|
丘の上。 一本だけ立っている、大きな木。 それに背中を預けて、あたしは目を閉じていた。 「リナあ? 何だ、こんなとこにいたのか。」 声がして、ふわふわしていた意識が現実に引き戻される。 視線をめぐらすと、ひょこ、と。 木の後ろからガウリイが顔を出した。 「んー・・散歩してたら気持ちよくって。 ちょっとぼーっとしちゃった。 ・・・何?」 「そろそろ昼飯なのに戻ってこないから、呼びに来たんだよ。 ほら、行こう。」 ごくごく自然に、何故かガウリイはあたしの手を取って歩き出した。 「え? あ、ちょっ?」 反射的に抗議の声は上げていた。 ガウリイはそれが聞こえていないように、先に立って普通に歩いてる。 真っ直ぐ前を向いて。 あたしと言えば、心臓は飛び跳ねるし息が詰まって苦しいし、まともに顔も上げられない。 ガウリイの顔だって直視できない状態。 でも、手と手が触れているだけなのにどうして、と思うくらい温かくて心地良くて。 勿体無くて、振りほどくことが出来ない。したくない。 手を離せない。 街中までずっとそのまま。 不意に宿屋の前で、ガウリイが立ち止まった。 「?」 そしてあたしの顔を覗き込んでくる。妙に嬉しそうな表情。でも何も言って来ない。 「・・・・・・・え、何?」 「・・いや、何で手を離さなかったのかなーと思って。 お前さんのことだし、絶対に恥ずかしがって嫌がると思ったんだけどなー。」 にやにや。 「う・・うっさいわねえっ!」 乱暴に手を振り解くと、あたしはガウリイの横をすり抜けるようにして宿屋の食堂へと向かう。 そして入り口手前で、振り返って。 未だ笑顔のガウリイを睨みつける。 「・・・・・・決めた。」 「何を。」 「あんたの分のご飯まで食べてやる。」 ジト目でぼそっと呟いてみた。 途端にガウリイの顔色が変わる。 「・・・待てよリナっ、それはちょっと・・」 無視。 とにかく無視。 慌てた声を上げるガウリイを放っといて、あたしは手始めにランチセット五人前を注文した。 END |