周磨 要の 2008 ピンク映画カタログ


●周磨 要プロフィル
映画ファン歴40数年になる映画好き。昨年は還暦を迎え、世間で話題の団塊世代大量退職の一員として、6月に定年退職となりました。現在は、月10日間だけ勤務の会社嘱託で、映画三昧の日々にますます拍車がかかっています。
 映画好きが嵩じて始めた活弁修行は、2002年の「剣聖 荒木又右衛門」の初舞台から6年のキャリアとなります。また、2003年を皮切りに、ピンク映画大賞への投票は4度を重ねました。キャッチフレーズは「無声映画からピンク映画まで古今東西邦洋を問わず、すべての映画を愛する男」でございます。今年もよろしくお願いいたします。
「周磨 要の映画三昧日記」
周磨 要のピンク映画カタログ 2005
周磨 要のピンク映画カタログ 2006
周磨 要のピンク映画カタログ 2007
周磨要の掲示板 
「周磨 要の湯布院日記」

「周磨 要のピンク日記」
「おたべちゃんのシネマシネマ」
2008年ピンク映画カタログ−30

番外篇
2008年12月17日(水) ●シネマボカン
お芝居「どん底2008」
演出・かわさきひろゆき  脚本・小松公典
出演・里見瑤子(SATOMI),佐々木麻由子,日高ゆりあ 他


「御贔屓里見瑤子嬢」が出演するお芝居である。マキシム・ゴーリキー原作の群像劇であるから、出演者は15人に及ぶ。ここではピンク映画女優に限って名前を記載した。

開場6時30分、開演7時、整理券配布は6時からと、予約の時に確認する。整理券配布があるということは、混雑も予想されるということである。早めの6時10分前頃、井の頭線・池の上のシネマボカンに到着する。てっきり行列を予想していたら、入口は閑散としている。「6時からの整理券は、ここに並ぶんですか」「そうですけど、今日は平日だから時間にくれば十分だと思いますよ」(ちなみに、後で演出の「かわさきひろゆき」さんに聞いたところによると、やはりお客さんのピークは土・日で、シネマボカンは定員50名程度の小スペースだが、ギッシリになるそうだ。この日は、半数程度の入りであった)

私の声がでかいせいか、入り口でのやりとりを耳にしたようで、奥から里見瑤子嬢が現れてくれた。「まあ、ありがとうございます。メールを見て来てくれたんですか」「いや、メールはもらってないですけど。ネットで確認しました」何故か、メールは届かなかったようで、瑤子嬢とメル友にはなりそこねた。まあ、今後また調べ直して送信チャレンジしてくれるようなので、メル友になる日は近い。
 瑤子嬢は大きなマスクをしていた。「インフルエンザですか。気をつけてくださいね」「いえ、準備中で埃っぽいんでマスクしてます」「そうですね。役者は声が命ですよね」こうしてこの日は、こんな和気藹々の再会風景から幕を開けた。

ゴーリキーの「どん底」で、里見瑤子嬢は貴族出身の娼婦、いわゆる「令嬢」を演じる。セリフの中に「鹿鳴館の時には…」云々とあるので、明治または大正初期の日本に舞台を翻案したようだ。(黒澤明は映画化にあたって、時代劇として翻案していた)ただ、舞台全体の創りとしては、寺山修司の芝居を髣髴させる無国籍の夢幻空間という趣きで、風土色・時代色は稀薄だった。後で演出の「かわさきひろゆき」さんに伺ったら、小松公典脚本は時代色が強かったが、演出の狙いでこのように変えたそうである。

私は「御贔屓里見瑤子嬢」の一点だけで、即予約したので、このお芝居の予備知識はいっさいなかった。佐々木麻由子,日高ゆりあの両ピンク女優がキャスティングされているのを、当日配布チラシで初めて知った。麻由子さんは、今年のピンク大賞打ち上げで親しく話させていだいた仲だし、「ゆりあ」さんはピンク大賞プレゼンターの常連で、こちらも顔馴染みである。それよりも何よりも、前回の「ピンク映画カタログ」で現在悩みに悩んでいる私の「ピンク映画大賞」女優賞候補5人のうちの、期せずして3人の揃い踏みとなった。これは、私にとって予期せぬサプライズだった。

前述した「令嬢」の里見瑤子嬢に対し、佐々木麻由子さんは「鬼吉」という名前からして恐ろしい娼窟の古参の熟女娼婦を例によって鬼気迫る演技で見せ、日高ゆりあさんは「令嬢」を姉のように慕って読み書きを教えてくれるようせがむ白痴の聖女「りん」を可憐に演じる。この3人が、時にくんずほぐれつの熱演も含めて、適役を得て個性を全開に居並んでいるのは、ちょっと壮観な光景であった。熱演あまって、プロレス会場ばりに、客席まで雪崩れ込まんばかりの時もあったが、残念ながら客席寸前で止まっていた。前回の「ピンク映画カタログ」で、女優賞は悩みに悩んでいるがが、ナマ「御贔屓里見瑤子嬢」を見ちゃえば、「やっぱり贔屓の引き倒しで瑤子嬢になっちゃうのかなあ」と記したが、いずれも一歩も引かぬ3人の競演を目の当たりにしては、悩みは振り出しにもどらざるをえない。ま、最終的に誰に一票入れるかは、私だけの胸にしまって秘密にしておこう。(と言ったって、最終的には「PG」誌上でオープンにされちゃうんですけどね)

シネマボカンは、芝居が終わると観客席が模様替えされ、そのままバーの客席になる空間である。「映芸マンスリー」会場の「シアター&カンパニー COREDO」のような、この手の空間が最近は多いようだ。
 『「かわさきひろゆき」さん…ですよね』、終演後、演出のかわさきさんにオズオズと声をかける。「かわさき」さんとは、以前「映画芸術」さんのご好意で初号試写を観せていただいた後、酒席を共にしたことがあり、また、役者としてスクリーンでも何度も目にしているので、面識がないわけではない。オズオズとなったのは、開演前に場内のお客さま案内やら飲み物の配布やコップの回収など、甲斐甲斐しく下働きをやっていたからだ。いくら何でも公演トップの演出家がそんなことはやらないよな、と思えて人違いを危惧したのである。
 そんなネタを話題のきっかけにして「かわさき」さんに話しかける。「かわさき」さんは私のことを記憶に留めていてくれていた。「いや、演出家が一番に下働きをしなきゃいけないんですよ」「確かに、芝居が始まっちゃえば、役者任せで演出家の用はないですね」その後、いろいろ話した内容は、断片的にではあるがすでに前に紹介したとおりである。

監督・深町章、脚本・川崎りぼん、主演・御贔屓里見瑤子嬢トリオの3連打「痴漢家政婦 すけべなエプロン」(脚本タイトル「平成人魚伝説」)、「淫ら姉妹 生肌いじり」(脚本タイトル「精霊夜曲」)「いんらん旅館 女将の濡れ姿」。「私にとってのゴールデントリオのこの3本の映画がなければ、私はピンクにはまりませんでした」と、「かわさきひろゆき」さんに告げる。川崎りぼんさんは「かわさきひろゆき」さんの奥様で劇作家、ピンク映画の脚本執筆を勧めたのは夫の「ひろゆき」さんで、「平成人魚伝説」はその記念すべき第一作だそうだ。「そう言ってくれるとうれしいですねえ。本人喜びますよ」と、何と奥様のりぼんさんを呼んできてくれた。

川崎りぼんさんのお顔は「PG」掲載の写真で目にしたことがある。女優経験もあるとかで、綺麗な人だなと思っていたが、実物もあたりまえだが美しい方だった。
 やはり映画については造詣が深く、溝口健二の話題に端を発し、荒井晴彦さんの「脚本原理主義」についてや、撮影所システムの功罪から、効率主義万能の現代を憂うなど、多様な話題を楽しんだのであった。娘さんは監督志望で勉強中とのことで「今日の話は娘にも聞かせたかったです」なんてことまで言ってくれた。

そうこうしているうちに、衣装を落とし私服に着替えた里見瑤子嬢、佐々木麻由子さん,日高ゆりあさんが、私の周囲に集まってくる。いや、正確に言えば「かわさきひろゆき」さんのところに集まってきたわけであるが、完全に私は3大女優に囲まれた格好になった。
 お三方の真摯な演技論(麻由子さんが時々後輩2人にアドバイスして、瑤子嬢と「ゆりあ」さんが真剣に耳を傾けているのが印象的だった)のようなお堅い話から、監督の組によって前張りの有無や大きさのちがいとか、カラミにおける男優陣の女優陣に対する気配りのいろいろとかの通俗的な話題まで、タップリ楽しく聞かせていただきました。

「かわさきひろゆき」さんが、私を、「四畳半革命 白夜に死す」の世志男監督(というかピンク映画で怪演する怪優のとしての方が有名かもしれない)に、「映画芸術」誌で「サラリーマン ピンク体験記」を以前に連載していた執筆者として、紹介してくれる。今回の「かわさきひろゆき」さんとの縁といい、「映画芸術」誌で約3年(途中に約1年の「映画芸術」の休刊期間はあったが)連載をさせていただいたことは、すごいステータスと財産だったんだなあと、今シミジミと感じる。当時の「映画芸術」の関係者の方、本当にありがとうございました。

宴は続くが、こちらは土地勘のない井の頭線・池の上であることから、11時半も回ったところで、そろそろ中座することにする。何と!出口まで御贔屓里見瑤子嬢が見送ってくれた。!こうして、今年の「ピンク映画カタログ」は、素敵な幕切れで締め括ることとなった。

それでは皆さま、よいお年をお迎えください。来る年もよろしくお願いいたします。
2008年ピンク映画カタログ−29

2008年11月29日(土) ●新宿国際名画座
「色情セレブ妻 秘められた欲望」 2008年公開
監督・深町章  脚本・後藤大輔  主演・里見瑤子,藍山みなみ

「御贔屓里見瑤子嬢」の最新作である。ヘアヌードがしっかり楽しめる。
 週刊誌のグラビアなどで、日本もヘアヌードは全面解禁みたいであるが、ピンク映画には独自の規制があるようだ。濡れ場におけるヘアヌードは御法度のようで、ボカシがかかるか、ヘアが露出しない体位またはアングルになる。ただし、入浴シーンならばヘアはOKのようで、今回は瑤子嬢のヘアヌードを浴室でタップリ楽しめる仕掛けになっている。浴室から出るシーンではカメラに向かって前進してくるので、秘部のヘアは、一瞬アップになる。バスローブをはだけて失神するシーンでも、鮮やかなヘアヌードが拝観できる。その後につながる濡れ場では、残念ながらというか、予想どおりというか、ボカシが入ってしまうのであるが…。まあ、そんなことはどうでもよろしい。私の「ピンク映画カタログ」らしく、真面目(?)に「映画」について語らねばなるまい。

「濡れ続けた女 吸いつく下半身」に続いて、深町章・後藤大輔の監督・脚本コンビである。いかにも後藤脚本らしく、虚実皮膜、現実とも幻想ともつかぬ混沌とした世界が展開する。ミステリー仕立てではあるが、本格派のそれではない。でも、ネタバレ的な要素もないではないので、この先を読む方はご承知おきください。

「それは、夫が病に倒れて2年目でした」との、御贔屓里見瑤子嬢のナレーションから始まる。貞淑な妻らしく夫「なかみつせいじ」を、甲斐甲斐しく看病する瑤子嬢からスタートする。場所は山奥のホテルを改修した静かな環境の別荘だ。と、突然の転調がある。
 夫は突如、妻に襲いかかりレイプまがいに関係する。そして、遺産目当てに俺を殺そうとしているのは知っていると、山草のおひたしを妻の口にねじ込む。実は妻が持ってきたおひたしは毒草だったのだ。これから訪れる探偵と共謀して、死体を始末することになっていると告げる。何と、とんでもない仮面夫婦だったのだ。毒殺されグッタリする妻、と思いきや、夫がホッとした隙をついて、背後からとびかかり、夫の顔に枕を押し当て覆いかぶさって、逆に窒息死させてしまう。全力の必死な表情で襲いかかるあたりは、瑤子嬢の視線の目力が活きている。この後も、ストーリーは後藤大輔脚本らしく、アレヨアレヨと転調を重ね、リアリズムとは程遠い虚実皮膜、現実か幻想か定かでない混沌世界に突入していく。

探偵の西岡秀記が予定どおり訪問してくる。続いて、登山帰りだが、豪雨で吊り橋が流され先に行けなくなった藍山みなみが、助けを求めてくる。里見瑤子嬢は、藍山みなみを死体発見者にした後、西岡秀記と二人もろとも刺し殺そうと考えるが、これも何だか辻褄の合わない企みである。でも、そんなことはどうでもいいような、異世界の雰囲気が漂ってくる。

だが、死体は忽然と消えていた。山の中に、3人は捜索のために入っていく。そこで藍山みなみと西岡秀記はいい仲になる。死んだはずの「なかみつせいじ」は、旅館の一室らしきところで別の女の真咲南朋と、よろしく濡れ場を展開している。何が何だかサッパリわからない世界になっていく。

西岡秀記は、実は生命保険調査員だった。「なかみつせいじ」は、前妻の保険金殺人で財産をなしたようだ。西岡秀記は恐喝の常習犯で、「なかみつ」も強請られていたのだ。藍山みなみは実は刑事で、西岡秀記を追っていたのである。西岡が「なかみつ」の妻の御贔屓里見瑤子嬢を、今度は恐喝しかかったところで、彼は藍山みなみに現行犯逮捕される。それにしても、体まで与えて接近するのは刑事としてはやり過ぎだよなとも思うが、そんなリアリティは、もうどうでもいいムードの映画になってきている。これで一件落着かと思いきや、夫の殺害を感づかれたようなので、里見瑤子嬢は、二人を毒草で殺してしまう。

と、思いきや、画面はまた転調、病床のやつれた里見瑤子嬢を甲斐甲斐しく看病する夫の「なかみつせいじ」のシーンとなる。そして「それは、私が病に倒れて2年目でした」との瑤子嬢のナレーションで終わる。何だこりゃ?と思うか。虚実皮膜、現実・幻想の境界不明の後藤大輔ワールドを楽しむかは、各自の自由である。

甲斐甲斐しく夫を看病する貞淑な妻→目力の強さフル回転の悪女→薄倖の病床の姿と、次々とイメージの転換を計り、御贔屓里見瑤子嬢は健闘したと思う。もう、キャピキャピとした弾けた若さではなく熟女に近い人妻の域に入ってしまってきたんだなとの寂しさと、最後の病床メークはちょっと痛々しかったなとの、複雑な心境にもなったのではあるが…。

併映作二本
併映は「濡れまくる若い未亡人」「女同士の痴態 むせび泣き」の二本。どうも、どっかで観たような気がするなと思って帰ってから鑑賞リストを確認したら、やはり共に鑑賞済で、それぞれ「痴漢義母 汚された喪服妻」「濃密愛撫 とろける舌ざわり」の新版改題であった。
 そんなものは確認しなくたって、観てるうちにすぐ分かりそうなものだと言われそうだが、ピンク映画というのは同工異曲の姉妹編みたいなのが結構あって、確認しなければわからないという要素は案外あるのだ。こんなところは、ピンク映画ならではであろう。


●ピンク映画大賞 女優賞の行方
いよいよ師走である。これから年明けにかけて映画各賞が話題を賑わす季節である。そこで私も、ピンク映画大賞のメインの賞である女優賞の検討を、現時点でやってみたい。振り返ってみると、転換期の御贔屓里見瑤子嬢も、十分投票候補の一人になりそうだからである。

鉄板の一人目 佐々木麻由子さん
例年と変わらなければ、女優賞の投票枠は二人である。一人は鉄板で昨年に続いて佐々木麻由子さんの連続受賞だろう。(昨年の大賞打ち上げで親しくお話をさせていただいたので、ついつい敬称をつけてしまいました)
 池島ゆたか監督作品100本記念映画「半熟売春 糸ひく愛汁」の鬼母ぶりは、とにかく凄い!「鬼気迫る」とは、こういうのを言うのだろう。そして、野上正義50周年記念作品「悶々不倫 教え子は四十妻」で、自らも「10周年記念作品」として好サポートを見せ、受賞へ向けてさらに一歩前進、とどめを刺した感がある。

2人目の投票候補 その1 御贔屓里見瑤子嬢
御贔屓里見瑤子嬢で、私が観た今年のピンク大賞の対象作は「やりたがる女4人」「愛欲の輪廻 吸いつく下半身」「女アヤカ いたぶり牝調教」(これはカメオ出演に近いが)、そして「色情セレブ妻 秘められた欲望」だ。
 「やりたがる女4人」は、平沢里菜子・藍山みなみ・華沢レモンの3人の愛人を抱える「なかみつせいじ」の、堂々たる正妻役。並みいる旬の3大女優を抑える正妻役という貫禄をみせるが、かつてのブっ飛びぶりから鑑みると寂しいものもある。でも、今さら華沢レモンのポジションに立てるわけもないので、いたしかたないといったところか。
 「愛欲の輪廻 吸いつく下半身」では、やや陰鬱だが久々のエイリアンぶりで飛んでみせた。華沢レモンの母親役とはどうかと思うが、まあ、エイリアンに年齢はないので良しとしよう。
 そして前述した「色情セレブ妻 秘められた欲望」、これらを総合すると、転換期を迎えた女優の着実な第一歩として一票の価値は十分にあると思う。

2人目の投票候補 その2 速水今日子
2005年に私は、「不倫団地 かなしいイロやねん」をベストワンとして満点の10点、堀禎一監督を監督賞、主演の速水今日子を女優賞に投票した。蓋を開けたら作品は23位、堀監督に投票したのは私だけ、速水今日子に投票したのは私以外では一人だった。
 今年も堀監督とのコンビ「したがるかあさん 若い肌の火照り」で、速水今日子は良い味を出した。取り立てての美貌ではないが、清楚で憂いを含んだ佇まいの陰で、女の情念をほとばしらせる個性は際立っている。年頭での、昨年の新人監督賞・福原彰の第2作「連続不倫U 不倫相姦図」でも、その個性は輝いていた。
 里見瑤子嬢は、舞台女優・自主映画も含めて、結構なサポーターがいることを、今年確認できた。でも、速水今日子は、俺が推さなきゃ誰が推す、との気分になっているのは事実である。

2人目の投票候補 その3 日高ゆりあ
「半熟売春 糸ひく愛汁」で、鬼母の佐々木麻由子に対し一歩も引かず、娘役を熱演した日高ゆりあも、候補の一人だ。尊属殺人にまで至る心の地獄を、鮮烈に表現してみせた。
 池島ゆたか監督作品100本記念映画パート2「超いんらん やればやるほどいい気持ち」では、幻想の中で「映画」と名付けられた象徴的美少女を演じ、これも鮮烈だった。2006年の新人女優賞、そろそろメインの女優賞に輝いてもよい頃である。

2人目の投票候補 その4 華沢レモン
脇役が中心だが出演作の数の多さに圧倒され、しかもすべて水準以上をいっており、私が勝手に「売れ熟れレモンちゃん」と名付けたところの華沢レモンは、今年は坂本礼監督作品「や・り・ま・ん」の主演で、堂々たる直球勝負の芝居をし女の切ない心情を表現してみせた。彼女の新人女優賞受賞は2004年、こちらも女優賞戴冠の時期であろう。

悩みに悩むが…
ウーム、悩みます。悩みます。でも、年末の「超新星オカシネマ公演」の「どん底2008」でナマ「御贔屓里見瑤子嬢」(ここではSATOMIの芸名)を観たら、やっぱり贔屓の引き倒しで瑤子嬢になっちゃうのかなあ。まあ、悩みは悩みでも楽しい悩みである。
2008年ピンク映画カタログ−28

2008年11月7日(金) ●新宿国際名画座
「多淫痴情妻」 (旧題「濡れまくり痴情妻」) 1996年公開 
監督・脚本・珠瑠美  主演・泉由起子,ホッチャ

ふたつの夫婦がある。なれそめは、二人の意気投合した男が、電車で共同痴漢をして、痴漢された女が何とそれにさらに意気投合し、その一人と結婚する。その女は淫乱症で、人妻になっても若者を誘惑し、ついには、もう一人の友達の若夫婦を誘い、ライトバンの手配をさせ、その後席で二組の夫婦乱交を見せつけるショーを企む。と、こんなストーリーを紹介するのも空しくなる濡れ場方便ストーリー転がし典型ピンクである。
 ただ、冒頭で、もう一組の夫婦の若妻に迫る変質者が、ひょんなことからライトバン運転手の若者に肩代わりすることになり、さてどうなることか?と思わせるラストが洒落っ気のつもりということなのだろうか。まあ、その程度の凡ピンクである。

「痴漢箱男 覗かれた若妻」(旧題「痴漢覗き魔 和服妻いじり泣き」) 1998年公開
監督・深町章  脚本・岡輝男  主演・葉月ほたる,杉本まこと

戦争未亡人の悲劇である。低予算にも関わらず、戦前・戦後の時代色をよく出している。若き日の葉月ほたるの和服美人ぶりが初々しい。そこを基点に展開される深町章ワールドである。
 葉月ほたるは、愛する人に体を与えたが、彼は戦場に散った。戦後、羽振りのいい書記官の杉本まことと結婚するが、乙女でない身で嫁いだことに引け目を感じたこともあり、心は冷えている。
 愛する男は、実は戦死していなかった。戦場で無惨な火傷を半身に負い、今は箱男となり、覗き趣味に堕していた。しかし、そんな状況で愛する人妻の葉月ほたるに、ひょんなことから遭遇する。再び心が通い合う。葉月ほたるは、愛する人の醜い姿を永遠に封じるため、自らの両眼を潰す。
 練達の職人・深町章の本領全開、江戸川乱歩的猟奇耽美の佳作である。

「したがるかあさん 若い肌の火照り」 20008年公開
監督・堀禎一  脚本・佐藤稔  主演・かなと沙奈,速水今日子

父親ほど年の離れた男と結婚した「かなと沙奈」は、夫と死別した後、義理の息子の吉岡睦雄といい仲になる。そこを基点に濡れ場関係が拡がっていく。典型的ピンクパターンだが、淡々とした描写が持ち味の堀禎一監督、ここでもピンク流エッチとは無縁である。
 私は2005年に堀禎一監督「不倫団地 かなしいイロやねん」を、ピンク大賞ベストワン候補と信じた。ただ、蓋を開けてみたら23位、女優賞に推した速水今日子は2票で、受賞にかすりもしなかった。でも今回も、変わらぬ堀禎一の淡々ピンクに酔わせてもらった。
 義理の母子による「かなと沙奈」と吉岡睦雄のエッチ、そこには扇情的な描写は薄い。母の苛立ち、息子の戸惑い、それが鮮やかに濡れ場で表現される。しかし、吉岡睦雄のセックスフレンドで同年代の青木りんが、義母が自分と同年代で、彼氏が同居しているのを見て引くのは、それも当然である。この心理の綾も、キッチリ押さえている。
 青木りんのそんなショックを知り、かねてから思いを寄せていた川瀬陽太が迫る。なりゆきで二人はベッドインする。この微妙なズレの心理の綾も味わい深い。
「かなと沙奈」は、若くチャーミングで一家に好意的に迎えられていた。このままの縁で済ませたくないと、義兄の飯島大介は、弟の下元史朗との再婚を画策する。そこに、吉岡睦雄の実母の出現となる。結局、下元史朗はかつての義姉の速水今日子といい仲に堕ちてしまう。速水今日子は、ここでもいい味を出す。
 すべてがピンク流濡れ場の組み合わせと言ってしまえばそれまでだが、それを越えて、すべての濡れ場がすれ違い心理の綾を優れて描写していたと思う。でも、この映画の良さも、私以外は、誰にもわかってもらえないのかなとも感じる。
 少なくとも、私にとってはピンク映画大賞トップグループの一篇である。
2008年ピンク映画カタログ−27

2008年10月17日(金) ●上野オークラ劇場
「べっぴん教師 吐息の愛撫」 2004年公開
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・桜井あみ,橘こなつ

奔放なSEX観の英会話講師・桜井あみの男放浪行状記で、彼女のブっ飛んだ魅力が輝く。これも渡邊元嗣流ブっ飛び映画の一篇でした。
 桜井あみは、一度寝た男が、すぐ自分の女のように馴れ馴れしくしてくる湿っぽい感覚が大嫌い。見境なく男と寝ては別れることを繰り返す。とにかく、ルームメート橘こなつの彼氏の西岡秀記まで、あっさり食べてケロリとしてるんだから凄い。英会話教室の受講生「なかみつせいじ」も誘惑し、離婚したら寝てあげると挑発する。本気になった真面目男「なかみつせいじ」は、大苦労して離婚し思いを果たすが、桜井あみに結婚を迫る。またまたの進展にウンザリした彼女は、彼の復縁に一肌ぬぐ。まあ、そんな奔放な女だ。
 そんな男達との感情の行き違いの連続にストレスを溜める桜井あみに、唯一の癒しの場所がある。高校の同級生でアロマテラピストの白土勝功の存在だ。彼はゲイなのである。だから、安心して何でも話し合える。

ここから先、ネタバレかな?

