阿哈馬江(Ahmadjan)のホームページ より
帳 主 の 雜 感 
「神の手」本 


 先週、都内の有名古書店にて、史学史的価値のある書を購入した。価格は必ずしも安いとは言えなかったが、教育目的に使用することも可能であるので、敢えて購入した。

『松井石根大将の陣中日誌』
田中正明『松井石根大将の陣中日誌』
(東京、芙蓉書房、昭和六十年(一九八五)五月)
     第一章 悲運の将軍
     第二章 上海・南京戦
     第三章 支那事変日誌抜粋(松井石根)
     第四章 『陣中日誌』(松井石根)
     第五章 南京事件と東京裁判(松井石根)
     第六章 西南游記(松井石根)
     第七章 大亜細亜主義
     第八章 興亜観音
     松井石根年譜

 本の中には、新聞記事の切抜きが挟み込まれていた。

『朝日新聞』1985.11.24

 これに関連して、去る二千六年一月十九日に書いた文章を、ここに転載する。
 今月八日に死去したと新聞に報道されていた「近現代史評論家」の田中正明氏は、南京大虐殺の責任者として処刑された松井石根陸軍大将の秘書をしていた経歴があり、松井大将の遺族から提供された日記を「判読」したという『松井石根大将の陣中日記』(芙蓉書房、一九八五年五月)と『支那事変日誌抜萃』(『諸君!』一九八三年九月号所載の「松井石根大将の陣中日誌 ── 新資料が証す南京事件の虚構」に所引)を公開しましたが、自説「南京事件の虚構」を証明するという目的のために大幅に内容を改竄、しかも「私のところにあったはずの原文は、どこかへしまいこんで分からなくなった」とのこと。
 幸い、防衛庁戦史室と外務省外交資料館とにコピーが残されており(このことを田中氏は「全く知らなかった」そうです)、これらを刊行物と比較した結果、史料改竄の事実が発覚、それを『朝日新聞』が報道(一九八五年十一月二十四日・二十五日付)、そのため『朝日』は、ますます「右」の方面から嫌われるようになりました、というお話。
 重要な史料について、コピーが残されておらず、現物も隠滅してしまった、とすれば、まことにオソロしいことです。
 ところが、田中氏は、「近現代史評論家」としての生命も断たれることもなく、もちろん精神病院に入ることもなく、後に、かつて発表した文章を集録した『掃葉集 ── このままでは日本は危ない』(國民新聞社、平成六年(一九九四)九月)を刊行、その中には、既に虚偽であることが証明されてしまった「松井石根大将の陣中日誌 ── 新資料が証す南京事件の虚構」が、内容の変更もなく、そのまま載せられております。
 漢文学や漢地の風土・人々をこよなく愛していたにもかかわらず、部下たちの引き起こした事件の責任を取って処刑された松井石根大将を擁護したい、という田中氏の思いも理解できますが、そのための方法が、あまりに非道すぎたようです。
  本書における史料改竄の発覚を境に、南京大虐殺「幻」説が「論壇」から急速に勢力を失うようになったことは、この問題に少しでも関心を持つ同時代人であれば周知の事実であろう。
 なお、本書には鳩彦王[朝香宮]に関する記載も見られる。しかし、読者の興味を引くような話は、ない。
 ともかく、この「札付き」本の原物を、ようやく入手することができたのであった。保存のため、箱のカバーに「グラシン紙」を付け、丁重に扱うことに努めている。
(二千十年五月五日)




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本頁更新日時 : 2010.06.11.
本頁開設日時 : 2010.05.09.
 

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