第14話「レジェンドカード、発動」<その1>
〜前回までのあらすじ〜
黒い水晶団、ダークムーンとの数々の激戦を突破し、光の十勇士を探す旅を続けるゴルボン一行は、日頃の旅
と戦いでの疲れをいやすため、娯楽の街「エンジョス」へとやって来た。
故郷「ゴルディ村」にはない様々な娯楽施設に心躍らせるゴルボン。自分の欲望が抑えきれなくなった彼は、つい
に残り少ない旅の資金をバクチに使ってしまう。不幸にも最初に試みたバクチがイカサマであったため、ゴルボン
はあっという間に旅の資金をかすめ取られてしまうのだった。そのことが原因でゴルボンはナビボンと大ゲンカし、
結果、彼女の心を深く傷つけてしまう。
ゴルボンの言葉で傷つき、悲しみに打ちひしがれるナビボン。そんな彼女にデルタハンターズと名乗るグループ
のリーダー、ジェイルの魔の手が迫る。
そのことを謎の占い師によって知らされたゴルボンは、ナビボンを救うためジェイルと戦うが、圧倒的な実力差の
前に敗れ去り、目の前でナビボンを失ってしまったのだった。
コバヤシ(おそい・・・。約束の時間はとっくにすぎているというのに・・・。何をモタついているのよ、デルタハン
ターズ!)
ダークムーン城を囲む強固な城壁の一角で、あの女戦士コバヤシが、何者かを今か今かと待っていた。言葉尻
を聞くかぎりでは、どうやらデルタハンターズと待ち合わせをしているようだ。
ダークムーン戦士「アイさぁ〜ん!こんな所にいたんですかい〜?」
城門の前でイラついているコバヤシに、一人のダークムーン戦士が駆け寄ってくる。コバヤシが視点を移すと、そ
こには緑色の鎧をまとった気合いの入った青年がいた。
コバヤシ「あら、シュンくん。どうかしたの?息を切らして・・・。」
ダークムーン戦士「へへ、その呼び方はやめてくだせえ!オイラはオオタって呼ばれてる方が様になってる
んすから・・・(=^ ^=)」
照れながら頭をへコヘコさせるオオタ。どうやら彼はコバヤシに弱いようだ。
コバヤシ「・・・で、何か用?シュンくん。」
オオタ「あっ!そうだったゼ!・・・アイさん宛てに電報が来てるんすよ!!」
ふと用事を思い出し、あわててふところから電報を取り出し、コバヤシに手渡すオオタ。コバヤシはすぐさま受け
取った電報の内容を確認する。
コバヤシ「これは・・・デルタハンターズからの・・・・・・!!」
急にコバヤシの電報を持つ手に力が入る。電報はその力に耐えられず、グシャッと形をくずした。
オオタ「?・・・どうかしたんですかい、アイさん?」
コバヤシ「・・・ありがとうシュンくん。もう戻っていいわよ。」
ワナワナと肩を震わせながらも、必死で感情を押え込むコバヤシ。そんな彼女の態度に異変を感じたオオタは、
素直に言う事にしたがった。
オオタ「わ・・・わかりやした。・・・ここは冷えるから、早めに中に戻ってくだせえ。・・・それじゃ!」
オオタは一言そう言うと、そそくさと城内へ戻っていった。オオタの姿が城内へと消えた瞬間、コバヤシの肩のふる
えがはげしくなっていく。
コバヤシ「貴殿に例の妖精ボンを渡すことはできない。妖精ボンは我々の手で処分した・・・・だと・・・・!?」
激情に駆られて、はげしく電報を破り捨てるコバヤシ。息を切らしながら必死で感情を押え込もうとする。
コバヤシ「ヤツめ・・・、あの妖精ボンの力に気付いたなぁぁっ!!」
コバヤシの怒りに共鳴するかのように、雷鳴がはげしく鳴り響いた。
もうろうとした意識の中、だんろのパチパチという音だけが聞こえている。必勝ボンがうっすらとまぶたを開くと、そ
こは灯かりで全体が照らされた、白い部屋のベッドの上だった。
必勝ボン「うん・・・・・、こ・・・・ここは・・・・。」
周囲を見まわす必勝ボン。自分が最後に覚えていたのは時計台広場で凍り付けになり、デルタハンターズによっ