ドンデン返しがある。彼は、これまで撮り貯めた彼女の写真を、大切に整理して保管していた。実はゲイを装っていただけで、本当はノーマルだが、彼女の性質を知っているからこそ、長くつきあい続けるためにゲイを方便としていたのだ。それを知った桜井あみだが、やはり癒しの場として彼とつきあい続けたいと思う。さて、その顛末はどうなるか…との余韻を持たせて、映画はエンドマークとなる。


「CA発情フライト 腰ふりエッチ気流」 2008年公開
監督・加藤義一  脚本・岡輝男  主演・結城リナ,日高ゆりあ

昨年のピンク大賞監督、加藤義一作品だが、それにしてはストーリーが濡れ場の方便だけで転がる凡ピンクだった。国際線CAの結城リナは上司の丘尚輝と不倫中である。でも、いつかは搭乗してきたセレブとの玉の輿を狙っている。
 水泳のメダリストの岡田智宏を乗客に見つけた。アタックを試みるも、先輩CAの酒井あずさに押しのけられ、酒井と岡田はトイレでのエッチとなる。
 フライトから帰宅したら、妹の日高ゆりあが、彼氏のミュージシャンの卵の吉岡睦雄を連れ込んで田舎から上京し、ちゃっかり居座っていた。エッチもたっぷり見せつけられる。
 すべてにウンザリした結城リナは、ふと上司の丘尚輝と不倫を清算しようと決意するが、丘はハイジャック狂言で彼女を引きとめようとする。(このあたりが、わずかに加藤義一流のブッ飛びか)
 窮地を救ったのが、機長の竹本泰志、三高の独身で結城リナはアタックを開始する。しかし、ここでも妹の日高ゆりあが割り込んで横取りされてしまう。(田舎っぺまる出しなのに、どこか憎めない日高ゆりあのキャピキャピギャルぶりも、まあ加藤義一流の魅力か)
 そして、図々しくも日高ゆりあは、彼氏の吉岡睦雄を捨てて、竹本泰志の玉の輿に乗ってしまう。腹いせに結城リナは吉岡睦雄を誘惑するが、妹の元彼とはあと一歩踏み出せない。
 そして時が経ち、結城リナはミュージシャンとして大成した吉岡睦雄と、機内で再会する。今度こそセレブをゲット!とばかりに、二人の機内エッチでエンドマークとなる。「輪舞」風の恋のロンドを狙ったのかとの、好意的な見方もできるが、やっぱりそれ程のものでなく、濡れ場の方便でストーリーが転がる凡ピンクでした。

「CA発情フライト 腰ふりエッチ気流」をもって、2008年ピンク大賞の対象作品は25本となりました。今年は、早々と参加資格ゲットになりました。
2008年ピンク映画カタログ−26

2008年10月3日(金) ●新宿国際劇場
「野外?エッチ 覗いて」 2004年公開
監督・荒木太郎  脚本・三上紗恵子  主演・仏本あけび,しのざきさとみ

若い頃の母を愛していた男に、自分の体を与え青春の追憶の一つとしてしまいこむ。原田知世の「早春物語」ピンク版の趣きの一篇で、いかにも荒木太郎らしい抒情にあふれている。
 美大の女子大生の仏本あけびが主人公だ。フェイスもボディも取り立ててどうということはないのに、何となく雰囲気がある個性的な女優である。彼の父母はベテラン野上正義と「しのざきさとみ」で、民宿を経営している。
 前半は、性に好奇心旺盛ながら、どこか満たされない女子大生のけだるさが描かれる。出だしでは、骨折して足にギブスをしている。退屈まぎれに宿泊客の痴態を覗き見て、男女の局部をいやらしくデフォルメしスケッチしたりしている。ギブスが取れた日は、溌剌と全裸で海に飛び込み、背泳しながらのオナニーというユニークな見せ場もある。幼馴染の青年の吉岡睦雄に処女を与えたりもするが、けだるさは解消されない。この濡れ場もボートの上でなされ、それを俯瞰ショットで捉えるなどの工夫がある。後半になるが、ハワイで野上正義「しのざきさとみ」のベテラン熟年コンビの濡れ場サービスもある。エッチのパーツも、荒木太郎はサービス精神旺盛だ。
 父母がハワイ旅行に当選し、仏本あけびが留守番となり、ここからが後半となる。一人の男、綺羅一馬が訪ねてくる。昔愛した写真の女性を探しているという。何と、若い頃の母親の写真だった。男は、彼女が幸せに暮らしているのを確認したら、去るという。しばらくはためらったが、ついに仏本あけびは、写真の女が自分の母であることを告げる。黙っていてごめんなさい、と謝る。
 ハワイから帰国した野上正義と「しのざきさとみ」を遠くから見て、寂しく土地を去る綺羅一馬、そんなことを知ることなく、ハワイでのベッドインでますます仲睦まじくなった父と母。仏本あけびは男の後を追う。「あなたが好きになったの」深夜の海岸、赤々と燃え盛る焚き火に照らされての、抒情感タップリの濡れ場、荒木太郎の独壇場だ。
 こうして、かつて母を愛した男に抱かれたことを追憶の一頁に加え、彼女は青春のけだるさを克服していくのであった。

「喪服の女 熟れ肌のめまい」 2008年公開
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・真田ゆかり,小山てるみ

これも渡邊元嗣一流のブッ飛び映画である。今回は、そのブッ飛びが2段ロケットなのが凄い。
 妻の小山てるみを病いで失った江端英久の所に、真田ゆかりが訪ねてくる。交通事故で夫を失い、自分は失明したと言う。角膜移植で視力を回復したが、あなたの顔が浮かび訪ねてきた、とのことだそうだ。角膜は小山てるみから移植されたものらしい。そのうちに小山てるみの心までもが、生まれ変わって乗り移ったようなことを言い始める。小山てるみと江端英久は高校生の頃からの長いつきあいで、確かに結婚に至るまでの様々の愛の思い出を真田ゆかりは細部にわたって知っている。
 気味悪くなった江端英久は、親友の精神科医の吉岡睦雄に相談する。角膜移植が生まれ変わりに繋がるなんて、医学的にありえないと一笑に付される。どうせ、二人をよく知る同級生が騙ってるんじゃないかとなる。しかし、卒業アルバムに真田ゆかりの存在はない。
 吉岡睦雄は江端英久に、真田ゆかりを診察に来させるように伝える。カウンセリングで彼女の妄想を解くつもりなのである。実は吉岡睦雄は、生前の江端英久の妻の小山てるみと不倫関係にあった。診察に訪れた真田ゆかりは、小山てるみと全く同じ手管で吉岡睦雄をイカせる。これでは、彼も生まれ変わりを信じるしかない。吉岡は江端に、科学では解明できないこともある、生まれ変わりでまちがいないようだ、と告げる。
 それでも、多少は半信半疑だった江端英久だったが、彼女が夫婦の夜の営みの細部までも知っているに及んで、生まれ変わりと彼女の愛を信じて再婚する。ここまでで、十分に渡邊元嗣流のブッ飛びなんだが、さらに後半にドンデン返しのブッ飛びがある。

ここから先!ネタバレあり、注意!!

高校生の頃の真田ゆかりはいじめられっ子だった。学校の屋上から飛び降り自殺をしようとしていたところを、江端英久に助けられた。以後、彼女は彼に恋をした。しかし彼はその頃から小山てるみとつきあっていた。失意の真田ゆかりは転校する。(卒業アルバムには存在しないわけである)
 しかし、以後の彼女はストーカーと化す。二人の結婚までの数々の思い出を熟知しているのはそういうことだったのだ。結婚した後は新居に忍び込む。二人の仲を裂こうと、浮気の痕跡めいたものを置いたりする。(でも、この程度では不倫や夫婦の夜の営みの詳細を知ることまでは無理だよな、と思っていると、さらに鮮やかな仕掛けがある)
 実は、結婚後しばらく経ってから、江端英久と小山てるみの夫婦仲は冷えてしまった。真田ゆかりの不倫を連想させる小細工が、さらに亀裂を深めた。夫の親友の吉岡睦雄との不倫はこうして始まった。その後、不治の病に冒された小山てるみは、私家版のブログを作成し、赤裸々な自分の一生を記録した。ストーカー真田ゆかりは、そのブログを盗み見てすべてを知るのである。
 江端英久と吉岡睦雄は、腹を割って話し合い、吉岡睦雄は不倫を告白する。江端英久も、現在の妻が小山てるみの生まれ変わりとしたら、本当に愛してるのはお前のはずだ、と言う。そして、それでもいい。今は現在の妻の真田ゆかりの愛情を信じることにしたと告げる。
 真田ゆかりの角膜移植は全くの偽りで、これもブログで小山てるみの角膜バンク登録を知っていたからに過ぎない。愛情なく惰性で結婚した前の夫は、ひき逃げで片づけたのだ。すべてに勝利した真田ゆかりの艶然たる微笑みでエンドマークとなる。
 オカルトとしか思えない渡邊元嗣流を展開させ、後半はミステリーへと転調して、すべてに合理的説明をつける。この力技は絶妙であった。


番外 「御贔屓里見搖子嬢」との再会
前回の「ピンク映画カタログ」で紹介したように、この日は「御贔屓里見搖子嬢」出演の劇団毒漫画旗揚げ公演第1号「ゴッホのピストル」を予約した日である。映画鑑賞に先立ち、劇場MOMOでその演劇鑑賞をし「御贔屓里見搖子譲」とも再会した。以下はその顛末です。

9月の上野オークラ劇場のチラシの「今月の女優」は里見搖子譲である。この芝居の案内も掲載されている。『来場時、受付で「里見扱い」でとお伝え下さい。』とある。早速、窓口で「里見搖子さん扱いって言うと、何かいいことあるんですか」と余計なことまで言う。受付嬢、苦笑気味に「いえ、はい、里見さん扱いとします」と言っただけだった。

客席に向かおうとした時、何と!御贔屓里見搖子譲が歩いてきた!でも、前にお会いしたのは5月、もう忘れられちゃったかなと危惧したが、視線が合った途端にパッと顔を明るくして、「まあ、来ていただいたんですか」と表情が輝く。ウム、完全に「おともだち感覚」だ。「覚えてます?グリソムギャングでお会いした周磨ですけど」(里見搖子譲とのグリソムギャングにおける「おともだち感覚」の酒席の詳細は「映画三昧日記」をのぞいて下さい。と、ここはPRのさもしい根性)「もちろん覚えてますとも」「あ、これ、PGの里見さん特集のページをコピーしたものです」と、この日一番の目的の品を渡す。「え、いいんですか」「グリソムギャングで約束したんですから。『四畳半革命』の初日の日にお渡ししたかったんだけど、あの日は主要スタッフ・キャストの中で里見さんだけ来てなくて…」「あ、本当にすみませんでした」どさくさにまぎれて、「前にお話しした早乙女宏美さんが活弁をする会、日にちが決まりましたから」と「蛙の会」のチラシも渡してしまう。「終わったら、またお話しましょうね」ということで、再会第一弾は楽しく終了した。

演劇「ゴッホのピストル」は、私にはなかなかに面白かった。妻に捨てられた夫の内宇宙で、自分が本来はそうありたい人間が形造られ、その形造られた人間が、新たに内宇宙を構築して、さらにそうありたい人間を形造っていく。めくるめくばかりの入れ子構造だ。ただし、その全体構造が明確になってくるのは芝居の終盤近くで、だからこそこの混沌空間が魅惑的なのだ。これも一つのセンス・オブ・ワンダーというべきだろう。(センス・オブ・ワンダーの何たるかということは、現在進行形の「湯布院映画祭日記」で長々と蘊蓄を傾けてます。そちらの方にもお寄りください。と、ここもPRのさもしい根性)そして、意外と言っては失礼かもしれないが、平日ながらこの日は百人程の観客で、小劇場は通路まで埋め尽くされる超満員だった。

「御贔屓里見搖子嬢」はOLと森下愛の二役。メインの役ではないが、調味料として抜群の味わいを出した。OLは、三人組で二人の子分を従えている感の姉御肌、ひときわ輝く美貌を活かし、他の二人にかしずかれるような態の奔放な女で、メイン舞台の一つのバーに、徹底的な不協和音を轟かせる。森下愛は、主人公が訪れた病院のシーンでの、病棟を抜け出した精神科の患者である。主人公をやたらと引きずりまわし、ここでも奔放さは健在だ。久しぶりに里見搖子嬢のキャピキャピな溌剌さを堪能した。

芝居がはねる。搖子嬢が出口で、代わる代わる三人ほどのファンと話している。意外にも全部同年代の女性みたいだ。なるほど、搖子嬢にはこういう世界もあるのか。一段落して私が話しかける。「ひさしぶりに里見さんらしい弾けが見られて良かったです。とにかく最近は映画の方は落ち着いた役ばかりなんで」「そうなんですよね」ちょっと眉をしかめたところを見ると、女優としての過渡期とはいえ、映画でもトンでる役をもっと演りたいのかとも見えた。「でも、最近の深町監督の後藤大輔さんの脚本のは、久々にエイリアンでトンでて良かったです」「ああ、あれも女の妄執ですけど」「ピンク関係者の納涼会で、後藤監督には1時間で納まる話じゃないと言ったら、もっと長くてかなり切ったって言ってました」「大変でした。よくわからないセリフを延々と言ったりして」「だけど、華沢レモンさんの母親役って、それはないと思いましたね。まあ、エイリアンだから何でもいいんですけど」「そうですね。あれ、年とらないんですから、アハハ」そんな調子で歓談した。

「12月にまた公演あるんですけど、来ていただけます」「ありました?オカシネマのチラシは観ましたけど」「『どん底』演ります。チラシ入ってますんでお願いします」「チラシあり過ぎなんで(確かに芝居のチラシは入口で山のように渡された)、じゃ後で確認します」「里見扱いで来てくださいね」なるほど、女優はこういう形でも業界内にPRする必要があるわけだ。なかなかに大変である。「いろいろ活動されてるようなんで、頑張ってくださいね」最後は里見搖子嬢に逆エールまで送られてしまった。もっとも、彼女が気が向いて門仲天井ホールに来場したら事件だろうなあ。ただ、それにしても私ではなく大先輩の早乙女宏美さんに敬意を表してのことではあろうが…

「おかしな監督映画祭」、通称「おかシネマ」は第6回が来年3月、第7回が7月に開催される。ただ、これがチラシにあるような『「10人の監督がいかに一人の女優(SATOMI−注・御贔屓里見搖子嬢のこと)の魅力を引き出すか?」というコンセプトで始まった』ということは、今回初めて知った。そのチラシの下に12月16日(火)〜23日(火)の「どん底2008」公演の告知もなされていた。楽しみというのは尽きないものである。

「御贔屓里見搖子嬢」とのスクリーンでの出会いは、私がピンク映画を見始めた2000年だった。金魚の妖精・戦前の薄倖な美少女からニューハーフまで、その自由奔放な存在感は、年齢不詳・性別不詳、いやこの娘ホントに人間なんだろか、宇宙人じゃなかろうか、とその存在感に圧倒された。2003年のピンク大賞前夜祭で監督・脚本家の樫原辰郎さんに紹介され、挨拶しサインをもらい握手もさせてもらった。「映画芸術」2002年冬号で「搖子の白い胸」、2003年冬号で「花開く搖子」と、応援歌まがいの拙文も寄稿し、掲載誌を新東宝を通じて贈呈したりもした。しかし、それは女優とファンという距離感以上ではなく遠い存在だった。今、「御贔屓里見搖子嬢」の方も「おともだち感覚」で、私という存在を認識してくれている。こういうことってあるもんなんだなあ。「時間という名の魔術師」を感じる。そして、生きてれば人間っていろいろいいことがあるものだと感じ入るのであった。
2008年ピンク映画カタログ−25

2008年9月23日(火) ●上野オークラ劇場
「激生ソープ 熟乳泡まみれ」 2004年公開
監督・脚本・関根和美  主演・酒井あずさ,桜月舞

酒井あずさ、桜月舞、華沢レモン、年代も生き方もバラエティに富んだ3人をキチンと情感を込めて描き分け、それぞれの個性も際立たせて濡れ場サービスもしっかり見せる。大袈裟に言うならば溝口健二の世界のピンク版といったところか。
 支配人の町田政則がいい味を出す。ソープ嬢を実の娘と思い、親身になって心配し心を砕く。ソープ歴10年、男運が悪くもう女としての盛りを過ぎ、流れ流れてきた酒井あずさと、いつしか心を通い合す。廓物によく出てくる「お母さん」と慕われる女将の男版といったところか。「娘と寝ちゃいけないよな」と言いながらの酒井あずさとの濡れ場に、中年男女の哀感が漂う。
 桜月舞は今が盛りのナンバーワン、タカピーで傲慢、年増の酒井あずさを見下してののしる。だが、彼女にもヒモとなったホストの男に絞りとられている暗い陰がある。自殺未遂にまで至るが、体を張ってヒモと殴りあった支配人の町田政則の心を知り、桜月舞の人生の先輩としての忠告に素直になる。強気で生きてきた底にある女の弱さを、切なく表現して見事だ。
 華沢レモンは、まだプロ意識に徹しきれないソープ嬢、酒井あずさを姉のように慕って、店を移り続ける。ある日、客の変態趣味にキレてしまう。プロとしての心構えを諭す酒井あずさ、フォローのためにその客との店の外での出会いをしかける支配人・町田政則。いつしか、彼女はその客と真面目につきあい、結婚してソープ業界から去っていく。売れ熟れレモンちゃんの可愛らしさ全開だ。
 酒井あずさにはおっかけの竹本泰志がいる。どんなに店を転々としても、ストーカーのように見つけ出し、客になって指名する。そしてついに、結婚を申し込む。真面目なサラリーマンで、バツイチ、二人の子持ち。酒井あずさも同じバツイチだ。支配人の町田政則と、二人の男の間で心がゆれる。「堅気の人の奥さんになれ」「私には自信がない」ここでも酒井あずさと町田政則が良い味を出す。
 エンドクレジットをバックにして、その後の酒井あずさが登場する。ソープを去り二人の男と別れ、SMクラブでご主人さまのプレイに耽る姿であった。 「好色五人女」ならぬピンク版「好色三人女」と銘打ちたい佳編であった。

「女囚アヤカ いたぶり牝調教」 2008年公開
監督・友松直之  脚本・大河原ちさと  主演・亜紗美,山口真里

鬼才・友松直之の映画を初めて観たのは1997年作品「コギャル喰い 大阪テレクラ篇」で、遭遇したのは2000年1月、私がピンク映画を恒常的に見始めて3ヶ月ほど経ってからだった。当時の「ピンク日記」で以下のように記している。「フィルムは荒れてる。タイトルも無い。(中略)血みどろスプラッタ、殺したい人請け負う若者、血みどろの母に手を引かれた記憶、そのトラウマか?いつも裸の女と同棲の主人公、女は時々背に翼生える天使、援交あり、ヤクザの私刑・レイプ・浣腸責めあり。適当な猥褻AVなのか?それにしては意味ありげな絵や、早いカット割の現代キャッチ、何だろう?」混乱と衝撃がそのまま出てる一文だ。
 新作「女囚アヤカ いたぶり牝調教」も、混沌とした幻想譚で、ここでも鬼才の面目躍如である。
 主婦の亜紗美は淫夢に悩まされている。夫は仕事で疲れ、セックスレスだ。セラピーに通う。映画は夢と現実の2本立てで進む。
 夢の中で、彼女は女囚だ。でもリアルなそれではない。看守はサディストの男ばかりで、凶器を隠したと疑われ、全裸にされ前も後も、徹底的に穴をまさぐられる屈辱を受ける。彼女の反抗心は衰えない。隠し持った凶器で看守に反撃する。しかし抵抗は空しい。独房に縛られ転がされ、催淫剤を投薬される。卑猥な言葉で男が欲しいことを訴える言葉を吐くように強要され、他の女囚の衆人環視の中で、前と後を同時に男根で貫かれる。
 現実の主婦としての亜紗美は、セラピーに通い、薬を服用するが淫夢は消えることはない。夫は友人と事業のための借金の連帯保証人になる。しかし、友人は逃げ去り、借金のカタに彼女はヤクザにまわされ、風俗で稼ぐことを強要される。何とか借金を返した時、夫は別の女を作っていて、離婚を申し出る。怒った亜紗美は夫を刺殺して、女囚となる。
 この二つの世界が、現実の服用薬と夢の催淫剤が混濁し、ついにはサディストの刑務所長とセラピストが同一人物となるなど、時系列は混乱し、脈絡なくイメージが連鎖していく。前述したストーリーの概略はできるだけ整理して記したものであり、もっと時間も空間もはるかに混沌としている。
 最後は、女囚が主婦の夢を見ているのか、主婦が女囚の夢を見ているのか、判然としない世界で終わる。鬼才・友松直之の真骨頂である。
 御贔屓里見瑶子譲も出演している。掃除バケツをひっくり返して床を水びたしにしていまい、看守に「掃除もまともに出来ないのは人間以下だ。人間じゃないなら服はいらない」とスキャンティー一つの裸にされ、後は犯される亜紗美を見つめ続けることを強要されるが、耐えられず後ろを向くというほとんどカメオ出演的な役である。でも、エンドクレジットは堂々と1枚タイトルだったあたりは貫禄で、ファンとしては嬉しき限りである。

 余談だが、上野オークラ劇場のロビーに、瑶子譲出演の劇団毒漫画旗揚げ公演第1号「ゴッホのピストル」のチラシがあった。(SATOMIとして紹介されている)早速、10月3日(金)昼の部を予約した。(平日昼でこの日は木戸銭が安いからという浅ましい根性です)また、人生の楽しみが一つ増えた。
2008年ピンク映画カタログ−24

2008年9月6日(土) ●浅草シネマ
「不毛な制服 恥ずかしい半熟」(旧題「制服本番おしえて!」) 1990年公開
監督・常本琢招  脚本・常本琢招、石川欣  主演・山下麻衣、桂木美雪

援交女子高生が主人公である。単なる援交ではなく、ラブホテルで相手に睡眠薬を一服盛って、財布を盗むこともしている。
 ラブホテルのフロントマンは、監視カメラでそのことを発見する。ビデオ録画して彼女に示し、やめるように諌める。彼は大人の恋を倦怠期で失いその心の空白の中で、突っ張ってはいるがどこかピュアな女子高生を、まともな道に導きたいと思ったのだ。反発する女子高生は彼の金までも盗み、恩をアダでかえす。
 微妙な心のすれ違いの果てに、二人は歳の差を越えて結ばれる。Xces流で濡れ場は必要以上に長くネチっこいが、それなりにキチンとまとまっている王道ロマンだった。前世紀のXcesは、単に濡れ場の方便でストーリーを転がすだけでないこんな映画を撮っていたんだろうか。

「愛人萌子 性生活」 2006年公開
監督・北畑泰啓  脚本・橋本以蔵  主演・葵あげは,なかみつせいじ

町工場を倒産させ自己破産して、妻にも逃げられて自暴自棄になった「なかみつせいじ」は、最後の隠し金をかねてから心を寄せていたキャバクラの葵あげはに入れあげることにする。ところが彼女に「愛してる」と告白され、後は寝て寝て、やってやってやりまくる。金が底をついたら彼女が体を売って稼ぐ。そのことがまた二人を刺激して燃えさせる。さらに、葵あげはピンク映画館に入りオナニーをして痴漢を誘いこみ、何本もの猥褻な手の動きの真っただ中で悶え狂う。それを目にして「なかみつせいじ」も興奮する。映画館のトイレで落ち合い、ほてりを癒すように、そこでもやってやってやりまくる。
 こうしてストーリーを紹介すれば明白だが、ここには台詞はほとんどない。「アヘアヘ」「アーアー」だけである。描写はヴァリエーション豊かなXces流エッチのオンパレードだ。濡れ場描写はなかなか工夫はされている。そんな映像に、「なかみつせいじ」の自分の空しい一生と退廃的な快楽にのめり込む心情が、文学的な雰囲気でボソボソ語られる。何とも奇妙なミスマッチの魅力がある。
 葵あげはは町で拾った若者の石川雄也を誘いこみ、彼とのからみを「なかみつせいじ」に見せつけ、3Pに至る。これも「なかみつ」を喜ばせる手練手管の一つと思わせて、大逆転の展開となる。「なかみつ」は葵あげはに毒を盛られ、死を前にして体がうごかなくなった状態で、葵あげはと石川雄也の痴態を見せつけられる。それが彼女を興奮させる。葵あげはは、すべて自分の快楽のために男を食い殺していく魔性の女だったのだ。今度は石川雄也に乗り換えたということである。
「なかみつせいじ」は、死の直前に近くの住人に発見され、一命だけはとりとめる。抜け殻のようになってピンク映画館に入り浸る日々だが、ある日、葵あげは同様に客席でオナニーをして痴漢行為を誘う水原香菜恵と出会う。映画館を出て川縁にボーッと佇んでいる「なかみつせいじ」、後ろの木陰で彼の様子を水原香菜恵が伺っているファンタスティックな落ちでエンドマークとなる。

