理由として


「なあリナ・・・お前さんが旅を始めた理由って、なんだっけ。」

椅子に後ろ向きに座って。
背もたれに腕を乗せて。
ガウリイはリナに話し掛けた。

「郷里の姉ちゃんに、世界を見て来いって言われたから、だけど。」

ベッドに腰掛けて。
膝の上の分厚い本に目を落としながら。
リナは返事をした。

「じゃあ、世界を見て、そのあとは?」
「え?」

リナが顔を上げる。
ガウリイを見る。

「そのあと、どうするつもりなんだ?」
「どう、って・・」
「故郷に戻って、実家の店でも継ぐのか?
 それとも、どこか別の街に住み着いたりするのか?」

答えはすぐに返ってこなかった。
じっと、ガウリイは返事を待った。


やがて、少し考え込んでいたリナが、真っ直ぐにガウリイを見た。

「・・・ずっと、旅をしてました、じゃ駄目かなあ。」
「・・駄目ってことは、無いだろうけど。」
「んで。ガウリイと、ずっと一緒に。」
「オレと?」
「そう。
 世界なんて、十年やそこらで全部見ちゃえるものじゃないし。
 それこそ一生かかったって無理かもしれない。
 それに何より、あんたといろんな所を巡ってる今が、
 今までで一番幸せだもの。」

一旦言葉を切って、にっこりと微笑む。

「美味しいもの食べて、いろんなモノ見て、遊んで、
 たまーに事件に巻き込まれたりするけど、いつも何とか切り抜けて。
 楽しいでしょ?
 大体、一カ所にじっとしてるのなんて性に合わないわよ。
 あたしたち二人とも、ね。」

ウィンクを送る。
そして、何事もなかったようにまた、リナは本を読み始める。
それを見て、ガウリイはふっと微笑んで。

「そうだな。」

そう言うと、目を細めてリナを見つめた。




優しい静けさが、部屋を包んでいた。









fin...




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