- 風の紳士と酔う古本屋の炬燵
- 雪の降りはじめブリキの音がする
- 木彫と湯のたぎる擱筆
- あっぱれ猫の天気予報でした
- 死後あらわれた寄せ木細工の伯父
- 月下古書ですか咳をして
- カクテルの背後水の惑星浮沈する
- 紙風船ぷっくり麦の芽です
- 全身でやってくる海の先端である
- 一本の水の始まり沖縄の戦後
- 名もなく夕闇の柿となる
- すかんぴんすってんころん円の中
- 怪大無限黄昏風船
- この国のうらがわひらめねんぶつ
- 栗ならべるひとときの宇宙(そら)
- 虹へ帰る少年のジャングルジム
- 食卓の絵本白い良夜
- じいさんの帰りしな雨の一人言
- どどんと花火かっこむ鰻丼
- 水たまりの墓がある
- 幻と濡れる旅人の宿である
- 酒を呑む海底山脈の賭博師
- ながあめ墓場の一角貸本屋
- 虹をゆく梅雨明けの蛇
- 川の音なにか用かい水羊羹
- 雨の味さいあいさつの傘
- 別れの日立っていたひとかかえのバナナ
- ひぃふぅみぃやっとそろった御新香家族
- 月のサーカス流星クラリネット
- マフラーのココア月光密造者
- 雨音の孤舟の酒はこぼれゆく
- 母は里山かすれゆく花曇り
- 核実験あほんだらはらわたの拳
- TVではキノコ雲じいさんの錐がある
- ややあって酒とささやきのらんぷ
- 古い呼吸音水の花びら
- 今も死んでゆく戦場のはらわた
- 夕焼け滑り台無限少女
- 雨の一日真顔の墓がある
- 白い月夜ふりそそぐ窓の手
- にんげんけっかんどらむかん
- そら全部赤ちゃんの海
- 走る人透明すぎる春隣
- ぜんまいせんせいいかせんべい
- 原稿一途の黄色い部屋がある
- 体内一つの架空が棲んでいる
- 果てなきおでんの穴音がする
- 文学は落ちゆく帰り花の宇宙
- ごゆっくりどうぞ闇を折りたたむ
- 人の逝く無力の酒がありました
- 9.11の空ふりかかるからっぽの墓
- 子殺し親殺しのニュース爪を切る
- 5年目の9.11ふりかかるそらの墓
- こぼれた夕焼けの国境を渡る
- 星とからまる水色の自殺
- すててこと、てぽどんぽとん
- ココ孤島コトバノコンパス
- くうふくの空を喰う鰹節がある
- 湧き上がる少年の雲三角ベース
- 文庫本と草餅のある枕です
- 少年のうらがわ夜汽車です
- 泡立つキャンパス歩き出した魚
- 小指割れていた糸姫のほつれ
- 猫しのび足つかまえた虹のひといろ
- 銀河ヒトデといる樹海のクリスマス
- 灯のほのか開かれた絵本の海鳴り
- 結晶となった漫画家の「黄色い涙」
- 象のゆめ月と消えゆく温め酒
- みずみずしい光の中秋刀魚の矢印
- 雪明かりいつもの案山子とたおれてる
- 褌と語るにほんのてんまつ
- カレンダーめくるひっかかっていた残暑
- 「たべられません」遺体の保冷剤
- 星空もどるシーソーの未来
- 紙屑からっぽ死のぬくもりがあった
- 山道を走る産まれゆく虹がある
- 風景を戻りたくなる蟻のみち
- 天井がより高くなる手術の時間
- くさかんむり化けて出る花の下
- こわれゆく家具植物の視線
- じっと掌と酔う酒となる
- 月ほそりゆく葉ざくらの旅路
- 枯葉のかたちとなるココアの銀河
- 書き順を戻ってみる漢字の缶詰
- 津津浦浦の格子戸開ける夢現
- なまえなくした合鍵のかたち
- よこたわる物語紙飛行機とゆく
- 戦後六十年総毛立つ全身の階段
- 少年の手話とまどう指先の声