てゴルボンが敗れ去る所までであった。それだけになぜ自分がこんな場所にいるのか、全然理解できなかった。
必勝ボン「オレ・・・・たしか凍り付けになったまま気を失って・・・・それが、なんでこんな所にいるのかよン?」
ワケがわからず首をかしげる必勝ボン。その時、部屋の扉が静かに開き扉の影から一人の少女があらわれた。
やぶSAN「!!・・・・必勝ボンさん!?目が覚めたんですね!よかった!」
必勝ボン「や・・・やぶSAN!?」
見覚えのある少女の姿に、思わずビックリする必勝ボン。少女は感激の涙を流しながら必勝ボンに抱きついた。
やぶSAN「お医者様がこのままじゃ命が危ないっておっしゃってたから・・・。本当に心配したんですよ!?」
やさしいながらも、強く必勝ボンを抱きしめるやぶSAN。彼女の温かさを感じ、必勝ボンはたまらず赤面する。
必勝ボン「そ・・・それはそうと、なんでやぶSANが?・・・それにここはどこだよン?」
やぶSAN「あ・・・はい、ここは「エンジョス」の一角にある宿屋です。私はビーダ合唱団が現在行っている
演奏旅行の途中で、偶然この街に立ち寄ったんです。」
やぶSANの言葉を聞き、ようやく広場での出来事からの流れをはあくする必勝ボン。同時にそれはあの悲劇が
現実であったことを認めざるを得ないということであった。
必勝ボン「そうかよン・・・。やっぱりナビボンさんは・・・・・・・。そ、それじゃあ、ゴルボンさんはっ!?」
やぶSAN「・・・・・・・そ・・・・それが・・・・・。」
必勝ボンの問いかけに、顔をふせるやぶSAN。寝室が重苦しい空気に包まれた。
必勝ボン「ま、まさか・・・・ゴルボンさんまで・・・・・。」
やぶSAN「い、いえ・・・。ゴルボンさんの方もお体の方は大丈夫でした。・・・・ただ・・・・・・・」
謎の男「・・・ヤツのことは忘れろ。」
やぶSANの言葉が終わらないうちに、またも寝室の扉が勢いよく開いた。次に扉の影からあらわれたのは黒い帽
子とマントを身につけた、一人の男だった。
必勝ボン「な、何者よン!?」
やぶSAN「あ、あなたは!・・・・・必勝ボンさん、この方があなたがたを助けて下さった方なんですよ。」
男の放つかすかな覇気を感じ、敵視する必勝ボンだったが、やぶSANの言葉で、男に対する警戒心を解いた。
必勝ボン「そ、そうだったのかよン。・・・どうもありがとうよン。」
謎の男「礼などどうでもいい。・・・・そんなことより、ヤツの・・・ゴルボンのことはもう忘れるんだ。」
必勝ボン「!?・・・・ど、どうしてだよン!!」
謎の男「ヤツはもう戦えない・・・。今、アイツを見ればきっと後悔するだろう。」
必勝ボン「え?」
男の言葉がイマイチ理解できない必勝ボン。だがやぶSANはその言葉の意味を知っているのか、なぜか悲しげ
な表情へをする。
謎の男「意味がわからないようだな。・・・まあいいだろう。オレについて来ればその意味がわかるさ。」
男はそう言い放つと、すばやく寝室から出ていった。必勝ボンもやぶSANに肩を借り、すぐに男のあとを追い、部
屋を後にした。
必勝ボン「いったい・・・何があるというんだよン?」
ワケのわからないまま、ただ男のあとを追う必勝ボンたち。やがて彼らは宿屋の外にある河原へとたどり着いた。
真っ青な空にのぼる太陽の光に、思わず目をおおう必勝ボン。
必勝ボン「こ、この河原は・・・。ここがどうかしたんですかよン?」
河原の手前で立ち止まった男にたずねる必勝ボン。男は無言で、河原の一角を指さした。金色の体に赤いスカー
フを着けた、見覚えのある男が寝そべっていた。
必勝ボン「ご、ゴルボンさん!!」
ゴルボンの無事を知り、たまらず走り出す必勝ボン。衰弱して満足に走れずとも、必死の思いでゴルボンの側に
駆け寄った。
