水没車の回収には、2つのパターンがありました。
1つは、私がやってるパターン。
これ、邪魔だから!と言われて、動かすパターンです。
ただし、自動車は、実印を押した書類に印鑑証明を添えて登録された、動産です。
いくら「邪魔だから!」と頼まれても、勝手にどこかに積載車で移動するわけには、いかない。
「まぁ、厳密に言えばそうですけど」
……と、「今は何でもあり!」をにおわせる言い方も、けっこう聞きましたけどね。
地元の知り合いが、「お前のクルマ、邪魔だからあっちに運んだよ」と言うのと。
見ず知らずのよそ者が、所有者の同意なく勝手に積み込んで持ち去るのと。
その差は、ものすごく大きいわけです。
そこで、もう1つのアプローチ。
その所有者から頼まれて動かすパターンもありました。
でも、これは微妙なんですよ。
「オレの、私のクルマが、どこそこにある」
「それを回収して、どこそこに持って行ってほしい」
被災車両(水没車)の撤去は、地元の業者さんが自治体から一括受注してて。
要するに市の全額負担で、そういう業者さんが運んでました。
「クルマ、ありましたか?」
「どこですか?」
「回収しますよ、無料で」
……と、あちこちの家に片っ端から営業をかけていたらしいです。
で。
個人参戦のボランティアとして、そういう業者さんに電話で聞いてみたんですけどね。
オレたちの稼ぎが減るから、俺達の縄張りに入ってこないで。
……と、そこまでハッキリは言われなかったけど。
でも、そういうニュアンスを感じました。
ここで、大切なことが1つ。
そういう業者さん達だって、被災者です。
稼げるうちに稼いでおかなくちゃ大変だ!と、あせりまくってるはず。
それについて、被災してないよそ者がどうこうは言えません。
そういう業者さんの受注額を調べて、それよりも安い金額を市に提示する?
お金が目当てで行くなら自由経済、それは正しい方法ですけどね。
あるいは……
お金なんて要らないから、1台でも多く、さっさと撤去しようよ。
水没車が邪魔で歩けない、通行できない、商売ができない。
……と言って困ってる人が、いっぱいいるんだから!
……と言う?
これが、難しいところなんです。
クルマの趣味が高じて、奥さんや子どもに内緒で立派なガレージを建てる人は、少なくないけど。
積載車を買っちゃう人って、あんまりいないみたいなのよ。
(けっこう驚かれる)
てんやわんやの非常事態に突然そんな変わり者から電話がきても、何を言ってるんだか、よくわからず。
もしかしたら、そういうニュアンスは、勝手に感じただけ。
気のせいかもしれないけど。
「邪魔だ!」
「誰でもいいから、さっさと撤去してくれ!」
「業者だろうと個人だろうと、誰でもいいから!」
……と言ってるのも、被災者だし。
「余計なことするな!」
「俺たちの仕事を奪わないでくれ!」
……と言ってるのも、被災者なんです。
水没車を一刻も早く撤去するべき。
だけど、地元の業者さん達の積載車も流されてしまった。
そういう業者さん達も流されてしまって、人員も限られている。
でも、積載車を手に入れて、人手を頼めば、収入にはなる。
こういう状況で、クレーン付き積載車で被災地に駆けつけた個人は、どう動くべきだったのか?
誰でもいいから、その辺の地元の業者さんに、クレーン付き積載車をプレゼントして電車で帰る。
これが、最善だったのかも。
ただ、このシステムには2つの欠点があったと思います。
1つは、生き残った人のクルマしか回収できない。
震災から1ヶ月も経って、いまだに所有者から連絡がなく、あちこちで邪魔だ!と言われてるクルマ達。
そのご主人さまは?
これからもずっと連絡が取れなかったら?……という点。
とりあえず、そういうのは後回し!
……ってことなんだろうけど。
所有権や財産権を優先して、所有者の同意が得られたクルマから撤去するべきなのか?
あるいは、復旧活動や生活のための動線確保を優先するべきなのか?
「緊急事態宣言」みたいなのを出して、後者を認めるべきでは?
……というのが、当時の感想です。
もう1つは、市の全額負担だということ。
今回の震災や人災に限らないんだけど。
何かあるとすぐに「県で面倒をみてほしい」とか、「国で補償してほしい」とか、言うじゃないですか。
でも、それって、みんなの税金だよ?
地方の自治体も、国も、無尽蔵な打ち出の小槌を持ってるわけじゃないんだよ?
