夜は、男のために創られた時間なのかもしれない。

夜。
焚火の火がはぜる音。さわさわと頭上の葉擦れの音。
隣で眠る少女がたてる寝息。
夜目はきくほうだが、万能とはいえない。
視覚が十分でない分、夜は聴覚が働くと聞いた。
たしかにその通りだと思う。
それに、気配にも敏感になる。
草の上で眠る兎や、木の上で羽を休める鳥のやわらかな気配。
活動を始めようとする狼の気配。


「う…ん」
傍らに寝ていた少女が、寝返りを打った。
いくらマントを夜具代わりにしても、地面は寝るには固すぎる。
自分の膝の上で寝ていい、と、何度言っても彼女は聞かない。
恥ずかしがって、顔を真っ赤にして、何をいってるのよと言っては、
すぐ地面に横になってしまった。
ちっとも自分の思い通りにならない彼女。
こういう、些細なことくらいは、自分の思い通りになってくれてもいいと思うのに。
だれも見てないのに、思わず苦笑して、
マントに包まれたままの彼女をそっと持ち上げ、自分の上に降ろした。
あぐらを掻いた自分の膝の上に、すっぽりと納まってしまう小さな少女は、
やわらかく笑っているような寝顔をして、そのまままた寝息をたて始める。

彼女は、たしかに小さい。
けれど知っていた。
彼女が誰より人を惹きつけ、誰より大きく、
また誰よりも強いことを。
初めて想いを打ち明けたとき、オレは知った。
自分がどんなにこの目の前の少女に引かれているかを。
知っていたつもりだったのに、彼女がオレの言葉を聞いて、
顔を真っ赤にし、視線を漂わせ、うつむき、そして下を向いたまま、
かすかな声で、「あたしも」とつぶやいたとき。
びっくりするほど彼女に惹かれている自分がいることに、気がついた。

初めてキスをしたとき、オレは知った。
彼女がどれだけ大きいのかを。
想いは伝え合ったのに、普段と変わらない生活。
変化をするのがイヤなのだろうかと危惧するオレは、想いをため込んで。
そうしてある日突然、流れ出した想いを彼女に曝したとき。
彼女はまた、恥ずかしそうに笑った。
「言わなきゃ、分かんないの?」と。
オレは、彼女を危惧しているつもりで、彼女に嫌われないかという
自分の危惧を守っていたのだった。
彼女は、それを知っていた。
彼女は、大きかった。

初めて抱いたとき、オレは知った。
彼女はどれだけ、強いかを。
何度も大きな傷を負ったこともある彼女さえ、脂汗を流すほどの痛み。
そんな痛みを自分が与えていることが、申し訳なくて仕方ないのに、
それでも自分の欲求を優先している自分。
自分だけが、気持ちいい。まるで、自分だけが彼女のことを
どんどん好きになっていきそうで、堪えきれなくてオレは、
やめるか、と言った。
彼女は、苦痛に耐えながらも驚いた顔をして、なのにほほえんだ。
そうして言ったのだ。「すき」と。
そんなにツライのに。脂汗を流すほどなんだろう?
肩が震えているのは、痛みのせいなんだろ?
なのにお前は、そう言うのか。
痛いのは彼女の方なのに、オレは涙を流しそうになった。
彼女は、オレよりもずっと、強かった。

彼女は、大きい。そして強い。
そして、深かった。
彼女を抱くたびに、好きになっていくのは自分だった。
自分で客観的に見ても、どうしてこんなに彼女に
惹かれていくのかわからなかった。
かわいいし、強いし、オレのことひっぱってくれるし、
料理がうまいし、色が白いし、身体がキレイだし。
でもそのどれも、オレがこんなに執着するものでないような気がする。
なのに、彼女が欲しいのだ。
身体だけじゃなく、そのすべてが。
彼女を抱くとき、妙に不器用になる自分がいる。
まるで一度も、女を抱いたことがないような。
それは、この少女が今まで経験がなかったからそれにつられて、
とかじゃなくて、彼女の身体を抱いていると、
自分が今まで経験してきた女たちに、どうやって
感じさせたかを忘れてしまう。
そうして彼女の反応をみようとするとき、今までの女たちは
どうだったかを、思い出せない。
つまりオレは、溺れているんだろう。
彼女は、深い。



「う…ん?あれ、ガウリイ…?
 あ、やだ、なにしてんのよ!」
「よう、おはよ」
「おはよ、じゃなくて。なんであたしここに寝てんのよ」
「背中が、さ。痛そうだったから、つい。
 すまん、寝心地悪かったか?」
「…………悪くは、なかった」
「そうか、よかった。まだ夜中だぞ、もう少し寝てろ」
「いいよ、交替する。ガウリイ寝なよ」
「オレはいいよ」
「ダメ、寝てよ。明日へばったらあたしが困る」
「いいって」
「スリーピングかけるわよ」
彼女なりのやさしさ。
こんな彼女の、言葉の裏に隠された優しさがちらっと見えると、
彼女が欲しくなる。隠されたその下が、もっと見たくて。

「リナ」
「あ……や、ダメ…」
「なあ、リナ」
「もう……なに?あ、あっ」
「オレのこと、好き?」
「え、どして…あっ、や、そこ…」
「なあ、好きか?オレのこと」
「あっ……わ、わかるでしょ…?あんっ!」
「言って」
「あ、あ、がうり……!」
「リナ」
「…き…す、き…あ、あ、大好きっ…あ、あ!!」

とろ………

「ど、して…?」
「ん…?」
「どうして、そんなこといきなり、言わせるの…?」
「…たまに、さ。不安になる。オレばっかり、リナのこと欲しいから」
「…そう?」
「ああ。誰がどう見ても、そう思うさ。オレばっかり、リナが欲しい」
「そんな、こと…ないよ?」
「………リナ?」
「ねえ、ガウリイ」
「っ…!リナ…」
「あたしのこと、好き?」
「…………………好き、だ」
「ホントに?」
「っく、あ、ああ…好きだ、誰より…!」
「……………………」
「く、り…な!」

どろ……………

はあっ

2人とも、大きく息をつく。
見つめ合い、そうして微笑む。
そして、共有し合う時間。
オレが、彼女と溶け合える、唯一の時間。
オレが、彼女と同じになれる、唯一の時間。

「あ、ああっ!」
「…………っ、く!」

彼女は、大きくて、強くて、そして深い。
オレなんかより、ずっと。
オレはきっと、彼女に一生勝てない。
男はきっと一生、女に勝てない。
だから夜は、男のために創られた時間なのかもしれない。
唯一、女と対等になれるために、この時間を。














*お礼の言葉*
Ayuさあ〜〜んっ!(><)
ありがとうございます・・えぐえぐ
リナに下手惚れのガウリイさんが最高に素敵です!!
アダルティーだし、かっこいいし! 喜んでジオに挑戦させていただきますわ!(爆)


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