
ドラゴン危機一発は、ご存じのようにブルースの香港帰国第1作目の主演映画です。
舞台となったタイのバンコックのペイチュンは、ブルースにとっては最悪のロケーション現場であったことは、彼が妻リンダに宛てた手紙からも容易に推測出来ることでしょう
この映画の舞台になった製氷工場は、ペイチュンで撮影されおり、大詰めのマイ社長宅のシーンは、バンコックで撮影されました。
この映画の監督は、少なくとも3人変わり その誰しもがひどい監督であった事はご存じのとおりです。
ブルースは、ペイチュンでの撮影開始後すぐに右手の人差し指を10針縫うけがを負っています。
ただでさえ環境が思わしくないペイチュンでけがをし、アクション撮影を行なわなければならない環境には、かなり厳しいものがあったように推測できます。
しかも 未開地にふさわしく、食べるものに不便があり彼の体重も58キロまで落ちてしまいました。
もしこの環境がもう少し改善されていれば、ブルースのJKDに対する短編映画が作製されていたそうです。
彼が、ドラゴン危機一発の撮影中に恐らくこの映画のアピール用だと思われますがJKDを紹介する短編映画の話がありました。
ブルースのその時の気持ちは、けがの事も体調の事もあり OKを出していません。
今となれば 非常に残念な事です。
映画を見てみると、前半部分のブルースの主演者としての出方が気になります。
当時 ゴールデン・ハーベスト社は、ショウ・ブラザーズ社から分岐して自分の会社を軌道に乗せようと四苦八苦していた状況です。
レイモンド・チョウ氏もブルースに社運をかけていた事でしょう。
一抹の不安が2主演制で何とか売れる映画に仕立て上げたかったというのがこの作品には見え隠れします。
それはドラゴン怒りの鉄拳と比べる事で良く解ります。
ドラゴン危機一発では、ジェムス・ティエンが演じるシューが前半の部分を引っ張る形で物語が進みます。
台本の無い香港映画で監督がころころ変わった実状を考慮しても、途中までは、ジェムスを主役と勘違いしていたところがあるでしょう。
しかし 途中で主役を明確にするため、ジェムスを殺さなければならなかった事がこの作品の残酷さを主張しているように思います。
当時の香港映画は、日本のやくざ映画の影響を大きく受け、しかも残酷さを多く出すことにより観客を引き付けようとしています。
ブルース・リーの映画の中で最も出血の多い映画である事はご存知の事でしょう。
又 映像効果を生かそうとする事で非現実的な状況を作り出す事で映画である事を主張しています。
例えば 暴力シーンを現実ばなれさすことによって、これは映画の中の物語なんですというようにです。
ブルースは、反対に格闘に関しては リアル性を求めています。
主演作といえども、香港では新入りですのでかなりの部分を譲歩した事でしょう。
この事は、ある意味では彼の生徒がこの映画を見た時の感想に現われています。
ブルースに教わったスタイルと映画のそれでは違う事がそれです。
危機一発のアクション監督は、ハン・イエ・チェン(映画内のマイ社長)です。彼は、当時の香港ではアクション振り付けではポピュラーな人物です。
又 大きなアクションとブルース・リーが出るまでの香港のアクション俳優には、本物の武道家は殆どおらず 映像効果で偽者を観客に見せていたわけです。
ですから 他のブルース・リー映画にない、トランポリン・アクションなども出てきます。
非常に低い予算で作られた作品ですが、ブルースを世に送り出した記念すべき作品です。
もしこの作品が辺ぴな片田舎で撮影されなかったら、ブルースを奪うありとあらゆる罠の中、この作品を完成させなければならない事になったでしょう。
ある意味においてもこの貧乏くさい作品が、その後のブルースの人生に大きな役割を果たした事は事実です。
この作品の日本における役割はどうなのでしょう。
日本でこの作品が公開されたのは、リーの死後数ヶ月経っています。
その上 燃えよドラゴンの公開後ですので ブルース・リーブームの真っ只中でした。
しかも日本で公開されたものは、英語圏向けに香港公開当時に急遽作られたものを日本でさらにアレンジしたもので、ブルースが生前に体験したものとは全く違ったイメージを植え付けるものなったと言わざるをえません。
ワーナーとの合作の燃えよドラゴンを見た後にこの作品を見た人は、恐らく落胆した事でしょう。
この映画には、インターナショナルな派手さも無く、しかもフィルム自体が古い為、画面全体にフィルム傷があり 何よりもブルースのアクションが制限されている事です。
しかし 私はこの作品がブルース・リー初体験でしたので、香港の人々と同じ感覚で見れたのかもしれません。
当時の武器社会に対して、素手で正義の為に立ち向かうチェン・チャオ・ワンに対して すごい憧れを抱いたのは事実です。
私は、ブルースの自分の人生にかける意気込みをこの作品から読み取ることができると解釈しています。
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