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その命の刹那に

その哀しみは、どの教科書にもありませんでした。

本に助けを求め、ネットに助けを求め彷徨いましたが、どこにもないのです。当たり前ですよね。その哀しみは 私一人のものであって、誰かと同じ哀しみではないのですから。。。そして これを読んでくれる貴方の哀しみも私のものとは違うのでしょう。

その涙には 背負ってきた それぞれの人生と歴史があり、愛情の深さによって自身に跳ね返ってくる衝撃が大きい。

ペコが この世の終わりに見たものはいったい何だったんだろう。。。ペコは最後に何を思ったのだろう。。。

苦しかった命の瀬戸際に一声も上げず ただひたすらじっと耐え、最後の最後まで変わらぬ愛を私たち夫婦に与えてくれた。

よくがんばったねペコ

ほんとうによくがんばった!!

おまえが苦しみから解放された瞬間 私も一瞬 解放されたんだよ。おまえが楽になれて よかったと 心からそう思ったんだ。そして その刹那の安堵から奈落の底に叩きつけられるまで・・・どれほどの時間も必要としなかった。

『よくがんばったねペコ』・・・果たして本当に あの瞬間 私はそう言っただろうか。。。実際 私はペコの逝った時間さえ正確には把握していなくて 後で主人に聞いた。誰かが 私の声を借りて勝手にしゃべっていたような気もしている。現実なのか 何度も恐れた夢の中にいるのか どこか遠くで 『それ』をのんびりと見ている自分がいるような感覚だった。

そして時間の経過とともに 現実が忍び寄ってくる。

絶望で五官がそれぞれ別々に存在しているようで、人の身体から あれほどの量の涙が流れるのを初めて経験した。その日の夕方には目からほとんどの視力が失われるほど泣き続けても涙を止める術を知らなかった。あの時 耳は鼻は口は 果たして私に存在していたのだろうか。涙以外に あの時の私の生存を意識できるものはなかったと思います。

ペコをみつめるための瞳、ペコの匂いを嗅ぐための鼻、ペコと優しく呼ぶための口、ペコの動きを知るための耳 そしてペコを感じるための皮膚。それら全てが 目的を失って途方に暮れていた。

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