雅ノボルさん作・掌編

ショートカット
  


1.

「行くんだね、ティータ?」
「はいマスター。わたしの、この額のクリスタルが囁き掛けるのです。早くあの
場所へ『行け』と」
「お前のそのクリスタルのことも、そしてお前自身のことも、遂に解き明かす事
が出来ない内に、お前はあの地に降りようとしているけれど…… 何故だい?」
「……正直、理由は自分でも判っていないのかもしれません。けれど、幾重もの
わたしが、そこに行ったのであるならば、わたしも行かなくてはと、そんな衝動
にかられて、です」
「……そうか。お前の内に有る数多の呼びかけに、従ったというわけか」
「まだ、テクニックも戦闘技術も究めきれていない未熟者ですが、わたしの勝手
をお許し下さい、マスター・コスワース」
「ティータ、私の若き弟子よ。顔を上げなさい、そして胸を張りなさい。弟子の
独り立ちを祝わぬ師などいませんよ? 自分で決めた道であれば、それを進みな
さい。すべてはフォトンの導きのままに」
「……ありがとうございます、マスター」
「独り立つお前に餞別を与えましょう。今日から家名の無い「ティータ」では
なく、ティータニア・フォード=コスワースと名乗りなさい」
「……え?」
「3年前に何も無い宇宙で冷凍睡眠漂流していたお前に、私はこの世界で、この
時代で生きていく為の術を与えたつもりです」
「で、でもいいんですか? 確かマスターの家名は……」
「他に身寄りも何もないお前に、私が出来るのは、私の知識の他にもあるはずだ
と思いましてね。名前だけの兄妹かもしれませんが、お前に帰って来るべき場所
を与えましょう。いいですか、例え目の前が絶望に閉ざされようとしても、私が
ここにいる事を忘れないで欲しいのです。それに私も、身寄りが無い辛さは判り
ます」
「……ありがとうございます。エット……兄さん」
「それから、これはお前に返しましょう」
「これは、ハンドガン?」
「お前を発見した時に、一緒に添えられていた銃です。結局、これも何なのかは
判りませんでしたね。普通のハンドガンには無いブラックボックスが解明できれ
ば、その謎も解けると思うのだけれどもね。まだ扱うには難しいと思いますが、
持っていなさい。通常でもレイガンクラスの光弾を撃てるようにはしています」
「はい」
「その銃の事も、そしてお前のクリスタルの事も、もっとよく調べてみることに
します。たまには、ここに戻ってきなさい。いいですね」
「はい、兄さん、本当に、ホントにありがとうございます……」

「行ってしまったか、この屋敷もまたさびしくなってしまうな…… 出来るなら、
独り立ちしたティータに、私の妹にフォトンの加護を。『ウィスパーズドアイ』
が導きを与えるように……」




2.

『はーい! こちら(ドッカーン)ラグオル地表森林ステージの、ティータ
です!(ダダダダッ!)ただ今戦闘中の所を、生中継(ヲ)でお送りしてい
ます!(ドンドンドン!)ちょっと、騒々しいのは、ご容赦くだ(バータ!)
さい。うわこら、エテ公こっち来るなぁ!(ラバータ!)』
「ラグオル地表のティータさん? 大丈夫ですか?」
『……タジオの方聞こえますかぁ!?電波が安定してないようなので、映像
送れないみたいです。音声は大丈夫のようなので、このまま放送続行します』
「はい、ティータさん、状況を教えてください」
『えーとですねぇ、ただいまドラゴン前のテレポーターのところにいますが、
放送班のレイキャストさんのガンカメラが、先ほどのエテ公の攻撃のせいで、
ゆがんでしまってます』
「さすがにハードの森でしょうからねぇ、さぞかし危険度も上がってること
でしょう」
『そうですねぇ! ノーマルよりは確実に強くなってますから、大変みたい
です。ノーマルはレベル35でDF戦に持ちこんだのですが、装備の貧弱さの
為に、30分近くにも及ぶ長時間戦闘になってしまいましたが、なんとか撃破
に成功しています。グランツがなかったので、第一形態で余計に時間が掛か
りましたが、とりあえずノーマルエピ1クリアです』
「そうですか。ところでエピ2のほうは」
『VRのほうは既に終わってますが、中央管制室から先は、まだ未走破なの
で、どうとも言えません。こあとるさんが言ってたように、各エリアのボス
は、かなり手ご(ジッ、ザザッ)……うです』
「ちょっと音声回線の方もおかしいようですが、こちらの音声は聞こえてま
すか? 何かレアアイテムなど出てますでしょうか?」
『実はですねぇ、エネミーアイテムの元を入手しています!』
「ほうほう、一体なんでしょうか? デルセイバーでしょうか?」
『ハードの洞窟でなんですが、パンアームズの両手をゲットしまして、ただ
今溜まりに溜まったクエストをこなしている最ちゅ……(ジッザザザ……)』
「おや? どうしましたティータさん? 急に映像回線が回復しましたが」
『ってディレクター!? この辺の敵掃討し尽くした筈じゃないんですか!
え? 狼倒し損ねて今処理したら沸いた?(TATATATATA)お前も手伝え?』
「ティ、ティータさん?! ティータさんどうしたんですかっ!?」
『わたしTPが切れてるんですよっ!(DAMDAMDAM!!)え? またエテ公ぉ!?
(DAMNG!)ど、どこどこどっ!?(ドキャ、ブツッ!)んきゃ〜〜〜!!!』
「今一瞬回復した映像だと、青空の向こうから、エテ公がジャンプしてきた
ようも見えたような……(はっ?)えー、番組の途中ですが、どうやら現地
はまだ安全では無いようですね。レベル40を越して、ようやくベリハにも
行けるようになったティータさんの無事の帰還を祈っております。さて次の
ニュースですが……」




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