拜啓御力落し察上候腰折三首御慰めまでに 辻 善之助
ありし日のおのが心にたぐへつゝ君がなげきをおもひやるかな
この心酌みは取られじ一たびも子を失ひし親ならずして
いつしかと忘れんとせし悲しみをまたくりかへすけふにもあるかな
昭和四年十一月十日
悼敬義君 素琴 志田義秀
春待たで樂土の花へ急ぎしか
弔詞 雪山道人 河口慧海
おもひではさびしかりけりその道にいそしみし君の逝きにし後は
君まさば美術菩薩とならましを今はかげさへ見えぬかの世に
悼敬義君 心因 村田正志
人さわに集り來れどすべをなみ家人はたゞに立ちてゐるかも
たまきはる命のかげかつく〲にこの自畫像の暗さを思ふ
ものいへば心哭くことも忘れゐむほがらの人を戀ひむとするも
喪屋に來てやゝにおちゐるわが心一夜こもりて人のしたしさ
宵すぎて供養の經もをはりけりひとの歸りし後のしづけさ
まどろみて折々語る若人の心うれひは思ふにたへず
湖やまの旅の話をし給へり閑けき夜らに明けを待ちつゝ
曉にうすれ來れる燈を起き來て子らがつくがさびしさ
うらさびて來る年々に老いまさむ子をおもはぬが博士達かは
霜月の日數つもりて曇る空の雨となりたり葬り日の朝に
かにかくに世は生くべきものならむ葬りの歸り人の急げる
三浦周行
秋風にあたら花散るかなしさよ
敬義君を悼みまつりてよめる 猪熊信男
ゑのことき國々めくりおはすらむ一年なるに君かへりこす
ゑ筆をは手にもちつゝもはちすはのうてなにたてるすかたすのはゆ
ところはにかへらぬ君と知り乍ら一年ことによひとゝめなむ
「かんはす」をにきりしめつゝ行く末は日の本一とおもひしものを
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