災害派遣車両と貼った積載車で被災地を走り回ってると、やがて、こう聞かれるようになりました。
「水没車の買い取りですか?」
え?
いや、買い取りじゃなくて、動かすだけなんです。
「買い取っていただけませんか?」
「お金なくて、本当に困ってるんです」
いや、業者じゃないんで……
今になって、こうやってネット上に書けば、笑い話だけど。
趣味用に買った遊びのトラック。
これが、いくら言ってもなかなかわかってもらえないんです。
他県ナンバーの積載車で来てるアイツ、買い取りじゃないのか?
じゃあ、何しに来たんだ?
窃盗団か?
……と、露骨に疑われたこともありました。
こんにちは!
このトラックで、何かお手伝いできることはありませんか?
「ん?」
「あ〜、ダメだよ」
え?
「流されたクルマも船も自販機も、みんな所有者がいるからね」
「勝手に持って行ったらダメだよ」
いや、そうじゃなくて、何かお手伝いできないかと……
「ダメダメ」
こういう人達は、地元の仲間にこう自慢したかもしれません。
「窃盗団が来てたから、追い払ってきた」
善意で来た個人だと、信じてもらえない。
そんなことも、よくありました。
今となっては、笑い話ですけどね。
でも、そういう扱いを受けたところはこちらもきちんと覚えてて、二度と行ってません。笑
さて。
自動車に乗る人ならご存知だと思いますが、自動車保険の多くは、天災は免責。
津波での水没だと、保険金がおりません。
それを知らずに、保険会社に電話して、「水没しちゃいました」と言うと。
「天災は免責です」と言われて、「この人のこの車は津波で水没」と記録されて、終了。
ちょっと悪知恵の利く人は、保険会社に電話して、こう言います。
「たまたま運が良くて、水没はしなかったんですけど」
「でも、その後でちょっと動かした時に、水没してる場所にクルマを落としちゃいました」
天災は免責だけど。
自分の過失ならば保険金がおりる。
それを知ってて、最初にそう言うわけです。
もちろん、保険会社だって、その辺は承知してるから。
「ならば、お車の現状を確認に行きますので」
「今の状態のまま、動かさないで待っててくださいね」
地域のみんなで一致団結して、どんどん片付けていこう!
よし、次はあいつのクルマだ!
……って時に。
いや、ちょっと待って。
保険会社の人が来るまで、オレの車は動かさないで。
……とか何とか。
あいつ、何やってんだ?
それって保険金詐欺じゃないの?
みんなの足を引っ張りやがって!
……とか何とか。
そういう感情的な対立が発生しただけでなく。
あ、そうか!
自分の過失を主張すればいいのか!
……と気づいた人が、保険会社に電話するわけです。
「この前、津波で水没って言いましたけど」
「そうじゃないんです」
「津波そのものでは無事だったんですけど……」
「津波で水没したって、おっしゃいましたよね」
ガチャ、ツー、ツー、ツー。
契約書をきちんと読んでなかったの?
……と言えば、それまでなんですけど。
正直者にバカを見させることで儲けるのが保険会社。
ところが、お金を目当てにウソをつくヤツには甘い。
そんな感情的な不満が広がった時期もありました。
ただし、この状況ですから。
お金を目当てにウソをつく人を、一方的に非難することもできないんだよな、と。
ちょっと複雑な気持ちで、いろんなお話をうかがってました。
で。
家を流されてしまった。
職場も、仕事の道具も流されてしまった。
着の身着のままで逃げてきて、財産も何もなく、所持金も残りわずか。
見舞金やら支給金やら何やら、どれも手続きに2〜3ヶ月はかかるらしい。
行方不明の認定には、それだけでも3ヶ月かかるそうで、そこから手続きを始めると、さらに2〜3ヶ月。
とてもとても、そこまで所持金がもたない。
嫁さん子どもを、どうやって食わせる?
……と、真剣に困ってて。
そうだ!
保険金がおりないと言われた水没車。
せめて、あれを買い取ってもらえれば!
……と。
どうにも困り果てた末の、「水没車を買い取ってもらえませんか?」らしいです。
だからこそ!
そういう切実な事情と期待があったからこそ!
それで、買い取りを拒否する他県ナンバーの積載車への反発も、生まれたのかな、と。
そういう事情は、よくわかったけど。
でも、自動車商(古物商)持ってないし。
買い付け資金とか、持ってないし。
買ったところで、塩水じゃ、使い道ないし。
困ってる皆さんの力になりたい気持ちは、間違いないんだけど。
でも、水没車の買い取りは、できないなぁ、と。
他県ナンバーのクレーン付きの積載車。
これを見かけた時の、地元の皆さんの反応は2つ。
「あ!」
「水没車を買い取りに来た業者さんかな?」
(ちがいます、個人参戦のボランティアです)
「あ!」
「水没車とかを目当てに来た窃盗団じゃねぇか?」
(ちがいます、個人参戦のボランティアです)
被災地で必要とされてる物資や、皆さんが最優先で必要としているものは、日々、どんどん変化していきました。
それと並行して、積載車に対する目線も変化していったようで。
「他県ナンバーの積載車でウロウロしないほうがいいですよ」
そんなアドバイスもいただきました。
(こんなこと書き残して、次の震災で誰かの役に立つのかな?)
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