古本屋の百円均一棚はありがたい。ふだん決して買わないような本でもツイ買う気になってしまい、そのような本のなかから思いもかけぬ興味深い情報を得たりすることができるからである。
『飛騨のかたりべ ぬい女物語』 京都、洛樹出版社 昭和四十六年七月 本書は、今は亡き金田一春彦氏の「序」のことばを借りると、飛騨高山に「幕末のころに生まれ、昭和のはじめに九十二才で世を去った一老女が繰り返し著者に聞かせたという見聞録、体験談」である。氏は、本書の歴史的価値について次のように述べる。
さて、本書の一条より。
国運を賭けた日露戦争において大日本帝国陸軍が収めた勝利に対する人々の無関心さ。戦勝祝いとは言っても、およそ「愛国心」からは程遠い野卑な振舞い。到底「新しい」歴史教科書には載せられないような話である。しかし、少なくとも当時の飛騨高山では、このような調子でも「非国民」と呼ばれて「村八分」にされることはなかったようである。 また、次のような回顧談もある。
金田一春彦氏も「序」のなかで
と述べているが、本書には、現在の我々の道徳観念からはなかなか想像し難いような人間模様が具体的に記されてもあり、我々が過去に対して抱く「イメージ」がいかに一面的なものに過ぎないかをあらためて再考させられる。 (平成十六年六月二十三日)
更新日時 : 2004.07.21. 本頁開設日時 : 2004.07.07. |