第13話「悲しみの妖精ボン」<その2>



噴水広場から遠く離れた時計台広場。この街の名物でもある人形時計が夕刻を知らせるダンスを踊っていた。
ナビボンはその時計台の下で悲しみに打ちひしがれていた。

ナビボンゴルボンの・・・・・バカ・・・・。」

絶えず泣き続けてつかれたせいか、言葉のひとつひとつに力が感じられない。そんな彼女に、ひとつの大きな人影
が差しかかる。

ナビボン「!!」

近づく人の気配に気づき、すばやく顔を上げるナビボン。するとそこには鋭い目付きと鋭いヒゲが印象的な、こわ
もての男が立っていた。

謎の男「まさか生きていたとはな・・・。」

ナビボン「!?・・・・あなたは・・・・・・誰?」

見たこともない男からの、とつぜんの問いかけにワケがわからなくなるナビボン。すばやく立ち上がり、男を警戒
する。

謎の男「オレの名はジェイル。なんでも屋デルタハンターズのリーダーだ。ある人物からの依頼でお前を捕
獲しにきた。」


ナビボン「・・・・・わ、わたしを・・・捕獲!?いったい誰がそんなことを!?」

ジェイル「お前が知る必要のないことだ。・・・・・・もっとも、お前の正体を知った時点でその依頼人のことなど
どうでもよくなったがな。」


ジェイルの言っている言葉の意味が理解できず、頭がパニックになるナビボン

ナビボン「私の正体!?どういう意味よ、それ!・・・・・私は王ゴルボン様の守護精霊、ナビボンだよ!」

ジェイル「!!・・・・・そうか。お前はまだ気づいていないのだな。お前自身の正体、そして運命に。」

ナビボン「・・・ワケわかんないよ・・・。あなたは何を言ってるの?」

混乱がやがて恐怖へと変わり、ナビボンジェイルに恐怖を感じ始める。

ジェイル「・・・本当に何も覚えてないようだな。・・・まあいい、オレとしてはその方が好都合だ。」

ジェイルは一言そう言い放つと、ゆっくりとナビボンに近づいていく。飛んで逃げようとするナビボンだったが、恐怖
のあまり体がすくんで動かなかった。

ジェイル「依頼者からメタコロをあやつる妖精ボンという話を聞いた時、正直信用できなかったが、お前が涙
を流した時に放出したビーダフォースを感じて、全て納得できたよ。」


ナビボンメタコロをあやつる?・・・ビーダフォース?・・・・・・私、そんなこと知らないよ!!」

ジェイルはおびえるナビボンの眼前で立ち止まると、ふところから透明のメタコロをひとつ取り出した。

ジェイル「さっきも言ったはずだ、知る必要はないと・・・・。お前は危険な存在だ。プリズナーがお前の存在に
気づく前に、オレの手でお前を「無」に還す。」


ナビボン!!!・・・・私を・・・・・・殺すの・・・・?」

ジェイル「殺しはしない。お前を殺すと何が起こるか、わからんからな。・・・・・お前はこのメタコロの中にある
「無」の世界で、何も感じず、誰にも感じられずに生き続けるのだ。」


ナビボン「・・・・!!!!

ジェイル「・・・さらばだ、妖精ボン。」




ゴルボン!!!!

