法華経と国常立神

『法華経(妙法蓮華経)』の授学・無学人記品第九に、阿難尊者に釈迦が予言を施す場面が書かれている。阿難は阿難陀(アーナンダ)とも言われ、釈迦の十大弟子の一人である。八万四千人の大衆の目の前で、阿難尊者が未来に、山海慧自在通王如来という仏になることを、釈迦が予言する。

「汝は来世において、当に仏と作ることを得べし。山海慧自在通王如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊と号けん。当に六十二億の諸仏を供養し、法蔵を護持し、然して後に阿耨多羅三貘三菩提を得べし。二十千万億の恒河沙の諸の菩薩等を教化して、阿耨多羅三貘三菩提を成ぜめん。国を常立勝幡と名づけ、その土は清浄にして、瑠璃を地と為し、劫を妙音遍満と名づけ、その仏の寿命は無量千万億の阿僧祇劫ならん」と訳されている。

経文では、阿難尊者が未来に山海慧自在通王如来という仏になる国は、「国名常立勝幡」と書かれている。授学・無学人記品第九は、『法華経』巻第四の五百弟子受記品第八に続く釈迦による弟子に対する未来予言であるが、阿難陀の名は『法華経』を守護する役目の八大龍王の頭目的な存在の、阿難陀龍王とまったく同一であり、『法華経』の阿難尊者に対する釈迦の未来予言は、『法華経』中でも極めて重要な予言であることが想像出来る。

『法華経』を守護する役目の八大龍王は、伊勢神宮の西南にある朝熊山の金剛証寺の近くに祀られていて、弘法大師空海が経塚(経文を埋納した塚)を施して、八大龍王を祀って、伊勢神宮の守護を祈願したと言われ、日本神道の中枢の伊勢神宮にとっても重要な守護神となっている。仏教の『法華経』の守護神が、日本神道の中枢の伊勢神宮の守護神になっているのだ。

これには深い訳がある。『法華経』の釈迦の予言で未来生で阿難尊者が仏となる国の名が、
「国名常立勝幡」と書かれていたが、この名は『日本書紀』の初発に記される「国常立尊」の名を想起させる。『古事記』では、天御中主神から始まって、別天つ神五柱の最後の天常立神に続く、神世七代の始めの神の国常立神であり、豊雲野神とセットの神である。『古事記』の解説によれば、日本の国土の根源神となっている。

国常立神は大本教の艮の金神であり、セットとなっている豊雲野神は坤の金神であり、大本教によれば、日本の国土の艮方角と坤方角に幽閉・封印・隠蔽された神とされている。