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壁に背を預け、そのまま座り込む。 この壁の向こうにはガウリイの部屋。 「何やってんのかな・・」 ついさっきまで一緒にいたというのに、物凄く顔が見たくなる。 「ガウリイ。」 名前を呟く。 隣室にいると分かっているのに、なぜかとても淋しい。 ガウリイがすぐ横にいないと身体の半分を抉り取られたような気分になってしまう。 1秒だって離れていたくないと思う。 逢いたい。 この間まではこんなこと無かった。 いないと淋しかったけど、ここまで不安になったりとか・・はしなかったような気がする。 ・・・弱く、なったんだろうか。 あたしの部屋とガウリイの部屋を仕切っている壁を凝視する。 いっそのこと、押し掛けてしまおうか。 こんこん。 窓をたたく音。 見れば、ガウリイがいた。 「ちょっと!何やってんのよ!?」 窓の鍵を開け、中に入らせる。 ここは二階だし、その窓にはベランダだって無いというのに。 落ちたらどうなるか分かっているのだろうか。 「ん?いやあ、なんかさ、リナの顔見たくなって。」 「だからって窓を伝ってこなくてもいいでしょうに。 廊下通ってドアから入ってくれば・・」 「こっちのほうが、なんとなくかっこいいだろう?」 いつものにこにこ顔。 あたしが一番、好きな顔。 ・・そんな顔されるともう怒鳴れなくなってしまう。 溜息をひとつ。 「ま、いいわ。 あたしも、ガウリイの顔見たかったし。」 ガウリイは少し驚いたような顔をして、もう一度微笑んだ。 「そっか。おんなじこと考えてたんだな、オレたち。」 言ってあたしを引き寄せ、優しく抱き締める。 暖かい。 窓の向こうにガウリイを見たとき、 驚き、心配したと同時に嬉しいと感じた。 会いに来てくれたことが、ではなく、顔を見れたことが、嬉しかった。 「ねえ。」 「ん?」 「責任とってよね。」 「へっ?」 目の前にあった金の髪をくるくると指に巻き付ける。 「あたしを、弱くした責任。あんた無しじゃいられなくした、責任。」 「オレの所為なのか?」 「他に誰がいるって言うのよ。」 「いや、共同責任とか。」 「何それ。」 「だってほら、オレもリナ無しじゃいられなくなってるし。」 「・・そーなんだ。」 「そーなの。」 「・・もしかして、とりたくないの?責任。」 「何でだ?」 「ごねるから。」 「ごねてるか?オレ。」 意外そうな声。 「・・ちょっと。そんな気がする。素直に返事しないもん。」 「そんなつもり無いんだけどなあ・・・リナ。」 「・・え?」 身体を離すと、跪いてあたしの右手をとる。 そして、手の甲にキスを。騎士が主に忠誠を誓うように。 「ガウ・・リイ!?」 顔を上げて、微笑んであたしを見る。 「喜んで、とらせてもらうよ。」 「・・・・・・・・ばっ、」 「ば?」 「ばっかじゃないの!?何恥ずかしいこと・・!!」 「え、これじゃダメか?」 どこまで本気なのか分からない。冗談にも思えない。 視線が真っ直ぐだから。 「・・う゛・・・・ダメじゃ、ない。」 「ちゃんと責任とるから、安心しろ。な?」 「・・・・」 「したか?」 「・・した。」 「よし。」 立ち上がって、あたしの頭をぽんぽん叩く。 子供扱いだなあ、と思ったけど。 そんなに嫌でもないので、あたしは何も言わなかった。 むしろ、触れられていることが嬉しいとさえ、思った。 END |