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夜。 寝付かれずにいたガウリイは、一杯飲もうと階下にある食堂兼酒場へ降りていった。 すると、彼女の楽しそうな笑い声が耳に届いた。 「・・リナ?」 「あ、ガウリイ。あんたも一緒に飲まない?」 入口にほど近いテーブルに座って。 声をかけてきたガウリイに、手に持った酒の入ったグラスを振りながら、リナはそう言った。 隣に腰掛けているのは、見たことのない男。 ガウリイの頭の中で、警鐘が鳴った。 「・・そいつは?」 「この人?おごってあげるよって、さっき声かけてくれたの。 ねえ、こいつもいいでしょ?」 ガウリイを指差しながら、リナは隣の男に声をかけた。 その男は、露骨に嫌そうな顔をする。 「・・連れが、いたの?」 「そうだけど?言わなかったっけ。」 きょとん、と男の顔を見るリナ。 「僕は、二人・・」 「行くぞリナ。」 「え、ガウリイ?」 男の言葉を遮るように言うとリナの腕を掴んで無理矢理立たせ、カウンターの奥にいた店の主人に声をかける。 「こいつの飲んだ分、つけといてもらえますか。」 その間、男とは一度も目を会わさない。 存在自体無いかのように。 「ああ・・構わんが・・。・」 複雑そうな顔をして三人を見る。 「ちょっと・・ねえ。」 リナが非難の声をあげるが、それを無視し、ガウリイは彼女を引っ張って店の出口へと向かった。 リナの部屋の前。 掴んでいた腕を放してリナに向き直り、ガウリイは言う。 子供を諭すように。幾分か、厳しい口調で。 「あのな、リナ。 酒を飲むなとは言わん。男と飲むのがいけないって訳じゃない。 でも、相手ぐらいちゃんと選んでくれよ。」 リナの眉間にしわが寄る。 「あたしは、ちゃんと選んだつもりだけど?」 「何言ってんだよ、あんなヤツ。・・何が目当てなのかくらい、わかるだろ? ・・お前さん、見る目無いんじゃないのか?」 やれやれ、とでも言いたげに溜息を吐く。 「悪かったわね。そんなこともわからなくて。 ・・じゃあ、聞くけど。どういうヤツだったらいいの? どういう男だったら、あんたの眼鏡にかなうって言うの?」 ガウリイの目が、リナに向けられる。 思いもかけないことを言われたような、驚いた表情。 「・・え・・・?」 「どうやらあんたの言うとおり、あたしには見る目がないみたいだから。 また邪魔されないようにちゃんと聞いておこうと思って。 あんたの言うような男と飲むのなら、文句はないわけでしょ?」 ガウリイの胸に人差し指を突きつけて。リナは問い掛ける。 ガウリイはなかなか答えない。 「違う?」 更にたたみかけるリナ。 「・・・違わない。」 「なら、教えて。」 「・・・・・・・・」 ガウリイは、ふとリナから視線をはずすと、背を向けてリナの部屋のドアノブに手をかけた。 もちろん、無言のまま。 「・・ガウリイ?」 後ろから、リナが名前を呼ぶ。 「ほら、部屋へ戻れ。もう遅い。 さっさと寝た方がいい。」 「待って。質問の答えは?」 「・・・・」 「ガウリイ?」 「・・・自分で考えろよ、そのくらい。」 「教えてくれたって良いじゃない。」 「自分で考えろ。」 言い捨て、動作でリナに部屋の中へと入るよう促す。 「〜〜っ!!」 リナはつかつかと歩み寄り、 「ケチっ!」 擦れ違いざまにガウリイを睨み付けそう言うと、押しのけるように部屋へと入り。 ガウリイの鼻先でばたんと大きな音を立てて、ドアが閉じられた。 隣の自分の部屋に入り、ドアを閉め、それに背を預け。 そのまま、ずるずると座り込む。 「・・・・・・・」 天井を仰いで。苦しそうな顔で。 「知るかよ・・・そんなもん・・」 呻くように、ガウリイは呟いた。 ...fin |