CERATOPSIA Marsh, 1888
NEOCERATOPSIA Sreno, 1986
CERATOPSIDAE Marsh, 1888
CHASMOSAURINAE Lambe, 1915
Genus Pentaceratops Osborn, 1923
Pentaceratops (Osborn, 1923)
→ 後期白亜紀 Campanian期〜Maastrichtian期、テキサス・US
・P. sternbergii (Osborn, 1923) 模式種
→ Fruitland Formation、San Juan Basin、ニューメキシコ・US
> Pentaceratops fenestratus (Wilman, 1929)
→ Kirtland Formation、San Juan Basin、ニューメキシコ・US
・ 大型のカスモサウルス亜科。
・ 鱗状骨が長く真っ直ぐで、8〜10個の縁後頭骨をもち、癒合の程度は様々である。
・ ストラップ状の細長い頭頂骨縁は中央で深く凹み、頭頂骨窓は広い。
・ 頭頂骨の後側に2対の大きな縁後頭骨がある。
・ 頭頂骨の後側中央背側に2つの縁後頭骨が前方を向いている。
・ 後方にカーブした大きな縁後頭骨。
・ 眼窩の直上に前方にカーブした大きな上眼窩角。
・ 顔は細長く、外鼻孔を構成する前上顎骨の後ろ側に指上の突起がある。
Pentaceratops はP. sternbergii (Osborn, 1923)、P. fenestratus (William, 1930)の2種が記載されておりますが、P. fenestratus はP. sternbergii のシノニムであろうというのが最近の見解です。それから、「sternbergii 」なる種名は人の名前を使っておるため、「sternbergi 」と「i 」を一個減らすのが本当は正しいようです。
Pentaceratops は究極の頭デカ男君で、ほぼ全身の骨が出揃っております。Chasmosaurus mariscalensis と同様、テキサス産です。北米西部のLaramidia大陸の南方生態系の構成員だった数少ない角竜種です。南方で見つかっているのは、Chasmosaurus mariscalensis、Pentaceratops、Torosaurus と、意外と少ないのです。Torosaurus はカナダにも分布し、角竜としては異例なほど広域的な分布を示しましたが、C. mariscalensis とPentaceratops は南方に特殊化していたと考えられます。テキサス産角竜はLehmanが精力的な研究をおこなっております。
Pentaceratops は大型のカスモサウルス亜科で、上部白亜系北西ニューメキシコ・San Juan Basin地域のFruitland FormationとKirtland Shale Formationから出ます。棲息していた年代は、Campanian後期からMaastrichtian前期にかけて(72〜75Ma)。
その名の由来は、非常に発達した頬骨を角に見立て、上眼窩角、鼻角とともに「五本」の角を表す”penta ”と、角竜によくつけられる”ceratops ”をくっつけたものです。Pentaceratops の頬角は他の角竜類と見比べても、120mmに及ぶほど極めて大きなものでした。この頬角は外側後方に向いていました。生きていたときはきっとケラチンで覆われていたと思われます。
大型…というよりも、最大級の角竜です(とくに頭が)。1941にほぼ完全な骨格(OMNH 10165)が見つかり、吻先からフリルの端まで3m近い長さの頭骨でした。この頭骨は知られている限り、過去を通じて史上最大の陸生動物の頭骨化石です。この個体は、おそらく全長6.8mほどはあったろうと予想されます(尾椎の一部が失われている)。腰までの高さが2.5m、体重9.877tに達したろうと計算されています。上眼窩角の長さは真っ直ぐに測って90cm、長さ全体をエッジで測ると、106cmになり、基部には空洞がありました(Triceratops にもその存在が知られている)。他の個体はやや小さく、頭骨のサイズが2m〜2.5mの範囲に収まりますが、幼体の頭蓋化石は見つかっていません。
Pentaceratops のフリルは大変細長く、1.5mに達します。幅は1mほどです。数多くの縁後頭骨を頭頂骨にもちます。その大きさにもかかわらず、フリル自体はとても薄いものでした。とくに、鱗状骨は平均で10mmといった厚さで、縁の方にいくと25mmまでになります。頭頂骨の表面は非常に血管系が発達していた痕が残っています。フリルの形態はAnchiceratops とChasmosaurus の中間形態のように思われます。
