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トントン、と。 ガウリイの部屋のドアがノックされた。 開けると、そこにはリナの姿。 「お酒でも飲まない?」 グラス2つとワインのビンを、ガウリイに見せる。 「お、いいなあ。さ、入れよ。」 招き入れて、椅子に腰掛け、リナにはテーブルを挟んで反対側の椅子を勧めた。 「どうしたんだ?そのワイン。」 「宿のおっちゃんがくれたのよ。あたしが可愛いから、サービスだって。」 「可愛いから、ねえ・・・」 「何よ、文句があるなら飲ませないわよ?」 ねめつけて、ビンをガウリイから守るように抱え込む。 「何もないって。ほら、栓抜いてやるから、貸して。」 「はいはい。」 ガウリイが手を差し出すと、リナは大人しくガウリイにビンを手渡した。 暫くの間、取り留めのない話が続いていたが、ふと、リナが言葉を切った。 瞳を伏せて、物憂げな表情。 「・・どうかしたか?」 「ねえ。」 テーブルに両肘をついて、上目遣いにガウリイを見る。 ほんのりと紅く染まった頬。 「ほんとの子供、いないの?」 「・・は?」 唐突で突拍子もない質問に、間の抜けた声で返事をするガウリイ。 「だから、ガウリイって一応あたしの保護者してるわけでしょ? 他に、保護しなきゃいけない人・・例えば、実の子供とか。いたりしないの?」 「・・話の展開がよくわからんのだが。 大体、何で子供なんだよ。」 「だって、あんたなら隠し子の1人や2人いたっておかしくなさそうだもの。」 「・・・・」 「あ、でもそんな甲斐性あるわけないか。何てったってガウリイだし。」 「・・あのな。」 「冗談よ、冗談。」 けらけらと笑う。 「・・からかってんのか?」 「そう見える?」 にっこり。小悪魔の笑顔。 それを見て、ガウリイは溜息を吐いた。 「あんまりふざけてると、その内に愛想尽かしちまうぞ。」 「尽かせてみれば?出来るものなら、ね。」 「出来ないって言いたいのか?」 「それはあんたが一番分かってるんじゃない? 自称、保護者さん。」 くすくすと笑う。 今度は、いつもの少女のものとは違う、大人の女性の顔をみせる。 「・・酔ってるだろ。」 「ちょっとだけよ。頭ははっきりしてるわ。 ・・でも、酔ってるからこんな事も言えちゃう。こんなことも出来ちゃう。」 グラスを置いて立ち上がり、ガウリイに近寄る。 「リナ?」 ガウリイの首に細い腕を絡ませる。 「・・好きよ、ガウリイ。」 目を見て、告げて。 近付いてくる唇。 引き寄せられるようにガウリイも唇を寄せてゆくが、触れ合う寸前にリナの肩を掴み、止める。 「冗談はやめておくんだな。」 一瞬、リナの身体が強張った。 「少しどころじゃない。かなり酔ってるよ。 早く寝た方がいい。」 身体を離しグラスを片付け始めるガウリイ。 「ガウ・・」 「二日酔いはきついぞ?ほら、部屋に戻れって。」 「ガウリイ!?」 リナが悲鳴に近い声を上げる。 「・・オレはさ、自称でも、保護者だから。」 感情を抑えたような、抑揚のない声。 どんな顔をしているのか、俯いているのでリナから見ることは出来ない。 「・・保護者だから、何?」 静かに問うリナ。 沈黙。 ガウリイは答えない。 「・・・もう、いい。」 居たたまれなくなったのか、リナはドアへと向かう。 ノブに手をかけて、ガウリイに背を向け。 「・・あたし、今、あんたの言った通り酔ってるから。 だから、きっと、明日になったら、今のことも忘れてると思う。 だから・・・・・おやすみ。」 言うと、廊下へと姿を消した。 ガウリイは、リナの出て行ったドアを見つめる。 もう、ノックの音はしなかった。 「・・保護者だからな。」 ぽつりと呟く。 誰に言うともなく、むしろ、自らに言い聞かせるように。 「・・おはよ、ガウリイ。」 「ああ、おはよう。」 そして、何事もなかったように、振る舞う二人。 ..fin |