英国便り from 出見世先生
ココでは出見世先生より届いたメールや写真なんかをご紹介しております。
英国便り Vol.16〈1月29日〉
出見世ゼミの皆さん、お元気ですか。昨日の新年会は、いかがでしたか。こちらでは、息子の誕生会を行なっていました。日本で会が始まる頃、ケーキとプレゼントを買いに行きました。英国で暮らしているものとして、こちらの多くの人がそうであるように、家族一緒に楽しく過ごすことを意識しています。ケーキを食べた後は、息子がプレゼントのレゴ・ブロックを組み立てるのを手伝いました。写真は、完成した姿です。卒業生の皆さんも、やがて自分の家族を持つようになると思いますので、将来的には、ゼミの新年会も家族で楽しめるものにした方がよいのかもしれません。
さて、1月24日の英国便りで取り上げた企業の問題行動の件ですが、皆さんが同社の関係者で、その後の対応をしなければならなくなったとすれば、どのような取り組みをするでしょうか。講義を担当していれば、試験問題の一つにしたいテーマです。一般的には、調査、原因究明、改善策の提示、関係者の処分と続くのでしょうが、皆さんは当該企業の対応を見てどのように思われるでしょうか。一応の調査を行い、パート労働者の判断でその行為が行われたとしてその原因が明らかにされ、創業一族の一員である社長が問題の責任を取る形で辞任しました。しかしながら、事態は未だ収拾されてはいません。どうしてこのようなことになったのでしょうか。それは、従来からの企業体質のまま調査し結果を発表したために、調査が不十分なものとなり、マスコミからずさんな管理体制の事例がさみだれ式に報道されているからです。企業側は、マスコミの取材に応じる形で対応することを余儀なくされています。その結果、予想されることは、場当たり的か総花的な改善策が発表されることです。改善策発表後、新たな問題事例が報道されると、マスコミ、監督官庁から改善策の不十分さをさらに追及され、当該企業に対する悪いイメージが社会に定着することになります。
こうした事態を回避するためには、どのようなことが必要でしょうか。事後の対応の稚拙さが組織存続を困難にするわけですから、関係会社の従業員なども含めた会社の関係者全員が自分達の問題として取り組むことができるかが重要になります。会社の理念、社会的な使命、あるいは存在意義について、関係会社を含め再確認した後で、同業他社や専門機関など第3者を交えて、徹底的な調査を行えるかが、鍵となります。過去の問題行動の存在を確認する度に、その原因を究明し、個別の問題を整理して類似の領域別に再発防止策をまとめます。この手続きに時間がかかるようであれば、中間報告を行い、経過を説明することになります。その後、関係者に対する処分ということになるでしょうか。ただ、失敗学からの立場からよく指摘されることですが、処分を目的とした調査の姿勢をとると、真実が隠されることになります。調査は、処分より再発防止を目的としたものになります。
再発防止には、各種基準を設けてそれらを遵守するだけでなく、「会社の常識」を「社会の非常識」としない方策も必要になります。企業が社会に開かれた存在となるよう、ウェブサイトを質的に向上させ、積極的に工場見学を受け入れるのです。外部との双方向の意思疎通の向上や社会に見せられる工場になることは、消費者や地域社会に安心感を提供するばかりでなく、社会と接触する機会が少ない生産現場等で消費者を意識するモチベーションの向上にもなります。従業員が「もったいない」や「コスト重視」を図ったためにこうした事態になったとの報道がありましたが、関東学院大の小山巌也先生と北海道大学の谷口勇仁先生による集団食中毒事件に関する共同研究においても、従業員の「もったいない」という意識が食中毒事件につながったことが指摘されています。そうした意識は、「悪しき信念」といわれるものです。自己の行為を正当化するために、残った材料がもったいなかったとか、コストを意識したという考えが使われてしまうのです。それを回避させるには、従業員がこうした状況に陥りがちなことを経営者がよく理解し、絶えず会社の関係者に対して自社の存在意義を説き、守るべき理念を共有させることが必要になります。
今回もまた、講義のような話になりました。この辺で終わりにしたいと思います。