- あったかい卵といる雪夜のハーモニカ
- 「普通」が崩れゆくおどり大根
- 時間の窓白くなるふりだしの夜行電車
- 雲路ひとときもみじの仄か
- こぼれた星屑焼鳥ぶるうす
- 或夜半葡萄酒の人魚と出会う
- 戦争終わらない体内の拳
- 雨だれ少年水晶の笛がある
- 大の字の季節両手両足の大空
- 皇軍消えゆく虹の兵士
- 裾の先から蛍集まる薄着冴え
- 朝の扉たからかな下駄の空
- 夜の音生まれた星がありました
- 月欠けゆく体内のみずうみ
- 長い廊下ふくらみゆく癌手術
- 風の古本屋六法全書眠ってる
- 花びら、らららの子供てのひらの月
- 夜と酔いしれ星のポストがありました
- 夕焼けの翼あの日真っ赤な紙芝居
- 空のかたまり体内らんぷテロリスト
- 陽だまりの春眠くじらがおりました
- 月水面満開桜影が往く
- てのひらの夜回転はじめる花地獄
- 桜の木の下で笑ってる花びらの子供
- くいっと夜を揚げくじら千里眼
- うずくまる部屋墓の雨重くなる
- 墓の上から起つ雲といる
- しらふの背中湯豆腐丸くなる
- 束ねた手紙ていねいな輪ゴムの歳月
- 早朝の川面浮き立つ額縁心中
- 音の裏側へ立っていた夜明け前
- こぼれあふれおぼれ征く花びらの世紀
- テロの朝天秤棒立っている
- 一枚の夜めくる雨音めざめる
- こわれゆく体止まらぬ案山子
- あの日手作りロケットは夕焼けでした
- 樹皮の闇毟る畦の声
- 首喰う魚雪の人肉祭
- 濡れゆく路上唄声くびれる
- 酔い闇よよよ古本の肌ざわり
- かすれゆく水の影がある
|
- やわらかいマシン落葉のつくりかた
- 夜のかたまりカフェのしずく
- すっとてのひら形のよい蛍光燈
- つかまえた秋風やぶりすててみる
- かかえた膝までくずれゆく満月
- あの日焼鳥喰ったヤスリの音
- 卵の中両手でネコゴコロ
- あたたかい書物西陽のマント
- 拳の顔面胃袋の骨がある
- カサブタうまかった野宿の車輪
- 茶の間ひろびろと点がある
- 筆入れぱかっとまるでうす
- どんぶりをさかさのさかなで
- んから始まるアンケートがありました
- つるんと立っている蝉穴の人
- ヒトヒトリコドクコブタベル
- 体の真ん中水の名前を付ける
- ほらてのひらのびわ里山きらら
- ゆるやかるや人力車雲下り
- トイレットペーパーかかえドカ丸の唄
- 雨ふるるすいっと無音
- 瞳サンノ電車道ラッパラムネ
- 星のアイス風まくらんらん
- ガラモンガラガラカイガラモンド
- しっぽりと雨期の棒へ入る
- いちごはどのここのこはまいご
- 片手で赤ン坊両手で辛抱
- ひとり言葉の卵ですギターの夜
- 積木の音ふる雪ふみしめるギター
- 自殺する朝水たまりと出会う
- 戦争の空ぶらさがる日本
- きざまれた煙はがしてみる
- 術後・臓器ピンク色姉サンノキレイ
- 自殺サイトの戦争論真白な虹
- 街灯の中ふわりと列車(みらい)がやってくる
- 旅の空ゆく虹のはるかを抱き締める
- 皺・林立する私の顔
- 白い頃ここで産まれた午後の時間
- 地球ひとのみ真赤なシーソー
- 立方体正しく戻る不在の理由
- しっぽり螺旋しぼりの水姿
- 旅ゆく道すがら少年の雲ヒゲがある
- こわれた頭のまま食べちゃった地球
- 雲のゆくそそっとトンボひららっぽ
- 昨日ひどく冷たい来訪者右手から眠る
- ふっくらした灯あなたの文字立ち上がる
