ブリーチーズとカマンベールチーズ
 白カビタイプの2つのチーズ「ブリー」と「カマンベール」は共にフランスが発祥で、日本では白カビタイプチーズといえばカマンベールが有名ですが、フランスではブリーが有名です。


★ブリーチーズ

 ブリーは千年以上の歴史をもち、そこから発展したとされるカマンベールも二百年以上の歴史があります。ちなみに、ブリーは「チーズの王様」、カマンベールは「チーズの女王」とされるほどの人気のチーズです。

 ブリーの中で最も有名なのが「ブリー・ド・モー」ですが、これは「モー」という村のブリーチーズを指します。「モー市」はパリから北東へ約50kmの所にあるパリ近郊の村です。

 ブリーの歴史は古く、8世紀のフランス皇帝シャルルマーニュ(=カール大帝)が大好物だったといわれます。それ以外にも、タレーランや、ルイ16世なども愛好家として大変有名です。

 昔ウィーン会議の場でこんなやりとりがあったとか。フランスの都パリで“おいしいチーズ”と言えばブリー・ド・モー。そこで、タレーランは「ブリーこそ世界一!」と強く推したのですが、これに激しく反駁したのがイギリス代表団の一人カースルリーグ卿。「ストルトンこそ」と一歩も譲らない一方、オランダのフォーク男爵も「いや、絶対にリンバーガーだ」と反撃するなど、それぞれ自国のチーズが1番!ともめるばかりで決着がつきません。そこで、タレーランのはからいで日を改めて決めることにしたところ、チーズの王様として選ばれたのがブリー・ド・モー。このおかげで、フランスは敗戦国としての面目を保つと同時に、ブリー・ド・モーが世界的に有名になったとのことです。

 また、フランス革命が盛んになっていく中、ルイ16世とマリー・アントワネットの国王一家は国外逃亡を企てたとき、ヴァレンヌという町で捕らえられ、町長の家で待機させられました。この時、二人が食べたのがブリーチーズだったといわれています。


★カマンベールチーズ

 カマンベールを作ったといわれているマリー=アレルMarie Harel(1787〜1855) は、ノルマンディー地方の村の、ヴィムーティエ近くのドアビル村(カマンベール村)に住んでいた農家の女性でした。1789年のフランス革命の最中、パリ近郊の街ブリーからイギリスに逃亡を企ててやってきた修道士達をアレル家で匿いました。その時のお礼として彼女がブリーチーズの製法を教わり、その後独自の白カビチーズを作り出し、それがカマンベールチーズの由来だといわれています。なお、大きなブリーに対してカマンベールが小さいのは、ノルマンディにあったリヴァロの型を使ったからだといわれています。

 しかし、一説には、カマンベールは1702年には既にヴィムーチェの市場で売られていたともいわれています。また、当時のカマンベールは、現在の白カビタイプのものではなく青カビタイプだったという説もあるようです。

 ともあれ、アレル家の美味しいチーズは、たちまちカマンベール村中に広がりましたが、しばらくは名無しのままでした。それが1855年、パリ 〜 グランウィル間に鉄道が開通され、その開通式にナポレオン3世が出席した際に、マリー・アレルの娘がフランス皇帝ナポレオン3世に、チーズを献上すると、ナポレオン3世は、その美味しさに大変感動し、このチーズを「カマンベール」 と名付けたといわれます。ちなみに、このときナポレオン3世は感動の余り、マリー=アレルにお褒めのキスまで与えたといわれています。

 1928年、カマンベールで儲けたアメリカ人(ジョエ・クリニム)がヴィムーティエにマリー像を建てましたが、その後、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦で像は破壊されてしまいましたが、現在また再建され存在しています。


■本物はAOC認定品だけ
 フランスが本場のブリーやカマンベールチーズですが、現在世界中で生産されています。また同じフランスでも、それぞれ作られた場所や原料乳、製法などによって味や香りに大きな差があります。

 フランスでは、歴史ある伝統的な製法や優れた品質を法的に保護するために、その原産地を特定し、厳格な条件の下にAOC(原産地統制呼称)が与えられ、その認定マークが表示されています。現在ロックフォールやブリー・ド・モーなど27種類のチーズにだけAOCの呼称が許されています。カマンベールチーズに関しては、「カマンベール・ド・ノルマンディー Camembert de Normandie」だけがAOCの資格を持っています。

ちなみにノルマンディー地方は、マンシュ県、カルバドス県、セーヌ ・ マリティーム県、ウール県、オルヌ県を含み、これらの限られた地域で作られるのが本物のカマンベールチーズとされています。

 しかし、日本や世界各国で作られるチーズはその規定がないため、ブリーもカマンベールもそのチーズ名が白カビチーズの代名詞のように使われており、その違いが判りにくくなっています。

 ちなみに、AOCの規定では生乳(無殺菌乳)の使用を義務づけています。無殺菌乳から作るチーズと殺菌乳製のチーズとの大きな差は、その風味の違いです。牛乳の中に自然に繁殖している様々な菌の作用により、風味が強くなり、熟成すると相当強烈な匂いを発し、チーズに複雑な味を醸し出してくれます。なお、日本では無殺菌乳でのチーズの製造は認められていないとのことですので、この辺が大きく異なる点でもあります。
AOCによる規定・条件
品名 カマンベール・ド・ノルマンディー ブリー・ド・モー ブリー・ド・ムラン
原産地 ノルマンディー地方 イル・ドゥ・フランス地方 イル・ドゥ・フランス地方
直径 10.5〜11cm 35〜37cm 27〜28cm
重量 約 250g 約 2.5kg 約 1.5kg
熟成期間 3週間以上 4週間以上 4〜8週間
※この他、使用する乳業種・製造法にもそれぞれ規定や条件があるようです。



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