「変態シンドローム わいせつ白昼夢」 2008年公開
監督・浜野佐知  脚本・山崎邦紀  主演・ミュウ,大原ゆり子

ミュウは婚約者の石川雄也と共に上京する。大学時代の恩師なかみつせいじ・大原ゆり子夫妻に仲人を依頼するためである。ミュウには妹の平原絢がいる。彼女の恋人の平川直大は、実は大学時代のかつてのミュウの恋人でもあった。若さにはやった平川直大にミュウはSEXを迫られ、男性恐怖症になった。そして性の抑圧は、彼女が白昼に淫夢を見るという症状に発展する。
 ここまでお膳立てが揃えば、後は浜野佐知流のアナーキーな性の世界の独断場だ。仲人夫妻と婚約者との4人の乱交の白昼夢、元彼の平川直大との淫らなそれ、さらに妹の平原絢と平川直大が戯れる白昼夢、的場流の奔放でアナーキーな性のワールド満開には事欠かない。
 仲人の大原ゆり子にミュウは、あなたはSEXに対する抑圧があるんじゃないの、恥じるものでもはしたないものでもないわよ、解放しなさい、と諭され、毅然として元彼の平川直大の下に赴き激しく燃える。フェラし、その精液をダラダラと大量に男の口に流し込み返すオエーッとなりそうな激しさだ。そして、婚約者の石川雄也に女上位で悶え狂い妖艶なる笑みを浮かべてエンドとなる。浜野佐知流アナーキーなセックスワールドはここでも全開だった。
2008年ピンク映画カタログ−23

2008年8月19日(火) ●新宿国際名画座
「八神康子 熱い湿地帯」(旧題「八神康子ONANIE」) 1985年公開 
監督・渡辺護  脚本・吉本昌弘  主演・八神康子,山本あゆみ

タイトルロールの八神康子はバツイチ妻である。今はオナニーとレズを楽しんでいる。相方の若い女は、女二人の子供として育てるべき子の妊娠を目論んでいるが、なぜか血液がB型の男の精子にこだわっている。そして、アルバイトを誘いかけ童貞の学生を、八神康子が夫から譲り受けた別荘に連れ込んでくる。
 八神康子の元の夫は、未練がましく別荘におしかけてくる。でも、彼女は叩き出すことはしない。夫の血液型もB型であった。とりあえず体を許し、相方の女にも誘惑させて抱かせる乱交状態となる。こうなると、一見は濡れ場の方便でストーリーが転がる凡ピンクに思えるが、さすが往年のピンクの名匠・渡辺護は一味ちがった。
 八神康子は、元の夫に抱かれた後、「男はしょせん出したら終わりなんでしょ」と、その後オナニーで悶え、レズで狂い、夫に男の限界と屈辱を思い知らせる。コクのある描写で女の凄味を引き出してみせる。そして、相方の女の妊娠が確認されたら、男達を捨ててバイバイだ。
 睦まじい二人の女、「どっちの子か分からないのよ」「関係ないわ。あたしたち人の二人の子であるのは、まちがいないじゃない」飛んでる女の強さを魅力的に、スクリーンに定着した。情感あふれる主題歌も効果的だった。

「物凄い絶頂 淫辱」 2007年公開
監督・深町章  脚本・後藤大輔  主演・華沢レモン,佐々木麻由子

作家志望だが、実は「竹や〜青竹〜売り」のしがない男「なかみつせいじ」は、世をはかなんで漂白の旅に出る。波しぶき砕ける断崖で、メイド姿の華沢レモンと遭遇する。彼女はカフェの女給だったが、遠い昔に学生(「なかみつせいじ」二役)と身分違いの恋をし、心中に失敗して自分だけが成仏できない悲しい亡霊だった。「なかみつせいじ」は、彼女を成仏させることを決意し、そのことを通じて捨ててきた妻とやりなおす心を取り戻す。(妻役が御贔屓里見瑤子嬢、ここでも落ち着いた地味な役どころ、ああ〜、でも、今回も多少はブッとんでくれます)
 戦前の薄倖な美少女が、亡霊になって表す切ない恋心、古き時代の空気を醸し出す練達職人の深町章は、相変わらず達者である。ただ、今回の脚本は才人の後藤大輔、一味違ったヒネリが加わってくる。
 心中の失敗がふるっている。華沢レモンはその気になるとオシッコを催す特異体質なのである。オシッコを済ましているうちに、男が先に逝っちゃったんである。メイド姿に現れたのにも理由がある。近くのペンションを経営している久保新二は、メイド姿趣味で抜群の指技テクニシャン、妻の佐々木麻由子はコスプレ趣味で、亡霊の華沢レモンはその影響を受けたというわけだ。
 成仏させるための「なかみつせいじ」の手管もユニークだ。華沢レモンに「それはオシッコじゃない潮吹きだ」と納得させるために、久保新二を使って潮を吹かせ安心させる。
 でも、華沢レモンはそんな策略も実は百も承知で、「なかみつせいじ」を妻の元へ、現実的な世界へ戻すためへの、逆の策略だったのだ。そして、彼女はこの世に止まり、佐々木麻由子とコスプレペンションの売れっ子になる。
 お互いを見つめなおし、夫婦としてやり直そうとの「なかみつせいじ」と妻の御贔屓里見瑤子嬢、一見シリアスな描写だが、「なかみつ」の夢の中では瑤子嬢がレモンちゃんと同じメイドスタイルで、ブっ飛び淫乱演技を見せたりもする。
 戦前の悲しい心中、現代の夫婦の絆の回復と、深町流王道ロマンが基軸でありながら、どこか少しずつヘンな後藤脚本がアクセントをつける。奇妙な魅力を有する一篇であった。

「獣になった人妻」 2008年公開
監督・佐藤吏  脚本・小川隆史  主演・友田真希,結城リナ

新鋭(もはや中堅か)佐藤吏監督の新作は、3日間(回想を入れても4日間)の出来事をコンパクトにまとめた洒落たピカレスクである。最近話題の内田けんじ作品に通じる映画話法の妙がある。脚本の小川隆史の功績も大であろう。
 チンピラの千葉尚之は、兄貴分の那波隆史の情婦の結城リナに、誘惑されて寝てしまう。そこまでは回想で、映画はそのことがバレた朝から始まる。怒り心頭の兄貴分は、千葉尚之に明日までに10万円持ってくるように命じる。それなりに分相応のリアリティある金額だが、素寒貧の千葉尚之にはおいそれと用立てられない額面でもる。
 所在なげに町を彷徨していた千葉尚之は、ひょんなことで人妻の友田真希と遭遇する。言うことを聞けば100万円くれるという。そして不倫相手をさせられる。
 の夫の神崎純一は、彼女の父の死後に会社を引き継いだのだが、夏井亜美と不倫するなどやりたい放題である。最近はヤバい仕事にも手を染めている。そんな夫に一泡吹かそうと、友田真希は家出したのである。
 友田真希は夫の神崎純一に電話を入れる。報復のために彼女は狂言誘拐を企み、1000万の身代金を千葉尚之に要求させる。ところが夫の神崎純一から千葉尚之に新たな提案がされる。このさい妻を始末してくれれば1億円出すというのだ
 千葉尚之が必要なのは10万円だけだが、100万→1000万→1億と、手に入りそうな金がどんどん増えていく。ほくそえむ千葉尚之の心の内を、コミック調のイラスト挿入で表現する手法も洒落ている。とにかくこのコロコロ膨らむ意表をついた展開は楽しい。
 神崎純一は携帯サービスで妻の友田真希の所在を把握している。そこで、抜け目なく妻の所在先に、凄腕の事後処理屋マイケル・アーノルを差し向ける。1億円に目の眩んだ千葉尚之は、何度も友田真希の殺害を試みるが情が移って出来ず、ついに彼女に金欲しさに殺意を持ったことを告白してしまう。怒った友田真希は、離婚を決意して、夫の罪状をすべて警察に通報する。そういうことになったからこれから金はいくらでも必要になると、友田真希は千葉尚之を無一文で叩き出す。さあ大変、千葉尚之は1億どころか、当初必要だった10万すら手にはいらない。明日までに兄貴分に金をもってかないと、何をされるか分からない。もはや1日は終わろうとしている。さてどうなる。さあどうする。

ここから先、ネタばれあり!注意!!

兄貴分の那波隆史は、情婦の結城リナにフェラさせながらドライブを楽しんでいた。そして興奮し運転を誤り友田真希を轢殺してしまう。動転した彼は、死体を森の奥に放置し、土地を去って逃走する。千葉尚之が10万円の調達ができない言い訳の電話をかけるが、もはやそんなことにはかまっていられず、千葉は九死に一生を得る。
 神崎純一は妻の友田真希の密告により、夏井亜美との寝込みを逮捕される。(逮捕する男女コンビの捜査官が、カメオ出演の岡田智弘と「ほたる」というゴージャスさが楽しい)
 森の奥の死体をホームレスが見つけ、高価なネックレス漁りなどを始める。そこへ事後処理屋マイケル・アーノルが、携帯サービスで死体の所在をつきとめて登場する。「約束の品です」1億円入りのトランクは、ホームレスに差し出される。意表をついた意外な展開で、エンドクレジットとなる。
 だが、もう一つエンドクレジットの後に、ドンデン返しのとどめがある。トランクを開けるホームムレス、しかしトランクは空だ。怪訝な表情。そして銃口をホームレスに向ける事後処理屋マイケル・アーノルのシーンで、本当の落ちになる。これだけ手の込んだストーリーのピカレスクは、一般映画でもそうはない。快作である。


「湯布院映画祭」が8月27日(水)の前夜祭から幕を開けます。映画祭前の最後の「ピンク映画カタログ」となると思います。しばらく力点は「湯布院映画祭日記」になり「ピンク映画カタログ」はお休みになると思います。2008年「ピンク映画大賞」の対象鑑賞作品はこれまでで21本、昨年は同時期で20本だったので、本人が頑張ったつもりの割には、意外と数字が伸びてません。「気合いダーッ」の精神で、9月以降がんばりたいと思います。
2008年ピンク映画カタログ−22

2008年8月4日(月) ●上野オークラ劇場
「さびしい人妻 夜鳴く肉体」 2005年公開
監督・竹洞哲也  脚本・小松公典  主演・倖田李梨,篠原さゆり

倖田李梨は、夫に蒸発された人妻である。独り寝のさびしさから行きずりの男を誘い、男漁りを繰り返している。ただ、心の休まる場所は、近所のアンティークショップだ。
 アンティークショップの主人の柳東史は、近くの蕎麦屋の人妻の篠原さゆりと不倫している。二人は幼馴染みで、結婚の約束をしていた。だが、お互いに長男と長女で、親の店を継がなければならず結婚できなかったのだ。柳東史は、不倫関係を清算したいと思っている。
 倖田李梨の心休まる場所アンティークショップは、いつしか主人の柳東史への思慕に変わる。不倫の場を目撃してしまった彼女は、ショックでいずこへともなく姿を消す。
 倖田李梨の妹の谷川彩は、彼女の行先は蒸発した夫との思い出の場所の鎌倉の海岸だろうと告げる。柳東史は倖田李梨を追う。そして、二人は結ばれる。妹のサブエピソードで、谷川彩が恋人と奔放にSMプレーに耽るサービスもある。要するに典型的なピンク映画の常道だ。
 しかし、監督・竹洞哲也=脚本・小松公典の名コンビは、いつものとおりこれを情感あふれる一編に仕上げた。「ゴジラや」の協力を得たアンティークショップの描写が、奥行き深い味わいを醸し出す。鎌倉の海岸でしみじみと語りあう倖田李梨と柳東史に切々たる情感が漂う。これも竹洞=小松コンビの佳作の一本であった。

「親友の妻 密会の黒下着」 2008年公開
監督・池島ゆたか  脚本・五代暁子  主演・友田真希,倖田李梨

大学の同期生の「なかみつせいじ」と竹本泰志は、それぞれの妻の友田真希と倖田李梨も含めた家族ぐるみのつきあいをしている。「なかみつ」夫妻は子供にも恵まれ、実直で平凡な生活をしている。竹本夫妻は、夫は建築士で妻はインテリアデザイナー、派手な生活をしている。冒頭はホームドラマ調に、この対比がジックリと描かれる。
 続いては濡れ場の3連打になる。お互いを知りつくした夫婦の営みを、「なかみつせいじ」と友田真希がしっとりと見せる。竹本夫妻の仲は冷え切っており、互いに不倫三昧だ。続いては竹本泰志と愛人の華沢レモンとの濡れ場で、こちらは大人の火遊び調でエッチ度満点だ。倖田李梨の不倫漁りの毒牙は、夫の親友「なかみつせいじ」に迫る。大胆奔放な人妻に誘惑され、オドオドする実直なだけが取り得の「なかみつせいじ」。三様の濡れ場の描き分けは、「ピンク監督はカラミがキチンと撮れなければ駄目」と断言する池島ゆたか監督ならではで見事だ。
 でも、監督・池島ゆたか=脚本・五代暁子の名コンビは、このまま前作「未亡人民宿 美熟乳しっぽり」同様に、濡れ場の方便でストーリーが転がる凡ピンクにしてしまうのかなと思っていたら、さにあらずだった。倖田李梨は常時の最中に首を絞められてイク性癖がある。求めに応じた「なかみつせいじ」が行き過ぎて、倖田李梨を絞殺してしまったことから、映画は急展開する。そう、池島=五代コンビは常に名画のパロディ=オマージュだったが、今回は「女の中にいる他人」なのだ。
 罪の意識にさいなまれる「なかみつせいじ」は妻の友田真希に犯行を告白し、自首することを告げる。しかし「私が黙っていれば済む。幸せな家庭を壊さないでほしい」と懇願される。それでも、「なかみつせいじ」の心は休まらない。ついに親友の竹本泰志にまで、妻殺しを告げてしまう。だがそれも、夫婦仲が冷え切っていた竹本泰志に、「いずれは妻の行状からこうなったはずで、おまえが刑務所に行く必要はない」と、ここでも許されてしまう。苦悩し続け、いつ自首するかわからない「なかみつせいじ」を見て、妻の友田真希は家庭を守るために、自然死を装って夫をトリカブトで毒殺することを決意する。ここまでの展開は、全くオリジナルを忠実になぞっている。
 これはかなりしんどい作業だ。「なかみつせいじ」が、実直で平凡な男の予期せぬ地獄に落ち込んだ苦悩をいくら熱演しても、オリジナルは小林桂樹なのである。友田真希の方のオリジナルは、清楚な美貌の中に家庭を守るためには夫殺害も辞さない「女の中にいる他人」を、静かに鬼気迫る好演をした新珠美千代だ。成瀬巳喜男の原本に忠実になればなるほど、負け戦になってくるのは明白である。唯一、奔放さで倖田李梨とオリジナルの若林映子が拮抗できるくらいだろうか。
 だが、さすが才人の池島=五代コンビだ。最後に大逆転を見せてくれる。夫を殺害した友田真希は、竹本泰志に乗り換えて結婚を迫る。彼女は妊娠している。どちらの子か分からない。でも「夫とは冷えていて、しばらくなかった」と嘘をつく。このピンク風の落ちに至って、友田真希は新珠美千代と一味ちがう鬼気迫る「女の中にいる他人」を表現してみせた。
2008年ピンク映画カタログ−21

2008年7月24日(木) ●上野オークラ劇場
「連込み兄嫁 薬指の技」(旧題「義姉と弟 はしたない人妻」) 1999年公開
監督・北沢幸雄  脚本・五代暁子  主演・児島なほ,佐々木基子

大学生が歩いていて、気になる女に出会う。ある日、1年でバツイチになった兄に再婚相手を紹介される。何と彼が気になっていた女だった。義姉となった彼女は、時々不審な外出をする。義弟が尾行したら、彼女は会員制秘密サロンのホステスで卑猥な行為に耽っていた。
 詰問する義弟を兄嫁は誘惑する。それを覗き見して興奮する兄。見られることで興奮する兄嫁。兄は妻が秘密サロンの会員であることは百も承知で、それも燃える元であるという。そういう性癖の男女であり、理想の出会いをしたということだ。前妻との離婚も、その性癖に耐えられず妻が去ったのである。
 男と女の性の深淵に迫った五代暁子脚本ではあるが、そこはXces映画で、ベテラン北沢幸雄演出はそんな心理描写に目もくれず、ひたすらストーリーは濡れ場の方便として転がし、ネチっこいXces流エッチ描写で盛りたてている。
 兄を演じるのが「なかみつせいじ」(このころは「杉本まこと」の芸名だが)。この日の3本立すべてに出演している売れっ子ぶりであった。

「淫欲怪談 美肉ハメしびれ」 2004年公開
監督・小川欣也  脚本・関根和美,清水雅美  主演・三上翔子,水来亜矢

小川欣也40周年記念作品である。
 弁護士の「なかみつせいじ」は、銀行員の三上翔子から情報を引き出して、銀行強盗を計画する。仲間は薬剤師の竹本泰志、元売れっ子ホストの兵頭未来洋、宗教団体の広報担当の石動三六の3人だ。銀行強盗は成功するが、「なかみつ」は三上翔子が裏切って銀行に情報漏洩することを恐れ、仲間3人と図って彼女を絞殺する。
 ほとぼりの冷めた犯行から2年後に、山分けの場に男4人が集合する。竹本泰志が青ざめて転がりこんでくる。三上翔子の幽霊に遭遇したというのだ。やがて幽霊は他の男の前にも出現し、兵頭未来洋、石動三六が呪われたように次々と死んでいく。

ここから先、ネタバレあり! 注意!!

実は、幽霊は双子の妹(三上翔子の二役)だった。薬剤師の竹本泰志は、双子の妹の存在を知り、復讐と現金を二人占めすることで彼女に陰謀を持ちかけ、恐怖に怯える仲間をどさくさにまぎれ毒殺していったのである。最後に残った「なかみつせいじ」を崖から突き落とし、竹本泰志の計画は完了する。だが、ここで三上翔子の裏切りに合い、彼も刺殺されてしまう。こうして彼女の、殺された姉の復讐は完結し現金も彼女が独り占めする。
 ミステリーとしては、それほど意表を突いた仕掛けではないが、ベテラン小川欣也は手堅く見せる。幽霊に怯えて疑心暗鬼になっていく悪党達の姿は、ホラーとしてもピカレスクとしても、キチンと演出されている。40周年記念にふさわしい作品であった。

「悶々不倫 教え子は四十路妻」 2008年公開
監督・荒木太郎  脚本・吉行由実  主演・野上正義,佐々木麻由子

「野上正義50周年」「佐々木麻由子10周年」のダブル記念作品である。昨年の「ふしだら慕情 白肌を舐める舌」に続いて荒木太郎=吉行由美の監督・脚本コンビは、初老の男の哀愁を切々と表現し、野上正義50周年記念作品にふさわしい秀作となった。野上正義は、男優賞の大本命に躍り出た。
 教師を定年退職した野上正義は、妻から突然離婚されてしまう。実直だけで面白みのない男の老後の侘しさを表現して、野上正義が見事だ。所在なげに通う場所がピンク映画館というのも、何とも切ない。(余談だが、私は映画好きの延長としてピンク映画館通いをしているのだが、同類の男に見えているのかもしれない)
 そこで、かつての教え子佐々木麻由子に出会う。場違いなピンク映画館での女の出現に、当然ながら男から痴漢行為を受ける。激しく悶える佐々木麻由子、野上正義と視線が会う。でも、教え子にピンク映画館に入っている姿を見られた彼は、バツが悪く声をかけることもできない。
 しかし、気になった彼は、教え子のたまり場のスナックで、情報収集を始める。佐々木麻由子はエリート商社マン「なかみつせいじ」と結婚したが、子供に恵まれないこともあり、離婚を迫られ別居中なのだ。自分は女として何が足りないのか?他の女の情事はどんなものなのか。そんなことからのピンク映画館通いとなったのだ。
 教え子をなぐさめる野上正義、佐々木麻由子とのピクニック、二人はいつしか体を重ねるという展開は、定石どおりだ。でも、妻に離婚され自分の男としての一生は何なのかと改めて問わざるをえない元教師と、女としての自分の魅力が分からなくなった教え子の、帰結として見事な盛り上がりを見せる。妖艶な人妻を演じた佐々木麻由子は、これも10周年記念にふさわしい好演である。「半熟売春 糸ひく愛汁」の鬼母に続いての好演で、彼女も女優賞への道をまた一歩たぐりよせた。
 懐かしのピンク映画館の写真がインサートされる遊び心も楽しく、ノスタルジックな雰囲気は悪くない。ただ、ここのところピンク映画に、何かと○○記念作品が多い。ピンク映画も晩年期に入ったということだろうか。
2008年ピンク映画カタログ−20

2008年7月13日(日) ●新宿国際劇場
「肉の陶酔 みだれた令嬢」 (旧題「裏令嬢 恥辱の花びら」) 2005年公開  
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・愛葉るび,瀬戸恵子

渡邊元嗣作品は、男と女の関係をシットリ描く世界とは無縁で(今年に入っての「バツイチ熟女の性欲」のような例外もあるが)、ブッ飛び映画か、あるいは異世界・異次元感覚に溢れたものが多い。本作も、沈んだら浮かんでこないという不気味なダム貯水池に近い山奥のペンションで、猟奇・耽美の世界が展開される。
 官能小説家の瀬戸恵子は、スランプ状態だ。そこで出版社社長の「なかみつせいじ」に、前記したペンションに篭っての執筆を勧められる。二人は愛人関係にあり、ペンションであわただしく情事を済ませて「なかみつ」は東京に戻る。
 ペンションには、シースルールックの挑発的衣装で、ピアノを弾いている愛葉るびがいる。彼女は「なかみつ」の義理の娘だという。母は夫の「なかみつ」の女癖の悪さに精神を病んだという。さらに、中学生の時に義理の父「なかみつ」に、愛葉るびは犯されたともいう。
 愛葉るびは奔放な女で、覗き魔の管理人や配送員の男と、あからさまに痴態をくりひろげる。刺激された瀬戸恵子は、オナニーで体の疼きをおさめるが、そんな調子では執筆の方は全く進まない。
 東京から「なかみつせいじ」が、新たな愛人の林マリアを連れてもどってくる。このままでは母が捨てられると思った愛葉るびは、ダムの上に林マリアを呼び出し、撲殺して貯水池に沈める。
 さらに愛葉るびは、このままではあなたも捨てられると瀬戸恵子をそそのかし、二人で「なかみつせいじ」をだまし討ちで撲殺し、死体を貯水池に放り込む。猟奇・耽美の世界が拡がっていく。

ここから先、ネタバレあり!注意!!

