周磨 要の 2007 ピンク映画カタログ


●周磨 要プロフィル

物心ついてからの東映チャンバラに夢中になったのを皮切りに、当年とって59歳の今日まで、映画に夢中になり続けた映画好き。映画好きが嵩じてとうとう活動弁士の真似事まで始めてしまいました。
 2007年、私にとり人生の転換期がやってくる。マスコミも賑わせているが、団塊の世代第一弾の大量定年退職の年である。私も再就職先の選択定年の年を迎える。高齢者雇用の法制化で何年かは希望すれば定年は先送りできるのであるが、私はスッパリやめるつもりでいた。いたのだが…。
 この1年で情勢は大きく変化した。これまでは、早期選択定年を希望したものは、退職条件が優遇された。早い話が人件費の高い年寄りは、さっさと辞めてくれればいいリストラになるということだ。ところが、わずか1年で、定年後も何らかの形で企業に残る者には、退職条件を優遇するとの180度大転換になったのだ。
 これもマスコミを賑わせているが、大量定年退職による技術継承の問題もあるのだろう。また、高齢者雇用法制化という時の流れもある。私も、何らかの形で残ることにした。
とはいえ、会社員でなくなることはまちがいない。月に8〜10日の時給契約を考えているから、今後の職業は<パートタイマー>か、まあよくいけば<会社嘱託>である。後は<年金生活者>。いずれにしても、入社以来会社員としての「らしい」肩書きがなくなる生活に入るわけだ。
 としたら、それ以後の肩書きは何だろう。ちょっと考えてみた。まず、私がもっとも充実を感じさせられるおつきあいが3つがある。<「映画友の会」会員><話術研究会「蛙の会」会員><社会人芸能集団「あっち亭こっち一座」座員>といったところか。
市販の雑誌に投稿原稿が掲載されたのは100篇余、依頼原稿で3年間連載も持ったのだから、<映画評論家>を自称してもいいだろう。活弁の舞台も分け読みの2篇を加えれば7回の経験があるので<活動弁士>も自称できそうだ。活弁コントのステージ経験も7回を重ねているから<社会人コント演者>もいいだろう。<「蛙の会」機関紙「話芸あれこれ」編集責任者>ってのもあるぞ。2007年に限ってではあるが<日本アカデミー賞協会会員>でもある。一方で<ピンク映画大賞・投票者>でもある。<映画検定2級>(1級の合格通知待ち?)もある。いやー、結構出てきたなあ。あらためて並べて見る。

<「映画友の会」会員><映画評論家><日本アカデミー賞協会会員>
<ピンク映画大賞・投票者><映画検定2級><話術研究会「蛙の会」会員><活動弁士>
<「蛙の会」機関紙「話芸あれこれ」編集責任者>
<社会人芸能集団「あっち亭こっち一座」座員><社会人コント演者>
 サラリーマンでなくなり、社会的には<年金生活者>でも、暇つぶしのネタはこれだけあるということだ。てなことで、こういう男が今年も「ピンク映画カタログ」を繰り広げます。よろしくおつきあいの程、お願い申しあげます。
「周磨 要の映画三昧日記」
周磨 要のピンク映画カタログ 2005
周磨 要のピンク映画カタログ 2006
周磨要の掲示板 
「周磨 要の湯布院日記」

「周磨 要のピンク日記」
「おたべちゃんのシネマシネマ」
2007年ピンク映画カタログー18

2007年12月24日(月) ●お蔵出し
「桃肌女将のねばり味」 2007年公開
監督・竹洞哲也  脚本・当方ボーカル  主演・沢井真帆,倖田李梨

昨年のピンク映画大賞作品賞「悩殺若女将 色っぽい腰つき」(シナリオタイトル「恋味うどん」)の前日譚で、「続・恋味うどん」といえる一篇だ。
 うどん屋店主のなかみつせいじは、前作ラストでいい仲になった店員の吉沢明歩が、長期海外旅行にでかけていってしまったので、物足りない日々を過ごしている。(吉沢明歩は、今回は写真のみの登場である)ある時、娘の青山えりなに、修行時代の思い出を話すという形で、今回の映画につながっていく。
 前作から引き継いで松浦祐也が、知恵遅れだが愛すべき店員を、神戸浩を彷彿させる好演で出演しているが、何と、二役でなかみつせいじの若い頃も演じるのである。
 若き日のなかみつの松浦祐也(ああ、ややこしい)は、修行の旅先で吉岡睦雄のうどんの味に魅かれる。若女将の沢井真帆の店だった。吉岡は前の店主に可愛がられ、娘の沢井とは許婚のような仲だった。しかし店主は急死する。先代の味を超えるまでは、沢井とは結ばれないと、吉岡は決心する。
 吉岡は松浦に、うどんの味はなかなか教えない。塩むすびがちゃんとできたら、教えると言う。塩かげんとムラのなさ、単純なものほど難しいというわけだ。
 松浦は沢井に気があるふりをして、沢井の気持を賭けてうどんの味比べをしようと持ち掛ける。味比べの勝負の結果、沢井は吉岡を選ぶ。松浦は吉岡に、「これまでは、先代のことばかり考えてうどんを創っていただろうが、今日は素直に女将のために創ったろう。確かに単純なものがいいのだ」と、粋な台詞を残して去っていく。
 松浦(現在のなかみつ)の話を聞いた青山えりなは、「おとうさんらしい話ね」と感慨に耽る。洒落ているがシンプルすぎるお話でもある。

竹洞哲也演出は相変わらず絶品だ。好きな人に向けて団扇で顔を隠すと結ばれると信じ、秘めた思いを自慰でまぎらわす沢井真帆の切なさ。松浦祐也の気配りで、ついに彼女と結ばれる決心をした吉岡睦雄の「待たせたな」「まだ、間に合うか」の言葉の後に続く濡れ場は、近来出色の情感が盛り上がる。
 若き日のなかみつ(すなわち松浦、やっぱりややこしい)にもロマンがあった。相手は、ダイエット教室開校を夢見る倖田李梨である。だが、インド(なぜか、ここではインドがダイエットの本場らしいのがおかしい)に学びに行くという彼女に、うどん修行の身の自分は、当然行動を共にはできない。
 その、倖田李梨が、現在のなかみつのうどん屋を訪ねてくる。ダイエット教室を成功させ、20年前と全く同じ体形と若さで現れる(映画の回想なんだからあたりまえの話だが…)吉沢明歩の写真カメオ出演・松浦祐也のダブルキャストも含めて、情感溢れる演出の名手の竹洞哲也、洒落っ気も加えて今や絶好調である。

これで、今年のピンク映画カタログは、最終といたしたいと思います。年末までかなり苦戦しましたが、現在ピンク映画大賞対象作品26本鑑賞で、今年を終えることになりました。
 PGによれば、今年度封切ピンク映画新作は70本、来年以降増える情勢にはないだろうし、新作公開本数も今以上に減少していくのではないか。年頭からよほど心掛けて観ていかないと、とてもとてもピンク映画大賞参加資格はゲットできそうもない。
 私もピンク映画大賞参加は、還暦の定年にしようか。あるいは、ここまで来たのだからピンク映画と心中すると腹を括るか。まあ、年明けにゆっくり考えましょう。

今年のピンク映画カタログはこれで終わります。ピンク映画大賞参加資格云々に関わらず、来年もピンク映画カタログは続けるつもりです。それでは皆さま、よいお年をお迎えください。
2007年ピンク映画カタログー17

2007年12月7日(金) ●新宿国際名画座
「誘惑 あたしを食べて」 2007年公開
監督・脚本・佐藤吏  主演・吉沢明歩,大沢佑香

昨年のピンク映画大賞女優賞の吉沢明歩が、ここでも女の秘めた純情を切々と演じた佳編である。佐藤吏の抑えたタッチの演出も効果的だ。吉沢明歩は、西岡秀記が店長のイタリアンレストランで、バイトをしている。店長の妻のデザートが評判で、それに憧れて働かせてもらうことになったのだ。が、店長の妻は海で溺死し、今は店長の西岡秀記と吉沢明歩の二人で店を続けている。当然、デザートのメニューは廃止している。
 吉沢明歩の短大時代のクラスメート大沢佑香が、レストランで働く彼女を訪ねてくる。店長の西岡秀記に一目惚れして、吉沢明歩に仲介を頼む。亡妻を忘れられない西岡秀記は、つきあいはするが、どこか冷めている。このことを通じて、吉沢明歩は、妻へのデザートへの憧れから、今は西岡秀記への恋心に進展していることに気付く。しかし、亡妻への想いを考えれば、それは胸の内に秘めておくしかない。吉沢明歩は、そんな微妙な女心を魅惑的に表現した。
 内気でおとなしい吉沢明歩と対照的に、かつてのクラスメート大沢佑香は活発な女で、「心を解放するきっかけに…」と大人のおもちゃを入れた紙袋を、吉沢明歩に渡したりする。これが、道でヤクザとぶつかった時に似た紙袋と取り違えられ、中身が拳銃に変貌する。海岸で思わず拳銃を発射したことが、吉沢明歩の心を少し解放していくヒネリが面白い。拳銃のつもりで開けた紙袋に、大人のおもちゃが入っていて、目を白黒するヤクザもおかしい。
 西岡秀記は、デザートを復活することにして、吉沢明歩に妻のレシピを渡す。多分、二人の心はこうして接近していくのだろう。味わい深い幕切れであった。

「色情団地妻 ダブル失神」 2006年公開
監督・脚本・堀禎一  主演・葉月螢,冴島奈緒

若手監督には、淡々と日常を描いて味わいのある人が多い。「誘惑 あたしを食べて」の佐藤吏と並んで堀禎一監督も、そんな人だ。こちらはベテラン葉月蛍が、そうした作品の中で、見事な好演を見せる。
 団地妻の葉月蛍の夫の牛嶋みさをは、大成しそこなった元プロボクサーで、今は借金取立て屋の荒んだ生活をしている。隣室の冴島奈緒の夫のチョコボール向井は、しがないインディ団体のプロレスラー。二組の夫婦が、不倫や浮気を重ねた後に、夫婦の絆に目覚め、再び平凡な日常が戻ってくるまでを淡々と描く。
 プロレスなんか八百長だと見下していた牛嶋みさをが、中年レスラーのチョコボール向井の頑張りに感じるところがあり、荒んだ生活から抜けていくというエピソードがあるが、とにかくプロレス者としては、ピンク映画の低予算の中で、頑張ってプロレス会場風景を登場させたのがうれしい。
 ピンク映画には珍しく、葉月蛍と牛嶋みさをの夫婦には幼稚園の子供がいる。子供が出てくるピンクは稀だが、これも日常性を増幅するのに効果的であった。

「中年男女 一夜限りの不倫」 (旧題「不倫妻 一夜の快楽」)1994年公開
監督・脚本・北沢幸雄  主演・吉行由美,西野奈々美
 
単身赴任の夫を見送った帰りの吉行由美は、最近は夫との間に隙間風を感じている。出張前の会食がキャンセルになったサラリーマンと出会い、二人で食事をすることになる。
 もちろん、食事だけで済むわけもなく、酒席を共にし、ついにホテルでベッドトインして、だんだんと大胆になり、最後はホテトル嬢を呼んでの3P体験にまで至る。典型的ピンク映画の展開だ。次第に大胆に淫乱になっていくスター吉行由美のオーラが見事である。
 時間をほとんど一夜に限定し、別れた二人は、胸に秘めたまま日常の中でシミジミとその夜を回顧する表情に味があった。ピンク映画の王道の魅惑の一篇と言えよう。

何とか、これでピンク映画大賞の対象作品鑑賞本数が25本になり、参加資格をゲットした。しかし、驚きましたねえ。都内の専門館はPGによれば11館、仮に1館で月3本立×4週=12本が公開されているとして、少なく見積もっても100本以上になる。ところが、12月公開作品をチェックしたら、今年封切の対象作品の公開が10本に満たないのである。9割以上が旧作の公開だ。新作の減少が影響しているのだろうか。来年以降の参加は前途多難である。

常連の岐阜の「ぢーこ」さんがmixiで「11月28日これで今年度の鑑賞は23本、ピンク大賞投票基準まであと2本。(投票基準が変わらなきゃいいけど…)」とアップし、12月1日現在「これで今年の鑑賞は24本、投票権ゲットまであと1本。ようやくリーチがかかった」と、記している。やはり苦戦の状況だ。2003年43本、2004年46本、2005年41本、2006年41本と、青息吐息でやっと25本の参加資格をゲットしている私とは全然ちがう精力的な「ぢーこ」さんにして、この状況だ。この苦戦は地方だけではない。東京の鑑賞環境もかなり悪化しているということである。
2007年ピンク映画カタログー16

