非英語圏の方は、私達がそうであるように、基本的に第2言語として標準的な英語を学習していますので聞き取りやすいようです。あるアメリカからの報告者に対して、ひどい英語を話していたなどということも耳にしましたので、いわゆるネイティブの方がすべてきれいな英語を話すわけではないと考えていた方がよいかもしれません。
ベルリンには、写真のような公園もあり、心身ともリフレッシュすることができました。
