英国便り from 出見世先生
ココでは出見世先生より届いたメールや写真なんかをご紹介しております。
英国便り Vol.15〈1月24日〉
出見世ゼミの皆さん、お元気ですか。5期生の皆さんは、後期試験に取り組まれていることと思います。多くの皆さんにとって、学生生活最後の試験になると思いますので、最善を尽くして欲しいと思います。
先日、1月27日に行なわれるゼミの新年会のためにビデオを撮影し、日本へ送りました。ビデオで、説明できなかった点を補足しておきます。それは、映像が我が家の敷地内に限定されていることです。理由は、実際にビデオを撮影して感じたことですが、いわゆるパブリックな空間では、ビデオの撮影は危険を伴うものだからです。渡英して間もない頃、自宅の最寄り駅の近くで、日本人がビデオを撮影していたところを襲われたことを、息子の小学校からの注意喚起の手紙を通じて知りました。撮影中は、カメラの被写体に集中しているわけですから、誰が通るかわからないところで撮影することは、いつ襲われるかわからないことを意味します。学校の運動会や学芸会の会場であれば、こうしたことを気にする必要はないのでしょうが、生活する上で、危険なところに身を置かないことは基本だと思います。悪意のある人から見ると、駅前や繁華街で熱心にホームビデオを撮影している人は、格好の標的に見えるかもしれません。
さて、英国でも日本からの報道で、2000年や2002年に起きたようなことが繰り返されていることがわかります。現在、進行中の話題ですので、固有名詞は挙げませんが、企業の稚拙な行動、情報開示の重要性への認識不足、日本のメディアの報道のあり方等々、7年前、5年前とほぼ同じだと思います。実際に自分自身が当該企業に対して取材をしているわけではないので、日本のメディアで報道された限られた情報ですが、次のようなことはいえると思います。まず、企業のトップの地位にあるものは、企業にとって最悪の事態を想定すべきです。問題の公表がクリスマス商戦に影響することよりは、問題の公表が遅れることが会社のブランドを失墜させること、さらには、会社の存続を脅かすことを想定することができれば、対応が異なったのではないでしょうか。
報告のあった時点で直ちに公表しないことを選択して正当化されることは、おそらく問題の原因究明と全社的な点検に時間がかかる場合だけだと思います。それでも、一定の期間後に中間報告を含め、事実を公表しなければなりません。ただ、公表に関する方針を明確にできなかったためか、当該企業は、公表するまでの間に十分な調査をしていなかったようです。これは、在庫が発生しないのだから使い切れなかった原材料の処分方法を定めていなかったという説明と似た理屈です。また、当該企業では内部通報制度が形骸化していたと思われます。現場で問題行動を見ていた人たちの中には、「これはおかしい」と思った人がいたはずですが、それが声にはならなかったようです。
このことは、当該企業の経営者が「会社の体質」と言った問題に関わってきます。この企業では、組織の上位の立場にある人が弱い立場の視点を持っておらず、自分より上の立場にある人が気にいるようなことのみをしていたのではないでしょうか。もちろん、上位の立場の人が気に入るようなことをする必要はないというのではありません。そうするのであれば、同じくらい組織の下位にある人、立場の弱い人のことを考慮すべきだというのです。立場の弱い人と言うのは、たとえば、情報を有していない顧客、フランチャイジー、子供、パートタイマーやアルバイトです。そうした人たちに、情報を知らせない、意見を求めない、FAX1枚で説明をする、そうした対応をしていることが報道されています。その一方で、「お上」には社長自ら厳重注意を受けに行っていますね。子供の中には、当該企業の商品が大好きだったのに、食べられなくなって悲しい思いをしている人もいるでしょう。最初の説明では、パートの従業員の判断で行なったとしていたことは、組織の上位にある人たちが弱い立場の人を考慮しない最たる例かもしれません。
英国から、こうした文章を綴っていると少し悲しい気分になります。自分の関わっている専門分野の力の無さを感じるからです。ビデオを撮影した時には、できなかったことを息子の義信は二つできるようになりました。親ができないことをできるようになる子供の成長力のように、企業が成長するのは難しいことなのでしょうか。今日は、講義のような便りになりました。この辺で終わりにしたいと思います。
追伸 ロンドンで初めて雪が降りました。写真は我が家からの雪景色です。