国に関して、わかりやすくゼロを少なくして表現すると。
年収400万円あるかどうかなのに毎年800万円ぐらい使い続けて、返すアテのない借金が1億円以上。
そんな状況なのに、その家の子どもたちは高速道路が欲しいだとか、新幹線が欲しいだとか、空港が欲しいだとか。
それらの維持費も面倒を見てほしいだとか。
親も、その危機的な財政状況を見て見ぬふりして、大盤振る舞いを続けている。
自分の票を目当てに。
つまり、今の子ども達が将来、働いて返すってことなんですよ。
「国が何をしてくれるか、じゃない」
「国に対して何ができるかだ」
……と言ったのは、アメリカのJFK、ジョン・F・ケネディ大統領。
米ソ冷戦の時代、あわや核戦争か?のキューバ危機で伝説となった人の言葉です。
「国のためなら、子供たちのためなら、自分は死んでもかまわない」
……と、福島第一原発への派遣を志願してる人がいる。
日本でも、そんな話を聞いてます。
私は軟弱なヘタレ、そこまでの根性はないんですけど。
住民の皆さんが大変なことになっている。
住民の皆さんだけでなく、地元の自治体も被災している。
自治体の職員の皆さんも大変なことになっている。
そういう状況で、自治体に負担させるのは、どうなんだろう?
「何をやってるんだ!」と非難するのは、どうなんだろう?
こういう財政状況で、総理大臣が「どんなにお金がかかっても」と大見得をきったところで、どれだけの説得力があるんだろう?
この国、この政府に、どれだけのことができるんだろう?
……と、考えると。
地元の業者さんには迷惑かもしれないけど。
クレーン付き積載車で来た個人ボランティアが水没車を回収しまくるのは、子ども達の将来の負担を減らすことにはなるんじゃないの?
……なんてことも考えてました。
もっとも、水没車の回収が進んでるのは、ごく一部。
ほとんどのエリアでは、膨大な瓦礫(がれき)の中に水没車が混じってて、とても回収どころじゃない。
「これは船ですか?飛行機ですか?」と聞かれれば、確かに自動車なんだけど。
でも、これを自動車と呼んでいいのかなぁ?
……みたいな、しわくちゃに丸めてゴミ箱に投げ込まれた紙くずのような自動車が、あちこちにありました。
メディアにくり返し登場する有名な街に支援が集中して、芸能人やスポーツ選手の訪問も報道されている。
その一方で、有名でない無数の町々は、ほとんど手つかずのままだったし。
その意味でも、もっともっと個人ボランティアは活躍できたはず。
あなたも、行けば(必ず)活躍できたはず。
あと、もう1つ。
たとえば、パチンコ屋さんとか、大きなスーパーとか。
津波の被害に遭った地域の中の、大きな駐車場みたいなスペースに、そういう業者さんはせっせと水没車を運んでたんですけど。
これって……
余震で次の津波が来ていたら、全部やり直しになったのでは?
おそらく、それなりの考えの上に、それなりのシステムがあって。
よそ者が口出しすることじゃないんだろうけど。
「そうなれば、また予算がおりて、仕事がもらえる」
……と言ってた人達がいるのも事実。
その辺も気になってます。
たとえば、高台の安全な場所に何ヶ所か、広大な敷地を確保して。
そこに、陸運局の臨時の支局を開設して。
そこに水没車を持ってきてくれたら、1台につき1万円を支払います。
……と宣言したら、クレーン付きの積載車を持ってる人達が全国からやって来て。
1日に5台とか10台とか、奪い合うようにして、あっという間に回収してくれると思うんですよ。
今の仕事よりも稼げるとなれば、全国から集まってくると思うんです。
仕事を放り出して、今すぐにでも被災地に行きたい。
でも、行ってしまえば、今月の支払いができなくなる。
そういう現実に縛られて良心の呵責に苦しんでる人は、たくさんいましたから。
で。
集められた水没車を片っ端から撮影して。
ナンバープレート、車台番号、画像、回収した場所、現在の保管場所。
そういうデータを入力して、オンラインで検索できるようにして、どうしますか?と持ち主に問い合わせる。
大雨とか台風とか津波で広範囲な水没が起きた時に限って、第三者が勝手に移動していいことにする。
個人の所有権や財産権と、社会の公益とを両立させるために。
……というシステムが必要だと思うんだけど。
この辺、どうなんでしょう?
地元の業者さん達、1台いくらで受注していたんだろう?
1台1万円としても、10万台で10億円、15万台で15億円。
すごい金額に思うかもだけど、避難所で過ごしてる人が13万人。
食費が1人1万円としても、それだけで毎月13億円ですからね。
そのぐらいの金額であっという間に街から水没車が片付くなら、いいシステムだと思うんだけどなぁ。
え?
よそ者は受け入れず、時間がかかっても地元の業者さんに稼いでもらうべき?
がれきの撤去とか、その後の台風での土砂崩れとか、そのたびに言われたことだけど。
よそ者の参戦を歓迎して、とにかく大急ぎで災害復旧を進める自治体もある。
その一方では、地元の業者さんに稼がせることを優先して、よそ者を拒否する(ありがた迷惑)という自治体もある。
どちらも、地元の自治体と、地元の皆さんで話し合うこと。
駆けつけたよそ者が文句を言うことじゃないんですけどね。
あなたのところで災害が起きた時は、どっちになりそうですか?
「地元の業者の仕事だから、手を出さないでくれ」
……と言いますか?
「地元の業者しか手を出しちゃいけないことになってるけど……」
「いつまでも待っていられないから、うちの敷地にある分はどんどんやっちゃってよ」
……と言いますか?
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2012.-1.31 Tue 23:00 from Tokyo
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