前回の「ドナドナ」に続いて、また自動車の話。
名古屋での話です。
被災地の沿岸部では大量の自動車が水没して、中古車の相場が上がりました。
リーマン・ショック以降、長期的なビジョンに基づいた景気対策を先送りしてきたために、新車の販売台数も回復が鈍い。
それで、中古車の総数そのものが減っていた。
それに加えて去年のエコカー・キャンペーン。
補助金を出して古い中古車を大量に解体処分したのが、完全に裏目に出てしまった。
そんなマイナス要因が重なって、業者さん達の中古車オークション(いわゆるオートオークション)では相場が急上昇。
零細な中古車屋さんには手が出せないレベルになってしまった。
その一方では、今回の被災地は地方部。
都市部とちがって、自動車はゼイタク品ではなく、生活必需品。
相場が上がったと言われても、買うしかない。
そこに目をつけたというか、足元を見るってやつか。
ただでさえ相場が上がった中古車に、とんでもない利益を上乗せする業者が出てきた。
「この程度のポンコツに、こ〜んなムリな値段をつけても、売れちゃったんだよ」
「もう、笑いが止まらないよね」
……などと、喜んでいる業者がたくさんいた。
その辺については、既に報道もされているとおりです。
そこで、今回のテーマが「善意と商行為の境界線」。
クルマが好きで、軽トラックだけでなく、積載車まで買っちゃうほどの重病人ですから。
クルマが好きで、周りの友人知人に頼まれて中古車を探したり買ったり売ったりしているうちに、中古車屋さんになりつつあるような人も、あちこちで知ってるわけです。
で。
名古屋や大阪や岡山あたりの、そういう人達からのお話し。
オークションで探して、落札して、手数料を払って、名古屋なり大阪なり岡山まで運んで。
それから、関東なり東北なりへ送る。
中古車の相場が上がってることに加えて、その辺のコストは上乗せされちゃうけど。
でも、こういう状況だから、利益は要らない。
かかったコストだけで何台でも渡すから、車種とかのニーズを聞いてきて。
……と言われたのさ。
これが、なかなか微妙なんです。
善意からの申し出なのは、間違いないんだけど。
そんな中古車を預かって被災地に持って行って、果たして本当に、その「希望価格」で売れるのか?
間に入った私が「ぼったくり業者」呼ばわりされて、終わりじゃないの?
売れなかったら、どうするの?
遠路はるばる東北というか、三陸沿岸まで積んできて。
それをまた、名古屋なり大阪なり岡山まで、持っていくの?
それって、私の自腹?
値段を下げなければ売れない、となった時に。
そのマイナス分も、やっぱり私の自腹?
それとも……
ある程度の台数は、そうなることを予め想定して。
それでもトータルではマイナスにならない程度に、利益をのせるべき?
でも、家もクルマも仕事も流されて困ってる人からお金を取るの?
それって、ぼったくり業者と同じでは?
……というあたりに、結論は出ず。
とにかく、お試しで1台、やってみようよ、となりまして。
名古屋から預かった1台を、被災地へ。
ホンダのアクティという軽自動車、いわゆる箱バン。
5速マニュアル、4WD、エアコン付き。
予備検査に合格してるから、法定費用(自賠責と重量税)だけ払えば、すぐに登録して乗れる。
ただし、平成4年式、走行18万キロ、見た目もボロボロ。
Yahoo!オークションなんかだと、「年式相応」とか書かれるレベルだけど。
震災前の相場感覚だと、せいぜい2万円か3万円じゃないの?
……というのが、私の印象。
そんなポンコツを5万5千円で落札。
オークション業者への手数料が2万5千円。
名古屋までの陸送料が1万5千円。
ここまでで9万5千円。
これに、明日の予備検査の受検料と、名古屋から三陸までの私の燃料代として、5千円を加えて、合計10万円。
こんなポンコツ車が10万円?
車検の法定費用、約4万円を加えたら、14万円だよ?
売れるわけないだろ!
……という言葉を、グッと飲み込んで。
んじゃぁ、売れないことを確かめてくるよ。
……と、預かってみまして。
この箱バンで名古屋を出発、東京経由、被災地に向かったことがあります。
え?
売れなかったらどうする気だったのか?
私が買い取りますよ。
え?
値引きしないと売れなかったら?
私がかぶりますよ。
その程度のリスクにビビッてたら、自腹の個人ボランティアなんか、できません。
(今までに、いくら使ったと思ってるの?)
私が買い取って、被災地での足に使うとか。
積載車は被災地に置きっぱなしにして、東京との往復に使うとか。
1〜2万円の処分料を払って解体屋さんに持っていってもらって。
このアイディアはダメだったね。
……と笑って終わりにするとか。
そんな感じで、いいんじゃないの?
(ちっとも良くないけど)
震災前の、東京での感覚だと、せいぜい2〜3万円のポンコツ車。
これを今、被災地に持って行くと10万円。
そこが、善意と商行為の境界線。
自腹を切ってでも、安く提供するべきだ!と言う人がいる一方で。
震災直後の緊急支援の段階ではない。
いくら被災したとは言っても、いい年した大人に金品の無料提供は失礼だ!
被災者が相手でも、きちんと利益を上乗せするべきだ!という人も。
そして、被災された皆さんの意見もバラバラでした。
震災から1年近く経っても、少しでも安く手に入るならありがたい!と言う方もおられるし。
震災後2〜3ヶ月の時点から「私たちは乞食じゃないので」と言い続けてきた方もおられます。
要するに、「被災地」とか「被災者」という言葉でひとくくりには語れない。
地域性もあるし、職業や生活環境もあるし、人それぞれの価値観もある。
1人1人、意見はバラバラ。
目指している「復興」というゴールのイメージもバラバラ。
その1つ1つを尊重しつつ、自分と合う人を見つけて支援していこうよ。
……ってことなんだけど。
あなたは、どっち派?
「この車、いくらですか?」
と、被災地で聞かれた時に。
どう答える?
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2012.-3.-9 Fri 13:00 from 石巻
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