放心状態で一人ベンチに座るゴルボンの背筋にとつぜん悪寒が走った。

ゴルボン「なんだ・・・今の胸騒ぎは・・・・。まさかナビボンの身になにか・・・・!」

思わず立ち上がり、その場から走り出そうとするゴルボン。・・・が、すぐに立ち止まり大きく首を横に振った。

ゴルボン「か・・・関係ねえ!あんなワガママ妖精ボンがどうなろうと、オレの知ったこっちゃねえよ!」

心の中で複雑な思いが駆け巡り、イラだつゴルボンのもとに、一人の怪しげな老婆があらわれた。

老婆「そこのおにいさん・・・。何か悩みでもあるのかい?・・・ワタシの占いなんかどうかね?」

ふと我に戻り、老婆の存在に気づくゴルボンだったが、相手をする余裕もなく無視をし続ける。

老婆「悩みがある時は占いに限るよ・・・。どうだい、今なら特別サービスで1回無料にしとくよ。」

ゴルボン「・・・あのなぁ、バアちゃん!オレは今占いどころじゃねえんだよ!オレは・・・・」

老婆ナビボンが心配だ。でも助けに行こうか迷っている・・・じゃろ?」

ゴルボン「なっ!!!!」

心の内を見事に言い当てられ、思わず言葉を失うゴルボン。老婆は両手に乗るほどの大きなメタコロ型の水晶を
取り出すと、それにグッと力を込めた。その瞬間、水晶がまぶしい光を放ち、中に映像が映し出された。

ゴルボン「こ・・・これは・・・ナビボン!?」

老婆「これはこの街にある時計台広場の映像じゃ・・・。どうやらこの妖精ボンは今、何者かに襲われている
ようじゃのう・・・。」


ゴルボンナビボン・・・。でも・・・オレは・・・・!」

グッと歯をくいしばり、くやしそうな表情で顔をうつぶせるゴルボン

老婆「・・・あんたは何のために戦っておるんじゃ?」

ゴルボン「・・・・・え?」

老婆「正義・・・平和・・・。口ではそう言っとるみたいじゃが、本心はそうじゃあるまい。」

ゴルボン!!!!・・・・・・お・・・オレは・・・・。」

老婆「あんたも気づいとるはずじゃ・・・。あんたが戦うワケは、あの妖精ボンのため・・・あの妖精ボンに認め
てもらうためだということ・・・。」


ゴルボン「・・・・・・・そうだ、オレは・・・オレ自身をナビボンに認めてもらいたくて・・・。だから王ゴルボンと比
べられることに・・・・・イラだちを感じて・・・・・」


老婆「今ここでつまらん意地を張って、彼女を失ってしまったら、永遠に認めてもらえないと思うがねぇ?」

老婆の言葉に衝撃を受けるゴルボン。その衝撃はやがてあせりへと変わり出す。

老婆「さあ、行きなされ。同じ後悔を繰り返さないうちに・・・。」

ゴルボンの複雑な思いは、老婆の一言によってひとつの決意へと固まった。軽く老婆にうなずくと、ゴルボンは猛
スピードでその場から走り出した。

老婆「これで・・・・・・よかったのかい?」

走り去っていくゴルボンの姿を見守る老婆に、一人の男が歩み寄ってくる。男は老婆の横に立つと、真っ黒なフードを脱ぎ、顔をあらわにした。

謎の男「ああ。・・・・・・あとはアイツの運命しだいさ・・・。」

男は老婆に報酬の札束をわたすと、静かにその場から姿を消した。




ゴルボンが必死で走る中、時計台広場ではジェイルの魔の手がナビボンの襲いかかろうとしていた!

ナビボン「・・・い・・・・イヤッ!!」

ジェイル「・・・さらばだ、妖精ボン。」

手にしたメタコロにビーダエネルギーを込め、ナビボンに向けるジェイル。その時・・・!

????「アシスト!「いっぱつおみまい」!!」

叫びと共に、遠方より放たれた光の弾丸がジェイルを襲う!ジェイルはすばやく反応し、ふところから取り出した
タルビーダマ
のカードで弾丸を弾き返した。

ジェイル「何者だ!?」

すかさず振り返り、声の主をにらみ付けるジェイル。視点の先にいたのは、ダークイバリのカードを持つ必勝ボン
であった!

