英国便り from 出見世先生
ココでは出見世先生より届いたメールや写真なんかをご紹介しております。
英国便り Vol.11〈10月15日〉
出見世ゼミの皆さん、お元気ですか。
5期生は、私のゼミの中で一番多くの企業を訪問していますが、私も、先日、日本企業の英国法人を訪問しました。個々の机にコンピュータが並んでいる一般的なオフィスですが、日本とは異なるところがいくつかありました。一つは、働いている人の多様性です。性別、人種、国籍、宗教を含めて、本当に様々な人が働いていました。責任者の方に、こうした感想を述べると、多様性について意識したことはないとのことでした。英国は、皆さんが想像する以上に、多様な人々が暮らしています。この社会においては、差別という言葉は、少なくとも公の場面において、とても敏感な反応を招くことになります。こちらの日本人向け情報誌のHPには、ある英国の高校生が授業で英語を十分に話せない学生ばかりのグループで話し合いをするよう指示され、他のグループに変えてほしいと申し出たところ、人種差別的な発言をしたということで逮捕されてしまったとのことです。3時間の拘束後、差別の意図がなかったとされ、釈放されたそうです。
オフィスの違いのもう一つは、上級管理職にはオフィスが与えられていることです。役員が“officer”と呼ばれるのは、“office”を有しているから来ていますが、その通りの光景を目にしました。それと関連して、時間の管理が個々の従業員に任され、その結果について管理職が評価するとのことです。そのため、日本で言うところの昼休みの時間帯でも、オフィスで仕事をしている人が少なからずいました。果物一個程度で簡単に昼食を済ませ、仕事をしている人もいるそうです。帰りの時間についても、全員が終業時間に一斉に帰るということはないようです。朝早く仕事を始めて、3時ごろには帰宅する人もいるとのことでした。いわゆるフレックスタイムが認められているわけですが、こうした職場においてこそ、いわゆる価値共有が求められるのではないでしょうか。実際、この企業では価値共有に向けた取組みが行われています。価値共有、“value sharing”は、企業倫理の導入・浸透において注目されていますが、勤務形態を含め、職場の多様性が増大すると、形式や制度で画一的な管理をすることが難しくなります。制度の柔軟性を高める一方で、価値共有により組織の目標を確認し組織全体の結束を高めることができると思います。
休日には、自ら自動車を運転しストラトフォード・アポン・エイボンに行ってきました。9月に寺島先生に連れて行っていただきましたが、1ヶ月の違いで景色はずいぶん異なっていました。まず、行きの高速道路は、霧が立ち込め、フォグランプをつけての高速走行となりました。周りの自動車も霧に注意との掲示が何度も出されていたこともあり、比較的スピードを出していなかったので、英国ではじめての高速道路での運転でしたが、一度も「ハッ」とすることもなく、ストラトフォード・アポン・エイボンに着きました。ストラトフォード・アポン・エイボンで車から降りると、周りの人の服装が日本で言うところの冬の服装になっていることに気づきました。なぜ、「日本で言うところの」というかといえば、ロンドンの冬は「しばれる」くらいに寒くなるといわれているからです。車から降りた私達家族は、秋の装いでしたので気温の低さを実感しました。そのためでしょうか、9月に来たときには、大勢の人がいたミニゴルフ場などは閉鎖されていました。冬の間、閉鎖されるレジャー施設は少なくないようです。また、芝生の緑は変わっていませんが、木々は紅葉から落葉へと変化しているようでした。
写真にあるように、ストラトフォード・アポン・エイボンには運河があるので、私達は15分ほどで運河内を1周する小船に乗りました。私達が乗ったときには他にお客さんは一人もいませんでした。しかしながら、ストラトフォード・アポン・エイボンは、観光地として知られ、シャークスピアの生家やロイヤル・シャークスピア劇場があり、チューダー朝の家並みが続くところですので、時間の経過とともに大勢の観光客に出くわすことになりました。早目にお昼を食べようと、レストランに入りましたが、見る見るうちに満席になり、席を待つ人の行列ができました。運良く席につけても、給仕の人の数は少なく、なかなか注文に来なかったり、メニューを持ってきてくれなかったりする人もいたようです。
私達が駐車場に帰ると、大型バス用の場所もほぼ満車の状況でした。その中に、制服を着た大勢の日本の高校生の姿がありました。高校生達は、皆きちっと制服を着ていて、引率の先生の姿もありましたので、修学旅行か何かで来ているのだろうと思いました。そこで、こんなことを思い出しました。私が最初に勤めた短大には、新入生のオリエンテーション合宿があり、先生も同行するのですが、制服も名札もバッチもありません。新入生全体の説明会は、高校生と短大生の違いから制服もバッチも与えられないことが説明されます。短大生は、大人として扱われるというのです。新入生は各ゼミに分けられ、先生と2人の上級生が補助学生として対応することになります。オリエンテーションは、箱根で行なわれていましたが、春休みの期間ですので、若者がたくさん来ています。新入生には、同じゼミの人と仲良くなろうと呼びかけ、補助学生に新入生の名前と顔を早く覚えるよう指示を出し、こちらも自分のゼミ生をできるだけ早く覚えるように工夫をしたものです。
確かに学校の制服が学校のアイデンティティーを示していることもあるでしょう。しかし、多様性の観点からはどうでしょうか。私が勤めていた短大は「偏差値よりも個性値」を掲げていた大学に属していたので、学生の服装も髪型も本当に多様で、留学生も少なくありませんでした。新入生オリエンテーションは宿泊を伴う活動でしたので、宗教的な事柄に対して配慮する必要があることも新入生全体に対して教えられていました。どうしたら新入生が上手く短大に馴染むことができるかということも補助学生とよく話し合い、クイズやゲームなど、実際に様々な工夫をしたものです。
ストラトフォード・アポン・エイボンという観光地で、若い頃の自分を思い出すことができました。