一転して、ペンションの応接間で原稿を読んでいる「なかみつせいじ」になる。「よく書けてるね」と、瀬戸恵子に語りかける。すべては官能小説の中の出来事だったのだ。「なかみつ」の亡妻の写真がデスクの上にある。それは愛葉るびだった。ピアノを引く愛葉るびのシーンで映画は幕を閉じ、どこまでが現実でどこまでが仮想世界か、混沌とした余韻を残す。
 年増のあせりを巧みに表現した瀬戸恵子、官能的な美しさの愛葉るび、濃い目鼻立ちで印象を残す林マリアと、三者三様の女優の個性も際立っていた。

「セクハラ洗礼 乱れ喰い」 2008年公開
監督・脚本・山崎邦紀  主演・北川明花,石川雄也

山崎邦紀監督は、奇妙な人である。SFマインドがあるんだか、単なる悪ふざけなんだか判然としないところがある。池島ゆたか監督に話をうかがったら、「真面目な人ですよ。悪ふざけなんてできる人じゃないですよ」とのことである。今回はSFではない。でも、記憶喪失を扱った不可知論の異世界映画ではあった。
 公園で意識を取り戻した石川雄也は、すべての記憶を失っていた。そこをシスター姿の北川明花に助けられ、彼女の宿に案内される。彼女は、シスターからポルノ作家に転向しようとして修道院を追い出されたヘンな女である。それでも、親切に調査して、石川雄也の仕事先と自宅を教える。
 彼はエロ本出版社の社長だった。新入社員の安奈ともを、セクハラ三昧の末に愛人にしたそうだ。部下の国沢実に対して、それを「電柱」のように立って見ることを強要する変態でもあった。さらに、卵に麻薬性のある薬物を注入して売る違法行為にまで手を染めていた。もっとも、石川雄也には全くそんな記憶はない。むしろ、今の彼は正常な神経の持ち主で、そんな男には嘔吐感を催す。
 次に自宅を訪れる。妻の佐々木基子の下に税理士の荒木太郎が訪れている。彼の違法な卵販売に司直の手が入りそうだとのことだ。石川雄也はDVの常習者だったことが、妻の佐々木基子から告げられる。もちろん、そのことも彼の記憶に全くない。
 呆然として北川明花の下にもどった石川雄也に、彼女が問いかける。「私のことも覚えてないの!」彼女はモデルだったが、彼にだまされ犯されて写真を撮られ、それをきっかけに修道院に身を潜めたというのだ。もちろん、それも全く記憶にない。
 映画の中途で、石川雄也が違法薬が注入された卵を口にしたり握りつぶしたりすると、突然記憶がもどってかつてのように野獣化し、瞬時のうちに記憶喪失の善良な男にもどるということが繰り返される。ただし、そこに卵との因果関係があるようなSF的説明はない。
 目を覚ましたら、再び北川明花の宿のベッドの上、鏡を見つめる石川雄也、「俺は、いったい誰なんだ」宙吊り感覚のこのタイトルで、映画は終る。
 社長に成り代わった安奈もとに相変わらずこき使われる「電柱」が仇名の国沢実、不倫の果てに夫を追い出そうとする佐々木基子の野望に振り回される税理士の荒木太郎。ピンク界を代表する監督二人が、ともに女の風下で這いつくばってるダメ男役を競演しているのが、何ともおかしい。
2008年ピンク映画カタログ−19

2008年7月2日(水)●新宿国際名画座
「や・り・ま・ん」 2008年公開
監督・坂本礼  脚本・中野太  主演・華沢レモン,石川裕一

愛し合ってはいるが、男の方は刺激が薄れ、勃起不全になっている華沢レモンと石川裕一の若いカップルの、性の深淵を描いている。男と女の宙ぶらりんの心情がきめ細かく描かれている。ピンク映画らしい題材だ。しかし、坂本礼監督らしく、最もピンクらしくない映画でもある。
 坂本礼映画は、毎回「ピンクなのにこれってあり?これで通っちゃうの?」と首を傾げるおとなしさだ。2001年作品「18歳 下着の中のうずき」なんて、一応は義務のように濡れ場は4回あるが、これがTVの昼メロよりもおとなしい描写であり長さである。その変わりに、ミレニアムに沸く渋谷の夜を、延々とドキュメント風に追ったりする。この透明な空気感に溢れたロケシーンの魅力が坂本映画だ。今回の「や・り・ま・ん」も、東京の雑踏から地方都市新潟へと、画面に独特の空気感を醸し出して魅惑的だ。
 冒頭は、いきなり華沢レモンの乳房のアップから、石川裕一との濡れ場へと至る。坂本監督もピンクピンクらしくなったのかなと思ったらさにあらずだった。この後、石川裕一が慣れ過ぎて勃起不全になっていることが判明し、エロを期待していた観客は、あっさりはぐらかされる。
 石川裕一は浮気症の男でもある。浮気ならばビンビン勃つという困った男だ。スッキリしない気持のまま町をブラついていたら、高校時代のセフレ真田ゆかりとバッタリ出会う。今は人妻で新潟にいて、たまたま上京してきたそうだ。あれよあれよという間にアパートに上がりこみ、濡れ場となる。この映画で、唯一昂揚感のある濡れ場だ。でも、別れた直後に彼女は事故で死に、昂揚感に冷水をブッかけられる。
 人妻というのは嘘だった。新潟で祖母と二人暮らしだったが最近死に別れ、今は天涯孤独で身寄りなく、お骨は無縁仏行きだと、警察官に告げられる。何故か気にかかった石川裕一は、お骨を盗み出してしまう。祖母がいたなら新潟に菩提寺もあるだろう。探してやろうと思う。あきれたことに、彼女の華沢レモンに同行を頼む。それでも愛する男のためだから、渋々ながら彼女もついて行く。
 新潟で知人を訪ねて歩く旅となるが、真田ゆかりの評判は極めて悪い。誰とも寝た「や・り・ま・ん」だったとのことだ。
 石川裕一の浮気癖は止まない。菩提寺探しの知人巡り先の一つの旅館の女将の佐々木基子とも、アッサリ寝て外泊してしまう。彼女も、夫が出稼ぎでいなくなり、捨てられた同然の身の上の欲求不満処理に過ぎず、この濡れ場も淡々として、昂揚感とは程遠い。
 華沢レモンもさすがにキレる。初老のスナックの主人の佐野和宏のナンパを受けて、浮気の仕返しをする。そんな程度だから気が入るわけもなく、この濡れ場も索漠たるもので昂揚感とは程遠い。佐野和宏が、相変わらず初老男の哀愁をよく出している。
 華沢レモンの浮気を知った石川裕一は、急に燃える。何故か、今度は勃つ。「何て男なの!」拒絶する華沢レモン、この濡れ場も昂揚感と遠く、不徹底に終る。
 石川裕一は佐々木基子から、真田ゆかりは妻子ある男との不倫の果てに捨てられてから、誰とも寝る「や・り・ま・ん」になったことを聞かされる。石川裕一は華沢レモンと、不倫相手の伊藤猛のところに真田ゆかりのお骨を持って訪ねる。困惑する優柔不断の中年男を演じるベテラン伊藤猛が、佐野和宏と同様にここで良い味を出す。
 結局のところ、短期間の探索では菩提寺は見つからずに、二人は帰京する。人のはかなさに何かを感じたか、華沢レモンと石川裕一は体を寄せ合う。かろうじて石川裕一は勃つが、これも切なさが際立ち、昂揚感とは程遠い。結局、ピンクらしく濡れ場は6回あるが、ピンクらしく昂揚するのは真田ゆかりと石川裕一との1回のみで、それも直後の死亡事故で一気に冷めさせられてしまう。いかにも坂本礼監督らしい作品だ。
 菩提寺をみつけるまでお骨を手元に置くことを、石川裕一は決心する。あなたが持ってたら警察につかまっちゃうからと、華沢レモンはお骨をあずかることを申し出る。愛と性が微妙にズレながら、今後も長々と続いていくだろう二人の宙ぶらりんの関係の心情を、余韻を残して描き映画は終る。
 出演作はやたら多く、魅力的だが調味料的な脇役が多い私の名付けるところの「売れ熟れレモンちゃん」こと華沢レモンが、今回は堂々たる直球勝負の主演で、女の切ない心情を表現した。これで女優賞の一角に躍り出たことはまちがいない。

「やりたい人妻たち」 (旧題「やりまくる人妻」) 2003年公開   
監督・的場ちせ  脚本・山ア邦紀  主演・ゆき,鏡麗子

愛と性は一致しないという内容は「や・り・ま・ん」と同じだが、こちらの方はいかにも「的場ちせ」らしいアナーキーな世界である。主婦の「ゆき」は、寝付いていたのに遅く帰ってきた夫の柳東史に迫られて、無理矢理夫婦の営みを強制される。「これはレイプよ!」と怒るが、「俺たち夫婦だろ」と夫は意に介さない。
 翌朝、家の預金をすべて引き出し、隣家の主婦の鏡麗子と家出する。出張ホストを買う。鏡麗子かかりつけのセックスカウンセラーとセックスボランティアを、性の快楽に巻き込む。後は、普通のからみから、3P、レズ、乱交と、愛なんてかなぐり捨てた方が、いやかなぐり捨てなければ性の快楽なんてないとのアナーキーな「的場ちせ」世界が、延々と展開される。もはやエロなんて越えたスペクタクルで圧巻だ。
 柳東史は、妻の「ゆき」にもどってくれるように懇願するけれども、「夫婦だろ、愛してれば当然だろ」と、レイプも認めなければ謝罪もしない男論理である。「ゆき」は夫を拒絶して去る。これは私の体、快楽を求め貪るのは私の自由との、女流監督「的場ちせ」の迸る情念が強烈であった。
2008年ピンク映画カタログ−18

2008年6月17日(火) ●上野オークラ劇場
「川奈まり子・熟楽 またがる快感」(旧題「川奈まり子・現役熟女妻 奥まであたる…」) 2000年公開
監督・坂本太  脚本・有田琉人  主演・川奈まり子,風間今日子

これも、エッチの方便でストーリーが転がる典型的Xces Filmの一編だが、欲求不満人妻オナニー、若い男の子の弄び、SM調教と、エッチネタに3段階のバリエーションをつけているので、一応は飽きさせない。
 人妻の川奈まり子は、仕事が忙しく疲れていると言って夫が抱いてくれず、悶々としている。近所の若い子と遊び歩く奔放な人妻に刺激され、さまざまな妄想でオナニー狂いになる。ここまでが第一段である。
 夫が、彼女が面識のない遠縁の女性の葬式にでかける。帰りに受験生の若者を連れて戻ってくる。遠縁の女性の息子で、家で面倒みることにしたという。夫の方は、長期出張があるという。寂しさを紛らわせるには適当だろうと、勝手な理屈を述べて夫は家を出る。もちろん出張は嘘で、夫は妻の財産だけが目当ての結婚であり、愛人の風間今日子と、不倫三昧に耽るためである。
 欲求不満の人妻と、若い男の子の受験生、こうお膳立てが揃えば、後はピンクの定番だ。半分怯える童貞の若い子を無理矢理ねじ伏せ、その精力を貪り尽くす。ここまでが第2段である。
 実は、遠縁の女性というのは夫の前の愛人で、受験生はその息子であった。ここで第3段の転調である。勝手な父親を憎む受験生は、熟女に弄ばれて性に目覚め、逆襲に転じる。自分の精力に溺れた人妻を、調教しM女に仕立て上げ、ついには彼女の財産をすべて自分名義に書き換えさせる。不倫三昧して帰宅した夫は、息子と妻のSM痴態を見せつけられ、息子に罵倒され、無一文でたたき出される。そして、SMプレーはさらに延々と続くという案外と洒落た幕切れであった。
 受験生を演じた男優は、大袈裟に言えば掘北真希似美少女風の美青年で、純情ぶりが輝いている。だから、後段でのS男にして悪党への変身も際立っていた。

「コスプレ新妻 後ろから求めて」 2004年公開
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・桜井あみ,螢雪次朗

これは渡邊元嗣流の楽しいブッ飛び映画の一編である。元ネタはクリス・コロンバスの「ミセス・ダウト」あたりだろうか。もちろん、離婚要求され別居になったロビン・ウィリアムズが、子供たちに会いたいため女装して家政婦になり、我が家に潜り込むという、そんなお話でありませんが…。
 桜井あみのイメクラ嬢のコスプレに、なぜか刑事の螢雪次朗が惚れてしまい、なぜか愛し合ってしまい、結婚する。ところが、新婚早々に爆弾魔事件の張り込みで、夫はあまり帰ってこない。たまに帰ってきてもグッタリしている。
 欲求不満の桜井あみは、週2日のパートでイメクラ嬢に復活する。同僚の若い刑事を通じてそれを知った螢雪次朗は、何とかせにゃならぬと考える。彼女の憧れの男はゴルゴ13だった。そこで変装し殺し屋を気取って、週2日の彼女を買い占めてしまう。
 ところが、彼女はその殺し屋に惚れてしまい、ついには夫の殺しを依頼するまでになってしまう。ドタバタ騒動を通じて、二人が愛を確認しあうウェルメイドが心地よい結末だ。
 爆弾の炸裂、桜井あみの夫へのパンチといったあたりは、画を挿入した漫画的処理で、それも楽しい。ブッ飛び映画の渡邊元嗣は、ここでも快調である。

ブッ飛び映画の渡邊元嗣をはじめとして、ピンクにはコンスタントに作品を発表し、いずれもそれなりの水準で個性を発揮する監督が多い。叙情派の荒木太郎、名画のパロディ=オマージュの池島ゆたか、コンパクトなエンタテインメントで練達の職人芸の深町章、といった具合だ。往年のプログラムピクチャーを彷彿させてくれる楽しさだ。
 一方、榎本敏郎、いまおかしんじ、女池充といった映画作家は、新作発表の都度、今度はどんなものを見せてくれるかと、固唾を呑んで見守りたくなるタイプである。
 懐かしの大映映画に例えれば、前者は田中徳三・三隅研次・池広一夫・森一生といった「三一」メンバーであり、後者は溝口健二や市川崑といったところだろう。このように、昔の映画黄金時代の香りを残しているところも、ピンク映画の魅力である。

「人妻ひざ枕 奥までほじって」 2008年公開
監督・国沢実  脚本・天然記念物  主演・片瀬まこ,吉行由実

脚本・樫原辰郎とのコンビを離れた国沢実監督作品は、ジックリと男女の心の機微を追う正統派が多いのだが、今回は久々の樫原コンビ時代を彷彿させる異世界映画だった。
 この日、池袋の新文芸座の「日本映画のヒロイン 香川京子」で「人間の壁」「赤い陣羽織」の2本立を観てから、上野オークラ劇場へ向かった。ご存知の方はご存知のように、新文芸座から駅に向かう道すがらは、風俗店が軒を連ねている。最近話題なっている「耳かき屋」なるネオンもキラキラしていた。
 そして、早速上野で遭遇した「人妻ひざ枕 奥までほじって」が、偶然にも「耳かき屋」の映画だった。「耳かき屋」の映画なら「奥までほじって」の副題は、エッチでも何でもない。耳をかくなら、奥までちゃんとほじらなければ、仕事をキチンと済ましたことにならない。
 しかし、「耳かき屋」とは奇妙な職業だ。耳垢を取ってもらう行為は、エッチでも何でもない。夫ならば、よく妻にしてもらう行為だ。ただ、当然ながら、そのためには妻に膝枕してもらわねばならない。これが、案外と男と女の関係にとって微妙である。一般には、男が妻以外の女にそんなことは頼めないだろうし、女は夫以外の男にそんなことをすることもありえない。エッチ行為でないにも関わらず、妻以外の女の「耳かき」というのは、結構そそるものがありそうだ。風俗店というのは、うまいことを考えるものである。
 廃棄物処理場で働く「なかみつせいじ」は、ふと「耳かき屋」に入店する。人妻の片瀬まこに出会い、耳かきサービスを受ける。そこから、奇妙な異世界が誕生していく。
「汚れた耳が好き」と言って片瀬まこは、「なかみつせいじ」にていねいに耳掃除を施す。病みつきになった「なかみつせいじ」は、非番でも廃棄物処理場で働くように無理に申し出て、耳をわざわざ汚くし通いつめる。片瀬まこは、いつしか「なかみつせいじ」の耳を舐めて清め始める。だが、興奮した彼が手を出すと、「ここは風俗ではない」とキッパリ拒絶される。
「なかみつせいじ」は、欲求不満を妻の吉行由実にぶつける。その頃から前後して、彼は難聴になっていく。夢ともうつつともつかない非現実の世界が展開していく。たまらず「なかみつせいじ」は、片瀬まこを尾行し、彼女と夫との性行為を覗き見る。次の入店で片瀬まこは、尾行も覗きも知っていたと「なかみつせいじ」に告げる。そして、二人が耳を舐めあうだけの、何とも奇妙な濡れ場とも言えない濡れ場に突入していく。
 この異世界感覚は、かつての国沢実=樫原辰郎コンビの再来を思わせる。新人脚本家の天然記念物とは、どんな人なんだろう。あるいは、改名の多い樫原辰郎の、新ペンネームなのだろうか。

2008年ピンク映画カタログ−17

「久々にブッ飛んだ役です」、御贔屓里見瑤子嬢から直々に、「お友達感覚!の酒席」(その酒席って何?と思った方は「映画三昧日記」をのぞいて下さい)でお薦めいただいた「濡れ続けた女 吸いつく下半身」が、5月30日(金)から新宿国際名画座で公開になる。早速、併映作を「PG」でチェックする。
 新作激減のあおりで、またまた新版改題再映作品として、22年前の早乙女宏美さんの旧作が引っ張り出された。現在、私は「蛙の会」で早乙女さんと、共に活弁の勉強をしている。その早乙女さんの23歳の姿をニュープリントで観られるのは、新作不足の怪我の功名で、悪いことばかりでもないようだ。
 とにかく知人(と、もう言わしていただいていいですよね里見瑤子嬢!)二人の映画を続けて観られるなんて、素敵なことである。久々に映画館に入る前からワクワクする経験をした。

2008年5月31日(土) ●新宿国際名画座
「おもらしドール 淫行の極致」(旧題「SM・倫子のおもらし」) 1986年公開
監督・脚本・片岡修二  主演・早乙女宏美,下元史朗

パフォーマー早乙女宏美の肉体的スペクタクルが核の映画であることはまちがいないが、今回はそれ以外にストーリー展開・男女の愛欲という部分も充実している。
 ストーリーは「仁義なき戦い」を思わせる組織暴力の抗争劇に、SM要素を巧みにからませて工夫がある。片岡修二監督は「逆さ吊し縛り縄」でも、東映の女番町モノのタッチを見せたが、東映アクションが好きなようである。今回も、「仁義なき戦い」調の殺し合いを、迫力あるナレーションとネガフィルムの活用で、それなりに盛り上げている。
 全国を二分する組織暴力連合会の一方の会長が殺られる。しかし、犯行は敵対する会ではなかった。傘下の組の組員の犯行であった。その組長は女を縛るマニアで、女の尿を飲む愛好者で、ロリコンという何ともややこしい人物だ。
 彼は会長の娘の女子高生の倫子(演ずるはもちろん早乙女宏美!何と!セーラー服にショートカット!)のオシッコを何としても飲みたいと、渇望している。それには、まず父親の会長の存在が邪魔だと、組員に命じて暴走をしてしまったのである。そして組長は自暴自棄になる。倫子のオシッコを飲ませなければこのことを天下に晒し、自分と共に組をつぶすのも仕方がないと、舎弟に開き直るのである。
 言われた舎弟分はうろたえる。関西の兄弟分の下元史朗に救いをもとめる。若き日の下元史朗は、ここでも縁なし眼鏡でダンディーに決めてみせる。(なぜか早乙女宏美より前のトップビリングだった)「子分達の厳重な護衛を突破して倫子をさらうこと」「組長に倫子のオシッコを飲ませること」「何事もなかったようにして帰してやること」絶対不可能な三つのハードルを越えるしか、解決策はないと断言する。
 考えた末に、倫子を調教しM女にしてしまうこと、そうなってしまえば解放された後も、恥ずかしくて誰にも言えないことになろう、との結論になる。
 第一のハードルにさぐりを入れるため下元は、路を歩いていた学生を脅しつけ倫子をナンパさせる。案の定、アッというまに学生は金バッジの集団に袋叩きにされる。この警戒を突破するには荒療治もやむなしと、下元史朗はボディガード全員を射殺して、倫子をさらう。
 調教師の教育を受けた下元史朗は、もともとサディストの資質があったのか、倫子の調教に成功する。彼の資質を見抜き調教法を伝授するサディストを、「逆さ吊し縛り縄」に続いて監督デビュー前の若き池島ゆたかが演じている。下元史朗の縁なし眼鏡と対照的なサングラスで、相変わらずの二枚目ぶりを決めてみせる。
 すべて順調であったはずが、下元史朗と早乙女宏美の間に深い愛欲の情が迸り、その齟齬がすべてを明るみに出してしまい、大虐殺の果てに組は崩壊する。ヤクザ抗争劇に巧みにSM要素をからませた好ストーリーだった。
 アクロバティックな縛り、浣腸責めによる男の目の前での強制排泄と、ここでもパフォーマー早乙女宏美の肉体的スペクタクルは、鮮烈な輝きを見せる。ただ意外にも、それ以上にレイプシーンのスペクタクル性に感心した。長回しで延々とカメラが追うドキュメント風のレイプの激しさは圧巻であった。後半で調教が終った早乙女宏美が、白布にくるまれて組長の前に引かれていくシーンでは、長身の下元史朗に比して、はっきりと小柄で華奢である。こんなのはひとひねりのレイプになってしまうだろうはずが、このくんずほぐれつのド迫力は圧倒的なのである。この時だけ早乙女宏美の肉体が大きく見える。ここにも、パフォーマー早乙女宏美の肉体的スペクタクルの凄みを見た思いがした。
 ただ、調教の最終段階の放尿は、ややアッサリし過ぎたように思う。すでに排便まで目撃され屈服してしまったと言えばそれまでだが、ここは放尿を目撃される羞恥から激しく抵抗し、利尿剤入り塩水などをタップリ飲まされ、限界に追い込まれて悶え、目をそらしてくれと哀願し、ついに放水に至るという、ポイントの部分だけにもっとネチっこくやってほしかったところだ。
 SMものとしては意外にも、男と女の愛情・愛欲図がしっかり描きこまれているのが良い。下元史朗にレイプされ破瓜の血を流した早乙女宏美が、「愛してくれていたのなら嬉しい」と、情感タップリに訴える。前に、会長の娘として厳重な庇護にあることを紹介したが、だから彼女に近寄る男はことごとく排除されてきた。(「好きだった健ちゃんも文太くんも浩二くんも、みんな殺されちゃった」という哀切溢れるパロディ調のセリフの遊び心は楽しい)そうして下元史朗に恋情が湧く。ところが、さらに意表をつかれた調教の世界が待っていた。完全にM女と化し、ご主人さま下元史朗から離れられなくなる。組長に彼女の尿を飲ませる目的を果たした下元史朗は、彼女を解放する。しかし、彼女は彼から離れたくない。離れるならば、すべてを明かすという。そうなれば下元史朗は、自分を護るために彼女を殺すしかない。しかし、早乙女宏美を愛してしまった彼には、もはやそれはできない。下元史朗は組織に消されるしかない。ついに、他の者に殺させるくらいならと、早乙女宏美は下元史朗を射殺する。SMの世界に惑溺し、高まりきった男と女の愛欲図が切なく盛り上がる。最後に彼女も自刃して、パフォーマー早乙女宏美のハラキリショーのさわりも御披露して見せる。ストーリー・SMパフォーマンス・男女の愛欲、三拍子揃った佳作であった。

「濡れ続けた女 吸いつく下半身」 2008年公開
監督・深町章  脚本・後藤大輔  主演・里見瑤子,華沢レモン

御贔屓里見瑤子嬢の直々のご推薦の新作は、確かに凄いブッ飛び映画だった。地球の軌道の正反対の位置に、もう一つの地球が存在する。常に太陽の裏側にあるから、地球では絶対に確認できない。とりあえず第二地球とでも呼んでおこうか。そこが舞台で、里見瑤子嬢の役柄は、その星でテレパシーや予知能力を有するエイリアンである。確かにこれ以上ブッ飛んだ役はないだろう。異才の後藤大輔監督はとんでもないスケールの脚本をモノしたものだ。この脚本を受けてベテラン深町章監督は夕陽が美しい海岸を巧みに捉え、簡単なCGで補完しながら、太陽が東に沈む異世界を、見事に造形してみせた。関係する時制は、50万年前、1945年、1990年、2008年の現在、さらに2010年の未来という壮大さだ。
 第二地球は、早くから優れた文明を有していた。50万年前に、類人猿しかいないもう一つの地球を発見していた。その種族の将来の進化を期待して、時空を超えた回廊を造り上げた。
 昭和20年(1945年)、敗色濃厚な日本軍の、川瀬陽太の軍医少尉と兵隊のかわさきひろゆき伍長が、この回廊に落ち込み、地球時間2008年の第二地球に出現する。川瀬陽太は里見瑤子嬢に出会う。
 瑤子嬢は、平成2年(1990年)と書かれた手帳を大切に持っていた。かつて、やはり地球から回廊を通って訪れた男のものだった。二人は恋に落ちたが、男は地球への望郷の念止みがたく、海に消えていった。彼女は娘を産んだ。 第二地球の人類は、遺伝子改良によりテレパシーや予知能力を身につけた。だが、その副作用なのか、しばらくたつと女しか生まれなくなった。現在のこの星は、数百人にも満たない女が残るだけだという。軍医の使命感から、愛妻の友田真希を銃後に残し志願して戦場に出た川瀬陽太ではあるが、瑤子嬢に懇願され、この星に残ることになる。
 里見瑤子嬢の娘になるのが、華沢レモン。何だってぇ〜。熟れ売れレモンちゃんの母親が瑤子嬢だってぇ〜。レモンちゃんの役は18歳、とすれば瑤子嬢の方は40歳前後?池島ゆたか100本記念作品で田中繭子が日高ゆりあの母親を演じたのだって英断だったのに、あの瑤子嬢が…。見えない!絶対にそんな歳には見えないっ!て…ま、エイリアンなんだからそんなに気にすることはないということか。華沢レモンはかわさきひろゆきと心を交わし、回廊を通って地球に去った模様である。
 そして地球時間2010年、回廊を通って川瀬陽太の愛妻・友田真希が、波打ち際に出現する。ひしと抱き合う二人、これから何が起こるのか、不安げな御贔屓里見瑤子嬢の表情でエンドマークとなる。
 何だか、壮大なお話の序章だけを見せられたような気分だ。ピンク映画は60分程度だが、ストーリーが渋滞する濡れ場を除けば40分程度、いわば中篇映画の尺である。そこに納めるのは無理があるスケールの題材であった。
 ミニマムには、これから瑤子嬢・川瀬・友田の関係はどうなるかということがあるし、マクロには回廊の入り組んだ時制の秘密は何か?この種族の命運は如何に?と、ネタは果てることはない。ここは続編、というよりはシリーズ化して延々と続けるのも面白いのではないだろうか。

