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ある晴れた日。 森の中、別れ道を前にガウリイとリナは逡巡していた。 一方は北に、もう一方は東に続いている。 「・・・どっちかしら?」 「わからん。」 すぱんっっ! きっぱりと即答するガウリイの頭に、スリッパが飛んだ。 「ちょっとは考えてから発言せんかいっ! 相談してる意味が無いでしょーが。」 「んなこと言ってもなあ・・・。 地図も無いし・・地図持ってたのはお前さんだし・・・・なくしたのはお前さんだし・・・」 「う゛・・・・それは・・・・・あたしの責任じゃないわっっ! 地図を手にもってたときに、丁度通りがかった盗賊が悪いのよ!」 「意気揚揚と吹っ飛ばして、その爆風の中で地図も飛んでっちまったんだよなあ。 で。それに気づかずにアジトまで案内させてお宝掻っ攫って・・・」 「な、そうよっ、ガウリイだって気づかなかったじゃない。」 「オレまで一緒に吹っ飛ばしたろうが、お前さん。」 ジト目で言うガウリイ。 リナの額からは一筋の汗が流れた。 「・・・・・・・・。 わ、わかったわよ、仕方ないわねえ。」 口の中で小さく呪文を唱えると、リナはふわり、と浮かび上がった。 「ちょっと上行って道の先、見てくるわ。そこにいて。」 「わかんなかったらどうすんだ?」 「・・・・・・そのときはそのときよ。 いちいち気がめいるようなこと言わないで、ガウリイのくせに。」 「どういう意味だそれは。」 「そういう意味よ。」 言い捨ててなにやら不満そうなガウリイを捨て置き、木々の隙間をぬって上空へと向かう。 眩しさに一瞬目が眩みつつ、先を見遣ると・・ 「二つ町が見えた。」 「ほほう。」 「どっちも、片方の道を辿っていけば着くと思う。 距離は同じくらいみたい。規模も・・・同じくらい。」 「んじゃまあ、どっちに行っても問題はないわけだ。」 「ある。」 「・・あるのか。」 「さっきの村で聞いたのよ。この先には温泉街があるって・・・。 で、もう片方は大して特徴の無い普通の村。 ・・絶対に温泉に入るんだから!!」 「んなこと言ったって・・・上から見て、どっちだかわからなかったんだろ? じゃあどうしようも無いじゃないか。」 「う、だから、地図さえあれば・・・」 「実際問題、無いだろう。」 「じゃあどうしろって言うのよ」 「諦めろ。」 「い・や。」 はあ、とガウリイは大きく溜息をついた。 「じゃあこうしよう。 今から、この剣を・・・倒す。」 腰から外したブラスト・ソードを地面に立てる。 「手を離して、倒れた方の道に進む。運を天に任せるってやつだな。 もし外れたら外れたで、引き返すなら付き合うから。」 「そんなの、時間が勿体無いじゃない。」 「先を急ぐ旅でもないだろ? のんびり行けば良いじゃないか。」 ガウリイの手がリナの頭に伸びて。くしゃ。髪の毛を撫でる。 「な?」 そして爽やかな笑顔。 「・・・・しょ、しょうがないわね。妥協してあげるわ。」 ぱたぱたと頭の上の手を払いのけながら、リナが言った。 「よし。決まり。」 柄から手を離す。ぱたりと、剣は倒れた。 向いた先は東方向。 「あっち・・だな。」 「じゃ、これで間違ってたら、ガウリイ。ゴハンを奢るように。」 「おいちょっとまて。何だそれは。」 「剣倒したのはガウリイでしょ? だから間違ってたらあんたの所為。 お詫びのしるしにあたしにご馳走をする。 何か矛盾、あるかしら?」 言いながらさっさと一人で進んでいく。 「・・全く。無茶苦茶な奴だなあ。」 剣を拾い上げ鞘に戻し、リナには聞こえないように小さな声で呟くと、ガウリイはリナの後を追った。 「何か言った?」 「いいや、何にも。」 END |