地獄からの帰還
「つながった! つながりましたチーフッ! ティータさん? ティータさん! 返事してください! 4時間も連絡が途絶してたんで、心配していたんですっ! いま緊急で移相準備しますからっ!」
『…ぃきてる、聞こぇ……(ジッザザ)』
「ティータさん! 生きてますよね!? 無事ですよね!! バイタルサインが
返ってない様ですけど、無事ですか!?」
『エリちゃんごめん、油断した…… 撤退する前に、やることをやってからでないと、帰れない」
「え?」
『帰って来ても、驚かないでね。お願いだから』
「え? えぇ?! ティータさんなに言って(プツッ)…… ティータさん?!」
「ふぅ、っぐ!? すごいミミズ腫れ、もう侵食はじまっちゃってる…… 右足も左腕もいっちゃってるし」
(切り落とす以外に手段が無い、あなたが取りこまれては意味が無い)
「……やっぱりね、これもそのD-Cellの影響か、思ったよりも酷い…… っていうか、誰しも経験した道のりか」
(ぼやいても痛みは減らない)
「……そうだったとしても、ぼやかずに、いられた? わたし」
(……)
「左腕と右足、今の医療技術なら傷痕も残らないし、それしかないわよね。拾ったフォトンソード…… よし、ちゃんと動く」
(早く! 神経組織を汚染されたら、精神汚染される!)
「判ってる…… マウスピース噛んで…… まず、左手ごめん!(ザクッ!)っっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
(……)
「(ハァ、ハァ)右足、膝から下を…… せいっ!(ドサッ!)」
(早く消滅させ)
「言われなくたっ……て、やるわ……よ。これを元に、また、化け物が、生まれたんじゃ、うくっ、わたしが、鬱に、なりそうだし……」
(安全距離まで離れた。何を怒っている?)
「声だけの存在に言われたって、今の痛みも感じて無いから冷静でいられるだけ、ちょっと怒ってるけど……」
(けど?)
「あなた達も、経験した、これから経験するだろうから、チャラにするわ。ターゲットロック、シュート!(カキュコーン ボシュッ!)」
(消滅した)
「あとは…… エマージェンシーピン、叩いて、ラボに戻る、だけか…… エリちゃん、きっと、すごく泣いてて、すごく怒るなぁ……」
(……今は眠れ、精神力だって、もう限界のはず)
「……なんでも、お見通しなん……(ピン、ブゥゥゥゥ……)」
「ティータさん。てぃーたさあん、どこいっちゃったんですかぁ〜(ぐしぐし)探査機使っても、いないですよぅ……」
「エリ君、メディカルブロックからだ。フォース・ティータが帰還したそうだ」
「(ぐしぐし)……え”?」
「どうやら、自力でエマージェンシービンを叩いて、緊急ログオフしたようだ。命に別状は無いが、左腕と右足を欠損していたらしい。今メディカルにて再生治療の為にICUにいるようだな」
「ほ、ほんとですかぁ? ちーふぅ」
「君に嘘を言って、何か得な事でも有るのか? オペレーターとも有ろう者が、感情に振りまわされるなど、新人以下の振るまいだな。暫く席を離れていたまえ」
「え”?! あ、は、はい!」
「全く…… しかしあの娘、事前に負傷箇所を切断して来たと聞いているが…… 何故アレによる汚染の事を知っていた? もしかしたら、あの娘もまた、厄介な存在になりそうだな」
「ティータさん! なんでここまで無茶なことしてきたんですか!? すっごい心配したんですよ! 助ける前に死んじゃったのかと……」
「ごめん。ごめんねエリちゃん、泣かないでったら、落ち付いてよ」
「泣きもしますよ! ティータさんの連絡が途絶して、必死で通信回復させようとしても、通信妨害されててまた連絡取れなくなるし、偵察機はどっかいっちゃうし、4時間も音信不通の上に、やる事やってからって言った挙句が、左腕と右足無くして帰ってくることの、どこに落ち付けっていうんですか!」
「あ〜、う〜、傷に響く〜〜」
「嘘言わないで下さい! もう腕も足も、分子レベルクローニング再生で、元に戻ってるじゃないですか!」
「まだ、異物除去確認シークェンスが終わって無い……」
「それなら一番最初に終わらせてます!」
「……あう」
「とにかく、無茶やってお仕事に穴あけて、どーするんですかっ! ティータさんのスケジュール管理だって、わたしの仕事なんですよ! 判ってるんですか!」
「……はぁ(って言うか、いつのまにそんなもんまでっ!)」
「はぁ、って判ってるんだか判って無いんだか、アヤシイ口調で返さないで下さい!」
「はいぃぃぃ!!」
「……はぁ、もう。どっちにしろ、ティータさんが言ってったような相手が、敵として存在するのであれば、こっちも対策を立てないといけませんから、暫くはお仕事無いみたいですし、ゆっくりと回復に努めてください」
「はぁーい」
「……本当に、心配してたんですからね、それじゃ」
「……はぁ、つかれた」
「おやおや、そういう言い方は無いと思いますがね? ティータ」
「に、義兄さん!? ひょっとして、今のやり取り……」
「見ていましたよ、途中からでしたけどね。それよりも、さっきの話ですが…… これはあくまで私の感で言いますが…… その敵の話は、これ以上しない方が無難でしょうね」
「義兄さんも、そう思いますか?」
「私は余り政治とかには関わらないようにしているのですが…… ティータ、用心なさい。どうもその影が見え隠れしています」
「……ええ」
「『黒』も軍も本国政府も、一体何を考えているのやら……」
「(……少なくとも、人を導くべき事を行っているのでは無いと、思います)」
「うん? どう言うことだい?」
「(逆に考えてみたんです、なぜ、あれをあそこまで必要としているのかと)」
「ティータ、それは……」
「(あるいは、彼らは本気で『闇』を、上手く扱えないかと、出来もしない夢想に、浸りつづけているのかと思うと……) いつになっても人は争いを捨て切れない存在なんでしょうか……」
「それは、人それぞれだと思いたいよ」
「掴んでも消えてしまうような淡い夢を求めつづけるのであれば…… 人はいつまでたっても、愚かなんでしょうね」
「……そうかもしれませんね、でも、今日の所はお休みなさい、ティータ」