岩下信さん作・掌編
ショートカット
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1.
「…公爵領へですか?」
メガネをかけた男が目の前の初老の男に向かって聞き返した。
「そうだ、君の新しい仕事は公爵領に加わることだ。」
初老の男がメガネの男に答える。
「しかし、何故力を貸すのです?公爵領自体は強力な力を持っていて、一部では危険因子として見られているではないですか。」」
「先の戦いは覚えているな?黒と名乗るもの達と、ダークファルスの復活」
「ええ、”F作戦”と言われている戦いですね。」
「その”F作戦”も公爵領のつわもの達の活躍によって収束はした、が依然”黒”と称するものの実態はつかめずにいる。」
「………。」
「かつ、今は”F作戦”において鍵を握っていたイシャム、ラムジィ…そして公爵領との協力関係で”F作戦”の功労者、月神タケルも前の戦い以後姿を消したままだ…今ここで再び”黒”のもの達の動きがあったら我々だけでは対処が出来ん…ここはひとまず協力体制を敷こうという訳だ。」
「…歩み寄り…という訳ですか…。」
「そういう訳だ、それとこれにはもうひとつ重大な意味がある。」
『分かるか?』というようににやりとしながら初老の男がメガネの男に問いかける。
「………監視…しして”黒”と呼ばれる集団への牽制という訳ですね。」
「そうだ、公爵領の力は一団体としては大きすぎる、しかし、その力が無くては今後起こりえる危機に対応が出来ない、となれば上手くその力を利用する他にはない。その意味では”黒”へのいい牽制材料となる。」
「…我々の同士もかなり先の戦いで失いましたからね…戦力ダウンは目に見えてます。」
「加えて、公爵領には内部で新たな動きがあるらしい…」
「公爵領では新たな人物が台頭しているという噂は聞いております。」
「うむ…内部的にもごたごたはしているらしい、軍の連中も動き出したという情報が
入っている。」
「軍も動き始めているわけですか…」
「軍の奴らも、最近の公爵領の動きには警戒を始めたらしい…まぁ、連中は自分達より発言力を持った輩がいるのが気に食わんだけかもしれんが。」
「プライドだけは高いですからね、パイオニア2軍は。」
「まぁ、そういうことだ我々ハンターズも軽く見られておるしな。」
「確かに…まぁ軍は良いとして…協力しつつ、牽制ですか…なかなかしんどそうですね。」
「ああ、こういう仕事は知略を得意とするお前にしか頼めん、頼んだぞシェド・アークライン」
「了解しました、シェド・アークライン、任務につきます。」
「よろしく頼む、公爵領へは欠けた人材の補佐という事で手を打ってある故、快くむかい入れてくれるであろう。」
「了解。では準備が整いつつ、公爵領に向かいます。」
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・
・
「お嬢、仕事ですよ」
部屋の中でマグに餌をやっている少女にシェドは言った。
「お仕事?今度は何?」
餌をやりつつ、シェドの言葉に答える少女。
「公爵領に常駐し、協力、そして監視をします。」
「公爵領?」
シェドの言葉に首をかしげる少女。
「あぁ、お嬢は知らないんでしたっけ…公爵領とは、この船でハンターズギルドに
次ぐ実力を持っている組織です。」
「え?じゃあ何でボク達が協力するの?」
「その力が問題なんですよ、私設団体にしては大きすぎる力…その力があらぬ方向に向かわないように、監視するわけですよ。」
「んー…わかった。」
少女が指を口に当てしばらく考え込んでから答える。
「公爵領か…どんなご飯が出てくるんだろう…。」
「…そこまでは分からないですけどね…」
ため息混じりにシェドが少女のつぶやきに答える。
「そこに行けばあなたの記憶喪失の事も何か分かるかもしれませんよ?公爵領には
独自の情報ネットワークがあるわけですし。」
ほぇーと公爵領について期待を膨らましている少女にシェドは言う。
「……ボクの事、何か知っているかなぁ?」
「ハンターズギルドで分からないことも公爵領は知っている可能性はありますから、そこに期待しましょう。」
「そうだね。」
「さて、準備が整ったら向かいますよ?公爵領と言う我々の新たな舞台に…。」
「うん、アルキメデス行くよ。」
「ハンターズの一員でもない貴方を巻き込むのは心苦しいんですが、また力を借りますよ、お嬢…」
「任せておいて!」
どんと胸を張りシェドの言葉に少女が答える。
「森の中で記憶を無くして倒れていたボクを助けてくれたお礼だよ。それに…ボクの事が分かるかもしれないし…」
「そうですね…では行きましょうか?」
「うん!」
シェドの言葉にうなずく少女。
こうして公爵領に新たな2人が加わることとなった。
2.
(※西山さんのこちらを御読了の上でお楽しみ下さい)
「「ずずーっ」」
先ほど、シ・オンに破壊された形跡はどこへやら、ちゃぶ台を囲んで
シェドと双月がお茶を啜っている。
名無しはその横でアルキメデスと戯れていた。
「しかし、ここではあの光景が日常なんですか?」
茶を啜りつつシェドが双月に問う。
「まぁな、あの娘の暴走はいつものことだ。」
「…恐ろしいところですねぇ…」
「慣れる事だ、そうしないと胃薬等のお世話になる羽目になるぞ?」
「………」
公爵領に来たことをシェドはなんとなく後悔し始めた。
その時、
「毎度ですの〜西山飯店ですが、どんぶりをお下げに来たんですの〜」
との言葉と共に少女が双月の部屋に入ってくる。
「あーそこにあるから持っていって」
「はいですの〜」
双月の言葉に答え、どんぶりを持って去ろうとする少女。
「あ、ちょっと良いかな?」
その少女に声を掛けるシェド。
「?なんですの?」
「えっと…入り口からここまで結構セキュリティーシステムが作動していると
思うんだけど、どうやってここまでたどり着いているのかな?」
「それは簡単ですの、ひとつずつ大人しくしてもらえばいいんですの。」
「…簡単って…」
「あの手の機械はラゾンテで一発ですの。ベリーハードの遺跡に比べれば、余裕ですの♪」
「…………」
笑顔で答える少女に対して大汗を浮かべるシェド。
「それでは、失礼しますの…リューカー!」
空間転移のテクニックを使いその場から少女はその場から去った。
「…双月さん…今、セキュリティーシステムはどうなっていますか?」
「……完全に破壊されているらしい…」
苦虫をつぶした顔で通信機のスイッチをオフにする双月。
「…これからは出前を頼んだ際にはセキュリティーを切っておいた方が
いいですねぇ。」
「ああ、まったくだ…」
その前に出前を頼むという行為はいいのか?
数時間後、セキュリティーシステムは復旧。その矢先に…
「にゃぁぁーさっきまでなんとも無かったのに、一体何がどーなっているんですかぁぁぁ〜、
ベゼル先輩、た・す・け・て・く・だ…うにゃ〜」
レーザーに追われる一人の少女(ハニュエール)の姿があったとか無かったとか…