2007年11月7日(水) ●上野オークラ劇場
「痴女教師 またがり飲む」 2007年公開
監督・池島ゆたか  脚本・五代暁子  主演・大沢佑香,結城リナ

都会の空撮からスタートし、空からフワフワとコウモリ傘と羽が舞い降りてくる。もちろん低予算のピンク映画だから、アニメとCGの合成のようだ。それにしても、ピンクとしてはかなり凝った創りだ。池島ゆたか作品としては、「続・昭和エロ浪漫」に続いての特撮採用だが、一段と技術的に進化した。名画のパロディないしオマージュに才を見せる池島監督=五代暁子脚本コンビ、今回は「メリー・ポピンズ」か、はたまた「フォレスト・ガンプ」かとの期待が高まる。
 コウモリ傘はある高校の校庭に舞い降りる。大沢佑香が、傘をさして立っている。産休教師として、定時制高校に赴任してきたのである。そこで、超能力の数々を発揮し、童貞生徒に夢想空間の中で想いをとげさせてやったり、セクハラ体育教師にキツいお灸をすえたりする。風俗で働きながら真面目に学ぶ心もある結城リナの、プライベートで男を受け付けなくなった体の悩みを、レズで解放してやったりする。
だんだんと、あ、これは「メリー・ポピンズ」よりも、山田洋次の「学校」ネタだなということが、浮かんでくる。多分ピンクだから山田洋次あたりは、徹底してパロられて茶化されるんだなと想像していたら、さにあらずだった。
 プライベートでも男への愛に目覚めた結城リナは、何と!父と同い年の生徒の牧村耕次と恋におちる。無学歴ので建設現場などで働き続けてきただけの男で、労働災害で車椅子生活になり、妻に見捨てられたという可愛そうな男である。(牧村耕次、ここでも男の哀愁を好演!乗ってます!)そんな境遇になった時、学ぶことに目覚め定時制高校に入学した。これって「学校」の田中邦衛のイノさんのイメージではないか。結城リナは、そんな男の誠実さに尽くす気持を固め結婚する。泣かせるエピソードだ。
 悪質のヒモ野村貴浩に虐待されていたデリヘル嬢の春咲いつかに同情した馴染みの常連客の竹本泰志も、定時制高校で真面目に学ぶ一面を持っていた。彼は春咲いつかを、共に学ぼうと学校に誘う。実は、彼女は厳格な教育者の父に反抗し家出していた過去があった。誘われた学校の副校長が父であった。思いがけぬ父との再会、春咲いつかも涙々で父と和解し、その学校で学び直す決意をする。
ここまでベタベタにくると、これは山田洋次の「学校」の全面的オマージュである。後日の12日(月)「映芸マンスリー」で池島監督にお会いしたが、「まあ、たまにはこんなのも、いいんじゃないですか」と照れ気味に話していた。でも、私はこういう形の山田オマージュには好感を持つ方である。
 すべてが丸く納まり産休教師期間も明けて、大沢佑香は傘をかざして空の彼方へと、「メリー・ポピンズ」よろしく次の目的地を目指して去っていく。その時、春咲いつかや結城リナの手提げあたりに潜んで見守っていた羽も、空に去っていく。天空でそれを手にする大沢佑香、背中には天使の羽根、この羽もその一部でしたという爽やかな落ちであった。

「密通恋女房 夫の眼の前で…義父に」 2007年公開
監督・脚本・大門通  主演・新藤さやか,久須美欽一

Xcesの義父ものの定番の久須美欽一が出演の一編、今回は久須美のチャカッリ親父プラスちょい悪親父ぶりが洒落ていた。
久須美は若い頃に、田舎の商店主の竹本泰志の父に救われ育てられる。死ぬ前に店もまかされ、その妻との再婚も頼まれる。しかし、その妻も先立ち、先代への恩も返したと思うので、社長の座を息子の竹本に譲って、余生は自分の若い頃からの夢だった写真館を東京で開設しようと決心する。
 だが、東京で会社員としてそれなりのポジションを有している竹本にとっては、迷惑な話である。妻の新藤さやかも、華道教室が軌道に乗ってきたところで、東京を離れたくない。夫婦はニベもなく義父の希望を退ける。
 実は、新藤さやかと竹本泰志の夫婦仲はよくなくて、竹本には倖田李梨の愛人がいる。嗅ぎつけた久須美欽一の陰謀が始まる。嫁の新藤さやかには、義理の息子には愛人がいて、あなたと離縁するつもりだと吹き込む。愛人の倖田李梨には、彼の妻とは円満に離婚させると確約し、ただし、竹本と再婚するには商店主の女将になるのが条件だともちかける。倖田李梨は、この好条件に異を唱える余地なんて、当然ない。
 次に、久須美欽一は新藤さやかを口説き、あんな不実な義理の息子は見限って、自分と所帯を持って東京で写真館と華道教室を続けようともちかける。その気になる新藤さやか。かくして竹本泰志は、義父の術中にまんまとハマる洒落た顛末となる。
 この御礼にと、倖田李梨は久須美欽一にも体を投げ出したり、本筋とは関係ないが、新藤さやかと弟子の華沢レモン(相変わらずこの娘、熟れ売れ)とのレズがあったりと、例によってのXces調もタップリである。
 久須美欽一と竹本泰志は、血の?がらない義理の親子なので、親子丼のような変に生臭い後味の悪さがないのもよい。

2007年11月12日(月) ●シアター&カンパニーCOREDO
この日、「映芸マンスリー」で「ETUDE」が上映される。5月20日(日)お蔵出しで紹介した「うずく人妻たち 連続不倫」の原題での公開だ。福原彰監督(脚本も)のトークショーもあった。
 私は、今回の鑑賞で3度目、やっぱり圧倒的に凄い!前にもパゾリーニやベルイマンを引き合いに出したが、今年のダントツのピンク映画ベストワン、各賞総ナメになるだろう傑作であることを再確認した。
 プロデューサーであり、練達のエロチックエンタテインメントの職人脚本家と思っていた福原さんが、監督デビュー作で突然変異のようにベルイマンやパゾリーニを彷彿させる壮絶な世界に突入したのは何だろうと、思い続けてきた。トークショーで、その答えがみつかった。「浮雲」をやろうと思ったとのことだった。なるほど成瀬巳喜男か、これは灯台下暮らし、何もベルイマンやパゾリーニなんて言うことはない、日本にも男女の壮絶な世界に深く食い入った映画はあるのだ。
 中村方隆の切々たる長台詞の名演は、トークショー参加者の発言でも多くの人の注目を集めた。福原彰監督は言った。「生活に生きてきた人間の凄みと強さを描こうと思った」私が、この映画に大感動した秘密が解った!そうか!これは俺に対するエールだったんじゃないか!だから、だから感動したんだ!
 何のことか解らない人は、私の「湯布院映画祭日記2007」を覗きに来てください。延々と、半世紀の私の生活に生きてきた気持が記されています。

これで、今年のピンク映画大賞対象作品の鑑賞本数は24本。参加資格ゲットまであと1本です。王手がかかりました!あと一ヶ月強、頑張っていきます!
2007年ピンク映画カタログー15

ご無沙汰いたしました。8月13日(月)の「映芸マンスリー」の「妻たちの絶頂 いきまくり」以来でございます。
 この後、8月22日(水)から5泊6日で「湯布院映画祭」に参加、帰京後は「湯布院映画祭日記」に熱く入れ込みながら、さらに「マイストーリー」や「蛙の会」と二つの舞台をこなし、気がついたら11月になってしまいました。

8月10日(金)の日記で、「ピンク映画大賞」参加資格まであと5本の20本をゲット、「例年に比べてハイペース」なんてはしゃいでたら、もう年内もそうなくなり、あっという間にピンチに追い込まれてしまった。早速「PG」を開いて、11月のシアターガイドをチェックする。効率よくこなすために、3本立のうち2本新作の番組をチェックしていったが、これがビックリするような結果だった。
 ピンクの製作本数が暫減しているのは、ここ何年かのニュースだが、その影響がモロに出ているみたいだ。一ヶ月の番組で、新作が数えるほどしか上映されてないのである。3本立のうち2本新作なんてのは、奇跡的な事態だ。それでも、やっとみつけて11月6日(月)に浅草世界館の番組最終日に駆け込んだ。

久々のピンク映画だが、番組として当たりだった。「不倫中毒 官能のまどろみ」は相変わらず吉行由美監督のキチンとした「映画」(そう、この人の作品はいつも「ピンク」以上に確実に「映画」なんです)だった。「特命シスター ねっとりエロ仕置き」の方は例によっての渡邊元嗣流のぶっ飛び感覚溢れ、真面目な人なら「馬鹿にするな!」と怒り出しそうな楽しい映画だった。こうなると、添え物の3本目の典型的Xces旧作「義母の近親相汗 乳繰り合う」あたりも、番組のアクセントで結構面白く見られた。やはり、ピンクはやめられない。久々に再会して良かったとの感触である。

2007年11月6日(火) ●浅草世界館
「特命シスター ねっとりエロ仕置き」 2007年公開
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・らいむ,大貫あずさ

多情なヒロイン「らいむ」は、男に貢いだ果ての借金地獄。SMクラブまでに落ち込み稼いでいるが、取立て屋の西岡秀記に追いまくられている。逃げ込んだ先は吉岡睦雄が神父の怪しげな教会(快調、吉岡睦雄!ここでも怪演!)。迷える子羊たちを己の肉体を使って救う「特命シスター」を命じられる。
 エリートサラリーマンの妻の大貫あずさは、セックスレスの不満から、ホストクラブの岡田智宏とデートしたら、レイプされたあげく写真に撮られ脅されているという。「らいむ」は、SMクラブのキャリアを活かし岡田智宏をとっちめる。降参した岡田は、そそのかした者がいることを白状する。そそのかしたのは夫のようで、愛人の平沢里菜子ができたので、邪魔になった妻を罠に落とし込んだようだ。その夫が、実は取立て屋の西岡秀記、何がエリートサラリーマンか!と、「らいむ」は彼もとっちめる。ドンデン返しはそれまでかと思ったら、そそのかしの真犯人は、セックスレスの不満から夫の目を向けさせようとした大貫あずさの狂言だったことが判明する。どこまでも人を喰った渡邊元嗣流だ。大貫あずさは自立して、夫の下を去る。
そんな二転三転ストーリー展開の楽しさもさることながら、「らいむ」がシスターの衣装から始まり、露出度の大きい女王様コスチュームで、セーラームーン調に「神に代わってお仕置きよ!」と活躍する魅力と、吉岡睦雄の怪体な神父とのコンビが何とも馬鹿馬鹿しく喜べる一編だった。真面目な人は、怒り出すかもしれないので、見ない方がいいでしょう。

「義母の近親相汗 乳繰り合う」 2005年公開
監督・新田栄  脚本・岡輝男  主演・山口真里,葉月螢

Xcesでは、やもめ男の義父が定番の久須美欽一だが、今回は娘のような若い山口真里と再婚する。ところが勃起不全症になってしまう。欲求不満の山口真里は、義理の息子の横須賀正一にせまる。
 一方、横須賀正一の兄の丘尚輝と死別し、夫の頼みで再婚もせず義父と甥の面倒を見続けてきた葉月螢も、横須賀正一にせまる。決着をつけようと、3人で乱交して魅力を競いあい、山口真里と葉月螢が横須賀正一を取り合う。息子のその状態を覗き見た父は、勃起不全症が治り、4人の乱交となる。
 その前には回想と妄想で、葉月蛍と夫の丘尚輝の濡れ場も挿入されたりして、早い話が出演男女優が、とにかく無理無理でもからむという典型的Xces流である。夫の遺志を受け、貞操を守り義父と甥につくしてきた葉月螢の女の哀愁が、まあ魅力といえば魅力だが、そんなこともどうでもいい一遍である。
 同じ勃起不全症を扱いながら、男と女の心理の綾の深奥に迫った吉行由美作品「不倫中毒 官能のまどろみ」とは、えらい違いだ。でも平均的には、エロさだけを狙ったベテラン新田栄の、こちらの方が受けるのだろうな。

「不倫中毒 官能のまどろみ」 2007年公開
監督・吉行由実  脚本・吉行由実・樫原辰郎  主演・薫桜子,吉行由実

薫桜子は、文学少女の高校生の頃、作家の「なかみつせいじ」に憧れた。彼は、今は絶筆して姿を消している。編集者となった彼女は、彼に復活してもらい担当者になるのが夢だ。かつての「なかみつせいじ」の担当者であった編集長の吉行由実を尊敬している。
 薫桜子には、学生時代からのつきあいの真面目な会社員の恋人の平川文人がいるが、ベッドインしても燃えるものがない。このあたりから、吉行由実演出は冴えに冴える。女性のせいなのかどうか、とにかく吉行映画の濡れ場は、徹底した心理描写に徹しており、変にエロく盛り上げようという物欲しさが全くないのだ。文学という純粋性に恋した女の悲劇が、ここでもクッキリ浮き彫りにされる。
 実は、吉行由実編集長の夫が「なかみつせいじ」だったのだ。彼の文学への情熱は、命がけのものだった。文学を捨てさせ彼の命を救うか、彼を文学に殉じさせるか。その苦悩の果てに、彼女は彼に文学を捨てさせた。彼は蕎麦打ちに凝る世捨て人のような存在になった。その結果は、彼の勃起不全症を招く。
 ひょっとしたら回復するかもとベッドインするも、果たせない吉行由実と「なかみつせいじ」の切ない濡れ場は、ここでもエロさとは無縁で、二人の男女の心理の綾を、徹底して描きつくしている。
 編集長宅を訪れた薫桜子は、夫が「なかみつせいじ」であることを知る。手打ち蕎麦をご馳走するとのことで、一室に入る二人。憧れの作家先生を目の前にして、恋人には感じない生理的興奮に覆われていく薫桜子、若い新鮮な女に久々のときめきを覚えながらも勃起不全の恐怖で、なかなか一線をもう一歩越えられぬ「なかみつせいじ」。ここもスリリングなまでに男と女の深淵を伺わせる濡れ場である。
 二人が共有した快楽は、果たして愛がある故なのか。単なる情欲なのか。確認をするため、「なかみつせいじ」は薫桜子に自分の目の前で男と交わることを求める。感じてしまう薫桜子。続いて、「なかみつせいじ」は女と交わるところを薫桜子に見せつける。拒む彼女を、目をそらすことができないように拘束し、しかも開脚の形で緊縛する。オズオズとした男と女の濡れ場から、次第に作家精神復権の強烈な激しさに展開していくディティールが凄い。ここでも、物欲しいエッチ描写とは無縁だ。
「なかみつせいじ」は作家としても男としても回復する。「私のいる場所はあるの」と言って縄を持ち出し、緊縛で夫と薫桜子の情事の一部と化していく妻の吉行由実も鮮烈だ。
 文学表現が、文字として映像の狭間にインサートされるのも、実に効果的である。薫桜子の同僚の編集部員としてカメオ出演している国沢実監督が、実にいい味を出していた。
 共同脚本は樫原辰郎さん。何度も変名したが、今回は本来のペンネームに戻っての登場である。もっとも「THEレイパー 暴行の餌食」の梶原新辰郎は、存在しないペンネームだそうだ。確かにPGなんかでは樫原新辰郎の表記しかない。でも、私はクレジットタイトルで確認しているのだが、ある人に言われた。「それはクレジットタイトルの誤植だよ」。えーっ、クレジットタイトルが信じられなけりゃ、何信じりゃいいの!ピンクらしいエピソードだ。編集者は私の「映画友の会」の旧友の鵜飼邦彦さん。そうか、この3人が今年のピンク映画大賞の舞台で挨拶し、私は徹夜の打ち上げで楽しく飲めるなと思ってたら、仕事の打ち合わせで別行動されて残念だったが、こんな傑作をモノしたんだから、こりゃ飲んだくれてる場合じゃありませんねえ。
 でも冒頭に、『「ピンク」以上に確実に「映画」』なんて、言ってしまったが、やっぱり私は「ピンク」とい枠組みに囚われているようだ。はっきり言って、たぶん一般映画だったら、出来栄えの良さは認めても、私はこの映画を絶賛することはあるまい。私は、自分は鑑賞者であり、創作者にも表現者にもなれないと思っている。だから「カポーティ」とか「敬愛なるベートーヴェン」とか「エデイット・ピアフ〜愛の讃歌〜」を見ると、その作品完成度はさておいて創作者・表現者の狂気なんて、「つきあいきれないなあ」とウンザリするのが実感なのだ。やっぱり「ピンク映画としては…」との偏見があるのだろうか。
私は活弁という表現行為をしているが、あれは映画を楽しむ鑑賞者としての延長行為だと思っている。でも、その延長で素人寄席芸まで始めてしまった。「あなたは表現者としてのリングに、もう上がっちゃったんですよ」という人もいる。さてさて、どんなものなのか、といったところだ。
2007年ピンク映画カタログー14