必勝ボン「ゴルボンさん!・・・よかったよン、無事だったんですね!」
ゴルボンによろこびの言葉をかける必勝ボン。だがゴルボンは横向きで寝そべったまま微動だにしなかった。
必勝ボン「ゴルボンさん?・・・もぉ〜、シカトはギャグだけにしてくださいよン!(^^;」
苦笑しながらゴルボンの肩を押す必勝ボン。決して強く押したわけではない、その軽い力でゴルボンは風であお
られたかのようにバタッとあお向けに倒れた。
必勝ボン「・・・ッ!!?」
ゴルボンの顔を見た瞬間、必勝ボンは笑顔も凍りつくような衝撃を受けた。今、目の前にいるゴルボンはまるで
別人のように弱々しく、その表情ははまるで壊れかけの人形のようであった。
必勝ボン「ご・・・・ゴルボンさん・・・。こ・・・・これ・・・は、いった・・・い?」
石ころのような、光のないゴルボンの瞳に、言葉を失う必勝ボン。無意識に彼の全身がわなわなと震え出す。
謎の男「いっただろう・・・。そいつはもう戦えないと・・・・。」
すぐに男とやぶSANも必勝ボンのもとへ近寄ってきた。男は再び冷徹な視線でゴルボンをにらむ。
謎の男「そいつはあのデルタハンターズとかいうヤツに負けたことで、本当の戦いの恐ろしさを知り・・・戦い
が怖くなっちまったのさ。」
ゴルボン「・・・・・・・。」
謎の男「チッ!・・・まるで抜けガラだな。こうなっちまったからには、二度と戦いの舞台に立てないだろうな。」
必勝ボン「そ・・・そんなっ・・・・!」
男の言葉で必勝ボンの表情に険しさが増す。たまらずゴルボンの肩をつかみあげる必勝ボン。
必勝ボン「うそだよン!?ゴルボンさん!・・・こんなところで終わりだなんて・・・!」
ゴルボンの肩を激しく揺らし、自分の想いを必死で伝える必勝ボン。だがゴルボンは沈黙したまま何も語らない。
必勝ボン「強敵にぶつかって負けたことなんて、今に始まったことじゃないじゃですかよン!シルヴァーの時
みたいに、また強くなればいい話じゃないですかよン!!」
ゴルボン「・・・・・・・。」
必勝ボン「元四のクロ様との約束は・・・悪党から世界を救うという約束はどうするんですかよン!?」
ゴルボン「・・・・・・・。」
必勝ボン「立つよン!!・・・そしてナビボンさんのカタキを・・・・ジェイルを倒しに行くんだよン!!」
ゴルボン「・・・・・もういい・・・。」
必勝ボン「え?」
ゴルボン「・・・・もういいんだ・・・・。オレもう・・・・・つかれちまったんだ・・・。」
抜けガラのような顔でつぶやくゴルボンの姿に、言葉を失う必勝ボン。
必勝ボン「ゴルボン・・・・・さん・・・・。」
ゴルボン「・・・ナビボンも・・・・死んじまった・・・・。オレじゃ・・・・もう・・・どうしようもねえよ・・・・。」
必勝ボン「ッッ!!!!」
ゴルボンの言葉に力を失い、つかみあげていた肩をはなす必勝ボン。ゴルボンはフラフラッと倒れ、再び横向き
で寝そべりはじめた。
謎の男「こいつのことはあきらめろ・・・・。もう・・・こいつはダメだ。」
男の言葉で必勝ボンの心に衝撃が走る。絶望のあまり必勝ボンは全身に力が入らず、その場にひざまずいてし
まう。
必勝ボン「せ・・・せっかくここまで・・・・がんばってきたのに・・・・こんな・・・・こんな終わりかたって・・・・!」
地面に手をつき、悲しみと悔しさに打ちひしがれる必勝ボン。そんな彼をあざ笑うかのように、冷たい風が無情に
吹きあおいだ。
悲しい現実を目の当たりにし、絶望におおわれる必勝ボン。宿屋の客室がおもくるしい空気につつまれる。
やぶSAN「必勝ボンさん・・・。これ・・・お茶です・・・・。」
うつむいたままの必勝ボンにお茶を差し出すやぶSAN。何とか彼を元気づけようと話しかけるが、必勝ボンはう
つむいたまま口を開こうとしない。