2008年ピンク映画カタログ−16

2008年5月27日(月) ●上野オークラ劇場
不純な制服 悶えた太もも 2008年公開
監督・竹洞哲也  脚本・当方ボーカル  主演・Aya,青山えりな

男と女の切ない片想いの心がすれちがう。竹洞哲也らしいシットリした味わいのある作品である。主役はAyaと松浦祐也のツッパリ高校生コンビだ。松浦祐也は、幼馴染みのAyaに恋してるが、AYaの方は幼馴染み以上の気持はなく、全く眼中にない。松浦祐也は組員の石川雄也に憧れており、彼の庇護も受けている。AYaも石川雄也を密かに慕っている。
 石川雄也は組のために殺しをやり、長い務めに出ることになる。松浦祐也に「もうお前を護ってやれない」と告げ、3発の弾丸入りの拳銃を渡す。「一発目は追い詰められたら相手を殺せ。しくじったら、残りの2発でお前たちが死ね」と告げる。
 石川雄也と二人きりになった時、AYaは心の想いを告げる。そこで、日本海の寒村に内縁の妻の青山えりながいることを告げられる。AYaは、松浦祐也が譲り受けた拳銃を使い、組から大金を強奪する。組のための務めで長い別れとなる内縁の妻に、せめて金を届けようというのだ。愛する男の妻のために、危険な道に踏み出す。女心が切ない。
 巻き込まれた松浦祐也は、それでもAYaへの想いから、逃避行を共にする。この男の心情もまた切ない。最後は追っ手の「生け捕り屋」吉岡睦雄と世志男の前に、命を投げ出すことと交換で、AYaと大金を見逃してくれと懇願する。
 竹洞哲也は、この4人の男女の片想いのすれ違いを、内田けんじの秀作「運命じゃない人」(これほど手はこんでないにせよ)を彷彿させる時制の錯綜で、切々とシットリ描いて見せた。
 「殺し屋」ではない、「生け捕り屋」だと、キザに決める吉岡睦雄。淡々と追跡行の途中で関わった女を犯し続けていく不気味だがユーモラスな世志男。このワキの人物の味付けも素晴らしい。
 AYaの「生け捕り屋」への反撃の復讐で映画は幕を閉じるが、「3発の弾丸」の粋な使い方も、見事な画龍点睛であった。

性執事 私を、イカして! 2007年公開
監督・脚本・山内大輔  主演・中島佑里,岡田智宏

中島佑里は、愛する夫の岡田智宏を交通事故で失う。一年たっても忘れられず思い出の海岸の公園に佇んでいると、執事スタイルの男が現われ、目の前で倒れる。男はセバスチャンと名乗り、夫と瓜二つだった。(岡田智宏の二役)
 セバスチャンは中島佑里をご主人さまと呼んでつくす。メイドものの裏返しといったところで、永遠の好青年・岡田智宏がキャラクターを生かした好演である。中島佑里は、一日だけ夫になってくれと頼む。一夜を共にした後、セバスチャンは消えていた。夫恋しさのあまりの妄想だったのか?だが、彼女は身ごもっていた。エッチの方便でストーリーが転がるのが定番のXcesFilmとしては、味のあるファンタジーだった。監督・脚本は、Xces作品の中で数少ない「ピンク」映画ならぬピンク「映画」に近い作品の創り手で、PGベストテン戦線を賑わす山内大輔である。
 もっとも、サブエピソードはXces流にかなりネチっこい。中島佑里と夫の岡田智宏の回想の濡れ場もあるし、一人寝の寂しさからの中島佑里のオナニーもある。夫の死後、夫の会社社長の前川克典の妾にされ、その濡れ場もある。中島佑里の友達の倖田李梨の愛人の柳東史はジゴロで、前川克典の妻のミュウにも手を出し、中島佑里も襲われる。Xces流濡れ場でっち上げストーリーには、事欠かないのである。
 ただし中島佑里は、前川克典に避妊具だけはキッチリつけさせることを徹底しており、柳東史に犯された時も、彼は射精前にセバスチャンにたたき出される。セバスチャンの存在は妄想でなく、妊娠は確実にセバスチャンの子であると、ファンタジーとしてキッチリと結末をつけているのも良い。

2008年ピンク映画カタログ−15

前回の「ピンク映画カタログ」での言い残しをひとつ。加藤義一監督「女復縁屋 美脚濡ればさみ」で、竹洞哲也監督の名が演出助手としてクレジットされていた。「映画三昧日記」のピンク大賞打ち上げの席での、「演出に影響を与えるとしたら、助監督の存在でしょう」との加藤監督の言を紹介したが、それに鑑みると「女復縁屋 美脚濡ればさみ」は、復縁屋という加藤流ブッ飛び感覚と、男女のシットリした感情の機微の竹洞流が絶妙にミックスされてたと思うのだが、これも観客の「誤解する権利」に過ぎないのだろうか。

2008年5月16日(金) ●上野オークラ劇場
未亡人民宿 美熟乳しっぽり 2008年公開
監督・池島ゆたか  脚本・五代暁子  主演・友田真希,春咲いつか

未亡人の美人女将の友田真希は、義父の牧村耕次と、やはり未亡人の仲居の春咲いつかと、3人で民宿を経営している。未亡人の欲求処理で、ネットに夜這いOKの穴場情報を流し、よろしくやっている。牧村耕次は覗いて楽しむ。
 そんなところに、未亡人になった悲しさから自殺旅行に出た日高ゆりあが、泊まりに来る。諭されて、自殺を思い止まり、民宿で働くようになる。その後、ネット情報を嗅ぎつけた教授のなかみつせいじ、准教授の野村貴浩、大学院生の千葉尚之が泊まりに来る。後はピンク映画ならではの予想どおり、この6人の男女の組み合わせのカラミの連続となる。
 男達は、何故か不慮の死を次々に遂げ、今後も未亡人下宿で頑張ろう!と喪服の女優3人が気勢をあげる落ちにもならない落ちで終る。
 監督は100本記念映画を終えた池島ゆたか、脚本は池島監督との名コンビ五代暁子。信じられない仕上がりである。Xces映画か、新田栄作品かと形容したい程、濡れ場の方便だけでストーリーが転がる典型的凡ピンクである。池島=五代コンビといえば、名画のパロディ=オマージュの達人だが、今回はその片鱗もない。
 100本記念パート1、パート2と、全くスタイルの異なる意欲作を連打した池島ゆたか監督、このへんで肩の力を抜いた典型的ピンクでもやってみようと思ったんだろうか。先日のピンク大賞打ち上げでも「カラミをしっかり撮れないピンク監督は駄目」と語っていた。それともこれは、まさかXces=新田映画のパロディ=オマージュだったなんて言うんじゃないでしょうね。

2008年ピンク映画カタログ−14

2008年5月9日(金) ●上野オークラ劇場
「見られて燃えた姉夫婦」(旧題「露出狂姉妹」)1992年公開
監督・新田栄  脚本・高島暁  主演・加賀ユリ千秋誠

題名どおりの新田栄映画である。
 あの時の声が大き過ぎてアパート追い出された女が、新婚の姉の家に一時同居する。姉の夫婦生活は冷えていて、姉はオナニー三昧である。彼女はセフレに、寝物語に探偵まがいのことを頼む。セフレの男が調べたら、義兄は残業の事務所で、誰かに見られる恐れのある激しいオフィスラブに狂っている。要は見られてないと興奮しないタイプである。彼女は義兄に、自分が覗くことを告げ、かくして覗かれる夫婦生活で、夫婦仲は円満になる。そして、覗きの延長として、姉妹相姦の3Pにまで発展する。
 題名どおり、ストーリーなんて言えないほどのストーリーで、あとはエッチに事欠かないネタを使い、エロエロ新田演出が展開される一編である。

人妻女医と尼寺の美女 快感狂い 2007年公開
監督・新田栄  脚本・岡輝男  主演・酒井あずさ,葉月螢

前世紀作品に続いて、今度は昨年の新田栄監督の新作だ。題名どおりの内容で、ストーリーはあって無きが如しの相変わらずぶりである。十数年たっても、全く変わってないあたりが凄い。
 堕胎治療を繰り返した女医が、水子供養で尼寺の美女と知り合う。彼女に夫の浮気相手の生霊を祓ってもらい、夫婦円満を取り戻す。尼さんの体調不良の相談を受け、セックスレスのホルモン異常と診断する。好意からレズへと走っていく。ついには、夫にもセフレとなることを頼み、最後は3Pに至る。
 例によってエッチに事欠かないネタを、新田演出はネチっこく展開する。女医の白衣と尼の僧衣がカラむあたりが視覚的見せ場といったところだろうか。

女復縁屋 美脚濡ればさみ」 2008年公開
監督・加藤義一  脚本・岡輝男  主演・村上里沙,ほたる

咋年のピンク大賞・監督賞の加藤義一監督の新作である。これは面白い。素晴らしい。2部構成の優れたドラマにグイグイ引き込まれる。でも、ホントにそうなんだろうか。ドラマ性皆無の新田映画を2本も続けて見せられてウンザリした反作用なんだろうか。とにかく面白く一気に観たのは確かだ。
 別れた男女を復縁させる「復縁屋」村上里沙が主人公だ。幼馴染の探偵の石川雄也とのコンビで開業している。そのあたりをストップモーションを効果的に使って、スマートに紹介するプロローグからして見事だ。
 依頼者の「ほたる」(ベテラン葉月螢、本格的改名なのか、一作のみのお遊びなのか)は、うだつの上がらない夫の「なかみつせいじ」に愛想をつかしたが、今になったら愛しく思えてきて、でも今さら言い出せないという。村上里沙はなかみつせいじ」と親しくなり、部屋にまで上がりこみ、今でもつきあっている女の影が無いことを確認する。ここまでが第一段階だ。
第二段階は、彼に手料理を作ってあげる。彼の好物メニューは、元妻の「ほたる」から聴取して百も承知だ。そして、ちょっとだけ味付けを落として失望させるという小細工を使う。妻が恋しくなってきたところで、妻の思い出の品を部屋掃除の失敗に見せかけて壊し、その反応で別れた妻にまだ未練のあることを最終確認する。
 仕上げは、仕事仲間の野村貴浩をチンピラに仕立て、「なかみつ」の見てる場所で「ほたる」にからませて、「なかみつ」が救出するシチュエーションをでっち上げて、見事に復縁に成功する。
 うだつはあがらないが誠実な「なかみつ」、夫の良さに遅すぎて気付いた「ほたる」の切なさ、二人の持ち味をキチンと生かし、ベテランらしい情感に溢れた濡れ場で締めくくるピンクとしても最良の第1部であった。
 平沢里菜子の依頼者の登場で、第2部となる。気鋭のIT企業社長の岡田智宏の仕事人間ぶりがいやになったが、今になったら恋しくなったという。
 村上里沙に衝撃が走る。岡田智宏は、大学時代から全女子大生の憧れの的で、自分も好きだった。もちろん地味だった村上里沙のことなんて、岡田智宏は記憶にあるはずもない。同窓生の平沢里菜子は、やはり大学のアイドル的存在だった。予想どうり二人は卒業して結婚したのだ。そして今、復縁を依頼された。仕事で彼に接近せねばならぬ村上里沙の心は千々に乱れる。
 村上里沙の幼馴染の相棒の探偵の石川雄也は、彼女を心の底では好きだった。冗談混じりに告白しては袖にされていた。だが、一生の人のためにと彼女が胸にかけていたロケットに、岡田智宏の写真が入っているのを見てしまう。そして、平沢里菜子には愛人がいて、復縁の狙い目は岡田智弘の会社資産だということも判明する。石川雄也は、岡田智弘に復縁屋の一員であることをバラすとともに、あなたに対する村上里沙の気持だけは本物だと告げて、自分は身を引く。
 ここで、さらにドンデン返しがある。村上里沙のロケットの意味は、中の写真なんかに無かった。中身の写真は「復縁屋」のための小道具に過ぎない。大事なのは、昔にロケットそのものをプレゼントしてくれたその人、すなわち幼馴染の石川雄也なのだ。でも、彼はプレゼントしたことを忘れている。「おちゃらけでなくキッチリ言ってほしい」と石川雄也に迫る村上里沙。こうして紆余曲折の果てに、二人は結ばれる。
 それなりに美形の村上里沙だが、目鼻立ちがクッキリし長身でスレンダーな押し出しのよい平沢里菜子にコンプレックスを持つという対比は、二人の個性を際立たせている。永遠の好青年の岡田智弘は、今回もその個性を全開させたし、石川雄也のちょっと不器用で実直な佇まいとも対照の妙を見せた。
 さらに楽しい落ちがつく。チンピラを演じて「復縁屋」の片棒をかついだ野村貴浩が、今度は復縁の依頼に訪れる。「男同士の復縁の依頼も受けるよね」これにはギャーッと言って逃げ出す村上里沙と石川雄也のコンビのストップモーションで、洒落た幕切れとなる。でも、シリーズ化しての、この「復縁屋」コンビの活躍ぶりがまた観たくなったのは確かだ。

新田栄映画を2本続けて観たら、さすがにウンザリした。とにかくドラマが全然ない。やっぱりお話しで見せてよ、と言いたくなった。だから、その後にドラマの興味で引っ張る加藤義一映画に、グイグイ引き込まれた。でも、逆に思う人もいるだろう。ドラマなんてどうでもいいよ、早くやることやれよ、それもできるだけエッチに、やれるだけネチっこく。そういう方がピンク映画の観客の主流かもしれない。

かつて、プロレスはリングの上だけがすべてだった。ある時、「週刊ファイト」井上義啓編集長を鏑矢として、リングの向こうにあるものに観客の想像力を展開する「活字プロレス」なるものが確立され、ターザン山本に引き継がれて「紙のプロレス」(通称「紙プロ」)などで、現在も生き残っている。
 長州力などは「活字プロレス」を全面否定する。リングの中だけをすべてとする。だから、プロレスマスコミは試合経過だけを伝える東スポ(東京スポーツ)だけあれば良しとしている。
 ピンク映画は、基本的にエッチがすべてである。だから、エッチのエロさ・凄さ・過激さだけに薀蓄を傾けていれば、いいのかもしれない。その観点からすれば、PGやピンク大賞などは、単なるエッチだけではない向こうに何かを見ようとすることで、ややニュアンスはちがうが、「活字ピンク」みたいな存在なのだろうか。
 以上、プロレス王検定2級の者としての意見を述べさせてもらいました。

2008年ピンク映画カタログ−13

2008年4月26日(土) ●新宿国際名画座

ねらわれた学園 制服に欲情(旧題「狙われた学園 制服を襲う」)1986年公開
監督・渡邊元嗣  脚本・平柳益美  主演・橋本杏子田口あゆみ

新作激減の折から、ますます新版改題再映が増えそうで、そのためか引っ張り出される旧作の製作年度も、どんどん昔になっていくようだ。1月12日の本カタログで、PGがリニューアルされ、新版改題作品リストの旧題をクリックすると、公開当時の作品紹介に飛ぶ優れものになったことを紹介したが、この映画の旧題はクリック箇所になっていない。「日本映画データベース」で調査したらそれも当然で、PGのデータが整備される以前の1986年公開作品だった。脚本の平柳益美のデビュー作は、石井聰互の快作「狂い咲きサンダーロード」で、これにはちょっと驚いた。
 さすがに、製作年度がここまで遡ると、古き懐かしき時代の香りがプンプン漂う。全体は「スケバン刑事」のパロディである。もっともセーラー服のヒロインが武器にするのは、ヨーヨーならぬケン玉だ。この玉を飛ばすと、玉の穴の部分に張り形の責め具が仕込まれていて、急所をグリグリグリ…敵は悶絶する。渡邊元嗣監督は、この頃から人を喰ったブっ飛び感覚だったようだ。
 主人公の女子高生は、父親から「巨人の星」の大リーグボール養成ギブスのようなものを装着されて鍛えあげられる。ただし、装着する場所は星飛雄馬のように肩ではない。ピンクらしく、当然ながら股間である。鍛え上げられた女の武器は、交わった時に男の一物を壊滅させるパワーを持つに至った。鬼の父親は、監督デビュー前の若き日の俳優・池島ゆたか、凝った老けメークであるが、回想の若い頃では今では信じられない(失礼!)二枚目ぶりも拝見できる。
 父親は短小を嘲られ、妻を寝取られた過去がある。娘の女の武器を鍛えたのは、その男への復讐のためだ。男は今は女子学園の悪徳園長で、生徒をかどわかしては外国に売り飛ばしている。(おお、何と懐かしくチープな設定!)
 最初は主人公と対立していたスケ番が、最後は意気投合して、主人公と肩を並べて園長の所に殴りこむ。これが、傘をさしかけての道行きで、完全に「昭和残侠伝」のパロディ。最後は父の復讐を完遂して、悪は滅びメデタシメデタシの、東映プログラムピクチャー・ピンク版パロディ兼オマージュでした。

喪服の未亡人 ほしいの 2008年公開
監督・渡辺護  脚本・井川耕一郎  主演・淡島小鞠,結城リナ

ベテラン渡辺護監督、久々の登板である。さすがに、ピンクの王道を行って見事である。と、聞いたふうな口を聞いてしまったが、過去に私は渡辺作品を「女子大生の抵抗」(1966年公開)の1本しか見ていなかった。それもリアルタイムではなく、2001年の「現代映像研究会」で見参したのだ。「これ、ピンク映画なの?昼メロよりおとなしいじゃん」というのが、当時の会場の雰囲気だった。
 後は、1996年の一般映画「ぬるぬる燗燗」で役者としての名助演ぶりを記憶に留めている程度である(この映画は主演が故藤田敏八監督で、何とも奇妙な西山洋一監督デビュー作であった)。
 酔って階段から夫が転落死した未亡人の淡島小鞠が主人公である。遺品の中から女の歌声が入ったテープを見つける。浮気相手ではないかとの疑念・妄想が拡がる。自分は、夫にとって魅力的な女じゃなかったのかとの、強迫観念に取り付かれる。夫の友人の岡田智宏に調査を依頼する。その曲を口笛で吹く結城リナとすれ違う。夫とその女の情事を妄想し悶々となる。回想の夫との夫婦の営みで、狂おしく悶える。夫も浮気をしていたならば、私も夫の友人の岡田智宏と関係を持ち、復讐したいとも思う。
 全部がピンク映画の定番なのだが、淡島小鞠がそんな女の情念をキチンと表現する。それなりに美形だけど、地味めな風体で、確かに夫に女としての魅力を感じさせなかったのではと思う脅迫観念に説得力がある。それが、観客に魅力的に映える。
 正にピンクの王道であると思わされた。

なお、4月26日(土)第20回ピンク大賞参加レポートは、「映画三昧日記」に掲載しています。そちらにもお立ち寄り下さい。

2008年ピンク映画カタログ−12

2008年4月9日(水) ●新宿国際名画座

新宿国際名画座で、2007年度ピンク大賞女優賞授賞の平沢里菜子の「奴隷」が上映されている。ついでに、1本でも新作鑑賞を稼げればと思い、併映作をチェックした。「若い男に狂った人妻」と「激しいSEX 異常愛撫」である。残念ながらどちらも新版改題作品だった。
「若い男に狂った人妻」は、前世紀1995年の新田栄作品、旧題は「激生!!人妻本気ONANIE」で、私は2003年に「オナニー&レズ 悶え泣く若妻」の新版改題で観ている。2度目(それ以上かもしれないが…)のリニューアルとは、やはり新田栄作品は売れるということか。新作激減の折から、今後この手のケースがますます増えるだろう。
 もう一本の「激しいSEX 異常愛撫」は、さらに遡る1985年作品「逆さ吊し縛り縄」の新版改題である。主演が何と!「蛙の会」で私と共に活弁の勉強をしている早乙女宏美さん!!(彼女は現在も、女優・ダンサー・パフォーマー・ルポライターと、多彩な活動をしている)彼女が22才の時の映画である。新作が無いならパスするかと思っていたが、これは是非とも拝見せねばなるまい。こんな貴重なフィルムがリニューアルされニュープリントで観られるのも、新作激減の怪我の功名ということで、悪いことばかりでもなさそうだ。

「激しいSEX 異常愛撫」旧題「逆さ吊し縛り縄」)1985年公開
監督・脚本・片岡修二  主演・早乙女宏美,下元史郎

下元史郎の気の弱い独身の万年係長が、気まぐれで援交女子高生を買ったら、4人組のズベ公グループに囲まれ、カツアゲされリンチを受け片目をつぶされる。
 彼が以前こっそり訪れたSMクラブの店長が、監督デビュー前の役者としての池島ゆたかである。この当時はなかなかの二枚目ぶりで、ちょっと驚く。池島は下元にサディストの資質を見て、女をあてがいサディスト教育を施す。
 実は、その女は池島の妹で、実父に犯されいじめにあいレイプされ、SEXの喜びを受け入れない体になっている。喜びを与えるにはマゾヒストにするしかないとの兄の思いやりであり、マゾヒストに育てるには真性サディストが必要なので下元に白羽の矢を立てたのである。最後は、妹は快楽に目覚め、兄との近親相姦に喜悦する。サディスト下元史郎を誕生させるずいぶんまわりくどい筋立てで、まあそんなところはどうでもいい。
 ここからが本筋で、投げ縄片手にダンディに決めた下元が、次々とズベ公狩りを開始し、縛り上げレイプしていく。その恐ろしさにズベ公達は反撃する気力もなくなり、残ったのがただ一人、スケ番の早乙女宏美(知人だが文脈の流れもあるので敬称は略します)だけが対決を決意する。
 さらしをまいて黒いマキシのコートを羽織り、脇の下のホルスターに拳銃をブチ込んで、臨戦態勢で町を闊歩する早乙女宏美。ついに下元史郎と遭遇し、倉庫の中での乱戦となる。
 ただ、ここはちょっと小柄な早乙女宏美だけに、もう一つ押し出しが効かず、迫力不足である。あっさり下元史郎に捕らえられてしまう。しかし、彼女の真骨頂の発揮はここからだった。
 純白のスキャンティーだけの半裸に剥かれた早乙女宏美に、下元史郎の縄がからみつく。上半身は後ろ手に、乳房のふもと近くが亀甲縛りで絞りあげられ、ふくらみが強調される。下半身はM字開脚に拘束され、股縄が深々と食い込む。その状態で滑車で高々と吊り上げられ、激しくグルグル回される。
 この迫力は圧巻である。もはや、エッチとかエロとか猥褻とかを乗り越えて、これはもう肉体が繰り広げるスペクタクルである。小柄で華奢だった早乙女宏美の肉体が、ここでは大きく見えてくるのが凄い。パフォーマー早乙女宏美ならではのオーラが輝く。かねてからパフォーマーとしての早乙女宏美の凄さを小耳に挟んでいたが、それがこれなのかと認識した。出番もそれほど多くないし、濡れ場があるわけでもないが、どうどうとトップビリングを張れるだけのところは、ここだと思った。
 質はちがうが、ロマンポルノの白川和子を思い出した。彼女の濡れ場もエッチ・エロ・猥褻なんて卑小なものを吹き飛ばす肉体のスペクタクルであった。
 2005年ピンク映画カタログ「人妻を濡らす蛇−SM至極編」で、山口真里の体当りの熱演を「杉本彩も裸足で逃げ出す(中略)過激さ」と絶賛した。それが児戯に見えてくるのである。
 ただ、ズベ公達全員に対して下元史郎は、縛りの最終仕上げにスキャンティーを引き裂きレイプしていたが、股縄があれだけ深く食い込んでるのにレイプできるわけがない。ピンクとしては、レイプがないといけないのかもしれないが、ここは全て縛りの肉体スペクタクルに徹するべきだったろう(と言っても早乙女宏美以外は、特にスペクタクルという程のものでもないが)。
 深夜の町を全裸・亀甲縛り・股縄で、「情夫マノン」のポーズで下元史郎に逆さに担がれていくラストシーンまで、パフォーマー早乙女宏美のド迫力の底力に圧倒された一篇であった。

奴隷 2007年公開
監督・佐藤吏  脚本・福原彰  主演・平沢里菜子,本多菊次朗

Mの資質を持った平沢里菜子、ひたすらそれだけを描きつくす映画である。
 彼女は、まず高校時代の教師の荒木太郎に資質を目覚めさせられる。二人のプレイが描かれる派遣会社に就職し、社長のサディスト本多菊次朗に資質を見抜かれ、奴隷になり喜びを感じる。縛られてのレイプまがいの交わり、道具を使ってのいたぶり、卑猥な言葉を口にすることの強要、下腹部の剃毛、それをノーパンで白昼のオフィスで社長だけに見えるような位置での大開脚も命じられる。全裸で人気の少ない深夜の路上を歩かせられたりもする。
 そんな彼女と知らず同僚の千葉尚之は、平沢里菜子に純粋に恋してしまう。本多菊次朗は、自分が覗き見るから、彼と残業時のオフィスで関係するように命じる。しかし、覗いているうちに嫉妬に狂ってしまう。奴隷と主人の関係に満足していた平沢里菜子だが、所詮は本多菊次朗も理想のご主人さまとは遠いただの人だったことに失望し、千葉尚之との平凡な結婚生活に入る。
 だが、その後、本多菊次朗が会社経営に失敗し、地方に引きこもってしがないスナックを経営しながら、客寄せにSMショーをやってることを聞くと、夫を捨て、彼のもとに身を寄せる。本多菊次朗には淡島小鞠の愛人がいて、これ見よがしに平沢里菜子の前で乳繰り合うが、彼女はむしろそれを被虐の快感として受け止める。
 このように、理不尽とも見えるMの資質に、何の理屈も解釈もつけることなく、映画は彼女をそうした人間として淡々と綴っていく。平沢里菜子は、それをよく表現した。女優賞は当然だろう。その即物性が斬新で鮮烈だ。脚本は福原彰、昨年から監督にも進出したが、練達のエンタテインメント職人だけに止まらない進化は、そのせいだろうか。
 ラスト、富士の見える原野に、全裸で立ち木に吊り縛りされ放置された平沢里菜子というグラフィックな印象的シーンで終わる。