2007年8月13日(月) ●シアター&カンパニー COREDO
「妻たちの絶頂 いきまくり」 2006年公開
監督・脚本・後藤大輔 主演・吉岡睦雄,千川彩菜

「湯布院映画祭日記」終了まで、「ピンク映画カタログ」のお休み宣言をしたが、8月の「映芸マンスリー」がピンク映画なのを失念していた。これも湯布院行き前に消化しておくことにしよう。
 「映芸マンスリー」では、原題の「野川」で紹介された。そういう公開のされ方がふさわしいと思わせる前衛的作品だ。終映後のトークショーでは「バートン・フィンク」が引き合いに出された。私は、やや大袈裟に言うならば、ディビッド・リンチの「マルホランドドライブ」か「インランド・エンパイア」を連想した。ピンク映画館で、予備知識なしで、いきなりこれに出会ったら、どんな印象を持ったろう。
 主人公の吉岡睦雄は、ピンク映画監督である。パソコンに向かい「野川」なるシナリオを執筆中だ。冒頭にパソコン画面の「野川」の文字がアップされ、原題のメインタイトルも兼ねているようなのが、洒落ている。妻は千川彩菜で、買物に出かける彼女をベランダから見送る。仲睦まじい風景である。と思ったら、直後に女優の結衣と浮気をしている光景が出てくる。場面はキャスト・スタッフを交えての撮影打合せ風景になり、以後は描写が混沌としてくる。現実とも劇中劇とも幻想ともつかず、脈絡のないイメージが連鎖していく。そのめくるめく感覚が魅惑のすべてだろう。理屈はいらない。私も系統だって紹介できる自信はない。
 現実は、吉岡睦雄と千川彩菜の夫婦は破綻して離婚していた。妻は自殺未遂まで起こしていた。と、思ったら、それは自伝的シナリオの一部で、劇中劇だった。撮影打合せ時の役者として、なかみつせいじと佐々木基子の顔が見える。カメオ出演かと思ったら、結核であった妻の療養に身を投じた彼の叔父の物語と、自身の物語をシナリオ上で結びつけるための役にキャスティングした二人として、次第にメインになる。吉岡睦雄が叔父夫妻を回想しているのか、幻想なのか、撮影風景なのか、判然としないまま、画面が転換していく。そして吉岡睦雄は急死、なかみつせいじと佐々木基子が主演のような展開になってくる。そんな感じで転がっていく反世界感覚が魅力だ。私もこれ以上キチンと記述できない。
 終映後は、スタッフキャストのトークショーで、壇上には映画評論家の野村正昭さんもおり、この日はいつも顔を見せる荒井晴彦さんは欠席だったが、湯布院映画祭序曲の趣きになってきた。ということで、この話題は「湯布院映画祭日記」の助走へと連動していきます。それでは後は「湯布院映画祭日記」で!
2007年ピンク映画カタログー13

2007年8月10日(金) ●上野オークラ劇場
「人妻妊婦の告白 蟷螂(かまきり)の契り」 2007年公開
監督・松岡邦彦 脚本・今西守 主演・伊藤香苗,青山えりな

妊娠も安定期に入り、心も身体も充実しているはずの伊藤香苗であるが、なぜか精神不安定だ。夫の本田唯一は出張が多く、妹の青山えりなとの思わせぶりな仲の良さも気になる。その果てに夫の出張期間中のSEX行状記ということになり、これも濡れ場の方便で映画が転がる典型的Xcesの一編。ただ、仕掛けは若干洒落ている。
 産婦人科の定期健診に行ったら、コソ泥と遭遇し、主治医の息子を偽ったコソ泥の吉岡睦雄に診察を名目にした猥褻行為を受け、最後はレイプされてしまう。帰宅の途中で自殺未遂のサーモン鮭山を助ける。信仰宗教の金を使い込み逃走中の男だった。彼は幼児願望症で、同情した伊藤香苗は、ラブホテルで慰めてやる。感動した男は横領した大金を彼女に贈呈して去る。疲れ果てて、ある家の前にしゃがみこんでいたら、そこの住人の小林節彦に親切にされ、上がって休むことになる。彼はあわれな初老の男で、事業に失敗し不肖の息子の借金に負われているコンビニの下働き店員だ。店長の小川はるみにコケにされ、隷属的な性関係に従わされている。彼にも同情した伊藤香苗は、やはり慰めてやる。不肖の息子の吉岡睦雄が、取立てのヤクザに追われて逃げ込んでくる。ヤクザがなぜか本田唯一の二役で、伊藤香苗は夫が呼び戻しにきたと一瞬錯覚し、ドキっとしたりする。彼女は、サーモン鮭山からもらった大金で親子を助ける。
 夫は出張から帰り、小冒険を繰り返し帰宅した彼女との、平凡な暮らしが再開される。夫と妹が相変わらず仲がよいのが気にならないではないが、気分は何となく落ち着いてきた。と、ウトウトしていたら呼び掛ける主治医の声、現実の主治医は吉岡睦雄で、夢落ちだったというのは案外凡だが、Xcesとしては全体に小粋なストーリーといえそうだ。
 でも、この映画のポイントは、そんなところではない。臨月の伊藤香苗の女体は、低予算のピンクだから特殊メークのはずもなく生身だろう。膨らんだ下腹部に妊娠腺が走り、乳輪は充血して大きく広がり、乳房には乳腺が青白く淡く浮いている。映画はフィクションでも、この女体はまぎれも無くドキュメントだ。
 母体保護という生物的本能があるから、妊婦はエロチックでない姿になっている。その女体に濡れ場やフェラチオを演じさせ、母乳が出てもおかしくない乳房を男に吸わせる。これはもうエッチなフィクションの枠組みを大きく超えている。原一男の「局私的エロス・恋歌1974」なみの過激さだ。もちろん、そんな高尚な志があるわけはない。エッチを追い詰めた果てに、期せずして映画の原点と本質に迫ってしまったXcesの怪作である。

「欲しがる和服妻 くわえこむ」 2007年公開
監督・深町章 脚本・後藤大輔 主演・葉月螢,千葉尚之

昭和20年の戦争末期、戦争未亡人の葉月螢と特攻隊から脱走した千葉尚之の、明日をも知れぬ切ない恋。こうくればベテラン深町章の独壇場だ。今回もその例にもれず、水準で十分に楽しめるラブロマンだった。
 低予算の中で昭和20年の雰囲気をキッチリと出す練達の職人技はさすがだ。部屋に古い箪笥と仏壇を置くだけで、さりげなく時代色を出す。外景は鬱蒼とした山間の村のロケで、これも時代色を壊さない。恥じらいながら少しずつ体を開いていくモンペ姿の葉月螢。最初の濡れ場はバストトップすら見せず、現代の一般映画に比べてもおとなしい。こういう役柄を違和感なく演じられるのもベテランの域に達しつつある葉月螢ならではであろう。やや大胆になり露出度も上がる2度目の濡れ場。最後は、漆黒の闇に桜吹雪の舞う幻想空間に浮き出た全裸のからみ。三島由紀夫の「憂国」を思い出させる耽美の世界だ。こうした濡れ場のバリエーションで見せきる深町演出が見事である。
 自分にも身の危険がかかるのを覚悟して、命をかけて脱走兵を守る葉月螢、出刃包丁まで隠し持つ必死な目の輝きは圧巻だ。彼女がなぜそこまでの思いに至ったのかの説明的描写はいっさいない。だが分かる。亡夫の仏壇に手を合わせる毎日が、もうこれ以上誰も死なたくないとの決意を生んだのだろう。このあたりの演出や演技も行間を読ませて見事であった。
 ただ、夫の戦死は誤報で終戦後復員したとの、クライマックスの濡れ場にかぶさるナレーションは、映画を軽くし残念ながら私には余計な落ちに感じた。

「痴漢電車 びんかん指先案内人」 2007年公開
監督・加藤義一 脚本・城定秀夫 主演・荒川美姫,なかみつせいじ

落ち込んだ女の荒川美姫と、落ち込んだ男のなかみつせいじが、痴漢行為で結びつき、でも女は男の指しか知らず、男は女の後姿しか知らないのに、生きる力を取り戻し、顔も見なかったまま別れていく。「痴漢電車」ものというのは、もうネタが出尽くしたと思ったが、まだまだこんな手があったのだ。(以前にもスリのネタと結びつけた「さわってびっくり」というユニークなコメディがあったが…)
 映画は、二人が遭遇するまでの3年前を順に紹介していく。女子高生だった荒川美姫は、眼鏡で内気でドジで冴えない女の子。痴漢なんかされたこともないし、魅力のない自分には一生無縁だと思っている。サッカー部の憧れの同級生の岡田智宏の練習を、遠くからそっと見つめてるだけだ。卒業して上京し、コンタクトに変え高価な流行ファッションを身につけ魅力的に変身するが、今度は借金地獄でピンサロ嬢に転落してしまう。
 3年前、やり手の一流ビジネスマンだったなかみつせいじは、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。部下の華沢レモンをはじめ、女とも不倫し放題である。だが、そんなことは長く続かない。捨てられた華沢レモンに怪文書を流され、同僚に妬まれていたこともあって、あっという間に転落の一途を辿る。自暴自棄になったなかみつせいじは、夫の不倫にも耐え最後の理解者だった妻の佐々木基子まで追い出してしまう。(佐々木基子が控えめながら実によい味をだしている。佐々木麻由子、葉月螢と今年はベテランの活躍が目立つ)
 そんな失意の二人が電車で遭遇する。痴漢でもやっちゃうかと扉近くに立つ女の尻に手を伸ばすなかみつせいじ。落ち込んでいた荒川美姫は、初の痴漢体験に戸惑うが、自分にも痴漢されるだけの魅力があるんだとの喜びから、後ろに立つ男の股間に指をはしらせる。そしてその後、憑かれたように、同じ時間・同じ電車で二人は行為を繰り返すようになる。二人の心に変化が訪れる。
 荒川美姫は、すさんだ生活を改めウエイトレスになる。痴漢されたことで自分に自信をもったせいか、爽やかな笑顔で人気者になる。そんな時、上京し就職した憧れの同級生の岡田智宏と再会する。ずっと練習を陰で見てくれていた君が好きだったと告白される。
 なかみつせいじは、若い頃の情熱がもどり、小説を執筆し授賞して有名作家になる。後姿しか知らない荒川美姫への激しい思いをつづったのだ。大学の文芸部で結ばれた愛妻の佐々木基子が、それを読んで戻ってくる。「私のことでしょう」「ああ」ちょっとだけ妻に嘘をついたなかみつせいじの微笑みも余韻を残す。
 そして、二人はその後は同じ電車に同じ時間に乗ることはなかった。踏み切りをはさんで出会う荒川美姫と岡田智宏、なかみつせいじと佐々木基子の、二つのカップル。もちろん二人はお互いを知ることもない。味わい深い幕切れだった。
 ストーリーだけを記すと「ありえねー」って感じで、そこは加藤義一流のブッ飛び感覚だが、全体の仕上がりはいつもの加藤流と異なりシットリしている。そういえば今回も「応援」の中に王道演出の竹洞哲也の名が見受けられた。

これで「ピンク映画ベストテン」の対象作品は20本になった。参加資格まであと5本、「湯布院映画祭」行き前でこの数は、例年に比べてハイペースである。
 「映画三昧日記」でも記しましたが、何故か最近多忙で、これをもって湯布院行き前の「ピンク映画カタログ」は最後、しばらくお休みとなります。次は「湯布院映画祭日記」です。完結後にはまた「ピンク映画カタログ」でお会いしましょう。
2007年ピンク映画カタログー12

