場外乱読 さ行

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「Cの福音」  楡 周平

 ――強靭な肉体と冷徹な頭脳の持ち主朝倉恭介は自分を受け入れない社会に牙を剥く。武器は完璧にシステム化されたコカイン密売ルート――
 楡周平のデビュー作。デビュー作でこの完成度の高さは驚きモン。
 各章の頭文字が全部Cで始まるとこが小技効いとるねぇ。
 シリーズ最終作「朝倉恭介」も文庫化されたし、映像化するときは朝倉恭介の役は誰がええやろ。

宝島社文庫

 

「しばわんこの和のこころ」  川瀬良江

 床の間・縁側有りの庭付き純日本家屋に住むしばわんこと相棒のみけにゃんこ。
 七夕とかお月見とかの日本の年中行事から、和室のお作法とかお香の焚き方まで、一般の日本人でも知らんような「和」の暮らしに徹底的にこだわった教養絵本。
 色鉛筆調の絵が優しい感じで、ほのぼの度はかなり高い。
 NHKでアニメ化されて、四角流星は「しばわんこかわいい〜!」言うて毎週ビデオに録画して保存版つくっとうし。気がついたら、♪えんがわでぇ〜 のんびりとぉ〜 てオープニングテーマ歌とう時あるし。
 つい、シリーズ全巻まとめ買いしそうになるねんけど、まだまだ続きそうやねんなぁ。

白泉社

「シャーロック・ホームズ大全」  コナン・ドイル

 小学校3年生の時に学校の図書室で「まだらの紐」を手に採ったんが「推理小説」との初めての出会い。
 それまで「文部省推薦よいこのための名作シリーズ」で育ったお子様にはもの凄い刺激的やったね。今で言うたらカルチャーショック。小学生向けの翻訳やったから、ヤバイとこはぼかしてあってんけど、当時はそんなん気がつかんとシリーズ全巻夢中で読んだ。
 大人になってから新刊の広告で見て、すぐ本屋へ走った。走っただけの甲斐はあった。あのホームズが一冊になって、しかも初版時の挿絵が復刻200点! 分厚さもなんのその、あんな夢中になったんは何年ぶりやったやろ。
 で、原典に忠実な分、雰囲気もホームズの変人ぶりも全編無修正ノーカット版てなもんで。でもそれが良かったりするのが大人になったゆうことなんかなぁ。
 ついでに言うとくと、イギリスグラナダテレビ版をNHKが放映した時は感動モンやった。主演のジェレミー・ブレット、これぞホームズ、のイメージやったし。

講談社

 

「11人いる!」  萩尾望都

 マンガやからゆうて馬鹿にしたらアカン。これが結構本格派SF。
 宇宙大学入学試験、最終実技試験会場の宇宙船に乗り込んだ受験生達。課題は53日間の漂流サバイバル。ところが10人のはずの受験生が11人いる! 11人目の正体は? 目的は? というわけで11人のままで始まった最終テスト、次から次へとトラブル発生、どこまでがテストでどこからが本物の緊急事態なのか?
 話のテンポもええし個々のキャラクターも性格の違いがはっきりしとってわかりやすい。
 少女マンガとSFは結構相性がええかも。
 続編の「東の地平 西の永遠」はまた違った味わいの人間ドラマ。

小学館

 

「白い狂気の島」  川田弥一郎

 医師窪島典之シリーズ第2弾。
 第1作目の「白く長い廊下」の後、離島の診療所の住み込み医師になった窪島。過疎化が進む島の生活にも慣れてそれなりに平穏無事な日常に突然発生した狂犬病。日本では40年近くも起こらんかった伝染病、感染源は不明、ワクチンは無い、おまけに台風の真っ最中、本土からの救援はいつになるかわからへん、想定外の事態の連続。
 このごろ鳥インフルエンザとかSARSとか、今まで馴染みが無かった感染症の話が増えてきて、そうゆうニュースを聞くたんびに、日本は無防備やなぁ、と思う。O157かって一時はニュースとかワイドショーで毎日やっとったけど、今では忘れられとうみたいやし。
 狂犬病かって名前ぐらいは聞いたことあるけど、実際に罹ったらどないなるかとか、予防にはどうしたらええかとか、どんな病気なんかようわかってないし。
 感染症は下手なホラーよりずっと怖いで。

講談社文庫

 

「人体模型の夜」  中島らも

 『明るい悩み相談室』でも感じたけど、らもさんはどうも凡人とは脳味噌の構造が違うらしい。
 うまいこと言われへんけど、なんかちゃう、ゆうような気配がする。
 「たま」のアルバムをエンドレスで聞いた時の感覚に一番近いんかなぁ?
 眼、耳、鼻、脚、胃袋とかの人体の各パーツをキーワードに、無防備な日常に滑り込んでくる恐怖、狂気と紙一重の世界を描く短編集。怖がりな人はやめといたほうがええんちゃうかなぁ。
 例外的に「健脚行――43号線の怪――」だけは後味ほのぼの。

集英社文庫