【製品と技術 ――不況を乗り越えるために――】
不況を乗り越えるために努力しているさまざまな事例を挙げて述べる。
ただし、ここで挙げるのはほんの一例に過ぎず、書かれていない各社とも多くの努力をしている。
建築・土木用鋳鉄器材の総合メーカーIT社は、おもに公共事業にたずさわる安定した企業である。
大市場に近いこともあり、シェアは高い。多種少量で、1600種はある。
不況だが、生産は変わらないという。しかし、最近は短納期を求められ、在庫を多く取りそろえて、
いつでもどんな製品でもすぐの納品できるようにしている。
その製品の種類の多さにより倉庫で保管している在庫の量は多い。
これだけが悩みである。加工・組立もおこなっている。
シェアを保っていくには、企画、研究、開発が必要である。
IT社は新製品や特許製品を多く作り出している。その例を挙げる。
不銹鋳物(ラスガードCAST)という、景観用に開発された商品がある。
これは独自の表面処理方法により、防蝕性と景観性とを兼ね備えたものである。
鋳物本来の風合いを楽しめ、しかもメンテナンスフリーである。
皇居内堀の街路灯にも採用された。フェンスや車止にも使われている。
車止(トゥインクルアイ)は、内蔵されたソーラーバッテリーにより、夕暮れになると自動点滅する。
角形のルーフドレンは、バルコニーや外廊下の溝にぴったり収まりはみ出さないので、
バルコニーを広く使え外観上もすっきりする。施工も簡単である。
ローラースライド式マンホールは、ふたの開閉時にローラーが作動するので一人でも簡単に開閉ができる。
など、安定した企業でも多くの新製品・特許製品を作り出す努力をしている。
工作機械メーカーIKは、長年の技術の蓄積と新技術の開発などがされており、
特殊合金鋳鉄は発光分光分析装置や超音波探傷試験器などで厳格な品質管理をしている。
また景観鋳物、特に大型モニュメントも得意としている。
今まで鋳物製品は川崎や筑波で組み立てられていたが、現在川口工場に改築中の建物で組立を行い、
生産、組立と一貫して行うことにより合理化が進められる。このようにメーカーでも合理化が進んでいくのである。
M社は工場の建物は約25年前に建てられ、当時従業員は50名以上いたが、
6年ほど前に鋳造ラインを更新した。現在は32名である。
3年ほど前に週休2日を導入したが、以前のラインに比べて20名程度の能力アップが出来た。
このようにラインを更新していくことも必要である。
I社はステンレス鋳物という経営が難しい業種の中で着実に伸びてきている。
ステンレス鋳物は鉄の5倍から10倍の値段がする。また固定費が高く、その削減と生産性向上を目指している。
ステンレスの美しさ、肌触り、清潔感を生かし、彫刻家をアートディレクターとして迎えて
ステンレス製品の企画デザインから製造まで一貫して行っているアトリエ工房を作った。
このように材質の特長を生かした製品作りが大切である。
アルミ鋳物のB社は、鍋・釜が主体で始まったが、時代の変遷とともに変化し
現在は鍋部門が30%、景観鋳物やその他の機械部品などが70%となっている。
景観エクステリア製品(門扉・高欄)の企画・製造・工事も行っている。
さらに従来のアルミ鋳物だけではなく、世界初の蓄光技術を開発した。
アルミ鋳物の上に最新技術を取り入れた発光コーティングを施し、暗闇の中でも光るので夜間でも識別が出来る。
この技術を利用して誘導ブロックや、階段スベリ止めが作られた。
雨天時に滑らないようにその表面には特殊金属コーティングを施してあるので、
雨でも滑りにくく夜光る誘導ブロックとして、駅やバス停、公園など広い活用が見込まれ、多くの問い合わせがある。
太陽光線などを吸収して日没後およそ8時間は発光するのでランニングコストがかからず、
施工費も安く、放射性物質は全く使用してないので環境にも優しい。
耐摩耗性、耐候性に優れており、5年はその性能を維持できる。
蓄光型発光サインは文字が光るようになっており、夜間や停電時に安全な誘導が出来るので、
公共広場、公園、地下道や遊歩道などへの設置が期待される。
これからの時代は、などの高付加価値商品の開発が必要となってくるのである。
D社は規模は小さい方だが、木型から鋳造迄の一貫した受注に対応出来る様に、
木型部門の製作と、フラン樹脂による造型・中子の製作の2つの子会社を設立し、
図面から完成までを中小企業の特性を生かして、一貫した製作工程のもとに管理し、製造している。
この特性を生かし他の企業では作らない製品も生産することが出来る。
不況対策として鋳物で扱っている製品と今までの豊富な経験を活かし、
新しい技術をもとに研究開発されたのが、オリジナルの無給油式の真空ポンプである。
軸受に自己潤滑性特殊カーボンブレードを使用しているので摩耗性にすぐれ高回転が出来、
モーター直結が可能となり小型化が実現した。
特徴として、長寿命、無給油式のため作業環境や製品が油で汚染されない、
運転音が静か、取り扱いが簡単、給油知らずで保守点検知らず、といった5つの優れた点がある。
また製品に対する細かなサポートも提供できる。
このように自社の経験と製品を活かしたオリジナルの製品を研究開発することも必要である。
T社は鋳物工場は平成5年新工場が完成し設備完了済みであり、
ほかに製缶工場が市内と新潟の2つあり製缶の主力は新潟である。
市内の製缶工場で機械加工もし、自社で鋳造した鋳物を加工して納品している。
鋳物では材質の多角化を進め、現在40種類の材質を製造している。
現在大学とT社の製造している材質の用途開発も進めている。
またコンピュータを利用した受発注をしている。
社内LANが整備されており受注した製品の流れが常に紹介出来るようにしている。
溶解管理システムや材料配合計算システムなども使用している。
今後はこのように開発と、コンピュータやシステムの利用・活用も必要になるのである。
現在の不況対策として工場が考えていることは沢山ある。
まず営業活動を活発に行なうことである。ただしなかなか受注増に結びつかない。
また生産コストをどれだけ抑えられるかが大切である。新製品の開発も重要である。
リストラも考えられている。地方進出もされている。
従業員の質の向上と人材の育成も必要である。
など、多くのことが考えられ努力されている。
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