2007年7月10日(火) ●お蔵出し
「女医の裏顔 覗かれた秘め事」 2007年公開
監督・加藤義一 脚本・岡輝男 主演・瀬能司,富永ルナ

人気タレント女医の瀬能司を主演に、濡れ場の方便だけでドラマが転がっていく才人加藤義一らしからぬある意味での王道ピンクの一編。でも、加藤義一らしさも健在だった。
 患者にダブルヴァギナを持つ人妻がいる。正上位一辺倒の夫と、尻フェチのバック専門の愛人との使い分けができると手術を拒むチャッカリ人妻。婚約者がいながら、元彼とオルガズムを感じる患者。オルガズムはDNAの理想的な出会いの証明という何とも無茶苦茶な瀬能司の医学理論。彼女は未成年との淫行を脅迫される。実は、彼女は大学時代にレイプされたが、そこでオルガズムを感じ、DNAに忠実に中絶しないで生んだ。今は、その息子とDNAに忠実に息子と相姦しているというわけだ。単なる濡れ場羅列ピンクだが、その設定はすべて加藤義一流ブッ飛び感覚であった。

2007年7月12日(木) ●お蔵出し
「女引越し屋 汗ばむ谷間」 2007年公開
監督・竹洞哲也 脚本・社会歳三 主演・チカッチ!,倖田李梨

貯金して、二人だけで住む無人島を買うことを夢見る同棲レズビアンカップルで、レディース専門の引越し作業員のチカッチ!と倖田李梨が主人公。チカッチ!は、かつてガードマンしていた頃に同僚にレイプされ、男性恐怖症で失語症になっている。倖田李梨は、駄目男の 吉岡睦雄の面倒を見尽くした果てに別れた過去がある。
 川の畔に佇んだ二人は笹舟を流して、無人島の夢を祈る。突然、乱れる川面。腹立ちまぎれに怒鳴りながら石を投げ込んでいる男がいる。カッとなって道端の石を蹴り上げる倖田李梨。運悪く男の頭を直撃してしまう。何と、その失神した男は元彼の吉岡睦雄だった。仕方なく家で手当てするが、吉岡睦雄はズルズルと居座ってしまう。
 駄目男のくせにどこか憎めない吉岡睦雄、だから徹底的に追い立てることができない倖田李梨、焼けぼっくいに火のつくことの不安を、無言の中に味わい深く表現するチカッチ!。この3人の共同生活を、例によって溜息が出るほどに上手い竹洞哲也演出は、コクのある映像描写で描き尽くす。本当に上手い。言語化しにくい演出の上手さということで、第二の根岸吉太郎のような存在になるのではないだろうか。
 ジワリジワリと接近され、ついに吉岡睦雄との関係を再開してしまう倖田李梨。家を出ていくチカッチ!の沈黙の情感も見事。思い出の貯金箱を譲り合い押し付けあうチカッチ!と倖田李梨。地面に落ちて粉々に砕ける貯金箱。「あの男と別れてから強くなろうと思った。だからあなたを守ることで強くなろうと思った。でも、そういうことで自分を守っていたのかもしれない」と告白する倖田李梨。ハイキーの画面で美しく描かれる二人のレズの濡れ場。去っていくチカッチ!。腐れ縁の如く吉岡睦雄と引越し作業員を続ける倖田李梨。余韻を残す幕切れだ。
 やや残念なのは、核心である3人の共同生活に入る前段の説明が長過ぎる。ここは、過去の状況説明は手際よく刈り込んで、3人の共同生活の微妙な心理の綾と変化を、一気にジックリ描くことに集中してほしかった。
2007年ピンク映画カタログー11

2007年6月10日(日) ●お蔵出し
「THEレイパー 暴行の餌食」 2007年公開
監督・国沢実 脚本・国沢実・梶原新辰郎 主演・星野あかり,池田光栄

OLの星野あかりは、引き篭もりの弟の池田光栄の面倒をみているが、ややウンザリしている。ある日、行きずりの男の野村貴浩に「新しい世界を知ってみないか」と声をかけられる。そんな時、上司に命じられての残業中にレイプ魔に襲われる事件に遭遇する。翌日ひょんなことでレイプ魔が上司だったことが判明し、ガックリと落ち込んで、野村貴浩のことを思い出しコンタクトを取る。
 野村貴浩は実はAV監督で、星野あかりはAVの世界に引き込まれる。野村貴浩を愛していたAV女優の安田ゆりは、嫉妬の果てに彼の元を去る。ムシャクシャして歩いていて星野あかりの弟の池田光栄とぶつかり、それが縁で同棲する。そして、弟の池田光栄が姉の庇護から自立するきっかけになる。と、まあこんな因果話のストーリーをなぞっても、才人コンビの国沢実=梶原新辰郎コンビの、この映画の魅力は語れない。
 野村貴浩のAV監督が好演である。一見、女をヒモにするような色魔の感じで登場するが、女に寄りかからねば生きられないダメ男のヒ弱さを、見事に表現する。そこから、女と男の力関係を逆転させていく星野あかりとの愛欲模様が、極めて魅力的に描かれる。カメラをお互いに持ち替えながらのAVスタジオの濡れ場は、照明効果が効いて官能的魅惑に溢れる。
 オフィス・レイプの青い照明効果も良い。池田光栄が安田ゆりと同棲していることを姉に告げる時に、鼻血(ブツかった時のこと)のポーズでさり気なく示す描写も粋だ。国沢実=梶原新辰郎コンビの歴史に、新たな佳作がまた1本追加された。
 残念なのは、このコンビ、特に樫原辰郎が新辰郎名義からさらに今回は梶原になり、かつてのブッ飛び感覚がどんどん希薄になっていることだ。今回も、冒頭で池田光栄が姉のシャワーを覗き興奮して、近親相姦に至ったと思いきやすべて妄想で、シャワーをブッかけられてチョンとなる飛躍にその片鱗が見えたくらいか。
 このコンビ、本当に「活動屋」ドン・シーゲルから、「名匠」の線のクリント・イーストウッドへと転身してしまうのだろうか?

2007年6月18日(月) ●お蔵出し
「続・昭和エロ浪漫 一夜のよろめき」 2007年公開
督・池島ゆたか 脚本・五代暁子 主演・大沢佑香,日高ゆりあ

前作に引き続き、今作も低予算の中で、昭和の時代の雰囲気をよく出している。主婦の割烹着に御用聞きに卓袱台。ロケ地もよく時代の雰囲気を醸し出す場所を選定した。道端にスクーターを置いて、さらに雰囲気を盛り上げるのも憎い。時代は東京オリンピックの昭和39年、実況放送と記録フィルムを巧みに活用し、合成特撮(というよりもチープな合成写真に近いが)で当時の銀座の風景も登場する。
 特にピンク映画ならではの時代色は、生地が大きい女性下着だ。これが逆の意味で妙にエロティツクである。
カップルは5組。平凡なサラリーマンの課長なかみつせいじと吉原杏の中年夫婦、その息子の山口慎次と地方の旧家のお嬢様の大沢佑香の身分違いの恋、大沢佑香と親が決めた親戚筋の許婚の野村貴浩、上司のなかみつせいじを誘惑してオフィスラブを楽しむ日高ゆりあ、なかみつせいじの娘の春咲いつかはは組合活動家の平川直大のもとに嫁ぎ女の子もいる。この5組を駆使して描かれるのは、徹底して昭和の古めかしい男女関係の価値観だ。
 山口慎次と大沢佑香は、身分違いのことからなかなか一線を越えられない。「接吻は戯れだけなんですか」、大沢佑香のこんな台詞は昭和の女ならではだろう。ついに一線を越え、父なかみつせいじに結婚の意志を告げる山口慎次。激怒するなかみつ、「よそさまのお嬢さんを傷ものにして!」「分相応を考えろ!」、昭和の価値観でなければ出てこないことばが乱発される。
 反面、奔放なセックスライフを楽しむ日高ゆりあがいる。上司のなかみつせいじは、一度は誘惑されて不倫に走ったが、その乱脈ぶりを知って「自分をもっと大事にしなさい」と言って去る。(日高ゆりあの部屋の映画ポスターが、これも時代色をよく出していた)
 前作で濡れ場ゼロだったなかみつせいじと吉原杏の夫婦だったが、今作では濡れ場とまではいかないが、「夫婦だろ」と語りかけて布団の中になかみつせいじが入っていく濡れ場のサワリがある。「ウチのカカすりゃタダでよい」としっかり妻とすることもするが、浮気もチャッカリいたしていて、それが男の甲斐性と自然体で思っている昭和男の姿をよく現している。
 組合活動で酒量が増えた夫の平川直大に、妻として一言自省を促したら殴られ、春咲いつかはなかみつせいじと吉原杏の実家に、娘を連れて帰ってきてしまう。「おまえのいる場所はここにないと思え!出戻りなんて許さん!」ここでも怒り狂うなかみつせいじは昭和の父だ。迎えに来て謝る平川直大に「男が女房に頭を下げることなんてない!」と言うなかみつせいじ、昭和の価値観は、さらに丸出しになる。
 今の父(つまり平成の私の世代)なら、こうはいかない。そんなことを放っておくとDVで娘が殺されかねない時代である。「好きなだけいていいよ」と多分言うだろう。春咲いつかと吉原杏の会話「お父さんと何で喧嘩したの」「ずいぶんしたけど何でだか忘れたわ」そんな会話を胸にして、春咲いつかと平川直大の夫婦は仲直りして帰っていく。「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言われた昭和の良き時代だ。
 旧家のお嬢様の大沢佑香は、東京まで追ってきた許婚の野村貴浩の思いに撃たれ、結局は故郷に帰っていく。ラストの至福に溢れた濡れ場は、「分相応」の正当性を見事に表現する。
 前作で、どうみても平成の顔になっていないと私が酷評した女優陣は、今回は見事に昭和の女の顔になっていた。池島ゆたか監督が意識してたかは知らず、私の推定だが、平成の女優に昭和の雰囲気を出させる仕掛けは、コロンブスの卵だった。要するに昭和40年代のピンク女優の雰囲気を再現すればいいのである。濡れ場を演じるのがとんでもない不道徳をしているような隠微で後ろめたい雰囲気、それで昭和の女が表現できたのだ。
 ピンク大賞の打ち上げで辛口なことを言ってしまいましたが、春咲いつかさん、今度は見事なまでに昭和の女でした。日高ゆりあさんについては、あの時代にこんな奔放な女性はいたような気もするし、やっぱりやり過ぎてるような気もするし、微妙といったところです。以上、面識のある女優さんがたなので、あえて敬称付きでここは語らせていただきました。
 てなことで、徹頭徹尾ガチガチの昭和の価値観で固めつくされた一編だ。これを素晴らしいと思うか、アナクロと見るかは、個人の趣味の問題だろう。私は、この保守的だがつつましやかな男と女の関係を支持する方の人間である。

ピンク映画は「最後のプログラムピクチャー」の楽しさであると位置付けた拙文が「映画三昧日記」にあります。そちらにも寄り道してください。
2007年ピンク映画カタログー10

2007年6月2日(土) ●浅草世界館
「義父と娘 夫の目を盗んで…」 (旧題「嫁の告白 凄い!義父さんの指使い」) 1998年公開
監督・脚本・伊藤正治 主演・佐久間百合子,麻生みゅう

夫が死んだのに、いつまでも義父につかえている佐久間百合子。亡夫の親友と深い関係になっているのだが、籍を抜いて結婚するまでには踏み切れない。それは義父を愛してしまったからだということに気がつき、最後は義父と結ばれる。
 と、こんなストーリーを紹介しても何の意味もないのがXces映画、佐久間百合子のデート場所のバーのマダムが吉行由美で、亡き夫の友人に想いを寄せていたり、義妹の麻生みゅうが奔放な性を謳歌していると思ったら、彼女も心の底では亡き兄の友人を愛していたりと、濡れ場のカップルの組み合わせには事欠かない。典型的なXces映画の一編でした。佐久間百合子の清楚な未亡人ぶりが、チョットいい。
それにしても、改題「夫の目を盗んで…」はいくら何でも映画の中身と食い違いすぎている。

「ロリ作家 おねだり萌え妄想」 2007年公開
監督・渡邊元嗣 脚本・山崎浩治 主演・藍山みなみ,神田ねおん

低予算の中で美術を工夫し、渡邊元嗣流の跳んだイメージの連続で楽しませ、藍山みなみの変身ぶりも魅力的で、スター映画としても成功している。
 処女作の純愛小説が大人気を集めた藍山みなみの少女作家の、2作目を書かせる編集担当として西岡秀記が差し向けられる。自分のことを「ボク」といい、ダサい眼鏡、風呂嫌いで臭く、着るものに無頓着、家事万端はすべて駄目で編集者をこき使う藍山みなみが、まず可愛らしい。
 求めているのは純愛小説なのに、なぜか途中から官能小説になってしまう。それを劇中劇で、藍山みなみと西岡秀記が、低予算ながら工夫しつくしたファンタスティックな空間の中で演じるのが楽しい。
 藍山みなみは処女だから、純愛小説を書けた。でも、いつまでも処女のままなので、妄想が膨らみ官能小説になってしまうという。編集者としてダメ女の藍山みなみを西岡秀記が面倒を見ているうちに、藍山みなみは女らしく変身する。この変身ぶりあたりは、藍山みなみの魅力全開である。二人は愛し合うようになり、西岡秀記は処女を破って、藍山みなみの妄想も消え、再び純愛小説を書けるようになる。
 ところが、西岡秀記は官能小説の方を売り出して大成功してしまい、出版社の主要ポストに返り咲く。西岡秀記は将来の社長候補の妻の華沢レモンと不倫して、左遷された身だった。不倫が露見したのは裏があり、彼を愛しているストーカー神田ねおんの画策だったのだ。神田ねおんが安部公房の「箱男」のごとくダンボールをかぶって歩きストーカーするのも、何とも人を喰っている。
 藍山みなみ宅には押しかけファンでオカマちゃんの横須賀正一が居候している。「ワン!」しか言わず犬のポーズでうろつきまわる怪体な人種だ。
 西岡秀記のライバルの編集者に吉岡睦雄がいる。ストーカー神田ねおんが西岡秀記に夜這いをかけた時、横須賀正一の策謀で、それと知らず彼女は吉岡睦雄と結ばれてしまう。でもいいやと、神田ねおんと吉岡睦雄のカップル誕生。西岡秀記もストーカーの神田ねおんから解放されて、藍山みなみとのカップルでメデタシメデタシ。
 すべてが人を喰ったストーリー展開で、それを凝った美術でファンタスティックな跳んだイメージを展開する。渡邊元嗣流はここでも全開でした。
2007年ピンク映画カタログー9