- 北・かの国をそっと地図からはがしてみる
- 囲炉裏と眠る昭和のぬけがら
- びっしり戦争詰まってる部屋ふくらむ
- ボタンありがとうレモンティの再会
- 鈴音の朝骨壺あったかい
- 空いまから行こうと落ちてゆく人
- 乱立する雨音窓際のホットティです
- なぜだか重く女の酒は黒くなる
- 柱かたむいたまま生きてる
- 止まっている体内の墓場がある
- あぐらまたぐら皮膚負けゆく冬
- らんぷほころぶ横顔天使
- 人の丸を感じるかすれゆく唄声
- 星をながめている枯れてゆく顔
- そっとはがしてゆく鏡の生活
- しずくの中タツノオトシゴ飲んでみる
- 冷たい雨粒だらけの鏡つかみとる
- あの日から生きてる墓の犬
- 一枚はがれゆくささくれた孤独こおりつく
- 冬はじまる太陽棲む所ころころほころぶ
- 片腕の扉開けると翼ひろげる人々
- しととの白あしおとやいば
- しずく生まれゆく力てのひらの夜
- すっと止まってる海の顔と出会う
- はじまる確かな地平線の手触り枕の下
- けんけんするズルッペの橋の影
- 全体重肩組んでいた居酒屋の茄子焼
- 眠れぬ夜アスパラガス抱いていた
- 眠っているほつれゆくまま体こわれる
- 風の上の音つつんだてのひらひらく
- 石あたためるどうやら生きてる
- 夜独り描く沈黙の断面図
- 口の中階段から入ってゆくあいさつです
- 涙集め一人言かかえてる終電車
- 空の蓋こじあける骨立の人
- 真上から風を両腕でかかえる
- 生命ノバシテ灯トモス穴ノシワ
- 世界同時武装解除てんこもり廃墟の夕焼け
- 大股の地下鉄です今日の物語
- このままそっと歩こう雨のはじまり
- 花びらまわりから右時間
- そらの墓抱きしめる旅人かすれゆく
- 束ねた風の形らららっと氷河期の声
- 風をうしろから見る
- 落ちゆくつらら顔全開のひとりごと
- 徹夜明けトイレットペーパーあったかい
- 或訃報すすりあげる御玉杓子食べる夜
- 墓参りする虫の群音を喰う
- 本閉じる夜の端から戻ってくる
- さよなら海の眼球大きな真夜中
- 人とヒト雨粒の間立ってる
- 祭りの夜肉体の駅ですリズムの花
- 目閉じる水飲みたかった夜です
- たっぷり時間のある雪の中の笑顔
- 街角ロボットのいる情熱の夜
- 月の生命包んでる虹色の卵時間
- あったかい墓のニオイでした
- ガッと"ガ"が立ち上がる夜中米国テロを知る
- 其本と眠るセピア色の木漏日です
- 断景 両手の生活が消えてゆく病窓
- 薬ばかり毎日の火山あそび
- ぶったおれた脳波のままです便所の音
- 夜の袋です真赤な顔して始まるトロンボーン
- 彼死んでゆく原爆ドーム雨おもい
- ね色、あなたのらおん
- 身すがらからりかすれの鼓動
- 何処かていねいな小雨の葉音
- ピンッと酔ってる星空です
- 或人の死枯葉ひらく音でした
- さらばの真ん中蹴り上げるいわし雲
- 「今から自殺する」大和魂の袋
- あわい樹木の日砂時計の日本人
- 顔やぶれた写真の冷蔵庫日記
- 骨まるくなるよりそうバケツの影
- 永遠の水たまり紙飛行機の音
- 花のまだかすれゆく草たけ
- 見上げると一人じっとしてる空の子供
- 或日雲のはざまの枯れゆく人
- 雨上がりの傘の中ほんとまんまる
- 闇夜のストーブかかえ上げて生きる
- 腕時計はずしながら消えてゆく
- 部屋のまるい所父と母がいる
- 「やあ」陽だまりの背中です
|