ただ、この直前に早乙女宏美を見たのがまずかった。彼女の肉体のスペクタクルにあっては、杉本彩も山口真里も、当然のことながら女優賞の平沢里菜子も霞んでしまうのだ。華奢で小柄な早乙女宏美に比して、長身でスレンダーな平沢里菜子の方が堂々たるボディであるのにもかかわらずである。
「蛙の会」における早乙女宏美は、ときおり浮かべるお嬢さんのような微笑みが印象的な、控えめで物静かな人で、映画中で見せた肉体的スペクタクルを全く連想させない。何か、人間的凄みというものについて、考えさせられてしまった。結局、最後まで早乙女宏美談義になってしまいました。

2008年ピンク映画カタログ−11

2008年4月8日(火) ●お蔵出し
痴漢電車 夢うつろ制服狩り 2007年公開
監督・友松直之  脚本・大河原ちさと  主演・亜紗美,澄川真澄

ウブで純情で、男女の関係には不器用な、高校生同士の友達の亜紗美と井上如香が、いろんな体験を通過して、女は魔性の如く変貌し、男はますます女に純情を捧げるという青春篇である。
 格別に美男美女というわけでもない亜紗美と井上如香の、自然体な高校生ぶりがまず良い。男女の体に目覚めた思春期で、不器用に愛撫しあいながらも、男は性器の位置が判らず、女に手を添えられたら、それだけで事を果たす前に射精に至るブザマさが、冒頭でよく描けている。エロチックとは無縁の描写ではあるが、ピンク映画ならではの青春描写だろう。
 亜紗美は、電車で同じ女子高生の澄川真澄と出会う。彼女は、援助交際ではいろいろと最近稼ぎにくくなってきたので、痴漢を誘いかけてそれに応じてきた男を脅し、金をまきあげていた。しかし、それもだんだん男達に知られうまくいかない。そこで、「ホリケン。」の痴漢行為にあっていた亜紗美を救い、金を巻上げ十万円を折半する。純情そうな亜紗美をおとりに、二人で手を組んで稼ごうと、提案する。
 井上如香は、遅刻しそうになった朝、駆け込み乗車で女性専用車に飛び込んでしまう。そこで、不倫相手と別れてムシャクシャしていた山口真里の毒牙にかかる。ホテルに連れ込まれ、タップリ大人の女の味を叩き込まれ、亜紗美相手に失うはずだった童貞を奪われる。
 亜紗美は澄川真澄と組む気にならず、脅し取った五万円を「ホリケン。」に返そうとする。「ホリケン。」は拒む。そこで亜紗美は、五万円分だけ痴漢していいと申し出る。すでに、井上如香の不器用な愛撫に火をつけられていた彼女は、興奮し何と!電車の中で「ホリケン。」に処女を与えてしまう。それからは、ホテルで「ホリケン。」を性の奴隷にし、魔性の女へと変貌していく。大人の性を知り、ますます亜紗美への純情に目覚めた井上如香と、逆に男を性の奴隷にし魔性の女に変貌した亜紗美。再会した二人の視線の微妙な交錯で、エンドマークとなる。
 せっせと猥褻がらみの法律を勉強する亜紗美だが、それが字幕で表示されたりする。売春防止法には罰則規定がないんだから、女は自由なんだとうそぶいたりする。冒頭の初々しくも、ピンクならではのユニークな高校生描写が鮮やかだけに、後段の転調が活きている。才人の友松直之、健在である。

この作品は2007年の年末公開なので、今年のピンク映画ベストテン対象作品だ。これで今年封切作品8本に年末公開の2本を加え、現在の対象鑑賞作品は10本。昨年末に新作公開がかなり限定されてきたことを知り、今年は見られる時に出来るだけ見ておこうとの、心掛けの効果が出てきたようだ。

2008年ピンク映画カタログ-10

2008年3月26日(水) ●お蔵出し
ワイセツ和尚 女体筆いじり 2007年公開
監督・森山茂雄  脚本・佐野和宏  主演・野々宮りん,平沢里菜子

生臭坊主の佐野和宏は、生臭ぶりが過ぎて、ついに全身不随で看護される身になる。ところが、看護師の野々宮りんが、体を摺り寄せ強制ペッティングを仕掛け、彼を蘇らせてしまう。実は彼女は後任住職の妹だったが、極端な禁欲坊主の江端英久の修行僧が現れ、兄はノイローゼで自殺し、住職の座を奪われてしまったという過去があった。体を武器に前住職の佐野和宏を引き込み、リベンジしようとの野々宮りんの魂胆である。生臭坊主・佐野和宏の役名が武田鎮源、禁欲坊主・江端英久の役名が上杉憲陳と、すべてが人を喰った森山茂雄流だ。
 ところが、展開の一部はかなりシリアスなのである。江端英久の禁欲は、人を愛したことも愛されたこともない屈折の帰結と判った野々宮りんが、体を使って凍った心をほぐしていく。その過程で仏教用語が飛び交ったりする。
 檀家の未亡人の平沢里菜子の体の疼きを、煩悩として諭す江端英久とのやりとりは、長回しショットでかなりシリアスに描いていく。と思ったら、煩悩排除のため彼女を縛り、体に経文を書いていく耽美なSM世界に展開していったりする。
 このように、人を喰ってるかと思うと、本格シリアスが結構入ったりして、何だか訳のわからぬ奇妙な魅力を有した映画となった。江端英久は野々宮りんに菩薩を見て、最後は手を取り合って寺を去る。住職に返り咲いた佐野和宏は、SM趣味が通じて平沢里菜子といい仲になる。そこへ妻の田中繭子が押しかけてきて、テンヤワンヤのドタバタ騒ぎ。最後までシリアスなんだかおふざけなんだか、ゴチャゴチャな印象なまま終わる。まあ、そこが魅力といえばいえなくもない一篇である。
 田中繭子は濡れ場なしのカメオ出演だが、ここでも光っていた。年増も熟女も隠すことなく、なりふりかまわず突進する狂い咲き(失礼!)、改名してますますお盛んな今後が楽しみである。

2008年3月29日(水) ●新宿国際名画座
どいつもこいつもみんな好きもの」旧題「欲望温泉 そろって好きもの」) 2004年公開
監督・脚本・深町章  主演・華沢レモン佐々木基子

新鋭・華沢レモン、ベテラン・佐々木基子、中堅・水原香菜恵、3大女優オールスターの趣きで、それぞれの持ち味を巧みに生かし、出てくる人間がすべて悪党というピカレスクでまとめてみせた練達の職人の深町章の水準作である。
 本多菊次朗と佐々木基子は、温泉町のそれなりに大きいホテルを経営している。ある日、息子の白土勝功が、芸能プロの金一千万円を持ち逃げして、転がり込んでくる。後を追ってきたのが女社長の水原香菜恵だ。主人の本多菊次朗は従業員の華沢レモンといい仲で、女将の佐々木基子も板前の「もてぎたかゆき」とよろしくやっている。いわば仮面夫婦だ。ドラマをキッチリこの6人に限定して、展開させてみせる深町章の名人芸の世界である。
 水原香菜恵は、本多菊次朗を誘惑して、旅館の権利を手に入れようと画策する。本多菊次朗は偏頭痛に悩まされている。不治の病を恐れている。佐々木基子は、夫が死んだら板前の「もてぎたかゆき」とホテルを我が物にせんと企んでいる。医師の診断では、単なる更年期障害なのだが、情緒不安定な本多菊次朗は、主治医の言を気休めと思い込み信じない。
 医師は従業員の華沢レモンにも、単なる更年期障害だから安心していいと伝えてくれと話す。プライベートデータをキャッチした華沢レモンは、それを逆用して余命いくばくもないとの嘘を、本多菊次朗に告げる。妻の不倫を怒る本多菊次朗は、全財産を華沢レモンに渡す遺言を書く。華沢レモンは、どの部屋も出入り自由の従業員特権の掃除役を利用して、白土勝功の預金通帳と印鑑を着服し、持ち逃げした一千万円を女社長の水原香菜恵に返して、温泉町から去らせる。
 すべてに勝利した華沢レモン。だまされたと怒り狂う本多菊次朗は、逆上して血圧が上がりダウン。売れ熟れレモンちゃんがピカレスクの勝利者となる深町章の練達職人芸でした。

超いんらん やればやるほどいい気持ち 2008年公開
監督・池島ゆたか  脚本・後藤大輔  主演・日高ゆりあ,倖田李梨

池島ゆたか監督作品100本記念映画(パート2)である。パート1「半熟売春 糸引く愛汁」は、正統派の直球勝負だったが、今回は自伝(?)的要素も含んだ遊び心溢れる内幕もので、映画ラブに徹した愛すべき一篇である。
 パート3があるのか否かは定かでないが、この際に今年1年は、池島監督こんな感じで走ったらどんなものだろうか。変なものと一緒にするなと言われそうだが、一昨年に若手美人浪曲師・玉川美穂子さんが玉川奈々福を襲名し、それ以後に名披露目興行がスタートした。昨年末の国立劇場のファイナルまで、各地で「名披露目」と銘打った興行が1年にわたって多数開催された。芸能の世界に詳しくない私は知らなかったが、「名披露目」とはそういう風に数多くやっていくものだそうだ。ならば、今年1年の池島ゆたか監督は、100本記念映画との触れ込みで、(パートX)まで多彩なジャンルにチャレンジしてもらいたいと思う。
 さて「超いんらん やればやるほどいい気持ち」である。主人公は、牧村耕次(若き頃の回想では千葉尚之)の映画監督の、瀕死のベッドの中での幻想の追憶が奔放に展開されていく。
 功なり名を遂げた晩年のベテラン監督時代、でも愛人の女優・倖田李梨は、助監督の川瀬陽太とできていた。だが、現場に乗り込んだところで、自分の精力の衰えを自覚させられるのみ、3人での3Pでそれを克服しようとして惨めさが増幅される。
 青年時代、役者をしながら映画監督を夢見ていた。でも、演出家にボロボロに罵られ、愛を交わしたと思った相手役の青山えりなも、生活が手堅い警察官と結婚して去っていく。
 そして何年か後、ピンクの男優としても大成できず、相手役の倖田李梨ともうまく演じられず、監督に下ろされる。同情した倖田李梨に慰められ、いつしか情が高まり濡れ場へ…。よく出来た!監督の声、ドッキリカメラもどきのやらせ撮影だった。二重の屈辱にまみれる主人公(後の監督)。
 でも、今はそれなりに監督として名を遂げた。瀕死のベッドに付き添う愛人・倖田李梨。取り巻く大勢の縁あるスタッフ・キャスト。
 彼が初監督作品の主演に起用したのは、理想の女優と信じたズブの素人の日高ゆりあ。海岸に佇む姿を見て「僕の映画の主役をお願いします!」「私、演技なんてできません」「いてくれるだけでいいんです」彼の監督デビュー作は、一部の好評は得るが、興行的には?がつく。だが、彼女の次の作品はなかった。純粋に生き急いだかのごとく、彼女はこの世を去っていく。瀕死のベッドの幻想の走馬灯の中で、ポイントのシーンに「映画」と名づけられて登場する日高ゆりあは鮮烈だ。
 かなりデフォルメされているが、彼女のイメージの原点は故・林由美香さんだろう。その意味では、もはや伝説の名女優・由美香さんの幻影を背負ってここまで頑張った日高ゆりあ、今後のブレークが期待される。
 脚本は「妻たちの絶頂 いきまくり」(原題「野川」)で、映画と現実の虚実皮膜を鮮やかに表現した後藤大輔監督、手馴れた五代暁子脚本をあえて封印したところにも、池島ゆたかの意欲を感じる。
 池島ゆたか監督、今年は様々なチャレンジを積み上げての、100本記念映画(パートX)で、多彩な活躍を期待します!

2008年ピンク映画カタログー9

「鬼の花宴」のポジションがわかりました。昨年の「ぴあ」ロードショー作品紹介で、銀座シネパトス公開の一般映画として掲載されていました。「紅姉妹」と同時に、ピンク映画専門館でも公開されている一般映画ということです。ただ「紅姉妹」の方は「PG」のピンク映画作品データにも記載されておりました。


2008年3月19日(水) ●上野オークラ劇場
「痴漢電車 くいこむ太もも(旧題「痴漢電車 ムリ女を狙え」)1999年公開
監督・脚本・関根和美  主演・林由美香,愛川るり

主人公は予備校生の男、浪人が長く同棲中の愛川るりに愛想をつかされかけている。ある日、電車で痴漢にあっている林由美香を助けるが、気分が出かかっていたのにと、逆に文句を言われる。
 実は痴漢していた男は「痴漢同盟」の一員で「痴漢を楽しむのは男だけじゃない」との思想のもとに、集団痴漢で女の隠れた感覚を呼び覚ますのを目指している。林由美香もその同調者だったとの顛末だ。林由美香のトンでる魅力が輝く。
 痴漢同盟は「エリート」「教授」「組長」などの仇名で呼び合い、主人公も「浪人」としてその一員になる。もっとも痴漢に落ちにくい女として、風間今日子が出演する。何ともセクハラの極地を行くようなピンクピンクした内容だが、やはり前世紀のムードの映画ということか。
 予備校生は、痴漢道を目指すことを通じて彼女の愛川るりとよりを戻すという何とも他愛のない一篇でした。

「どすけべ家族 義母も娘も色情狂(旧題「義母と娘 羞恥くらべ」)1999年公開
監督・新田栄  脚本・岡輝男  主演・浅野京子,水原かなえ

Xcesで新田栄監督作品ならば、こりゃもうドラマ性は皆無でひたすらエッチのみの映画を予想した。まあ、3本立のうちの1本くらいはボーッとそんなのを眺めてるのもいいか、と思っていたら、意外と情感あふれる義理の母娘のドラマだった。深町章作品を連想させた。ベテラン新田栄は、こういうのもちゃんと撮れることを確認した。
 水原かなえは、妻に逃げられた医師に男手ひとつで育てられたファザコン気味の女子高生。浅野京子は、過去に身分違いの恋をして、お腹を痛めた娘と引き裂かれた過去を持つ。今は悪徳探偵に弱味を握られて、レイプまがいの体の関係を続けさせられている。
 浅野京子は、医師の後妻になる。あからさまに反抗する義理の娘の水原かなえ。そんな中で悪徳探偵の毒牙は彼女にも迫り、処女を奪われ失神する。我が娘のように看病する浅野京子、身の上を語り「我が子を喜んで捨てる母親はいない。事情があったはずよ」と、自分を捨てた実の母を憎む水原かなえを諭す。「本当の娘さんに逢えるまで、私を実の娘と思って…お母さん!」二人の和解は実に泣かせる。
 医師に秘めた想いを抱き続ける看護師が林由美香、やっと結ばれても、日陰の身でいいと思う女の心情が切ない。 
 新田栄の練達のドラマ職人ぶりの意外な一面を見せられた一篇だった。

女優・林由美香は、今でもスクリーンの中で生き続けている。新作減少の中、ますます旧作上映が増え、彼女の生きた姿を見る機会も多くなるだろう。でも、人間・林由美香さんはもういない。
 由美香さんとは2回会って話しをした。いずれもピンク大賞の打ち上げの席である。今年も4月26日(土)のピンク大賞表彰式イベントが近付いてきた。この機会に「映画三昧日記」で、林由美香さんの追憶など書いてみたいと思っている。なぜ、このコーナーでないのかというと、ここは「ピンク映画」の「カタログ」に基本的に徹したいということと、少しでも「映画三昧日記」の方も覗いてもらいたいというさもしい根性からである。

監禁の館 なぶり責め 2008年公開
監督・竹洞哲也  脚本・当方ボーカル  主演・沢井真帆,倖田李梨

男と女の心情をシットリ語るのに絶妙な手腕を発揮する竹洞哲也の、これはガラリと変貌した新境地である。
 倖田李梨と岡田智宏の婚約者カップルがキャンプをしていると、真紅の着物をしどけなく着た沢井真帆が現れ、金槌で殴打失神させられる。監禁したのは松浦祐也と沢井真帆の兄妹。そこには全裸で首輪をつけられ犬のようにふるまい、人間食卓にもなったりするAyaも同居している。
 拘束されて倖田李梨にしゃぶられ弄ばれ、愛液を顔にかけられ、人格崩壊に追い込まれていく岡田智宏。倖田李梨も松浦祐也にレイプされ、食事は口移しで与えられるなど、徹底して人格破壊される責めを受け続ける。
 反撃して脱出する岡田智宏、しかし、やられてもやられても執念深くゾンビのように迫ってくる沢井真帆と松浦祐也により、再び拘束される。犬のように追い迫るAyaの存在も不気味だ。
 こうして囚われた者は、人格を喪い植物人間化する。袋をかぶせられ、森に林立する人間の群れ。食事と称して、あたかも肥料のように如雨露に貯めた倖田李梨の尿を浴びせられる。

 この兄妹は、子供の頃に連れてきた友達をすべて「破壊」してしまった。見かねた父親が、友達を連れてくるのをやめさせ「おもちゃ」を与えることにした。今は「おもちゃ」の調達は二人の姉の青山えりなの役割になっている。色仕掛けで「おもちゃ」を誘惑し、スタンガンで失神させて「調達」する。不気味な笑みを浮かべて渋谷の雑踏に消えていく彼女でエンドクレジットとなる。
 まあ、そういうストーリーの辻褄合せはどうでもいいことだ。この猟奇・耽美・退廃の世界を、竹洞哲也監督は、幻想的な美術・照明・撮影で魅惑的に造形してみせた。これは若松孝二の伝説的名作「胎児が密漁する時」の21世紀的復活ではないか。「胎児が密漁する時」は、監禁者を刺殺した志摩みはるが血まみれで虚脱し「シャボン玉」の童謡を歌う。監禁の館 なぶり責め」では被監禁者はことごとく脱出に失敗し、草原の彼方から新たに全裸の「おもちゃ」二人が引かれてくる。エンドクレジットには「かごめかごめ」が歌われる。その意味でも見事な対をなしていた。
 池島ゆたか100本記念作品「半熟売春 糸ひく愛汁」と並び、早くもピンク大賞2008年の賞レースを賑わすであろう力作である。

2008年ピンク映画カタログー8

2008年2月28日(木) ●上野オークラ劇場
「濡れた太股 揺れる車内で」 (旧題「痴漢電車 あぶない太股」) 1988年公開 
監督・片岡修司  脚本・瀬々敬久  主演・相原久美,下元史朗

1988年というから、何と昭和最後の年公開の旧作である。新作が激減している昨今、ついにこんな古いものまで引っ張り出されたということか。
 相原久美は、行きずりの下元史朗のカメラマンから、ヌードモデルになってほしいと頼まれる。忘れられない人とソックリなのだという。実は、彼がかねてから想いを寄せていた天才カメラマンの妻が、彼女の姉だったのである。
 天才は○○と紙一重というが、彼は妻とSEXしながら、その表情をカメラに納めるほどに、つきつめた表現を追う。妻はそれに耐えられず狂ったふりをして、下元史朗と同様のことをして夫に見せる。夫は発狂する。相原久美は、かつての姉と同様に、下元史朗とSEXしながらの撮影にのめりこんでいく。
 これと並行して、相原久美が痴漢体験の淫夢に毎夜悩まされ、セラピーを受けるエピソードが綴られる。ところが、セラピストが実は精神病患者で…という展開になり、どこまで夢でどこまでうつつか判らない世界へと変貌していく。
 下元史朗との関係は、相原久美が痴漢されている時の妄想なのか、夢セラピーの方が妄想なのか。混沌としたイメージの果てに、仮面男の集団に痴漢される幻想空間の中で、一人の男が仮面を取ると、それは下元史朗だった。
 後年、ビッグネームとなる瀬々敬久監督は、こんな前衛的な脚本を書いていたわけか。「栴檀は双葉より芳し」と思わせる一篇である。

「愛欲の輪廻 吸いつく絶頂」 2008年公開 
監督・加藤義一  脚本・岡輝男  主演・平沢里菜子,岡田智宏

ネタバレあり、注意!
岡田智宏の婚約者の平沢里菜子は、暴行魔にレイプされ、自殺してしまう。失意の岡田智宏は、幽霊でもいいから逢いたいと、出るはずのない携帯電話にかけ続ける。ところが、ある時、電話から声がする。死んだはずの平沢里菜子が蘇ったのである。奇妙な同棲生活が始まる。
 実はこの書き方はネタばれで、この真実は映画の終盤まで明かされない。ただ、岡田智宏の仕事先の街角で忽然と平沢里菜子が立っていたり、彼に好意を抱く平沢里菜子の妹の藤森美由希が訪ねてくると突然姿を消したりと、神秘的な雰囲気で映画は進められていく。このところ、ブッ飛び感覚の持ち味を封印し、ひたすら男と女の関係をしっとりと描いていた加藤義一の、久々の本領発揮である。
 愛する人と死に別れた場合、「化けてもいいから出てきてほしい」という切ない心情は、実によく判る。ただ、死んだものはやはり死んだのである。そう思い切れなかった悲劇の映画なのだ。
 岡田智宏と平沢里菜子との濡れ場は、青い照明を効果的に使った幽玄のムード。対するに、藤森美由希や、同じく岡田智宏に想いを寄せる会社同僚の合沢萌との濡れ場は、暖色の照明で効果的な対比を見せる。
 平沢里菜子の死霊は、彼女を襲った暴行魔を操って合沢萌を襲わせる。怒り狂った岡田智宏は、平沢里菜子を絞殺しようとする。実はそれは平沢里菜子に見せかけた合沢萌だとの、「四谷怪談」のお岩とお袖みたいなエピソードもある。「そんな女じゃないから好きだったのに」と哀願する岡田智宏に、「私は還る。でも、生まれ変わってあなたと結ばれてみせる」と言って平沢里菜子は姿を消す。
 何日かの後、合沢萌は妊娠する。平沢里菜子の生まれ変わりである。この後は、近親相姦の地獄絵図へと発展するのだろうか。最後まで加藤義一流のブっ飛び感覚は健在だった。
 「妹のおっぱい ぷるり揉みまくり」「痴漢電車 びんかん指先案内人」と応援・竹洞哲也を得てのシットリ作品から、本来の姿にもどったようだが、今回は応援に竹洞哲也の名はなかった。ただし、照明助手という形でスタッフに名を連ねていた。それが作風の回帰に関係してるのか否かは定かでない。

●「ピンク映画カタログ」復刻篇
私がピンク映画を本格的に観始めたのは、「映画芸術」誌の連載の縁で始まった2000年からである。ただ、ひょんなことから1996年に瀬々敬久脚本作品を観ていたことを、最近再発見した。
 その当時これについて書き、キネ旬ロビイに投稿した。当時のキネ旬ロビイは、現在のような一言コラムだけではなく、「読者の映画評」よりは長いが、「キネ旬ニューウェーブ」よりは短いエッセイ枠があり、私はそこの常連であった。この原稿の結果は没であったが、復刻としてここでその一文を紹介したい。

久々に見た成人映画雑感
久々に成人映画を見た。私は、成人映画に偏見を持つ者ではない。ピンク時代の若松孝二作品は熱心に追いかけたし、日活ロマンポルノの話題作などもそれなりにフォローし興味深く見た。だから、最近の成人映画に良い作品があるとの一部世評も、気にはなっていた。ただ、年のせいか、もはやマニアックに追いかけるだけの気力は、残念ながら無い。
 久々に成人映画を見たのは、他動的な理由に過ぎない。キネ旬プレゼント「ぬるぬる燗燗」招待に当たったら、何と成人映画三本立てだったんですね。だから併映の2本の監督の予備知識も全く無いし、これが現在の成人映画のどの程度のレベルにあるのかも、全く判らない。しかし、2本とも興味深く見た。平成の成人映画侮り難しと思った。

その2本、「発情電車 痴漢がいっぱい」「わいせつ覗き みせたがる女」である。
「痴漢がいっぱい」は洒落た青春艶笑コメディ。作家志望と女優志望のレズの女子大生コンビ、夏休みの海外旅行資金稼ぎのバイトで一人の老人を「勃たせる」ことを請け負う。作家志望がストーリーを作り、女優志望がいやらしく語って迫る。老人は元車内スリなので、ネタはもっぱら満員電車の痴漢話。レズシーンで見せ、艶笑コント風の三つのショートストーリーで見せ、やっと「勃った」ことを思い出に元スリ氏は老人ホームに入り、残り少ない夏休みの計画を海岸で楽しく語らう女子大生二人で爽やかに締めくくる。いやらしく盛り沢山に笑わせサラリと締め、退屈させないサービス精神はなかなかのものだ。
 それ以上に感心したのは、スカートの中を執拗に激写するカメラアングルの多用。なるほど、コロンブスの卵かもしれないが、これぞ映画ならでは表現できる猥褻感だろう。
 「見せたがる女」は、シリアスに痛切に都会の孤独を表現する。新聞配達のバイトの孤独な学生が、マンション入口で一人の女とぶつかる。女にとってはすぐ忘れる程度のこと。しかし、若者はその女に強烈な印象を残し、ポストの中の伝言を隠して恋路を妨げてしまう。一年後、女は恋は失うがTVレポーターとして成功、若者は不動産屋に就職し再会する。が、ここでも一方的な出会い。若者は女のマンションの向かいにある空き物件を利用して覗きを繰り返すだけの関係だ。紆余曲折の末、二人はやっと正常な出会いをする。だが、「見る男」と「見られる女」という関係でスタートした二人はギクシャクするしかない。若者は女のスキャンダルを解決すべく争い命を落とす。女はそのことを知らない。若者が姿を消した後、何故か新聞配達が気になる。早朝、若者に似た新聞配達を追う。人違いだ。二人の視線が合う。都会の新たな孤独な魂の出会いが始まるのか。映画は余韻を持って終わる。
 そういえば、2本ともフィックス・ロング・長廻し中心で、昔の映画の王道を行っている。最近の映画はCFやPVの影響か、移動・アップ・短いカットの多用で落ちつかないものばかりだ。そのあたりも、この2本が新鮮に見えた理由かもしれない。