2007年5月14日(月) ●お蔵出し
「妹のおっぱい ぷるり揉みまくり」 2007年公開
監督・加藤義一 脚本・岡輝男 主演・荒川美姫,吉岡睦雄

翔んでる感覚が持ち味の加藤義一作品で、「妹のおっぱい ぷるり揉みまくり」のタイトルとくれば、女っぽくなった妹に兄貴が悶々とするコメディ・タッチを想像するが、あにはからんや情緒あふれるメロドラマだった。応援に竹洞哲也とタイトルされていたが、監督と応援との関係は、どんなものなのだろう。しっとりと男女の関係を綴る竹洞哲也のムードをかなり感じた。

誕生日が同じ荒川美姫の妹と吉岡睦雄の兄、実は孤児で本当の誕生日は不明、施設に引き取られた日を誕生日としていたのだ。しかも、里親は兄が大学生で妹が中学生の時に事故で死亡。兄は学校を辞めて妹の面倒を見て、大学まで進学させる。当然、兄妹の絆は深くなる。しかも年頃になると、互いに男と女を意識して、時にドキッとときめく。

実は、二人は本当の兄妹でなかった。同じ日に施設に保護された二人は仲良しで、兄に里親が決まった時に妹が別れたくないと泣き、里親が不憫に思い、二人とも養子にしたのである。兄は、里親の母の死の直前にそれを聞かされるが、中学生の妹には知らせない。大学生となった妹は、戸籍を確認してそのことを知る。「何故、知らせてくれなかったの」「中学生のおまえにショックを与えたくなかった。いや、おまえが妹でなくなったら、失うような気がした」切々と語る吉岡睦雄がいい。今年も演技賞ものだ。

「SEXって何?それで変ってしまうの?」と荒川美姫。吉岡睦雄との最初で最後の関係をして、吹っ切るように恋人の高見和正の胸へもどっていく。「俺達、いちばん幸福な兄妹だよな」妹の背をソっと恋人の方に押し、背を向けてふり向くことなく手だけ振って、吉岡睦雄は去っていく。情感あふれるいいシーンだ。

サブ・エピソードにも味がある。吉岡睦雄に好意を持つ職場の同僚の合沢萌は、実の兄との愛欲地獄にも陥っている。荒川美姫のクラスメート華沢レモンは、高見和正を好きで、荒川美姫に奪われたと逆恨みして、吉岡睦雄を誘惑することで報復する。「あなたの大切なものを奪ってやった。あなた達は変態だ」と捨て台詞を叩きつける。すべてが荒川美姫と吉岡睦雄の心理の綾に連動しているのである。

2007年5月20日(日) ●お蔵出し
「うずく人妻たち 連続不倫」 2006年公開
監督・脚本・福原彰 主演・佐々木麻由子,岡田智宏

素晴らしいことを発見した!(それほどでもないか)すでにお蔵出しで紹介の「痴漢電車 濡れ初めは夢心地」と本作の「うずく人妻たち 連続不倫」が2006年の年末公開なので、PGベストテン投票用紙を確認したら2007年選考対象のようである。とすると、5月20日現在で今年度対象の鑑賞作品は一気に12本!これは悪いペースではない。お蔵出しを提供していただいた方に感謝!!である。

監督・脚本・福原彰、企画・福俵満って、これ同一人物であるから、要は福原彰ワンマン映画である。プロデューサー福俵満の活躍は高名だが、脚本家としてもかなりの実績がある。ピンク映画としての要素を自然体で無理なく取り入れ、エンタテインメントにまとめる王道を踏まえた練達の職人芸だった。その福俵満の、私の知る限り初監督作品ではないだろうか。そして本作は、エンタテインメントを大きく超えて夫婦の深淵に迫ったベストテン級の秀作となった。プロデューサーに大ベテランの深町章の名が見えるが、その協力よろしきを得たと言ったら失礼だろうか。

映画は1995年と2007年の2部構成である。第1部は、岡田智宏と美月ゆう子、岡田智宏と佐々木麻由子の二つの濡れ場で構成される。第2部も、「なかみつせいじ」と御贔屓里見瑶子嬢(私にとっては久々!)と、岡田智宏と佐々木麻由子のカップル再現の、二つの濡れ場で構成される。練達の職人脚本家・福原彰らしいキチンとした構成が、まず素晴らしい。

ベテラン佐々木麻由子、「不倫同窓会 しざかり熟女」に先立ちここでも入魂の名演だ。勝負をかけてきたのだろうか。第1部では、37歳にして8歳の娘の母。年の離れた27歳の作家の卵の岡田智宏と不倫関係にある。第2部は、その12年後なのだから49歳で、39歳の岡田智宏と再会する。もう年増なんてことを恥じず隠さず、ガムシャラに突進しての熱演だ。佐々木麻由子は、さらに女優賞に一歩接近したと言えそうだ。

第1部は、岡田智宏と美月ゆう子の濡れ場で、いきなりスタートする。エンタテインメントとしてのピンクの定番で、客を一気に引きつける。作家の卵の岡田智宏は、何人もの年増女と不倫を重ねており、しかも関係に対してかなり無責任のようなことを、ここで印象づける。濡れ場で見せながら、その中で主人公の性格描写もキチンと押さえている好脚本だ。相変わらず福原彰の練達の職人技が見事だ。

次いで岡田智宏と中年の人妻の佐々木麻由子との濡れ場を連続させることで、岡田智宏のいい加減さが、さらに増幅しダメ押しになる。不倫旅行の旅先、荒波が砕け散る岸壁、岡田智宏が甘ったれた口調でボソボソと作家としての苦悩めいたことを喋る。純だけど子どもっぽすぎる彼の軽薄さが浮彫りになる。岡田智宏は、若い頃の吉岡秀隆を彷彿させる好演だ。目の先の岸壁では、女の自殺をとめている男とのもみあいと、その後に抱き合う姿が展開されるのが、遠景でよく見えない形で映される。この象徴的な場面は、ラストに効果的にリフレーンされる。そんな岡田智宏に、佐々木麻由子は「夫と別れる決心をした」言い寄り、見事に突き放される。その刹那に夫からの電話が鳴る。娘が交通事故で死んだという。

12年後の2007年の第2部(すなわち現在)「なかみつせいじ」と年下の御贔屓里見瑶子嬢の不倫妻との、オフィスラブの濡れ場で幕を開ける。瑶子嬢は夫のDVに悩んでいる。実は恥ずかしながら「久々!御贔屓里見瑶子嬢」なんて浮かれた振りをしたが、瑶子嬢にしばらく気が付かなかった。お蔵出しでブラウン管の観賞のせいもあるだろう。いきなり濡れ場で薄目で喘がれたんでは、瑶子嬢の持ち味の「視線の強さ」が出てこないということもあるだろう。女優の顔は覚えててても、体って意外と憶えてないんですね。故林由美香さんのスレンダー(悪く言うと貧乳)とか、風間今日子の豊乳とか、よっぽど特徴がないと憶えられないものです。女体って、結局そんなに変らないものなんですね。

余談・冗談さておき、後で詳述するがこの後の御贔屓里見瑶子嬢、目力は健在で作品世界にピッタリハマり、ドラマの展開のポイントのポジションはしっかり押さえている。もはや、全体のバランスを押しのけブチこわしても、キラキラするの若さの輝きでさらってしまう存在感は薄れてきたが、作品の節目をガッチリ固められる名女優に成長しつつあるようだ。

里見瑶子嬢は岡田智宏の妻であった。気鋭の作家志望の若者は、一度は文学賞を授賞するが以後パっとせず、今はDVでウサを晴らすしがない四十目前の男に落ちぶれていた。別居話を切り出す夫に、「しばらく旅行でも行ったら、私が出てもいいけど借金の件もあるし…」と諭す。細部の事情は明かされないが、ドラマの展開のキーポイントとなる岡田智宏の旅行への送り出しを、個性の目力一つで説得力を持たせてしまう。作品のパーツとしてキチッと役割を果たす演技派の道が、開けつつあるような気がする。

岡田智宏は傷心旅行先として、12年前の土地を訪れる。そこで偶然にも佐々木麻由子夫妻と再会する。夫妻は娘の死を絆に夫婦関係を回復した。夫の中村方隆は今は病気がちで、看病のための静養旅行であった。妻との関係が破綻しかかっている寂しさから、昔のように甘えた口調で佐々木麻由子に迫る岡田智宏。「あなたはいつまでも変らない。奥さんにも嫌われて当然だ」と悪罵の限りをたたきつける佐々木麻由子。でも昔の愛欲の世界に堕ち込んでいく。愛と憎しみが半ばする女の心の底の地獄。大袈裟にいうならばベルイマンの世界である。

妻の不倫の姿すべてを、夫の中村方隆は見ていた。そして、二人の前で「これは見なかったことにする」と言う。夫婦の性の結びつきを超え、子どもの死・闘病を共に乗り越えた夫婦の生活の積み重ねの重みを切々と語る。「ギャー!」と佐々木麻由子の血を吐くような叫びがかぶさる。一瞬パゾリーニが頭を掠める壮絶さだ。中村方隆も男優賞ものの好演である。

敗北感を胸にチェックアウトする岡田智宏、旅館の主人は12年前と同じ池島ゆたかだ。狂言回し的な役への、監督のお遊び出演かと思っていたらそれだけではなかった。最近妻を失い旅館を閉めることにしたとの世間話を、シミジミと岡田智宏に語る。「ふしだら慕情 白肌を舐める舌」で男優賞候補に踊り出た池島ゆたか監督は、ここでもポイントを上げた。

さまざまな想いを胸に、12年前に佐々木麻由子と立った岸壁に、再び佇む岡田智宏。意を決したように、携帯を取り出し「やりなおそう」と妻に電話をかける。遠景には、12年前と同じ男と女の自殺・阻止・争い・抱擁の男女愛憎図が象徴的に、配されている。男と女の、夫婦の、深淵に迫った秀作である。

すべてが、暮らしを共にしてきた時間の積み重ねの夫婦の絆の絶対性へ回帰していく。このテーマは「映画三昧日記」の「映芸マンスリー」のレポートの項に関係していきます。そちらの方にもお立ち寄りして覗いてください。
2007年ピンク映画カタログー8

2007年5月6日(日) ●お蔵出し
「不倫同窓会 しざかり熟女」 2007年公開
監督・竹洞哲也 脚本・小松公典 主演・佐々木麻由子,梅岡千里

昨年のピンク大賞ベストワンの竹洞哲也・小松公典の監督・脚本コンビ作品。今回も目新しい筋立てはない。同窓会で再会した中年男女のグズグズを描くというありふれたルーチンワーク。でも、昨年度ベストワンの「悩殺若女将 色っぽい腰つき」で、「白痴の聖女」のルーチンワークを、吉沢明歩を通じて鮮やかに魅惑的に造形したように、今回も中年女性のゆらめきをベテラン佐々木麻由子を通じて鮮やかに造形した。もはや、印象的な脇役の位置に固定したかに見えてきた佐々木麻由子を、ここまでメインに引き出して魅せた(エンドクレジットでも最後の別格特出の位置づけだった)竹洞演出は、相変わらず見事だ。佐々木麻由子、早くも女優賞候補に踊り出たと思う。
 同窓会での様々な男女の出会い。バツイチの佐々木麻由子は、性欲に悩まされながらも関係には慎重になっている。同窓生には、セックスレスの夫婦生活をいいことに、遊びを満喫する梅岡千里やら、佐々木麻由子の元夫の親類で部屋を遊び場に提供してくれの、彼氏を乱交メンバーに紹介するだのの、奔放な青山えりななど、ピンクの定番パターンの女が出没する。同窓会の名を借りた仕掛けで、佐々木麻由子は元彼とベッドインでエンドとなる。
 筋立てだけでは、おもしろくも何ともないのに、竹洞哲也・小松公典の監督・脚本コンビは見事の一語に尽きる。鏡の中の自分に対して、乳房を持ち上げて「昔の私」、手を離して「今の私」と呟く佐々木麻由子。元彼とベッドインする時、「昔の私じゃない」と喘ぐ彼女、「昔と同じだよ」と囁く元彼、次第に高まる中年女の情感、監督・竹洞哲也、脚本・小松公典、主演・佐々木麻由子は、今年のピンク映画史に、素晴らしい足跡を残した。

2007年5月11日(金) ●お蔵出し
「痴漢電車 濡れ初めは夢心地」 2006年公開
監督・池島ゆたか 脚本・五代暁子 主演・日高ゆりあ,津田篤

上司と不倫していた日高ゆりあは、結局は子供への愛を断ち切れない不倫相手に捨てられる。落ち込んだ彼女に、通勤電車で次々と痴漢の指が襲う。気の強い彼女は次々と撃退するが、前からオズオズと痴漢を繰り返してしていた秋葉系の若者の津田篤が、だんだんと大胆になってきたのに腹を立て、警察につきだそうとするが、その一瞬に様々な幻想の坩堝に放り込まれる。女子高生時代の処女喪失の思い出、その相手を姉に寝取られた悔しさ。幻想のキックになる稚拙なアニメーションとも呼べないアニメーションが、何ともチープでそれはそれで微笑ましい。最終的に日高ゆりあは、痴漢の津田篤の純粋な愛を知り、警察に突き出すことをやめて親密の仲になる。
 名作のパロディ&オマージュの池島ゆたか=五代暁子コンビ。まずは一瞬の時間に拡がる幻想世界は「ふくろうの河」だろう。突然電車がどこを走ってるかわからなくなる混沌感は、生徒に「先生この電車どこ走ってるの」と聞かれた小山明子先生が、「どこでもない所を走ってるのよ」と印象的な台詞を吐く「白昼の通り魔」か。いや、そんなまわりくどい言い方はよそう。ズバリ、これは池島=五代版の「電車男」なのである。
 いずれにせよ、この素敵なファンタジー空間の造形は、さすがベテラン池島ゆたかならではだ。