Pentaceratops はChasmosaurus mariscalensis と同時代に棲息していましたが、ともにカナダ産のChasmosaurus との関係は取りざたされております。北部から南部への進出は1回だったのか、2回に分けておこなわれたのか、今後の系統解析の研究が待たれます。
Pentaceratops の骨格の話に移りましょう。こいつの頭は体に比べて極端にデカイです。一方でその尾はChasmosaurus やTriceratops といった他のCHASMOSAURINAEと比べて短くなっています。全体的な姿形はずんぐりむっくりといったところでしょうか。橈骨長/上腕骨長比と脛骨長/大腿骨長比を比較したところ、Triceratops よりもむしろ原始的なProtoceratops に近い値が得られています。つまり、四肢の長さに対して、上腕、または大腿の占める割合が大きいということです。具体的には、橈骨長/上腕骨長比がPentaceratops で0.63〜0.67、Triceratopsで0.50〜0.58。脛骨長/大腿骨長比がPentaceratops で0.72〜0.74、Triceratops で0.62〜0.66、Anchiceratops で0.69、Chasmosaurus で0.70という値が得られています。
Pentaceratops の後肢は真っ直ぐ立っていたように見受けられますが、前肢は多少広げていたと考えられます。肩関節での上腕骨の前後動は、烏口骨の鉤状隆起と肩甲骨の関節上隆起によって制限されていました。上腕骨頭は上腕骨の後ろ側についており、真っ直ぐに肩に関節していたわけではなさそうです。烏口骨の鉤状隆起はしわしわで、胸骨と強固に接しており、烏口骨と肩甲骨は強固に骨化していました。このことは、Pentaceratops が非常に強固な肩帯を持っていたが、急速な動きには適していなかったことを示しています。肘頭は発達していましたが、上腕骨には腕を十分に伸ばしたときに尺骨と橈骨が上腕骨が関節する顆の後ろに下がるための孔がありませんでした。これらの特徴から、肘関節は曲げていたと考えられます。
Pentaceratops の脊柱の構造は、頭で儀式的な闘争をするのに耐えうるように特殊化していました。頸椎や胸あたりの脊椎は、腰のあたりの脊椎よりも上下方向の自由度が高く、また、胸や腰のあたりの神経棘は非常に高くなっており、前後動による衝撃を減じるようになっていました。この特徴は、他のCHASMOSAURINAE、例えばTriceratops やChasmosaurus のような種では見つかっていません。長く伸びた神経棘にはより多くの筋肉が付着していました。この構造は、上下の回転モーメントの力が肩のあたりの神経棘で最もしっかりと支えられるような構造で、現生のアイベックスのようなレイヨウ類の雄の優位を頭の角と角を絡めて競うようなものに見られる特徴と一緒です。強力な肩帯、長い神経棘、左右に少し広げられた前肢などの構造は、Pentaceratops が頭を突き合わせて闘争していたことを示すのではないでしょうか。この動物の重心は腰よりもだいぶ前にあり、おそらく後肢で立ち上がるのは無理だったろうと考えられます。
Chasmosaurus のところで述べたように、鼻の周辺の骨は非常に特殊化していました。頭部前方の骨の表面は生前、頑丈な皮膚で覆われていたであろう粗い面をしていましたが、鼻孔は厚く柔らかい組織で覆われていたと想像させるほど滑らかな面をしています。そこには、前上顎孔などのような様々な構造が見られ、分泌腺や口腔につながる鼻腔が収まっていました。嗅覚、もしくはヤコブソン器官が発達していた可能性もあります。このような器官は、現生のカバのように尿によってコミュニケーションを図る動物に見られます。
外鼻孔は嘴の近くにあって、呼気が前上顎骨孔を通過しただろうと想像されます。鼻孔全体が広く、この動物にとって嗅覚が大事だったことが判ります。鼻腔は外皮で覆われ、この動物が嘶(いなな)くことによってコミュニケーションを図っていた可能性もあります。
Pentaceratops の歯の構造や頬袋の存在から、飲み込む前に噛んでいたと考えられますが、二次口蓋によって、噛んでいる間も呼吸ができたと考えられます。
略号