「わいせつ覗き みせたがる女」は、監督・鈴木俊久、脚本・瀬々敬久、主演・沢田夏子,岡田智宏。 「発情電車 痴漢がいっぱい」の方は新版改題再映作品らしく、当時のキネ旬では調査不能になった。スタッフ・キャストが不明で、上記した内容だけで追跡できるのは、日本広しといえど「ぢーこ」さんしかいないでしょう。判ったら教えてください。
2008年ピンク映画カタログー7

2008年2月17日(日) ●上野オークラ劇場
「半熟売春 糸ひく愛汁」 2008年公開 
監督・池島ゆたか  脚本・五代暁子  主演・日高ゆりあ,田中繭子

池島ゆたか監督作品100本記念映画である。娼婦の田中繭子は、産みたくないまま何となく娘の日高ゆりあを産んでしまった。だから、ことごとく娘を虐待してきたようだ。内気な性格の日高ゆりあは、ますます陰にこもるようになり、それがさらに田中繭子をイライラさせる。そして、母と同様に娼婦にされそうになった日高ゆりあは、我を忘れて包丁で母を刺殺してしまう。
 作家志望の野村貴浩には、作家として名をなしたら結婚しようと言い交わした篠原さゆりの婚約者がいる。だが、30を過ぎても目の出ないことから、篠原さゆりは父親の会社に彼の就職を斡旋する。野村貴浩はサラリーマンになるつもりはさらさらなく、破局を迎え彼女のマンションを追い出される。今は知り合いの芝居稽古場を間借りしている侘しい暮らしである。
 ダイニングバーで働く仕事の同僚として、日高ゆりあと野村貴浩は出会い惹かれあう。ある日、稽古場に訪れた日高ゆりあは、何となく終電を乗り過ごし、泊めてもらうことになる。実は彼女は、母を刺殺した直後に彼を訪れたのだ。そこから二人の逃避行が開始される。
名作のパロディ=オマージュに才を発揮する池島ゆたか・五代暁子の監督・脚本コンビ、今回は「青春の殺人者」といったところか。いや、そんな引き合いを出すのは不要だろう。
 映画は、母を刺殺した後に野村貴浩を訪れた日高ゆりあのシーンを冒頭に置き、次第に二人の過去が回想で露わになっていく凝った創りである。二つの孤独な魂が次第に寄り添っていく切ない情感は見事だ。内に篭って追い詰められた心が狂気に転じていく日高ゆりあは、早くも演技賞候補の一人だろう。田中繭子の鬼母ぶりも、鬼気迫る凄みがあった。
 池島ゆたか監督作品100本記念映画にふさわしい正統派の力作だった。

「四十路後家 情交おもらし痴態」(旧題「未亡人ONANIE バイブ篇」) 1993年公開 
監督・新田栄  脚本・高島章  主演・しのざきさとみ,芳田正浩

Xcesで新田栄監督作品でこの題名、それ以上なにも言わなくて、全部わかっちゃう一篇である。
 四十路の未亡人が夫と死別しオナニー狂い。妹が婚約者を連れて訪れ、婚約者はソファー下のバイブ発見。後日「奥さん、溜まってるんでしょ」と誘惑して迫りいい仲になる。夫との回想の濡れ場もあるし、妹の濡れ場もある。死んだ夫は実はM男で浮気相手とのSMプレイも回想で登場する。最後は妹夫婦と同居し、夫婦の営みを覗いて、姉はオナニーに狂う。要は四十女のオナニーをタップリ見せる映画である。
 ストーリーなんてどうでもよく、どうやったら次のエッチなシーンに?がっていくかの興味だけだ。でも、本来のピンク映画の見られ方の、これが本道だろう。
 私がピンク映画を観るようになったのは、2000年頃からなので、1993年公開の映画鑑賞リストにはほとんどピンク映画はない。にもかかわらず、新田栄作品はこれで3本を数える。いずれも、最近の新版改題再映作品としての遭遇である。時代を超えて新田作品は売れるのだけは、まちがいないようだ。

「美乳暴行 ひわいな裸身」 2003年公開 
監督・脚本・荒木太郎  主演・山咲小春,しのざきさとみ

路上ダンスの友達の山咲小春と「しのざきさとみ」は、芸能マネージャーにだまされて、次第に風俗業界に引き込まれていく。抗う「しのざきさとみ」と、彼女をかばうかのようにその世界に身を沈めていく聖女のような山咲小春の対比が効いている。彼女は不治の病いに犯されているようであるが、それを押して男を渡り歩く。瀕死の体での路上ダンスに情感が溢れる。
 映画は、彼女の葬式から始まり、関係があった男女の回想で語り継がれる。黒澤明の「生きる」を彷彿させる凝った構成である。それが、結果として山崎小春の神秘性を大いに高めた。才人の荒木太郎らしいシミジミとした味わいのある一篇である。
2008年ピンク映画カタログー6

前回に話題にした「鬼の花宴」の続報。「キネマ旬報」の「2007年封切日本映画一覧表」では、新東宝映画リストの中で封切日11月3日となっていた。上野オークラ劇場に置いてあったチラシで「2月1日(金)〜2月7日(木)一週間限定ロードショー 上野オークラ劇場」となっていたが、どうも初公開ではなさそうである。なお2007年のPG「ピンク映画作品データ」であるが、そこにも「鬼の花宴」は記載されていない。

2008年2月8日(金) ●新宿国際名画座
「色っぽい義母 濡れっぱなし」(旧題「義母と巨乳 奥までハメて!」) 2004年公開 
監督・脚本・深町章  主演・山口玲子,君嶋もえ

山口玲子と川瀬陽太は、スリコンビで荒ら稼ぎしているが、ある時とんでもないものを手に入れてしまう。カッターでジグザグに切られた一ドル札で、ヤクザが麻薬取引の時に相手を確認するための割符である。手に入れた当座は何だか分からない。
 その直後、川瀬陽太に義母の君嶋もえから電話が入る。実父の牧村耕治が呆けてしまい、助けてほしいとのことである。帰郷する川瀬陽太と山口玲子だが、目星をつけたヤクザが、当然追ってくる。呆けた牧村耕治の気まぐれな徘徊で、割符がいったんは行方不明になる。ヤクザに脅しつけられて、山口玲子と川瀬陽太は、絶体絶命の窮地に陥る。
割符は、何とか川瀬陽太のもとにもどってくる。父の牧村耕治は、呆けたまま君嶋もえに迫って腹上死する。割符の意味を知った川瀬陽太は、葬儀のドサクサにCDのお経を流してヤクザを出し抜き、山口玲子と麻薬取引場所に向って、チャッカリと一攫千金を狙うことにする。
 それだけのストーリーでは、60分前後は持たない。それでも、ベテラン深町章は何とか持たせてしまった。例によって、出演男女のペアが入り組んで、、濡れ場ですべてからむというピンクならではの仕掛けだが、今回は、その一つ一つがいつもの深町映画に比べて長めになっている。練達の職人らしく、濡れ場はバリエーションに富んでいて、一応は退屈させない。小手先だけで、チョコチョコッてやっても、簡単に1本の映画を成立させちゃう深町章の底力を感じさせる一本だった。

「色情淫婦 こまされた女たち」 2008年公開 
監督・榎本敏郎  脚本・佐藤稔  主演・麻田真夕,花村玲子

私の期待する榎本敏郎監督の新作である。一昨年の「悶絶 ほとばしる愛欲」を「PG」のベストテンコメントで、『「悶絶 ほとばしる愛欲」の圧勝である。淡々とした話なのに、静かな映像に味わいとパワーがある』と、私は絶賛した。世評も同様であろうと確信していたが、蓋を開けたらかろうじての20位だった。
 ある映画監督には「ピンク映画で、主演女優の顔をはっきり見せないなんて、それだけで駄目だよ」と言われた。なるほど、私は麻田真夕の表情を巧みに隠しきったのがユニークな魅力だと思ったが、一般的にはそうなっちゃうのかもしれない。
 ということで、新作「色情淫婦 こまされた女たち」である。冒頭のクレジットタイトルがまず洒落ている。芝生に仰向けに寝転んでいる麻田真夕、花村玲子、華沢レモン、3人の主演女優のアップが重ねられ、女優名のクレジットがそれぞれのアップの後に出る。これだけのシーンに、早くも榎本流の映像パワーが漲っている。三人のクレジットの後は、全出演者が一枚でバーンと出されて終わりになる。そしてスタッフ・クレジットは、エンドマーク直前にやはり全員一枚タイトルで終わり、だから監督・榎本敏郎のクレジットも、画面右下に込みで小さく出るだけである。別にどうということではないが、ユニークな味わいがある。
 麻田真夕は酔った勢いで、麻薬売人の石川裕一を部屋に引き込んでしまい、関係を持つ。石川裕一は携帯電話を忘れて去る。麻田真夕の部屋に、仏壇に納まっていない剥き出しの位牌が何故かある。それを彼女は、飲み終わったドンペリの箱に何となくしまってしまう。部屋に昔の職場の同僚の花村玲子が尋ねてくる。彼女は盗癖があり、ドンペリの箱を盗む。その後、携帯の忘れ物を取りにきた石川裕一と遭遇し、ドンペリを送っていい仲になろうと目論む。
 ドンペリの箱は、石川裕一から、売人仲間の華沢レモンの手に渡る。蓋を開けて位牌があるので、華沢レモンはびっくりする。
華沢レモンの知り合いで、公園事務所で清掃などして働いている中年男の下元史朗に、位牌をどうすべきか相談する。下元史朗は、妻子を捨ててドロップアウトした過去がある。位牌を見て驚嘆する。妻の位牌ではないか!
 麻田真夕の職場の先輩の佐々木麻由子は、今は居酒屋の女将だ。下元史朗はここの常連客である。かくして、奇しき因縁で父娘の対面に至る。カメオ出演的な佐々木麻由子は濡れ場無しで、ここでも貫禄の存在感を見せる。
 映像パワーは相変わらずだし、凝ったお話でもある。ただ、凝り過ぎてもう一つストーンと感銘に落ちてこない。私としては、凝って思案にあたわずの典型となった映画のように思えた。

この日の思いがけない出会いと、残念な顛末

新宿国際名画座の後、シネマヴェーラ渋谷に向かい、プロのライターのIさんと佐々木亜希子さんの活弁上映会「世界の心」を見る。「無声映画からピンク映画まで古今東西邦洋を問わず、すべての映画を愛する男」の面目躍如である。
 終映後、「佐々木亜希子さんに挨拶してきたら…」と、Iさんに促される。たしかに盛岡の無声映画上映会で佐々木亜希子さんの前座も務めた身ではあるから、面識はないわけじゃない。でも、無声映画鑑賞会の澤登翠さんみたいに演台の横に立っている時のタイミングならともかく、楽屋までおしかけるのは図々しいよな、次回の口演(この日は2回連続上映)も目前なんだし…。「やめときますよ」「まあ、そう言わずに…」そんなこんなでIさんとウダウダ楽屋に行く階段下で話してたら、Iさんの知り合いらしい人が、シネマヴェーラに用事があるらしくやってきて、Iさんとちょっと立話をして上がっていった。

「誰ですか?」
「榎本敏郎監督ですよ」
「エーッ、今、新作見てきたとこですよ」
「それなら声かければよかったのに、てっきり周磨さんは榎本監督の顔を知ってると思ってたんですけどね」

確かに一昨年の「映画芸術」忘年会で、監督とお話はした。ピンク大賞総ナメ確実!と「悶絶 ほとばしる愛欲」を絶賛したら、「そうですか、そんな評判は全然耳に入ってこないですけど」と照れまくりだった。ただ、酔ってたし、会場は暗かったし、お互いに印象が残ってなくてもやむを得なかったかもしれない。でも、新作を見た直後に、監督と天文学的確率で偶然遭遇したにもかかわらず、こんな何もない形で終わらせてしまったのは、残念無念至極といったところだ(もっとも、今回は絶賛でなく、出るのは苦言になっちゃったかも知れないが…)。
今考えれば、「蛙の会」会長(マツダ映画社の専務)も、たぶん音響担当として会場に来ていたはずだ。会長への挨拶も兼ねて、佐々木亜希子さんに挨拶しておくのもよかったかなと、今になって思っても、こっちもすべて後の祭りである。

2008年2月14日(木) ●お蔵出し2本
「いくつになってもやりたい男と女」 2007年公開 
監督・いまおかしんじ  脚本・谷口晃  主演・多賀勝一,並木橋靖子

左官屋の修行に一生を賭けたのに、今の時代では不要とされ、足も不自由になり、妻にも先立たれたが、スーパーで若い女のスカートめくりをやったり、スナックのママ速水今日子とおもちゃを使った火遊び(あまりもう勃たなないらしい)に明け暮れ足り、でも、孫を可愛がるいいお爺ちゃんの一面もある65歳のチョイ悪親父の多賀勝一が主人公だ。彼が中学の同窓会で、やはり夫に先立たれた初恋の並木橋靖子と出会い、結ばれるまでのホノボノ熟年ドラマである。
 山場は熟年カップルの濡れ場で、ピンクとしては殆ど成立しない題材である。そこは、才人いまおかしんじ監督、多賀勝一の中学時代の悪童3人で若夫婦の夜の営みを覗きに行く回想(これが初老男優達に鬘をかぶせただけで処理する大胆なユニークさ)を入れたり、、彼が若い大工とスナックのママ速水今日子を張り合ったりといったシーンを入れて、かろうじてピンクとして成立させている。
 多賀勝一と並木橋靖子が、初恋の照れくさささから、オズオズと、でも最後には抱き合う顛末が、情感タップリに描かれる。でも、これは「ピンク」映画のエロチシズムとは全く別物だ。ピンク「映画」ということである。こんな「映画」、よくぞ創ってくれました。
 末期癌の妻の高槻ゆみの股間を、多賀勝一が妻の求めに応じて愛撫するシーン。(こういう場合は個室になるから可能なのだ)初恋の相手の並木橋靖子に性器をさらけ出して迫ってしまった男の中学時代のほろ苦い思い出と再会の時の気まずさ、でもお互いに連れ合いを失った身で憎からず思い合う感情、けれど性的な気持は今はなく懐かしさのみに浸る女と、性的な昂ぶりを再燃させる男、昔の面影を記憶しているせいもあるが初恋の女性は年をとっても綺麗だと思える男の真情、ピンク映画的デフォルメを差し引けば、類似の体験をしている60歳の私は、かなりのリアリティを感じた。
 では、どこまでがリアリティで、どこまでがデフォルメかと、詳細に記したいところだが、そこまでいくと相当に私のプライベートなところに踏み込んじゃうことを書くことになっちゃうので、後はご想像におまかせします。
 ただ、息子が多賀勝一を「いい年をして!」と嗜めるのは違うと思う。今の子供は、親は親で自由に生きることに、もっと寛容である。最後に、お爺ちゃんのために孫がスーパーでスカートめくりをやって見せる幕切れとなるが、そこも洒落れていて楽しい。

ここまでで2007年ピンク大賞の対象鑑賞映画は29本になりました。これで投票に臨むことになると思います。私のベスト5は次のとおりです。

1.うずく人妻たち 連続不倫(福原 彰)
2.女引越し屋 汗ばむ谷間(竹洞 哲也)
3.不倫中毒 官能のまどろみ(吉行 由美)
4.続・昭和エロ浪漫 一夜のよろめき(池島 ゆたか)
5.痴漢電車 びんかん指先案内人(加藤 義一)

「やりたがる女4人」 2007年公開 
監督・深町章  脚本・かわさきひろゆき  主演・里見瑤子,なかみつせいじ

公開は2007年の年末なので、ピンク大賞では2008年対象となる。
 男一人に女4人で出演者はキッチリ5人。4部作のようなガッチリした構成で手堅く見せる。ベテラン深町章らしい練達の職人技だ。深町章は、かつて「かわさきりぼん」脚本との名コンビぶりを見せたが、今回の脚本はご主人で役者でもある「かわさきひろゆき」作品。出演陣は、男が「なかみつせいじ」、4人の女が、まず御贔屓里見瑤子嬢(私にしては久々の出会いといった感じです)、平沢里菜子、藍山みなみに、売れ熟れレモンちゃんこと華沢レモン。これって、凄いオールスター豪華キャストだ。
 作家の「なかみつせいじ」は、放蕩の限りをつくした果てに急逝する。遺作の想いを託されて妻の里見瑤子嬢は、小説に記された岩場に遺灰を散じに訪れる。遺作を読んだかつての愛人達が、次々と彼女の前に現れる。
 最初はパリにまで不倫旅行をしてマスコミを騒がせたスター女優で、今は落ちぶれた平沢里菜子。続いては秘書の藍山みなみ、彼女の口から晩年の「なかみつ」は何も書けず、藍山みなみがゴーストライターで、この海岸での遭遇を仕掛けたのも彼女だという衝撃の事実が明かされる。そして、大学の講演会で憧れの「なかみつ」先生と一夜を共にした女子大生の華沢レモンが、最後に登場する。ただ一度、処女を捧げた夜で、妊娠したとの驚愕の事実が、さらに明かされる。
 波の音が印象的な砂浜での4人の女の、複雑な心情の交感が、ロングショットを効果的に使った描写で、味わい深く描かれる。一方、「なかみつせいじ」と4人の女の濡れ場が、4者4様のバリエーションで展開され、そちらも鮮やかな見せ場になっている。夫婦の夜の営みとしての瑤子嬢との濡れ場、媚薬を用いての淫乱を尽くす平沢里菜子との濡れ場、レイプまがいに目隠ししてプレイしたり、首を絞めあったりするSMチックな藍山みなみとの濡れ場、憧れの先生に抱かれる恥じらいと次第に高まり乱れていく華沢レモンとの濡れ場、ベテラン深町演出の描き分けは見事である。男の絶頂の演技をしつくしてヤリ殺された(妻の瑤子嬢の台詞)「なかみつせいじ」さん、隈を作っての熱演、ご苦労さまでした。
 平沢里菜子がおちぶれた元スターの高慢さをスタイリッシュに快演する。対するに秘書の藍山みなみは、地味なメイク衣装にメガネで、平沢里菜子に「チビタンク、メガネブス」とののしられるが、逆にそれが可愛らしさを増幅する。
 妻の御贔屓里見瑤子嬢が、華沢レモンの子を育てるとの決着で、4人の女に共感が生まれ、遺灰を皆で海に撒く大団円となる。4人の女が一人の男の股間に、全裸で顔を寄せて四方に広がるファンタスティックな幕切れの映像も余韻がある。
 耐える妻を演じた御贔屓里見瑤子嬢はよく演ってるが、キラキラとした若さを振りまく売れ熟れレモンちゃんの前では、葉月蛍ほどの貫禄には程遠いだけに、ちょっとこの中途半端さは切ない。そして、葉月蛍のようなポジションに納まるにしては、まだまだ若くキラキラし過ぎている。御贔屓里見瑤子嬢、ホントに微妙な曲がり角に来たようだ。
2008年ピンク映画カタログー5

1月22日(火)の「バツイチ熟女の性欲〜三十路は後ろ好き」で言い残したことを一つ。一旦は中年男の良さに目覚めたかに見えた真田ゆかりが、若者の方にまた回帰していく微妙な心理の綾を描くのに、シャックリを粋な形で使っていた。彼女は精神的に安定するとシャックリが止まるのだが、中年男といっしょにいる時は止まらなかったので、若者への真の愛情に目覚めたという顛末である。

2008年2月1日(火) ●上野オークラ劇場
「独身OL 欲しくて、濡れて」 2002年公開 
監督・脚本・杉浦昭嘉  主演・木下美菜,奈賀毬子

三十路を目前に控えた木下美菜は彼氏なしであせっている。妹の奈賀毬子は奔放で、二股をかけたセフレがいる。木下美菜は結婚紹介所「ハピネス」に入会して、弁護士と会いベッドインするが、こんなSEXの下手な女は初めてだと、あっさり逃げられる。SEX下手は本人も自覚していて、「ハピネス」のカウンセラー酒井鏡花に相談する。酒井鏡花はバイセクシャル、まずレズで木下美菜をイカせて、不感症でないとの自信を持たせる。続いて男を実験台に手や口のテクを伝授する。木下美菜は、男を喜ばせる意義に目覚める。何とも破天荒な展開ではある。
 展開の破天荒さは、さらに続く。再び「ハピネス」に紹介された男を好きになってベッドイン、しかし、あまりに絶妙なテクニックに風俗嬢だと誤解され、逃げられる。
 結局、独身・彼氏なしで迎える三十路、それでも妹が友人を集めて、誕生祝を開いてくれる。ところが、そこで妹の二人のセフレが鉢合わせ、嫉妬交じりに姉が乱れて、テンヤワンヤの大騒ぎとなる。
監督・脚本の杉浦昭嘉は音楽も担当している。ラスト、開き直ったようなふてくされたような、味のある表情の木下美菜の日常生活の風景に、主題歌がかぶさる。これが三十路女の哀愁をよく表現していた。

「鬼の花宴」はピンク映画でないのか?
この後、「鬼の花宴」について書くことになるが、実はこの映画はPGの「ピンク映画作品データ」に記載されていない。ただ、ロードショーが専門館の上野オークラ劇場だし、出演者も黄金咲ちひろ・佐野和宏と、ピンクでお馴染みの顔ぶれである。いちおう「ピンク映画」として、ここで取り上げることとする。
 たしかに、ピンク映画らしからぬ側面もある。公開前の上野オークラ劇場には、堂々たる一般映画同様のチラシが置かれていた。製作は新東宝ではあるが、ピンク映画の冒頭に出る新東宝マークは出なかった。上映時間も70分と、通常のピンク映画より10分ほど長尺だ。クレジットタイトルのスタッフの数も、ピンクよりグッと多い。画面の密度も厚いような気もするし、通常のピンクより製作費もかけているような気もしないではない。
 でも、同様なケースでは過去に「紅姉妹」という例もあった。こちらの方は「ピンク映画作品データ」に記載されている。やはり「鬼の花宴」もピンク映画とすべきであろう。まあ、どっちでもいい話ではあるが、来年のピンク映画大賞の対象作品になるのかならないかは、私にとって大きな問題だ。なるならば現在までの鑑賞作品4本、ならないならば3本なのだ。新作の本数も上映機会も激減している昨今、この1本の差は大きい。

「鬼の花宴」 2008年公開 
監督・羽生研司  脚本・吉野洋  主演・黄金咲ちひろ,松本亜璃沙

チラシやPGのシアター・ガイド(上野オークラ劇場の上映なのでここではPGも掲載している)では、「団鬼六 鬼の花宴」となっている。しかし、実際のメインタイトルでは「鬼の花宴」としか出ないので、ここではそれに従った。スバリ、団鬼六のSMものである。鬼六精神をよく体現した映画に仕上がっている。
 対照的な美女がカップルで責められるのが、鬼六小説のパターンだ。一人は上品な若妻か清楚な令嬢というタイプ、もう一人は勝気で心の強い女だ。代表作「花と蛇」の貞淑な財閥の令夫人・遠山静子と、拉致された彼女を救出に来て囚われる美人探偵・京子はその典型だ。勝気な女は、身を挺して深窓の美女を守ろうとして犠牲になり、二人そろってSM愛欲地獄に堕ちていく。

今回は、勝気な女を黄金咲ちひろ、深窓の美女を松本亜璃沙が受け持つ。黄金咲ちひろは、かつてレイプ魔の佐野和宏に縛られて犯され、緊縛SEXでなければ感じない体にされてしまう。時がたち、佐野は今や新興宗教・崇徳教の教祖となり飛ぶ鳥を落とす勢いで、多額の寄金をして地方新聞社を牛耳っている。
 黄金咲ちひろも、今はバリバリのキャリアウウーマンで切れ物のジャーナリストに変身している。地方新聞社に乗り込み、営業部長を誘惑し、佐野和宏の旧悪のスキャンダル記事を掲載する。
 営業部長の妻が松本亜璃沙、少女のような純真妻だが、夫の愛撫にもあまり反応しない清楚なだけが取り得の女である。怒った佐野和宏は、松本亜璃沙を一週間だけ巫女として差し出せばこの件は不問に付すと、新聞社の社長に迫る。大スポンサーからのこの申し出を断れる者は誰もいない。
 自分のために営業部長の妻が犠牲になってしまった罪の意識から、黄金咲ちひろも教団に向う。こうして、美女二人の責め地獄の舞台は整った。ここまでは、鬼六ワールドの定番で、さして目新しいものもないが、お膳立てだからそんなところでいいのだ。