ナビボン必勝ボン!!」


思わぬ助っ人の登場に歓喜するナビボン。安心感のあまり、思わず目に涙が浮かぶ。

ジェイル「お前は・・・・・・・・・光の十勇士の一人・・・。いったい何のマネだ?」

必勝ボン「それはこっちのセリフよン!ナビボンさんに何かしたら、オレが許さないよン!!」

猛ダッシュでジェイルの下へ突撃する必勝ボン。だがジェイルの10mほどまで近づいた時、二つの人影があらわ
れ、必勝ボンの行く手をさえぎった!

必勝ボン!!!!・・・だっ、誰だよン!?」

すばやく後退し、敵を確認する必勝ボン。そこには黒いローブに身を包んだ一人の若者と、ごく普通の格好をした
少女が立っていた。

謎の青年「オレはデルタハンターズのパート、コルトカードに宿るパワーをあやつるビーダ魔道師だ!」

謎の少女「私はデルタハンターズの電話番、フローラ!う〜んと・・・・・・・・だ!(^ ^;」

必勝ボン「・・・デルタカルタか知らないけど、ジャマするなら痛い目見るよン!」

戦闘体勢を取り、ケースからカードを取り出す必勝ボン。そのカードをすばやくコルトたちに向け、大声で叫ぶ!

必勝ボン「アシスト!「そのかどをマーガリン」!!」

必勝ボンが取り出したのは、彼の十八番、ショックウェーブシステムであった!

必勝ボン払いたいけど、腹痛い(はらいたい)!!」

ビュオォォ〜!!ものすごい吹雪がショックウェーブシステムのカードから放たれ、コルトたちに襲いかか
る!だがコルトは余裕満々な表情で、ふところからカードを取り出した。

コルト「アシスト!「かがみのたて」!!」

コルトが取り出したカードは、ペルセウスボンのカードであった!その瞬間、コルトフローラの前に鏡のカベがあ
らわれ、必勝ボンの吹雪をはね返した!

必勝ボン「うわあぁぁぁぁ〜!!!!」

自ら発生させた吹雪をくらって苦しむ必勝ボン。手足が凍り付けになり、その場から動けなくなってしまった!

必勝ボン「う・・・・ぐっ・・・・!!」

ナビボン必勝ボォーン!!!」

コルト「そこでおとなしく見てな!光の弱勇士さん!」

フローラ「そうそう!「果報は寝て待て」ってね(?)」

ゆいいつの希望だった必勝ボンもやられ、再び絶望におおわれるナビボン。だが、ジェイルは容赦なくナビボン
に迫る!

ナビボン「あ・・・・・!」

ジェイル「運命には逆らってはならんのだ。こんどこそ・・・「無」に還るがいい!」

ビーダエネルギーが込められたメタコロナビボンに向けて構えるジェイル。その瞬間、メタコロから放たれた黒
い波動がナビボンを包み込んだ!

ナビボン「うあぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!!!」

体を押さえながら悲痛の叫びを上げるナビボン。黒い波動によって彼女の全身から光の粉が放出され、その姿が
じょじょに薄くなっていく。

必勝ボンナビボンさぁぁぁーん!!!!」

ナビボンが苦しむ姿を見て、必死で手足の氷を割ろうともがく必勝ボン。しかし、氷は恐ろしいほど頑丈でビクとも
しない!

ナビボン「く・・・苦し・・・・・い・・・・。な・・・・何・・・・・を・・・・・。」

ジェイルメタコロがお前の肉体を消滅させて、たましいを吸収しようとしているのだ。・・・苦しいのは今だけ
だ。そのうち何も感じなくなる。」


ナビボン「そ・・・・そん・・・・・・・・・・・な・・・・・・・・・。」

やがて意識ももうろうとなり、その場に倒れ込んでしまうナビボン。目の前が真っ白になっていく。

ナビボン(何も・・・・見えない・・・・何も・・・・聞こえない・・・よ・・・。これが・・・・「死ぬ」ってこと・・・なの・・・・?)