AMNH;アメリカ自然史博物館、BSP;バイエルン国立古生物地球史博物館、CM;カーネギー博物館、FMNH;フィールド自然史博物館、LACM;ロサンジェルス自然史博物館、MNA;北アリゾナ博物館、NMC;カナダ自然博物館、OMNH;オクラホマ自然史博物館、PMU;アップサラ大学古生物学会、ROM;ロイヤル・オンタリオ博物館、SDSM;サウスダコタ鉱山学校、TMP;ロイヤル・ティレル博物館、UAVP;アルバータ大学、USNM;自然史博物館、YPM;ピーボディ博物館
・1923, Osborn; フリル後端が欠けた頭蓋に基づいてPentaceratops sternbergii (AMNH 6325) を記載。
すべてのPentaceratops の頭蓋(7標本)はニューメキシコのSan Juan地域に流れるChao River沿いの30km以内の地点で見つかっています。ここから発見される個体は、縁後頭骨の数、上眼窩角の向きと根元の位置、鼻角の長さと形態、眼窩前の顔の長さ、下側頭窓のサイズ、上眼窩角の基部に洞の有無、頬骨の向き等、さまざまなバリエーションに満ちています。これらの形質は、地域的に見ても、時代的に見ても、おそらく種内変異の範囲に収まり、現在では多くの古生物学者がP. fenestratus がP. sternbergii のシノニムだと考えてます。P. fenestratus の特徴として挙げられているのは、@鱗状骨孔、A縁後頭骨の数が多く形も尖っている、B上眼窩角の位置が、眼窩に比べて後ろにくる、C頬角が短く、外側前方を向く、D鼻角が長く、後方に位置する。Lehman(1993)はCHASMOSAURINAEを幅広く研究し、吻骨の長さと前上顎骨の構造、角の位置と長さや角度、フリルの形態などがPentaceratops では同一種内の変異であることを示しました。
Pentaceratops の標本は、Fruitland Formationとその上のKirtland Shale Formationから出土します。
Pentaceratops sternbergii とされているもの
Fruitland Formationから産出;
・ AMNH 6325; タイプ標本。フリル後端の欠けた頭蓋。
・ AMNH 1622; フリルのない頭蓋。
・ AMNH 1624; フリル後端のない頭蓋。
・ AMNH 1625; フリルの後端。
・ MNA Pl. 1747; 頭蓋、下顎、脊椎、肋骨。
lower Kirtland Shaleから産出;
・ PMU. R200; P. fenestratus のタイプ標本。頭蓋。
・ UALP 13342; フリルのない頭蓋。
・ UKVP 16100; 頭蓋。
・ OMNH 10165; ほぼ全身骨格で史上最大の頭蓋標本だが、詳しい産出層は不明。
Pentaceratops. sp.とされているもの
Fruitland Formationから産出;
・ MNA Pl. 1668; 鱗状骨、下顎、脊椎、肋骨、前肢。
・ OMNH 10165; 部分的頭蓋、体部の多く。
Kirtland Shaleから産出;
・ PMU. R268; 下顎、ほぼ完全な体部の骨格。
・ UNM B-1701; 脳幹、上顎。
・ UNM FKK-081; 頭蓋断片、肩甲烏口骨、脊椎。
・ USNM 12002; 鱗状骨。
・ USNM 12741; 上眼窩角、脳幹。
・ USNM 12743; 上眼窩角、鱗状骨。
? Pentaceratops. sp.とされているもの
Fruitland Formationから産出;
・ UNM B-810a; 前歯骨。
・ YPM 1229; 脊椎、肋骨、前肢の一部、腸骨。
Kirtland Shaleから産出;
・ UNM B-513; 脳幹。
・ UNM FKK-035; 鱗状骨、頭頂骨の一部。
・ USNM 8604; 頭頂骨の中央部分。
はじめ、P. fenestratus はP. sternbergii と以下のような形質で分けられました。
・ 鱗状骨孔の存在。
・ 縁後頭骨が短く、数も多い。
・ 上眼窩角が、眼窩の後方から伸びる。
・ 縁頬骨が短く、外側前方を向く。
・ 鼻角が長く、後方を向く。
以上の形質は、種内変異の範囲に収まると指摘されました(Lehman, 1993)。Pentaceratops を他のCeratopsidaeと比較し、種内変異の幅が非常に広いとしました。その個体差は吻骨の長さ、前上顎骨の構造、角の位置と角度、フリルの形によく現れているとされています(Lehman,
1998)。
現在では、P. fenestratus はP. sternbergii のシノニムとされます。