佐野和宏の前に正座させられた松本亜璃沙は、裸になることを強要される。清楚な人妻に、そんなことができるわけがない。しかし「夫がどうなってもいいのか」と迫られれば屈服するしかない。恥じらいの表情を浮かべ、震える手で着衣を脱いでいく魅惑はまさに鬼六ワールドをよく表現している。ついに腰のもの一枚の半裸になる。いわゆる手ブラで胸を抱いて羞恥に耐えるのが精一杯の松本亜璃沙、しかし無情にも教団員に手をねじ上げられ、後ろ手に縛り上げられる。もう恥ずかしくても乳房を隠す自由すらない。エロスとは露出でなく恥じらいであるとの鬼六ワールドが盛り上がる。縄は、さらに乳房のふくらみを強調するように亀甲縛りにかけられてゆく。見られて恥ずかしいふくらみが、さらに強調される屈辱に女体がうめく。
 この後は立ち縛りにされて、湯文字の中に竹刀をこじ入れられ、陰部を刺激される。肉体的なおぞましさもさることながら、それに伴い腰のものがまくれあがり、太股までさらけ出すことになる苦痛にのたうつ。ここでも「エロスは恥じらい」の精神が徹底している。
 そして、緊縛のまま松本亜璃沙は教団員にレイプされる。同様に半裸で緊縛された黄金咲ちひろは、男女の結合した部分を凝視するように命じられる。同性にまでそんな所を見られる松本亜璃沙のつらさ、自分のせいで追い込んでしまったそんな光景を凝視せねばならない黄金咲ちひろの切なさ。そして、夫の愛撫にすら感じなかった松本亜璃沙の感覚が緊縛レイプで目覚め始める。
 佐野和宏は、続いて黄金咲ちひろに松本亜璃沙へのレズ行為を強要する。松本亜璃沙を解放するとの条件のためには、言うとおりにするしかない。一転、画面は全裸金粉の女体がからむ妖かしの世界へと変貌していく。営業部長が妻を救出に駆け込んでくる。目の前にしたのは、かつての妻からは想像できない女同士のプレイにのめりこんでいる姿だった。うなだれる首、背景の暗転、そしてあげた顔には般若の面がついていた。こうして、一気にSM夢幻ワールドに飛翔して、映画は終わるのである。

とはいっても、団鬼六の「花と蛇」を筆頭とする小説群に比べれば、かなりあっさりしていることは否めない。小説では、SM愛欲地獄に堕ちていくプロセスを、もっともっときめ細かく積み上げていく執拗さがあり、その魅惑には程遠いものがある。
 胸や秘部の茂み、夫や愛人にしか見せたことのない体の一部を露出させられていく過程をネチッこく描く。そして、無防備の形に緊縛されて責め具を用いての愛撫、恥ずかしい所が恥ずかしい形と恥ずかしい臭いになっていくのを、ジックリ鑑賞される。そして、女として死んでも口にできない卑猥な言葉を発することの強要。さらに、夫や愛人にすら見せたことのない衆人環視の中での強制放尿、浣腸により野卑な男女の好奇の視線に晒されての排便。このように、女から薄皮を剥ぐように、慎みとたしなみと神秘性を少しずつ奪っていく。囚われ人がお互いをかばい気遣う故に、こうした行為も進んで受け入れざるをえない。そしてレズ行為にまで至らせ、SM愛欲地獄への転落へと連続していく。「恥じらい」をポイントに置き、ここまで執拗にそれを奪い取っていく過程を踏めば、もうレイプなんてのは羞恥と屈辱のうちに入らなくなってくる。
 団鬼六の小説では、案外レイプのところがあっさりしているのは、そのへんが理由だろう。アクロバチックな池島ゆたか作品「襦袢を濡らす蛇」SM2部作や、鬼六の世界を強引にバイオレンスの石井隆ワールドに引き込んだ「花と蛇」2部作とは、全く別物なのである。

もっとも、その執拗さを60分程度で表現するのは、無理ということだ。団鬼六が自らメガホンを取った「紅姉妹」が、鬼六世界を最も体現した映画になったのも、前後篇で110分という時間の長さもあったと思う。最後に、この種の映画に欠かせないサディストだが、「鬼の花宴」の佐野和宏、「紅姉妹」の港雄一と、いずれも怪優が怪演しているのも、見所の一つだ。

「居酒屋の女房 酔い濡れ巨乳」 2008年公開 
監督・国沢実  脚本・岡輝男  主演・ささきふう香,佐野和宏

しっかり者の居酒屋の女房のささきふう香と、浮気者の駄目夫の佐野和宏だが、それでも絆を感じて、最後は元のサヤに納まっていく。「おばはん、頼りにしてまっせ」のセリフで有名な淡島千景と森繁久彌の「夫婦善哉」を思わせるホノボノ篇である。ささきふう香は気っ風のいい女将っぷりだし、佐野和宏は「鬼の花宴」のサディストからガラリと変身して好演。
 夫と死別して自殺しそうになっていた間宮結を救ったことから、居酒屋を女房のささきふう香に押し付けて同棲を始めた佐野和宏。でも、時間がたつと間宮結に「あなたの眼は奥さんを求めてる。私はもう大丈夫」と言われ、居酒屋に戻ってくる。でも、いくらもたたないうちに買出しの途中でチンピラにからまれていた片瀬まこを助けて、ズルズルと同棲に至る。「俺は幸せだから、不幸な女にそれを分けてやってるんだ。他の人間を不幸にしているわけじゃない」というのが、佐野和宏の浮気の勝手な理屈である。
 ところが片瀬まこは人妻で夫がいた。これでは、その夫を不幸にしてしまったことになって、ルール違反だ。でも「何度もこんなことを繰り返してます。これは家内の病気なんです。別れてください」と、情けない夫が哀願にくると、余計に意地になる。この夫を国沢実監督自身が好演している。また、情けないがいかにも善良そうなこの夫の存在が、2組の夫婦の男女逆転した合わせ鏡になっているのが、何とも興趣がある。
 居酒屋常連の青年の岡部尚が女将のささきふう香にベタ惚れし、夫の浮気癖にウンザリした女将も、一度くらいいいかと体を許しかけるが、やっぱり駄目、亭主を愛してると最後のところまでには至らない。予想どおり佐野和宏も片瀬まこと別れ、お互いがそれぞれの妻と夫の元へ帰っていく。ここでも、男と女の絆の綾を描いた「夫婦善哉」の世界だった。
2008年ピンク映画カタログー4

2008年1月24日(火) ●お蔵出し
「おんなたち 淫画」 2007年公開 
監督・大西裕  脚本・西田直子・加東小判  主演・吉岡睦雄・宮崎あいか

新人・大西裕監督の意欲作だ。映画青年が思いっきり大胆な前衛的表現を狙って、濡れ場があれば何やってもいいとの、ピンクの自由さを久々に感じさせた映画である。
 主人公の吉川睦雄は、監督志望の若者だがうだつが上がらない。監督への道の前段であるシナリオすら上手く書けず悶々とする毎日である。腐れ縁のようにつきあっている宮崎あいかのヒモのような生活だ。最近は不能気味でもある。「30までに監督になるって言ったでしょ!」「神代辰巳が監督になったのは41だよ」「学歴がちがうでしょ!」そんな意味の映画通をニヤリとさせるやりとりもある。
 吉川睦雄は、最近は花村玲子ともセフレ関係だ。こちらの方は勃つ。前半は吉川睦雄をめぐって、この花村玲子と宮崎あいかの恋のさやあてで展開する。このへんはありきたりな筋立てだ。
 後半、引退した先輩監督の川瀬陽太の登場からムードが変わってくる。今はエコロジーの仕事をしているという。いい金になるから手伝えと、山道に入って物を運ばされる。車の中には拳銃があったり、何だかヤバい雰囲気である。何がエコロジーだかわからない。
 その後、吉川睦雄は、川瀬陽太に射殺されたり、嫉妬に狂った宮崎あいかに包丁で刺されたりと、何度も死ぬが、いずれも夢ともうつつともつかぬ幻想の世界である。終盤は、せまい部屋の濡れ場となるが、電球が消える度に、相手が宮崎あいかと花村玲子に、頻繁に交代している。どこまで自分の創作したフィクションで、どこまで現実か、デイヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」を連想させる混沌の世界へと雪崩れ込んでいく。
 千葉の白里海岸、送電下のホームレスの集落とゴミ集積場。エコロジーに関係するのかどうか解らないが、私にとっては意味不明のイメージが挿入されていく。だが、前衛的なムードは悪くない。久しぶりに新人が、「ピンク」で「ゲージュツ」やっちゃったって感じの珍品である。

吉川睦雄は何を演っても好演だ。今、もっとも油が乗り切っているピンク男優だろう。
2008年ピンク映画カタログー3

2008年1月22日(火) ●上野オークラ
「人妻を狂わせた不倫の夜」(旧題「おば様たちの痴態 淫熟」) 1994年公開 
監督・新田栄  脚本・高山みちる  主演・鶴見としえ,如月じゅん

深町章監督に並んで、ピンク映画のベテラン職人新田栄のこれは前世紀監督作品。助監督に国沢実の名前があるあたり、時代を感じさせる。クレジットタイトルで、女優の年齢が表記されるのが珍しい。主演の二人はともに40歳以上だ。これは熟女のエロが売りの映画であることを、冒頭で宣言しているわけだ。(この頃のクレジットは映画の始めに出てくる)
 夫との仲が冷えてる40歳の妻と、44歳のその夫の前妻が主人公だ。40歳の妻は、夫の出張中はこれ幸いとと行きつけのバーのバーテンと不倫を楽しむ。前妻には娘がいて、そのバーで彼女と知り合う。娘は彼女を慕っていて、あの人は魅力的だと母に告げる。負けるものかと44歳の前妻もバーテンを誘惑して、現妻と肉体的魅力を競う。バーテンと二人の熟女、出張先の夫の浮気、さらに夫婦の営みも含めて濡れ場には事欠かない。
 ベテラン新田栄の濡れ場は、とにかくねちっこい。多量の唾液をお互いに流しこみあう。肛門を指や舌で刺激する。44歳前妻のワキ毛処理をしてない茂みに舌が這う。
 エッチな猥褻感は濡れ場だけにとどまらない。40歳人妻と前妻の娘とのレズシーンもある。風邪をひいて娘の看護をしているうちに、パジャマの着せ替えからコトに至るあたり、色っぽいショーとしても巧みだ。44歳前妻のワキ毛全開のオナニーも激しい。
 ドラマ展開の興味や心情描写として濡れ場の味わいは、徹底して排除されている。ひたすらエッチと猥褻をつきつめるのみだ。だから、ストーリーへの興味は、どんな流れで濡れ場やエッチシーンに?がっていくかのみである。
 でも、ピンク映画3本立の中で、最低こういうのが1本はないと不満を持つ観客は、結構多いのではないか。ピンクがある種の自由な映画表現の場になるのは、こうした3本立のバラエティがあるからかもしれない。
 冒頭に「深町章監督に並んで(中略)ベテラン職人新田栄」と記したが、実は深町作品と新田作品は、全然別物と思えてきた。前者が「(ピンク)映画」なら後者は「ピンク(映画)」というべきなのだろう。そして、我々がピンク映画大賞で俎上に乗せているのは、「(ピンク)映画」のみなのである。
 前に阿佐ヶ谷の現代映像研究会で、ピンク男優の久保新二さんのトークショーがあった。マシンガントークのたいへん楽しい人である。「お前たちの誉めてるピンクはつまらん物ばかりだ!ピンクはこれだろう!!」といって腕を男根の勃起のように振るって、大爆笑を巻き起こした。
 一理あると思う。アクション映画や特撮映画のファンが、壮絶さや技術レベルの観点から品定めをするように、ピンクもエッチ度・猥褻度に焦点を絞って評価するところがあってもよい。私は参加する気はないが、「ピンク(映画)」大賞が、もうひとつ必要な気もしてきたのである。
 女優・ダンサー・パフォーマー・ルポライター・活動弁士と多彩な活動の早乙女宏美さんの名著「性の仕事師たち」では、ピンク映画監督代表として新田栄を挙げていたのが、何となく理解できる昨今である。

バツイチ熟女の性欲 〜三十路は後ろ好き〜」 2008年公開 
監督・渡邊元嗣  脚本・山崎浩治  主演・真田ゆかり,藍山みなみ

ブッ飛び監督・渡邊元嗣の2008年新作も熟女ものだ。ブッ飛び感覚はなぜか今回は影を潜め、熟女の複雑な女心をしっとり描く正攻法であった。もちろん、これは紛れもない「(ピンク)映画」であった。
 夫に逃げられ、女手ひとつでアートギャラリーを経営しているやり手社長の真田ゆかりが主人公。その娘が藍山みなみ。題名に三十路とあるが、藍山みなみの母なのだから、限りなく四十路に近いといっていいだろう。
 真田ゆかりは、若い部下の真田幹也とセフレ関係を楽しんでいる。真田幹也の方は真剣なのだが、真田ゆかりはセフレ相手以上に考えていない。
 藍山みなみは出版社勤務で、仕事の関係で作家の新納敏正を連れてくる。女は20代しか抱かないとうそぶいている中年男である。藍山みなみは、実は以前から母のセフレの真田幹也に思いを寄せていた。一方、熟女の魅力を認めていなかった新納敏正は、真田ゆかりと飲んで話したりしているうちに、本当に心を開けるのは熟女だと、中年女の魅力に目覚めてくる。
 かくして「ゆかり=幹也」「藍山=新納」「藍山=幹也」「ゆかり=新納」という4組の濡れ場が成立する。ただ「ピンク(映画)」新田作品とは対照的に、ここではエッチ・猥褻よりも、「中年=若者」の2組のカップルが「中年=中年」「若者=若者」の本来の鞘に納まる心理の綾が、きめ細かく描かれていく。正に「(ピンク)映画」なのである。
 だが、紆余曲折を経て、真田ゆかりは真に愛しているのは若い真田幹也であったことに気付く。娘の藍山みなみも、そのことを認めるという意外な幕切れになる。ウェルメイドをあえて避けたこのあたりが、渡邊元嗣らしいブッ飛びの片鱗なのだろうか。真田ゆかりが熟年女の哀愁をよく出していた。
2008年ピンク映画カタログー2

PGウェブ・サイトがリニューアルされた。新版改題作品リストの旧題をクリックすると、公開当時の作品紹介に飛ぶのである。これは極めて便利、優れものだ。残念なのは2008年新版改題公開データ以降からで、それ以前は従来のままというところである。

2008年1月12日(土) ●新宿国際名画座
「人妻痴戯 夫の前で」(旧題「ねっとり妻おねだり妻U 夫に見られながら」) 1997年公開 
監督・的場ちせ  脚本・山崎邦紀  主演・柏木瞳,篠原さゆり

作家は文学の神様に仕え、文学の神様は悪魔で、編集者はその奴隷であるとする勝手な理屈の男が、妻に若い編集者を誘惑させ、それをネタに脅して、編集者の妻の体を要求する。若い編集者は、売れっ子作家には逆らえない。その裏を見抜いているベテラン女性編集者がいる。そっちはそっちで、編集長とできている。早い話が出演男女優がすべて絡むという濡れ場の方便だけのドラマの、凡ピンクである。
 ブッ飛び感覚の脚本・山崎邦紀、アナーキーな性の世界が壮絶な監督・的場ちせのコンビにして、この凡庸さはどうしたことか。前世紀の旧作だが、この頃はまだこんなものだったということか。主人公の作家の身勝手さがブッ飛びとアナーキーを、やや臭わせないでもないといった程度である。

「エロ探偵 名器さがし」(旧題「痴漢探偵 ワレメのTRICK」) 2004年公開 
監督・脚本・深町章  主演・岡田智宏,佐々木麻由子

岡田智宏が、石坂浩二そっくりのスタイルで探偵として六つ墓村を訪れる。その名も銀田一耕助!旅館の女将の佐々木麻由子の依頼で、父の港雄一の急死の真相究明と、財産の隠し場所の暗号を解読に来たのだ。遊び心あふれたベテラン深町章の、他愛はないが洒落た一篇である。といっても、謎解きにそれほど大した仕掛けがあるわけではない。心臓疾患でセックスを禁じられていた港雄一が、「三だん、かずのこ」と言い残して死んだが、相手は誰だったかという調査である。一人目の容疑者は、17歳の時に女中見習いとして来て、弄ばれて妊娠して涙金で追い出された御贔屓里見瑤子嬢!もう一人は現在の港雄一の愛人の山口玲子。
 岡田・銀田一、自らの体で確かめ、山口玲子は「三だん、かずのこ」の名器とは程遠い肉体なのを確認する。瑤子嬢の方は、男との濡れ場を覗き見し、やはり名器とは程遠いことを確認する。結局、神社で鞠つきしながら徘徊していたちょっと足らない少女の華沢レモンが、名器の持ち主で、港雄一を死に至らしめたことが判明する。岡田・銀田一は、港雄一の娘の佐々木麻由子にそのことは伝えず、相手は夢の中の女だったと言って、心遣いを見せる。といったミステリーの謎解きにもならない他愛のない顛末である。
 瑤子嬢の役名が玉子、山口玲子の役名がキン子との、駄洒落遊びがあったりもするがそれだけのこと。年齢不詳の御贔屓里見瑤子嬢が、17歳の女中見習いの少女を演じるのもルーチンワークである。ただ、旬の売れ熟れレモンちゃんのみが、ここでも光っておりました。回想シーンのみの登場だが、ベテラン港雄一も相変わらずの怪演。
 もう一つの暗号解読も、大した工夫があるわけでなく、岡田・銀田一と女将の佐々木麻由子の濡れ場の方便以上ではない。
銀行を信じない港雄一は、土地の名所のワレメ岩(この人を喰った命名!)の下に全財産を埋めていたのだが、箱を開けてみたら事業に失敗して入っていたのは借用書の束、ガックリ来る娘の佐々木麻由子。「六つ墓のタタリじゃあ〜」と絶叫する岡田・銀田一。ベテラン深町章の他愛ないお遊びを楽しみたい方はどうぞ、といった感じの一篇でした。

「連続不倫II 不倫相姦図」 2008年公開 
監督・脚本・福原彰  主演・速水今日子,淡島小鞠

福俵満の名で新東宝プロデューサーとして精力的に活動するととともに、練達の職人脚本家として多くの佳作をモノし、一昨年の年末「うずく人妻たち 連続不倫」(シナリオタイトル「ETUDE」)で、今年のピンク映画大賞を総ナメする勢いの大傑作で監督デビュー(脚本も)した福原彰の、期待の第2作である。
 今回も、女の心の襞の深淵に迫って見事だ。ただし、筋立てはかなり平凡である。平凡な筋立てでここまでの深みに達したのは、見事といえば見事なのだが、やはりベルイマンかパゾリーニ(ご本人の言によると成瀬巳喜男の「浮雲」だそうだが)を彷彿させる鮮烈なデビュー作と比較すると、やや見劣りして不満が残る。観客というのは、身勝手なものだ。
 速水今日子と淡島小鞠の、両親と早く死別した姉妹の話である。姉の速水今日子は、懸命に働いて妹の淡島小鞠を大学まで出し、今の自身は大学教授夫人。妹の淡島小鞠は旅行雑誌の編集部員として活躍している。「ひとりきりになるのが怖い」が口癖の妹、母のように見守る姉。速水今日子と淡島小鞠の対照が効いている。そして、これがクライマックスの鮮烈さに生きてくる。
 愛の無い結婚から、速水今日子は八歳年下の千葉尚之と不倫している。しかし、夫の海外赴任に同行することになり、関係を清算する。2年後、一時帰国した速水今日子は、妹の淡島小鞠に婚約者を紹介される。何と!それはかつての不倫相手の千葉尚之だった。
ね、ピンクによくある何て平凡すぎる筋立てなんだろと思うでしょ。
 話は、速水今日子に癌の疑いが出て急展開する。気心知れた日本で検査をうけるべく帰国、妹の家に同居する。姉と夫の以前の関係を何も知らない妹。義姉との間に揺れる男、女の方も正常ではいられない。この3人の生活描写で、心理の綾を福原演出は味わい深く掬い取り見事だ。
 妹が取材旅行で家を空け、二人きりになった時ついに一線を越えてしまうのだが、そこに至るまでの過程、男が女にいったんは迫った後、我にかえって「もうしません」と冷静さをとりもどし、浴室に内鍵をかけて逃げ込んだ女が頭を冷やすかのごとく着衣のままシャワーを浴び、「着替えなくては…」とのやりとりの中で、いつしか体をぶつけあっていくまで、この長丁場は魅せる。
二人の関係を妹が気付くシーンも、濡れ場からカメラが引くと、部屋の外に彼女が佇んでいるさり気ない描写で静かに表現して見事だ。衝撃で妹が鞄を取り落とし、その音で二人は見られたことに気付く。(えてして、この手のシーンは、妙にエキセントリックになって、白けがちになるところを、巧みに処理した)
 姉の速水今日子は癌で世を去り、妹の淡島小鞠は夫の千葉尚之の子をみごもっていたが、それを告げることなく離婚する。ラストシーン、姉の墓参りに来た二人はすれちがう。一瞬立ち止まる千葉尚之、存在を無視するかのように赤ん坊を抱いて黙々と歩み去っていく淡島小鞠。あなたがいなくても、この子がいる。もうあたしはひとりきりじゃない、「第三の男」を思わせる男に対しての凍りきった女の情念が鮮烈である。
 決して美人というわけではないが憂いを含んだ速水今日子の風情が、ここでも効果的だ。淡島小鞠の眼鏡をかけての地味な清純な装いも好対照を見せる。夫の不倫を知った時、編集長の西岡秀記に、「誰でもいいから夫以外の男の人に抱かれたいんです」と静かに迫る風情は、女の微妙な心理の綾を表現しつくしていた。
冒頭で不満が残るなんて言ってしまったが、新年早々にもかかわらず、やはり今年を代表する一本となるであろうと思わせる佳作である。
2008年ピンク映画カタログー1

松の内は過ぎましたが、まずは、あけましておめでとうございます。
今年も「ピンク映画カタログ」をよろしくお願いいたします。



2008年1月5日(土) ●お蔵出し
「裸の女王 天使のハメ心地」 2007年公開
監督・田中康文  脚本・福原彰  主演・青山えりな,結城リナ

2006年、「裸の三姉妹 淫交」で、ピンク映画大賞の新人監督賞を受賞した田中康文、今回も構成のキッチリした練達の職人の福原彰の脚本を得て、情感溢れる作品を完成した。青山えりなとサーモン鮭山、結城リナと岡田智宏、佐々木麻由子と池島ゆたか、3組の男女が織り成す人間模様のからみ合いが、いずれも情緒に溢れて連動していく。
 青山えりなと結城リナは幼馴染で、伝説の踊子マサエに憧れるストリッパー同士。ちょっと足らない気味のお人好しの青山えりな、それをかばうような存在の強気で姐御肌の結城リナという対照が、まず見せる。
 旅館のあと取りのサーモン鮭山が、青山えりなに狂って追っかけになり、東京までついてくる。番頭の岡田智宏は、彼を連れ戻しに上京する。うらぶれた新宿の裏通りから、サーモン鮭山が連れ戻されるまでが前半だ。
 サーモン鮭山の行く末が気になった青山えりなは、温泉旅館まで追っていく。相変わらずの腐れ縁、しょうがないなあ、といった感じで結城リナも彼女に同行する。後半は一転、風光明媚な温泉地だ。この転換でアクセントをつける構成の妙、ここでも福原彰脚本は巧みだ。
 サーモン鮭山の父母が佐々木麻由子と池島ゆたか、青山えりなは女将の佐々木麻由子に懇願し、旅館修行を始める。つきあっているうちに結城リナは、番頭の岡田智宏に好意を抱いてくる。
 旅館の女将の佐々木麻由子が、実は突然姿を消した伝説の踊子マサエだったという驚愕の事実が発覚する。池島ゆたかと結婚するためには、旅館の女将に納まるしかなく、引退したのだった。
 伝説の踊子に特別指導を受けた青山えりなと結城リナは、再び、踊りの道に邁進することを決意し、旅館を去っていく。サーモン鮭山、岡田智宏との二組の男女の切ない別れにも情感が漂う。
 池島ゆたか監督、ここでも監督のカメオ出演を大きく超えた名演だった。病で精神に失調を来たし、天に向いUFOに呼びかけるぶっ飛び発狂演技、その後に雷に打たれ正気をとりもどしての、堂々たる旅館の主人ぶりを、的確に演じ分ける。さすが元役者だ。「うずく人妻たち 連続不倫」「ふしだら慕情 白肌を舐める舌」に続く名演、今年の男優賞は確定だろう。
 そういえば、森山茂雄監督が、ストリップ小屋の男で岡田智宏に因縁をつけ、ノサれてしまうえ芝居を楽しそうにやっていた。なかなかいい感じで、池島監督に続いての監督出身の名優誕生となれば楽しい。さらに吉行由美が、先輩ストリッパーに扮し、これもカメオ出演的に顔を出し、年増ダンサーの哀愁を醸し出して、映画に厚みを与えていた。
 いろいろ楽しみどころのある情緒ある一篇である。
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