2007年5月12日(土) ●お蔵出し
「未亡人アパート 巨乳のうずく夜」 2007年公開
監督・脚本・吉行由実 主演・薫桜子,岡田智宏

薫桜子の未亡人に、霊媒師「ますだいっこう」が助手の望月梨央に亡夫の石川雄也の霊を降臨させ、亡夫の両親のアパートの管理人になるよう告げる。この二人に加えて、女性専門SEXカウンセラーの小川はるみやカメラマン岡田智宏のアパートの住人、岡田智宏の愛人佐々木ユメカなどと、薫桜子との交友記といった感じで映画は進行する。
 薫桜子は、亡夫の石川雄也との回想の濡れ場はあるが、現実の濡れ場はなくすべて妄想とオナニーで進行していく。カウンセラー小川はるみの「オナニーは恥ではない」との言もある。このままヒロインの現実の濡れ場がないユニークなピンクとなるかと思ったが、才人・吉行由実をもってしても、残念ながらそこまで大胆にはなれなかった。
 ラストは薫桜子と岡田智宏が結ばれる凡なエンドとなる。ただ、オナニーの中の亡夫のイメージを、薫桜子は乗り越えられず絶頂にその名前を叫ぶ。仕方がないことと、岡田智宏はそれを許容する。人のエクスタシーの究極はオナニーイメージなのかもしれぬという深淵に、一歩迫りかけたが中途半端に終わったという感もないではない。SEXは「底の丸見えの底なし沼」だが、オナニーはもっと「底の丸見えの底なし沼」ではないのか?(この名言を遺した元「週刊ファイト」井上義啓氏に合掌!って、全然関係ないか)

2007年5月14日(月) ●お蔵出し
「令嬢とメイド 監禁吸い尽くす」 2007年公開
監督・渡邊元嗣 脚本・山崎浩治 主演・夏井亜美,藍山みなみ

超常現象マニアの岡田智宏は婚約者藍山みなみと神隠しの里を訪れる。何故か突然、日が暮れてしまい、山奥の別荘に泊めてもらう。住人は病気療養中の令嬢・夏井亜美とメイドの神田ねおん。一泊のつもりが別荘を後にすると、また突然日が暮れてどうしてもその別荘から逃れられない。
 実は夏井亜美は土地に残る鬼姫伝説の鬼姫で、メイドの神田ねおんはその侍女。夫への嫉妬から側室を呪い殺そうとし山奥に流された姫が、色情に狂い村人や旅人の精を吸い取り、陰陽師に封じ込められたが、神隠しの里を訪れた若者の精を吸い取り、現代まで生き延びて来たのだ。岡田智宏は姫の夫の末裔で、藍山みなみは生贄となり、彼は鬼姫に取り込まれ侍女と3人で、神隠しの里を訪れる者の精を吸い取りつづけるであろうと含みを持たせたラストの落ちになる。
 鬱蒼とした山奥のロケ地の効果がいいし、そこに場違いに建っている豪華な別荘を見つけたのがまず勝因だろう。低予算の中で、森に張られた注連縄だけで不気味な効果を出し、フィルターによる画調の変化・凝った照明でたっぷり幻想味を盛り上げる。ピアノと横笛の音楽効果や、絵巻物の活用も効いている。書割の星空もそれなりに効果を出した。
 こうした幻想空間で、藍山みなみと岡田智宏の婚約者同士のノーマルな濡れ場に端を発し、岡田智宏と夏井亜美、岡田智宏と神田ねおん、果ては夏井亜美と神田ねおん、夏井亜美と藍山みなみのレズ、岡田智宏・夏井亜美・神田ねおんの3Pに至るまで、夢ともうつつともつかず濡れ場が連続していく。濡れ場の羅列が単なるエッチだけでなく、この世のものとも思えぬ官能世界に通低していく。ブっ飛び感覚が売りの渡邊元嗣監督、今回はオーソドックスにポルノエンタテインメントを完成して見せた。
2007年ピンク映画カタログー7

5月1日(火)、平日で私も休みだ。GWの中で日本アカデミー協会会員権利が活用できる貴重な日である。3本をハシゴするスケジュールを組んで、勇躍「バベル」上映の日比谷スカラ座へ向かう。ところがファン感謝デーは特別興業扱いなんだそうである。「アカデミー会員の方はご遠慮を…」と言われてしまう。お客さま本位の考え方からすれば、当然といえば当然だ。でも、それなら「入場有効映画館リスト」の注意書に明記してもらいたいよなあ。「映画友の会」で冗談混じり・嫉妬混じりに、「ファン感謝デーの日くらいは、無料招待の人はおとなしくしてて下さいよ」と言われたが、そのとおりになってしまったわけだ。
 有楽町に出てきて、このまま帰るのも癪である。新橋ロマンでXces3本立を上映していることを思い出す。エッチの方便だけのドラマが大半を占めるXcesは「PG」ファンに不評だが、唯一山内大輔監督作品が注目を集めている。その山内監督の新作も含めて、今年度封切作品は2本だ。山内作品初見参としても、封切作品本数稼ぎとしても美味しい番組だ。気を取り直して、新橋まで足を延ばすことにする。

2007年5月1日(火) ●新橋ロマン
「老人と美人ヘルパー 助平な介護」 2007年公開
監督・脚本・山内大輔 主演・葉月菜穂,ミュウ

エッチの方便だけでドラマが転がるXces映画は、全般的にドラマの骨格もルーチンワークで古めかしい。方便なんだから、ドラマの工夫にエネルギーは使うまい。ところが、注目の山内大輔監督作品を初見したら、エッチの方便で転がるXces流みたいに見えて、ドラマがかなり理不尽でイビツなのが奇妙な印象を残した。
 ヒロイン葉月菜穂の看護師の「猥褻」な「聖女」ぶりが、まずユニークである。「白痴」の「聖女」とは微妙に違う。冒頭で牧村耕次の病院長の誘惑に、簡単に股を開く葉月菜穂は典型的なXces流だ。そこに妻からの電話が入り、事に及びながら何喰わぬ顔で応対する牧村耕次、突然ヨガリ声を張り上げて夫婦仲を破綻させる葉月菜穂。一見「白痴」の「聖女」に見えたが、それなりの頭も働くようだ。看護師なんだから「白痴」というわけにもいくまい。「猥褻」な「聖女」と称した所以である。こうして、葉月菜穂は病院を去っていく。
 この後、彼女は独立した介護ヘルパーを開業する。そこで、老人の坂入正三と負傷した写真家小林三四郎のヘルパーを通じて、「猥褻」な「聖女」ぶりを発揮するのだが、それは後述する。
 「猥褻」な「聖女」葉月菜穂と共に、徹底的な悪党の吉岡睦雄も、ピカレスク的魅力でユニークだ。会社の金を使い込み、金を工面するために未亡人ミュウに近付き、義父の財産を横取りしようとする。
 この2人が遭遇するのが人目の少ない河原である。葉月菜穂をレイプしようとした吉岡睦雄を、近くで撮っていた写真家の小林三四郎が救うという形で、一応ドラマが連鎖する。
 葉月菜穂の介護ヘルパーの最初の客はミュウの義父の坂入正三。財産を生前相続させようとする嫁のミュウに虐待されていた。坂入正三は孫娘の高校生の日高ゆりあを可愛がっており、彼女にしか財産を譲る気はない。ミュウの愛人の吉岡睦雄は、ミュウのやり方は手ぬるいとばかりに、老人の前で孫娘をレイプする。そこから先は…何もない。男女の悲鳴・怒声・絶叫の中でこのエピソードはザックリ中断される。老人虐待・女子高生レイプとという後味の悪さで、吉岡睦雄に悪の報いが加えられるわけでもない。ビカレスクに徹底した魅力もない。といって、エッチの方便のドラマだから何でもいいんだという安易さともちょっと違うような気もする。この理不尽さは奇妙な印象を残す。
 映画は唐突に、葉月菜穂と写真家の小林三四郎との情感溢れる話に転換する。ずいぶんイビツな構成だ。小林三四郎は事故で手足が不自由になったので、介護ヘルパーを依頼する。思い出話を始める。以前、事故で一時視力を失った。妻は見限って去っていった。写真家としての絶望の日々。その時、親切に面倒を見てくれた看護師がいた。視力のない彼に、カメラに手を添え風景写真を撮ってくれた。結婚の申し込みをしたが、視力が回復したら去っていった。実は、それが葉月菜穂だった。吉岡睦雄のレイプから救ってくれた御礼であったのだろう。小林三四郎が大切に額に入れてとっておいた思い出の風景写真を葉月菜穂は、河原にたたきつける。写真の裏にはプロポーズ承諾の署名があった。味のあるシーンで幕切れとなる。
 葉月菜穂の介護は、ごくごく自然体で下半身へのスペシャルサービスまでしてしまう。Xces流エッチの方便といえばそれまでだが、葉月菜穂にそれに納まらぬ「猥褻」な「聖女」の存在感がある。吉岡睦雄にも、Xces流エッチの方便と言い切れぬピカレスク的理不尽さがある。このあたりが山内大輔映画の魅力なのだろうか。

「理容店の女房 夜這い床間」 2007年公開
監督・新田栄 脚本・岡輝男 主演・瀬能司,平沢里菜子

理容店の瀬能司・丘尚輝と、酒屋の平沢里菜子・本多菊次朗の夫婦のダブル不倫のお話しだ。釣り好きの理容店の主人の丘尚輝は、毎晩夜釣りに出かける。それをいいことに女房の瀬能司は、酒屋の主人の本多菊次朗の夜這を受け入れている。本多菊次朗は、酒好きで毎晩飲みにいくと偽って外出している。それをいいことに、酒屋の女房の平沢里菜子は、夜釣りと偽って出てきた理容店の主人の丘尚輝と、よろしくやっていた。洒落っ気にもならない洒落たつもりのXces流エッチ方便ドラマの一編である。最後は夫婦の愛を再確認して、元の鞘に納まる凡な結末である。
 これに、飲みすぎた本多菊次朗が代わりに甥の津田篤を瀬能司の夜這いに差し向けたり、瀬能司に理髪してもらうとツキがくるとの噂を信じて商店街のいかず後家の風間今日子が、アンダーヘアーカットを頼みにきたりと、エッチの方便のサブエピソードが追加される。夜這いのアングルを一貫させているのが映画的魅力とも言えない魅力か。ベテラン新田栄作品、これがXcesの王道といったところだろう。

「和風旅館のロシア女将 女体盛り」 2004年公開
監督・勝利一 脚本・国見岳士 主演・カレン・ユルサコフ,小川真実

サラリーマンの山本東は、だまされて無一文で放逐されたロシア娘カレン・ユルサコフと恋に落ちる。彼は旅館の主人の野上正義の後を継ぐことを嫌って家を飛び出している。それだけでも腹立たしいのに、ロシア人を嫁にするなど言語道断、野上正義は怒り心頭である。最後はカレン・ユルサコフのことを認め、山本東は後を継ぐことになり、外人若女将の誕生でめでたしめでたしと、これも他愛のない一編。
 男やもめの野上正義は仲居頭の小川真実といい仲とか、親に結婚を許されぬ瀬戸恵子と成田渡のカップルが傷心旅行の客で泊まって濡れ場を見せるとか(意味もなく瀬戸恵子とカレン・ユルサコフが突然レズったりもする)、ムッツリしている考古学者グループの客にカレン・ユルサコフが女体盛りで心をほぐすとか、あれこれXces流エッチのサブエピソードが脈絡なく羅列される。
 いずれにしても金髪で小さいタトゥを散りばめた白肌のカレン・ユルサコフの、一味ちがったヌードと濡れ場が見せ所のすべてだろう。ただ、濡れ場の表情は一本調子で、日本の女優の情感の方が上をいっているように思った。
2007年ピンク映画カタログー6

2007年4月14日(土) ●新宿国際劇場
「巨乳オナニー おもちゃで悶絶」(旧題「美咲レイラ 巨乳FUCK」) 2001年公開
監督・渡邊元嗣 脚本・山崎浩治 主演・美咲レイラ,林由美香

おとなのおもちゃの研究室が舞台の一編。主演の美咲レイラは、男勝りの堅物キャリアウーマンの営業主任で、研究員にビシバシ発破をかける役どころ。ある日、バイブ付きイルカ型抱き枕(何だそりゃ、はやくも人を喰った渡邊元嗣流だ)を自宅に持ち帰り私験してたら、雷サージが飛び込んで潜在意識の淫蕩な人格が表面化する。男勝り堅物人格と淫蕩な人格が、交互に出没して渡り合う事態となり、そのちぐはぐぶりに研究室は大混乱となる。何とかしようと原因をつきとめ、再度の雷撃で淫蕩な人格を潜在させることに成功するが、再び以前のように煽りまくられて、それはそれで弱ったもんだとの落ちになる。最後まで人を喰った渡邊元嗣流に終始する楽しさだ。
 研究員に故林由美香さんや水原香菜恵がキャスティングされ、オフィスラブの濡れ場も一応あるがカメオ出演に近く、旧題のタイトールロールにあるように全てが美咲レイラの二重人格ぶりを楽しませるスター映画であった。

