里山の自然 其の壱
 
 日本列島の暖温帯の森(照葉樹林)は、古来より人間の生活空間の一部であり、里山として利用されてきた。薪炭材や器具材とするためコナラやクヌギ、樫類は定期的に切り出され、里山の自然が保たれてきた。
 田舎ののどかな自然として連想されるのは、多分この里山のことであり、照葉樹の森ではないだろう。照葉樹林がまとまった姿で残っているのは稀で、伐採が禁じられた神社の裏山などにわずかに保存されている。暗く鬱蒼としたスダジイやイチイガシなどの森で、里山のイメージとはかなり違う。
 ところがこの里山も手入れがなされてこそ保たれているわけで、利用樹の間伐などを怠ればたちまち荒れて本来の姿に戻ってしまうことになる。それでは本来の森とは一体はどういうものなのだろうか。
 
 
 
 日本の森は気候と密接に関係しており、大まかに三つに文類される。亜寒帯の気候帯では針葉樹と落葉広葉樹の混交した森となり、これを針葉樹林帯と呼び、北海道の大部分がこれに当たる。
 東北地方の大部分と中部地方の内陸部はブナやミズナラに代表される落葉広葉樹林帯で、気候帯は冷温帯。
 関東から南西諸島に至る低地は常緑広葉樹林帯で、気候帯は暖温帯。シイやカシ、タブノキなどの森で照葉樹林帯とも云われる。
 針葉樹林帯と落葉広葉樹林帯は人間の生活圏から離れていたため近年まで比較的によく保存されていた。ところが照葉樹林帯は人間の生活圏に隣接して分布していたため古くから里山として開発され、九州の一部を除き現在ではまとまった姿の森を見かけることはなくなってしまった。
森の言霊を聴く
Listen to the Forest song
日本の雑木林を代表する樹種、コナラ(左)とクヌギ(右)
 
 榛原郡吉田町大井川河口の吉田公園
スダジイの大木
 
 スダジイはブナ科の常緑高木。写真のようにおびただしい量の葉をつける。
 東北地方南部から南に分布する。いわゆるシイノキのことで、大椎、子椎などとも呼ばれる。大椎がスダジイのことで、子椎は少し小柄なツブラジイのこと。
 果実は殻斗に包まれ、秋に熟すと三個に裂け露出する。食用できる。
 
 榛原郡榛原町 竜眼山山頂付近
 
竜眼山南麓登山道のアラカシの新緑
 
 東海地方の低山は温暖な気候のせいかシラカシに比べアラカシが優勢で大木が多い。