やぶSAN「元気を出してください、必勝ボンさん・・・。まだ希望がなくなったわけじゃ・・・・」
必勝ボン「簡単に言うなよン!!ゴルボンさんがああなったのに、どんな希望があると言うんだよン!!」
やぶSAN「・・・!!」
必勝ボンにどなられ、たまらず恐縮してしまうやぶSAN。そして彼女もまた口を閉ざしてしまった。
必勝ボン「ご、ゴメンよン・・・。ついどなってしまって・・・。」
謎の男「情けないヤツだ。少々イラ立ったからといって、女にあたるとは・・・。」
今まで誰もいなかった客室のドア元に、再びあの男が立っていた。
謎の男「天下に名高い光の十勇士が、女にあたるような心のせまいヤツだったとは・・・。ガッカリだな。」
必勝ボン「!!・・・な、なんだと!」
男の言葉にカッとなり、テーブルを叩きながら立ちあがる必勝ボン。あわてて止めに入るやぶSAN。
謎の男「・・・そんなことだから、妖精ボンすら満足に守れないんだよ!」
必勝ボン「・・・・ッ!!」
必勝ボンの心にナイフを突き立てられたような痛みが走る。ショックのあまりガックリと肩を落とす必勝ボン。
謎の男「フン、まあそんなことはどうでもいい。・・・それよりもお前たち、これからどうするつもりだ?」
必勝ボン「ど、どうするって・・・?」
謎の男「くだらん質問をするな。まだ戦うのかときいているんだ。」
謎の男の言葉に一瞬言葉が止まる必勝ボン。再び客室がおもくるしい空気につつまれた。
謎の男「本来、光の十勇士を集め、世界を救わなければならないゴルボンが、それを放棄したんだ。ここで
やめてもお前を攻めるヤツはいまい。」
必勝ボン「お・・・オレは・・・・・。」
意志の迷いが見え隠れする必勝ボン。ゴルボンのあんな姿を見た今、自分の意志に自信が持てずにいた。
その時・・・・・!
????「この街にいる光の十勇士に告ぐ!!」
聞き覚えのある女性の声が、「エンジョス」の街中に響き渡った。すばやく窓を開け、外を確認するやぶSAN。
必勝ボン「い・・・今の声は・・・まさか!!」
????「今から30分後にレジェンドカードを持って、この街の中央に位置する噴水広場まで来なさい!」
必勝ボン「ま・・・まちがいないよン!この声はダークムーンのコバヤシッ!!」
????「もし30分たってもあらわれなかった場合・・・・・・・」
先ほどまでにぎやかだった街内が沈黙におおわれる。息をのむ必勝ボンとやぶSAN。
????「街中にしかけた爆弾を爆破させるっ!!」
必勝ボン「・・・・!!」
とつぜんバトルセットケースを腰につけ、客室のドアへと駆け出す必勝ボン。不安になったやぶSANが強く手を
つかみ、彼を止めた。
やぶSAN「待ってください!どこに行く気ですか!必勝ボンさん!!」
必勝ボン「決まってるよン!!・・・噴水広場に・・・コバヤシを止めに行くんだよン!!」
やぶSAN「何言ってるんですか!!・・・あなたはケガ人なんですよ!?今戦ったりしたら今度こそ本当に死
んじゃいますよ!!」
両手で必勝ボンの手をつかみ、必死で止めるやぶSAN。彼女の目にはあふれんばかりの涙が浮かんでいた。
必勝ボン「やぶSAN・・・・。」
涙するやぶSANの手をとき、彼女の肩に手を置く必勝ボン。
必勝ボン「ゴメンよン・・・。でも、オレには罪もないこの街の人たちを、見殺しにはできないよン。」
そして必勝ボンは、意志を込めた強い表情で男の方へ振り向いた。
必勝ボン「これが・・・オレの答だよン。・・・・世界中の人たちに笑顔がもどるまで、オレは戦うよン!」
一言そう言い放つと、必勝ボンはすばやく寝室から出ていった。やぶSANもすぐにあとを追う。
謎の男「・・・・・・。」
男は腕を組んだまま、部屋を出る必勝ボンたちを黙って見送った。そしてずっと立ったまま、何も語らなかった。
To be Continued