ナビボンの真っ白な視界に、たくさんの思い出ががうっすらと映し出される。

ナビボン(記憶が・・・・・思い出が・・・・・大切なものが・・・・消えていく・・・・・・・。)

記憶の断片が次々と消えていき、最後に残ったものはゴルボンの記憶だけであった。だが、そのゴルボンの記憶
たちも、じょじょに消えていく。

ナビボン(ゴルボン・・・・・!イヤ・・・!こんなの・・・・。ゴルボンと・・・・あんな悲しい別れ方したまま・・・・消え
ちゃうなんて・・・・・・・・・・・・イ・・・・・・・ヤ・・・・・・・・!)


意識が完全に消えそうになったその時、ナビボンの心の中に、聞き覚えのあるなつかしい声が聞こえてきた。

ゴルボンナビボン!!!・・・・・ナビボォーン!!!!」

それは息を切らしながら時計台広場にあらわれたゴルボンの声だった。だが、もはやナビボンには何も見えない。

ナビボン(ゴルボン!?・・・・そこにいるの?・・・・もう・・・何も・・・・見えない・・・よ・・・・・。)

ゴルボンナビボン!!・・・っくしょぉ!!待ってろ!・・・今助けてやるからな!!」

今にも消えそうなナビボンの姿を見て、たまらず走り出すゴルボン。ものすごい速さでジェイルの横を駆け抜け、
ナビボンに手を伸ばす。

ナビボン(ゴルボ・・・・・・・ン・・・・・・・・。たす・・・・・・・・・け・・・・・・・・・・・・・・)

ゴルボンの手があとすこしで届くというところで、完全に消滅してしまうナビボン。彼女のいた場所には一粒の涙だ
けが夕日の光で悲しく輝いていた。

ゴルボン「うそ・・・だ・・・・ろ・・・?ナビ・・・ボ・・・・ン・・・。こんなの・・・・って・・・・。」

ナビボンの残した涙の結晶を握り締め、悲しみに胸を痛めるゴルボン。その場にひざまずき、悲しみの涙を流す。

ジェイル「一足遅かったな。妖精ボンはたった今「無」の世界へと還っていった。」

ナビボンのたましいを吸収したメタコロを手に取り、ふところにしまい込むジェイル。彼の手の中でメタコロは少し
ずつ淡いピンク色へと変色していった。

ジェイル「これで、もうここには用はない。・・・引き上げるぞ、コルトフローラ。」

悲しみに涙するゴルボンに背を向け、その場から去ろうとするジェイルコルトフローラもそれに続く。

ゴルボン「待てよ、オッサン。・・・ナビボンを・・・オレの仲間を傷つけたまま、逃げられると思ってんのか?」

ジェイル「オレと戦う気か?・・・やめておけ、お前の実力ではオレには勝てん。ミジメな思いをするだけだ。」

うつむきながらジェイルの方へと振り向き、バトルセットを取り出すゴルボン。憎しみの感情が内からこみ上げる。

ゴルボン「うるせえ。お前だけは・・・・お前だけは絶対に許さねえ・・・。叩き潰してやる!!!!

怒りに身を震わせるゴルボンの体から、すさまじい覇気が放たれる!思わず圧倒されるコルトフローラ

ジェイル「・・・コルトフローラ。すまんが時間をくれ。速攻で片づける。」

フローラ「え!?・・・でも・・・。」

ジェイル「心配はいらん。妖精ボンのいないアイツなど敵ではない。・・・おのれの弱さを身に叩き込んで再起
不能にしてやる。」


ジェイルコルトフローラを後ろへ下げさせると、静かにバトルセットを取り出しゴルボンの前に立った。

ジェイルゴルボン・・・。伝説のBBマスターと同じ名を持つ者よ・・・。」

今まで無表情だったジェイルの表情が、とつぜん鬼のような恐ろしい顔へと豹変する!

ジェイル「おのれの弱さ・・・、妖精ボンを守れなかったふがいなさを感じながら、くち果てていくがいい!」

To be Continued



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