|
|
私は現在27才ですが、彼が死んだのはほんとうにモノゴゴロつくまえだったんですよね…。テレビではじめて「燃えよ…」を見た時、
ものすごい
ショックで、「こんな人が本当にいるのか」と思った瞬間にもうファンになっていました。それほど彼の「引力」はすさまじか
ったのだと思います。
そしてきっとそれは人種を超えて魅了するものだったんでしょうね。
見るものをクギヅケにする理由のひとつに、彼の「龍のまなざし」は欠かせないでしょう。「ドラゴンへの道」でチンピラに向ける「さあこ
い」という
ニラミの前には、たぶんチンピラ役たちも本気で立ちすくんでしまったと思います。日本の居合いでも先に動いた方が負け
というのはあります
が、まさにそれですね。 あの人の「静」のあとにくる怒りにも似た激しい「動」が、なぜかいつも鬼気迫っているように感じました。
そのまるで死に際のような迫力はすべての彼の映画の中にあったと思います。
私は昔から、彼の映画をみるたびに感じていたことがあります。 ブルースの発する悲痛な叫びやまなざしが「この先このブルース・リーという人間は,一体どこへいってしまうのか」という得体の知れ
ない不安
感がなぜかありました。それは私だけではないと思いますが…。
映画スターの顔と格闘家の顔、そして一人間の顔。すべての間にキッパリと線がひかれていた人間。それが夢に向かって走り出し
た最初のこ
ろの彼…。しかし、有名になればなるほどその線が刃になり、完璧主義な彼ゆえ、それらのはざまにある「どれでもない自
分」をうめる術を知ら
ず、その刃でイラズラに自らを傷つけていたような時期があったのではないでしょうか。それが強さへの執着とな
り、結果的に命を縮めてしまっ
たようにも思います。人間はえてして何をどこまでやっても満足できない生き物ですが、ブルースは特
に高みを望んだ。でも常につきまとう得
体の知れない不安もあったと思います。インスピレーションの鋭い人は、自らの死期を無意識
に感じ取ってしまい、生き急ぐようにできているの
ではないでしょうか。歴代の大スターを見ても、まさに「太く短く」ですものね。
彼のいう「強さ」は、なんとなく仙人的なものを感じます。しかし、結果的に肉体がそんな精神を超せなかった。
仙人をめざすあまり、自分は人間であることを忘れていたような気がする…。
まるで、龍という架空の動物になろうとしていたアセリと人間社会のギャップにピリオドを打つように生きるのをやめてしまった彼は、
今頃天国
で「ああ、しまったなあ。もう少しあせらずに生きればよかったかなあ。」などと考えているのでしょうか。それとも、「ああ、体
のヤツめ、ちょっと
シゴイただけでこわれやがって」と思っているのでしょうか…。
ブルース本人がいつか「純度の高い鋼ほどもろい」と言っていました。それも自分自身のことだったのでしょうか?それとも「オレはそ
うならない
」という自信だったのでしょうか。何となく後者のような気がしないでもないですが。
シャイな人間ほど自信でヨロイをカンペキに作ろうとするもの。ブルースもまたそういう人だったのかもしれません。(なにしろアクショ
ンシーンで
鼻をちょいと触るし。あれって気の弱い人間のあらわれらしいです。)
自信と言えば、ブルースのエピソードから想像する人間像って、「超」がつくくらいの自信家ですね。
なにしろ名刺変わりに相手が男性だったら「わたしの腕をさわってごらんなさい」といってウデをさわらせ、女性だったら自ら女性の手
をとり、腹
筋に触らせたっていうくらいですから。しかし、その女性ウラヤマシすぎますね。
自信過剰もバカがやったらどうしようもないけど、ブルースなら周りの人間もすんなり受け入れちゃうところが彼のチャーミングな魅力
なんでし
ょうね。「強くてチャーミングでナイーヴで」。 光っている人は笑わせるのも上手。世が世なら王様にもなれたかもしれないです。
人間/ブルース・リーは、完成する前にこわれてしまった。あまりにも精巧に、あまりにも美しく作られたために作成途中でこわれてし
まったガ
ラス細工のようで、ちょっと悲しいです。多少粗悪で野暮な方がヒーローとしては長生きするのかなあ。
|