「魔乳三姉妹 入れ喰い乱交」 2007年公開
監督・浜野佐知 脚本・山崎邦紀 主演・北川明花,風間今日子

長女・風間今日子、次女・安奈とも、三女・北川明花の三姉妹に、それぞれの男が「なかみつせいじ」、平川直大、吉岡睦雄と、登場人物キッチリ6人のシムプルな構成の脚本だ。
 長女の風間今日子は、母の実家「根深の里」の頃から母に想いを寄せていた「なかみつせいじ」と、今は深い関係にある。(この風間今日子の憧れである「根深の里」というのが、詳細に明かされないのが映画に奥行きを与えている)次女の安奈ともは、夫の平川直大への気持が完全に冷えており、夫の強い愛情が鬱陶しくて仕方なく、離婚を考えている。三女の大学生の北川明花は、研究仲間の吉岡睦雄と悪い関係ではない。
 北川明花の古代史研究が波乱の元となる。男のマラを共用してオマンコ・シスターズとなると、女同士の関係が深まるという古代の習俗を、実践しようというのである。(何とも奇天烈な発想であり、女性が口にするのが憚られる単語を連発する北川明花が飛んでいる)夫婦仲が冷えている間隙を縫って平川直大をまず篭絡する。三姉妹の中で、北川明花は最も母親似であった。憧れの人の面影で迫られれば、「なかみつせいじ」もひとたまりもなく陥落する。三姉妹がオマンコ・シスターズになる実験は完遂するが、関係が明るみに出て、自分も含めて全カップルが破綻する。私が感じてるだけかもしれないが、中谷美紀に雰囲気が似ている北川明花の個性が輝く。山崎邦紀の飛んでる感覚の脚本を得て、浜野佐知の性のアナーキズムが、ここでも快調だった。
 山崎邦紀のブッ飛び感覚は、SFマインドの持主なのか単なる悪ふざけなのか判然としないという意味のことを以前に書いた。4月14日(土)(15日?)のピンク大賞の徹夜の打ち上げで、池島ゆたか監督にこの話をした。池島監督は「あの人は悪ふざけなんてできませんよ。真面目な人ですよ」と語った。とすると山崎邦紀はかなりのSFマインドの感性と見た。今後が楽しみである。(ピンク大賞の話題は、追って「映画三昧日記」に記しますので、そちらも覗いてください。お楽しみに!)


2007年4月14日(土) ●新文芸座
「悩殺若女将 色っぽい腰つき」 2006年公開
監督・竹洞哲也 脚本・小松公典 主演・吉沢明歩,青山えりな

2006年ピンク大賞第1位作品。そんな重厚な雰囲気とは遠い軽妙なコメディだった。大本命のない年はこういう作品が強いのかもしれない。
 私が大本命とした「悶絶 ほとばしる愛欲」は、20位という下位だった。投票結果を見ると、10点満点の8点以上をつけた人もかなりいるがが、1点とか2点とかの辛口の人も少なくない。こうなると平均はガタッと落ちる。たしかに「悶絶 ほとばしる愛欲」を全く評価しないという声も、いくつかは聞いた。「悩殺若女将 色っぽい腰つき」は、2名が5点だが後は全員7点以上、やっぱりこういうのが強い。私はピンク大賞授賞式の日に見たので1票を投じられなかったが、やはり7〜8点は入れたと思う。
 白痴の聖女がすべてを浄化するというよくあるパターンだ。ところが演出力に長けた竹洞哲也にかかると、そういう凡な筋立てに見事な輝きを与える。女優賞受賞の吉沢明歩がとにかく素晴らしい。デリヘル嬢で男に貢ぎながら、玉の輿を夢見る純情さが可愛い。蛙の縫いぐるみを背負っていて、泣きべそをかきながら「ケロケロ」と呟いていくと、いつしか笑顔になっている愛らしさが眩しい魅力を発散する。
 男に貯金をむしり取られ、無一文で行き倒れたところを、気風のいいうどん屋の主人「なかみつせいじ」(好演!)に救われ、好意に甘えておしかけ店員になってしまう。もう一人の店員の松浦祐也も知恵遅れで、神戸浩を彷彿させるユーモラスな怪演が楽しい。こういうワキの人物の味付けの巧みさも竹洞演出の魅力である。
「なかみつせいじ」の主人は、吉沢明歩の純な心に引き出されるように、過去を告白をする。妻に逃げられ、男手ひとつで娘の倖田李梨を育てたものの、弟子の岡田智宏との結婚を意固地に反対したら、駆け落ちされてしまったという。吉沢明歩は親子の絶縁を回復させようと、父のうどんを娘の同棲先に届ける。吉沢明歩の深刻な訴えるような瞳に、倖田李梨はうどんを受け取る。一転、向き直った彼女は、満面の笑みで「ケロケロ」と口に出す。吉沢明歩の魅力満開である。
 吉沢明歩は、親の離婚を経験し、義理の親と住むつらさを経験している。いっしょに済むのは家族だけでなくてはいけない。息子夫婦が帰ったうどん屋に、もう自分の居場所はないと思う。去ることを決意しての「なかみつせいじ」との濃厚な濡れ場に、切ない情感が漂う。うどん屋から夜明けの道をトボドボと出ていく姿にも哀愁が溢れる。
 もちろん、この後は再びうどん屋に帰還し、家族として新たに迎えられる爽やかなハッピーエンドとなる。出来すぎのルーチンワークではあるが、それを演出の力で見せきった秀作である。
2007年ピンク映画カタログー5

2007年4月7日(土) ●新宿国際劇場
「愛人秘書室 恥ずかしい匂い」(旧題「美人秘書 おしゃぶり接待」) 2001年公開
監督・脚本・小林悟 主演・佐々木麻由子,風間今日子
 
貿易商社の社長秘書で、いずれ結婚するとの約束で、5年間も社長愛人として耐えてきた佐々木麻由子。だが社長は新たに採用した若い秘書の風間今日子に乗り換える。佐々木麻由子は、玩具と偽って兵器輸出をしていた企業秘密の内部告発を決意し、会社を崩壊に追い込んで自分も職を失うことを暗示させて終わる。それを青春の決着として、秘書室から去っていく。
 よくある筋立てをベテラン小林悟は、佐々木麻由子と風間今日子のスターとしてのキャラクターを巧みに活かし、ソツなくまとめている。今や熟女の味わいを出してきた豊乳風間今日子も、この頃はなかなか初々しい新進女優だったことを確認した。

「どすけべフレンズ 美乳にはさまれて」(旧題「痴女OL 秘液の香り」) 2004年公開
監督・渡邊元嗣 脚本・山崎浩治 主演・桜井あみ,星川みなみ
 
女らしいOLの桜井あみは、同僚の小久保昌明と婚約中。このまま平凡な寿退職と思っていたら、フィアンセの元カノの星川みなみが、派遣社員として闖入。恋のサヤ当てが始まる。元カノ星川みなみは、男勝りの元高校プロレス同好会の暴力女、その凶暴性が嫌で逃げたとの小久保昌明の桜井あみへの言い訳である。良妻賢母タイプの桜井あみと、現代的で自己中の星川みなみの対比が際立つ。とりわけ強引なのに奇妙な魅力がある星川みなみが輝いている。でも、このステロタイプな女の対比は、ブッ飛びが持ち味の渡邊元嗣作品としては、凡な展開だなあと思っていたら、さにあらずだった。
 仕事人間の小久保昌明は、同僚との「飲みニケーション」を優先し、恋人との関係をおろそかにすることが、桜井あみと星川みなみの共通の不満だったことを理解しあう。そして、料理と裁縫が上手な桜井あみと格闘技に長ける星川みなみの間に、お互いに自分に無いものに憧れる変な友情が生まれる。この際、小久保昌明の前で、どっちを愛しているかはっきりさせようと二人そろっておしかけたら、同僚とホモ達している濡れ場に遭遇してしまう。
 落ち込んだ桜井あみと星川みなみは、友情を超えてレズ関係にフライングしちゃうが、それもいっときですぐ立ち直り、2人肩を並べ新しい恋人探しに逞しく闊歩していく。やっばり渡邊元嗣流ブッ飛び映画でした。

「ふしだら慕情 白肌を舐める舌」 2007年公開
監督・荒木太郎 脚本・吉行由実 主演・平沢里菜子,池島ゆたか

多呂プロの50本記念作品で名古屋の南映画劇場特別協力という振れ込みの一編である。例によって荒木太郎らしい映画愛に溢れたシミジミとした映画に仕上がった。
 妻を亡くし独り身で小さな映画館を営んでいる池島ゆたか、一人息子の岡田智宏は家を飛び出したまに金をせびりにくるだけで、後を継ぐ気は全くない。そんな寂しい境遇に、キラキラ輝いている平沢里菜子が従業員として入ってきた。
 平沢里菜子は、池島ゆたかの飲み友達の初老の男連中のアイドルになる。でも、カラオケに乗り過ぎてセミヌードになったり、悪酔いして行きずりのおっさんとベッドインしたりと、常軌を逸した暴走ぶりもみせる。彼氏の部屋に居候していたが、その彼が他の女を引き込んで自棄になったとの、暗い裏も抱えていた。
 平沢里菜子と、池島ゆたかの一人息子の岡田智宏が出会い、一目惚れで恋に落ちる。「あんな息子にあの娘が幸せにできるか」と憮然となる父親の池島ゆたか。初老の男友達は「自分の娘を嫁にあるわけじゃあるまいに」と祝福ムードで飲み会でハシャぐ。小津映画の笠智衆を中心とした初老の男達の酒場の会話をやや変形させたいい味わいがある。初老の男ヤモメの哀愁を漂わせた池島ゆたかが、名演である。
 ベテラン監督の池島ゆたかであろうとも、ここでは主演者だから、ピンクの定番の濡れ場は避けられない。てなことで、ソープランドで遊ぶ一幕がある。でも、これがより効果的だった。娘のような年頃の平沢里菜子への想いとはいっても、男には生臭い心情もないわけではないとのことを、クッキリと浮き彫りにする。ピンクならではの定番を、鮮やかに逆手に取った深い表現に到達した。(余談だが、小津映画の凄さは、こういう具体描写を素っ飛ばして、人間の生臭さを表現した凄さなのだが…)
 喜々として平沢里菜子の花嫁衣裳の仕立てに精力を注ぐ池島ゆたかの父。でも、結局元カノとヨリをもどして姿を消す息子の岡田智宏。身を引いて去って行く平沢里菜子。一人残される切ないまでの池島ゆたかの初老映画館主の姿が鮮烈だ。
 そんな心情の池島館主に届く宅配便、花嫁衣裳が完成したのだ。もはや不要となったそれを壁に掛けて飾り、思い入れタップリに見つめ尽くす。切ない。本当に切ない。いつまでもそうしても仕方がない。段ボールのまま生ゴミに出す。段ボールからはみ出すフリルが悲しみを増幅する。
 平沢里菜子から亡き父との題名も憶えていない思い出の映画を、池島館主は聞いていた。それが見つかった。でも、彼女に知らせるすべはない。駅の伝言版にその旨を記し、アナクロぶりを女子高生に嘲笑される。一人寂しく閉館後の客席でその作品を、涙まじりに見る池島館主。客席後方の扉が開く。逆光も美しい平沢里菜子の花嫁姿だ。帰ってきたのだ。段ボールからはみ出していたフリルが目に入って、着てきたのだろう。伏線が効いている。
ここからハイキーのファンタスティックな池島=平沢の濡れ場のエンディングになる。エッチな雰囲気は微塵もないロマンチシズムが華やかに香る。監督・荒木太郎=脚本・吉行由実コンビ、早くもベストテン級の作品を誕生させた。
2007年ピンク映画カタログー4

2007年2月18日(日) ●新宿国際名画座
「義父と娘 乳しぼり」 2003年公開
監督・脚本・後藤大輔 主演・麻木涼子,中村方隆

旧題「痴漢義父 息子の嫁と…」義父と嫁の禁断の恋、ピンクでありきたりの定番を、後藤大輔はしみじみ切なく描いてみせた。畑と乳牛を育てる農家が舞台。風光明媚な山脈に囲まれたロケの効果が素晴らしい。男やもめの中村方隆は、愛して育てていた乳牛ハナコを、老いて乳がでなくなったことで息子が売ってしまうことに、心を痛める。皮肉にも、ハナコを輸送する途中の交通事故で息子は死んでしまう。それをきっかけに中村方隆の呆けが発症する。ハナコは生きていると信じ込んだ義父のために、嫁の麻木涼子は早朝の乳しぼりの時間に全裸となりハナコの牛舎に四つん這いとなって、「モー」と鳴きながら乳を搾らせる。義父への愛がなせる技である。
 十年も家を不在にしていた娘の佐々木ユメカが帰郷する。愛人のなかみつせいじと結託して、中村方隆の不動産乗っ取りを企む。痴呆が発覚すれば、中村方隆は財産処分をして老人ホームに引きこもり、麻木涼子は家を去るしかない。「お世話になりました」麻木涼子と中村方隆の切ない表情が良い。元書道の先生だった中村方隆が書に託す心情の吐露のエンディングも効果的だ。
 中村方隆と同様に男やもめで幼馴染みの医師の城春樹と、歳の離れた看護師の水樹桜の情事から結婚へ踏み切るサブエピソードが、初老の男の心情に色どりを添えている。

「婚前乱交 花嫁は牝になる」 2007年公開
監督・池島ゆたか 脚本・五代暁子 主演・日高ゆりあ,仲村もも

仲村ももと本多菊次朗の夫婦、本多菊次朗に携帯がかかる。お得意の接待で泊まりになると言ってでかける本多菊次朗。実は、昔の女の日高ゆりあからのお誘いだった。ホテルでの激しい情事となる。
 日高ゆりあは、翌日はもう一人の昔の男のミュージシャン野村貴浩とホテルの同じ部屋で情事を重ねる。次の日は、毎週通っていて好ましく思っていた年下の花屋の店員のムーミンをホテルに連れ込み筆下ろしをさせる。
すべてを終わらせたかのように、それぞれの男のプレゼントなどをベッドに並べ、意味ありげな笑みを浮かべてホテルを去っていく日高ゆりあ。何なんだろう。亡霊なのか?そんな思わせぶりを肩すかしするように、結婚前の不安な心境から、清算のために情事旅行をしていたとの、何とも味気のない顛末。才人池島ゆたか=脚本・五代暁子コンビが、こんな濡れ場の方便のための凡ピンクを撮ることもあるのかと思ったらさにあらずだった。
 日高ゆりあの婚約者の山口慎次が、今度は旅行にでかける。かつて仲村ももと不倫関係にあったのだ。清算のための情事旅行。仲村ももの携帯に電話が入る。昔の女友達が上京したので、今日はホテルに一緒に泊まると夫の本多菊次朗に告げてでかける仲村もも。プロローグと対になるエピローグだ。日高ゆりあと山口慎次の泊まるホテルが、偶然にも同じ場所。サングラスと旅行バッグも高層ホテルを見上げるショツトもそっくりという洒落っ気が楽しい。
 名作のオマージュ=パロディの達人の池島ゆたか=五代暁子コンビ、今回は変形の「輪舞」でありました。
2007年ピンク映画カタログー3

2007年2月11日(日) ●新宿国際劇場
「スチュワーデス 腰振り逆噴射」 2002年公開
監督・加藤義一 脚本・岡輝男 主演・沢木まゆみ,林由美香

玉の輿目的でスッチーになった沢木まゆみと風間今日子。医師や弁護士の三高目当て合コンに精を出す。例によって人を喰った加藤義一タッチだ。引き立て役にオールドミスの佐々木基子を引き入れ、冴えない弁護士男を押し付けたりしたら、それがラブラブになって弁護士夫人にゴールインとなりうらやましがったりと、ズッコケ加藤義一ユーモアあるが、今回はそれがメインではない。
 しがない自動車修理の町工場若社長の岡田智宏が、友達に悪乗りさせられて医師と偽り合コンに参加する。沢木まゆみは惚れ込んでしまう。ところが、岡田智弘が医師でないとバレてしまった後、三高目当てのこれまでの生き方と、自分の本当の気持の間で、ゆれることになる。
 岡田智宏は、以前の恋人をストーカーに殺され、それを救いきれなかった悔恨を抱えている。工場で働く同僚の林由美香は、岡田智宏への恋心を秘めているが、すべてを知っているので言い出せない。沢木まゆみは、以前の岡田智宏の恋人に瓜二つなのだ。岡田智宏の立ち直りを願い、お付き運転手を演じ、バースディプレゼントをアドバイスし、自分の気持を押さえ恋のキューピットを演じる林由美香が切ない。修理工のつなぎ衣裳と薄汚れた黒い顔も、アクセントで効いている。
沢木まゆみは彼女の気持に気付き、岡田智宏にバースディプレゼントを送るべき人は別にいるはずだと告げて、去っていく。風間今日子とともに、自分の気持を吹っ切って合コンなどの三高目当ての道にアッケラカンと戻り軽妙な加藤義一ワールドに復帰する。でも、印象に残るのは林由美香の切なさと可愛らしさといじらしさだ。
 林由美香はスクリーンの中では、今でも生きて輝いていた。あえて、故・林由美香さんとか、今は亡き林由美香さんとかいった表現は、ここでいっさい使わなかった所以である。由美香さん、あなたは永遠に生きています。

「催眠エクスタシー 覗かれた性交癖」 2007年公開
監督・脚本・山崎邦紀 主演・北川絵美,佐々木麻由子

冒頭に宇宙の無限空間を感じさせる星空が出て、途中にも何度もインサートされる。眠らないで2倍早く歳を取り宇宙から来たと自称する北川絵美が登場する。併行して佐々木麻由子が所長の催眠療法「バーストトラウマ研究所」の光景が紹介される。すべての人の心の病は出産の時のトラウマにあるとして、面をつけたり緊縛したりの妖しげなイメージの、幻想的な濡れ場が乱発される。山崎邦紀の夢幻ワールド全開だ。北川絵美とその研究所が遭遇し、結局は彼女の不眠もトラウマによるものだったとの結末で、SF的な雰囲気だが最後はSFと無縁。山崎邦紀映画としてはブッ飛び感覚不足で物足らない。

「不倫人妻 快楽に溺れて」 1999年公開
監督・国沢実 脚本・樫原辰郎 主演・佐々木麻由子,吉行由実

旧題「ノーパン妻 週末は不倫狂い」主婦の佐々木麻由子は、昔に文学新人賞を取ったことがあり新作を執筆中だ。夫の不倫が、むしろ夜を燃えさせるので許している妻の話だ。吉行由美がその作中の主婦として画面に出ていると思いきや、実は彼女は佐々木麻由子の友達で、小説のモデルになってい現実の存在だ。男が女に遊ばれているようなのは駄目だ、男の凌辱欲を満たせとの編集者のアドバイスで、妻は嫉妬に狂い、夫は妻・愛人の3Pで逆襲する筋立てにして、出版にこぎつける。実は佐々木麻由子の夫も不倫していた。「知ってたわ」と妖しく微笑みワープロにENDを打ち込む佐々木麻由子。どこまでフィクションの幻想で、どこまで現実かわからない虚実皮膜が魅力の映画だが、基本はリアリズムだ。この頃、国沢=樫原コンビはこんなのも撮っていたのか。
2007年ピンク映画カタログー2

「ホスト狂い 渇かない蜜汁」で、「ぢーこ」さんから[ラストのシーンですが、お腹の大きな女性は三上夕希さんではなくて水原香菜恵さんです。劇中で三上さんからたんぽぽさんに「母になります」というメールがあったのでそのイメージを引きずってしまったのでしょう。水原さんはあのシーンだけの特別出演です、ミクシィの日記にも書いていますがラストの水原さんが微笑んでいるシーンが一番気に入ってます」との御指摘をいただきました。そうか、水原香菜恵さんのカメオ出演だったんですね。よく見てなきゃいけませんね。三上夕希さん当人が出るよりは味のあるフィナーレだったわけです。この洒落っ気を見過ごして、恥ずかしき限りです。

2007年1月24日(月) ●お蔵出し
「新婚性教育 制服の花嫁」 2006年公開
監督・国沢実  脚本・樫原新辰郎 主演・星月まゆら,高見和正

ここのところ、樫原辰郎とのコンビ作よりも自作脚本が多い国沢実。作風もコンビ作品に見られた頃のブッ飛び感覚はなく、男と女の関係をジックリと追うものが多かった。今回は樫原「新」辰郎とのコンビである。旧コンビ作を彷彿させるブッ飛んだ人間は出てくるが、SF的・ファンタジー的な設定はないぶん国沢監督=脚本作品にも近い。両者の中間的作風といったところで、これが「新」コンビの作風になるのだろうか。
 幼馴染みのいいなづけの星月まゆらと高見和正、星月まゆらはまだ高校生、高見和正は新任高校教師で韓流風のイケメン二枚目。星月まゆらの祖父が、孫の花嫁姿が早く見たいと希望し、「幼な妻結婚」を決意する。もっとも祖父の前で興奮して愛撫しあったら祖父がショック死してしまうとの、人を食った幕開けである。
 新居の隣人の主婦の水原香菜恵は、さっそく高見和正に岡っ惚れして、ストーカーまがいにつきまとう。出会い系サイトの男に高見和正の仮面を被らせて、クタクタにしたりする。こんな調子で、二人を次々と怪体な人間がとりまく展開である。
 星月まゆらは、夫といっしょの学校に通いたいとの夢を、転校手続をして実現させてしまう。その後のテンヤワンヤ劇がメインになる。
 キモ悪男の世志男は、星月まゆらをマドンナとしてあがめてつきまとう。甲高い声とエキセントリックな台詞回し、怪演・猛演である。同級生の小峰由衣に幼稚園の頃にいじめられたトラウマの結果とのことだ。その小峰由衣は、高見和正を本気で愛してしまう。
 ややこしいことになるが、最後は二人が夫婦であることと、深く愛し合っていることが分かり、小峰由衣は寂しく身を引く。その泣いてる姿を、かつての虐められっ子の世志男が慰める。愛を告白する。いい気味だと世志男に思われていないことで、小峰由衣の心が動く。この二人の関係も味わいがある。かくして小峰由衣=世志男のカップルも誕生する。
 ただ、単純なめでたしめでたしではなく、半分は世志男のキモさを小峰由衣は嫌悪して、ロマンチックになったかと思うとと、突如暴力的にいじめっ子にもどりと、独特のムードの濡れ場で、星月まゆら=高見和正の熱々甘々カップルと楽しい対になる。
 夫婦で同じ学校などとんでもないが、知らずに承認しちゃった面子で、自分を正当化する校長のりぼんも調味料として効いている。夫婦であるのを他の者に知られたら二人とも放校だと告げ、小峰由衣や世志男と星月まゆらと高見和正のカップルとのテンヤワンヤに割り込んだり、「卒業までつきあいきれない」とボヤきながら覗きをしたりする。
 とにかく、ピンクでは珍しくない定番の「幼な妻」ストーリーに、怪体なワキ役をちりばめることで、独特の味わいの一編を仕上げてみせた「新」コンビだった。
2007年ピンク映画カタログー1

2007年1月8日(月) ●お蔵出し
「ホスト狂い 渇かない蜜汁」 2006年公開
監督・池島ゆたか 脚本・五代暁子 主演・たんぽぽおさむ,結衣

団塊の世代の中年ホスト「たんぽぽおさむ」が主人公である。この道30年のキャリアで若いホスト達から一目置かれており、若さはないが女の心を知り尽くしてそれなりの魅力もある。取材を通じて知り合った編集者のキャリアウーマン結衣、若いNO.1ホストにに入れ込み風俗のアルバイトまで始める日高ゆりあ、医師の夫との冷ややかな関係をホストとの擬似恋愛で孤独を紛らわせる三上夕希などと、「たんぽぽ」との関係が描かれていく。典型的な濡れ場の方便のストーリーパターンだが、ベテラン池島ゆたか=五代暁子コンビはコクのある描写で見応えあるものにした。
 バリバリのキャリアウーマンの結衣は、ホストを買い不倫の恋も楽しみ、お盛んである。でも、30過ぎで子なし、結局は「負け犬」と、ホストの「たんぽぽおさむ」に訴える。「人生はいくつも物を得ることはできない。一つだけだ」との意味のことを言って諭す「たんぽぽおさむ」。それは、結局家族を持つことはかなわなかったが、ホスト一筋人生故で得られた充実の、彼のプライドでもある。私と同年代の団塊の世代の中年ホスト「たんぽぽおさむ」の、存在感が見事だ。子供を産める限界の歳にありながら、人工授精までして出産させようという気持のない三上夕希の夫の医師。嫉妬に狂ってホストの「たんぽぽおさむ」がその夫に詰め寄られた時、女の気持を懇々と諭す。ここも味わい深い描写で、ラストシーンで大きなお腹を抱える三上夕希の姿の、シミジミとした感動につながる。
 今回は名作のパロディ=オマージュではない池島=五代コンビ作品だが、ピンクの定例パターンをすぐれた人間描写のドラマに仕立てあげたあたりは、相変わらず見事である。とりわけ「人生はいくつのものを得ることはできない。一つだけだ」という「たんぽぽおさむ」の言葉に、感じさせられることは多かった。

2003年の「湯布院日記」で、私は「油断大敵」についてこんなことを述べた。望まぬまま食うために技術屋として生きてきた私であったが<企業は実に沢山の色々な世界の人と私を引き合わせてくれた。(中略)それなりに良かった・充実したと思えるであろう半生ではあった。(中略)だが、残念ながらこれは私の「翼」ではない>
 映画と無縁な技術屋稼業、でも、それを経験したからこそ、映画を余人とは異なった深い見方に到達できたという自負はある。設備総合自動化・危機管理・東京大停電の恐怖を目前にした電力ピンチ・阪神淡路大震災の衝撃、こんな経験はなかなかできるものではない。ただ、最近こうした思い出話にかつての同士と耽る時、私の意外な資質に気がついた。他の者は技術屋らしく、数値的ディティールを実によく記憶している。ひるがえって私は、技術なんて飯の種に過ぎず愛着もないから、済んでしまえばきれいサッパリ忘れさっている。逆にそんな場に立ち会っていた関係者のドラマチックな人間模様はマザマザと浮かびあがってくる。私は、公益事業の技術屋でありながら、心はすべて「映画」していたということのようだ。「人生はいくつも物を得ることはできない。一つだけだ」ということなのである。そんな一言から色々なことを思い浮かべさせた池島=五代コンビ、そして「たんぽぽおさむ」の存在感。そこまで思わせたこの映画は、やはり佳作というべきなのだろう。
 何だか、年明け第一弾、変に真面目になっちゃいました。今回はこのへんで。
あけましておめでとうございます。「ピンク映画カタログ」の幕開けはとりあえずプロフィルの更新だけで御容赦ねがいます。「映画三昧日記」は開幕いたしました。そちらものぞいていただけると、ありがたく思います。

2007年は年末の予告どおり、お蔵出しの「ホスト狂い 渇かない蜜汁」からスタートいたします。ただし、「映画三昧日記」で記しましたように「忠臣蔵」大好き人間としては、新春ワイド時代劇「忠臣蔵〜瑤泉院の陰謀」のビデオ録画を観終わらないと、次のテープに手をつける気になりませんので、もう少々お待ちください。
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